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第3話 ゴーレム娘、スキルを覚える

「ね~……まだなの~……」


「ま~だ」


「ぶ~……」


食事を終えた私は 現在…………ひたすら照明を点けたり消したりしている…………シュールですね?

なんでこんなことをしているかと言えば、こんな流れがあったからだ。



― 回想開始 ―


「そうだ。街に下りるのに当たって、入口の分析魔法どうするの?」


ナビの時に『検討する』って言ってたよね?


「それな~。実は貴女の体さ、マイアナの技術の粋を集結したゴーレムなのよ」


「知ってる。ていうか、ナビの時に聞いた」


全く同じ内容のセリフだったと記憶している。


「あ、そうじゃなくて~。あの時のは『技術の粋を用いて造り上げた体』って話。今回のは『マイアナが持ってた技術』の話」


「ん?」


「つまりね~、貴女がその体を上手に扱えるようになると、『マイアナが持っていた技術』を貴女が使えるようになるの」


「……………………なんですと?」


言っている意味は分かる。

だから、今のセリフは『そんな凄いことしての? この体に』って意味だ。


ただ、ナツナツは『何を言っているのか 分からない』という意味で捉えたらしい。


「とりあえず、これ 貴女のステータス~」


と言って、一枚の透明なプレートを投影する。



名前:ルーシアナ・ゼロスケイプ

性別:女

年齢:15歳

種族:フレッシュゴーレム

レベル:1

HP:500

MP:2,000

力:21

体力:55

魔力:300

敏捷:62

運:Better

特殊スキル

・刀剣マスタリー Lv.1

・格闘マスタリー Lv.1

・射撃マスタリー Lv.1

・火魔法マスタリー Lv.1

・水魔法マスタリー Lv.1

・風魔法マスタリー Lv.1

・土魔法マスタリー Lv.1

・生命魔法マスタリー Lv.1

・精神魔法マスタリー Lv.1

・時空魔法マスタリー Lv.2

・光魔法マスタリー Lv.1

・闇魔法マスタリー Lv.1

・錬金マスタリー Lv.2

・ゴーレムの心得

取得スキル

・異空間干渉

・どこでも錬金

・感覚調整



「ながっ!!」


前世は『運』までだった、と言っておく。


ここで『スキル』について説明しておこう。

スキルというのは大別すると、汎用スキル、特殊スキル、取得スキルの三種類があって、主に特定の動作を補助してくれるものだ。


汎用スキルは、修練所という施設で覚えられるもので、例えば『剣術 Lv.1』とか『火魔法 Lv.1』とか。名前が示す動作を自動的に補助してくれる。

特殊スキルは、生まれつき持っている才能や種族特性である。『剛力』とか『火精霊の加護 Lv.1』とか。Lv.はあったりなかったりする。名前や説明だけでは効果が分かりづらいものもあるが、何故か本人には詳細が分かる。

取得スキルは、汎用スキルや特殊スキルの組み合わせやレベルアップ等により得られる、より強力な補助効果を持つもの。代わりに汎用性が狭まる。『切り返し』とか『ファイアボール』とか。レベルはない。


そして、私の特殊スキルの効果は以下の通り。



○○マスタリー:○○に関連する動作をすることで、祖父の遺した魔法等をスキルとして取得出来る。さらに○○に関連するあらゆる動作を補助し、自身のレベルアップ時に特大の成長補正を受ける。

※成長補正計:HP+60、MP+240、力+8、体力+10、魔力+20、敏捷+8


ゴーレムの心得:ゴーレム種族の種族特性。単純作業、反復作業等を無意識に行え、疲労を軽減する。また戦闘時に限り、HP、力、体力のステータスを跳ね上げるが、戦闘終了後一時的に同ステータスが激減する。スキル『感覚調整』を取得。


異空間干渉:ルーシアナの所有する異空間にアクセスする。


どこでも錬金:異空間[錬金室]にアクセスし、作業行程を代行する。


感覚調整:五感や痛覚、知覚速度などを増減する。



……………………とんでもねぇ……

なお、一般的な成人男性 (二十歳)のステータスは以下の通り。



HP:1,000

MP:500

力:80

体力:120

魔力:40

敏捷:60



つまり、HPと体力は半分程度。力は1/4。敏捷は同等。MPと魔力はずば抜けている。


まぁ、これが魔道士系だったり、産業系だったりしたら多少上下し、さらにレベル補正や経験で上がるから、こんな人はいないんだけど。

私と同一条件で比べたら、ということで。

それでも、多分 ちょっとレベルを上げるだけで、他の人をぶっちぎれると思う。ステータス上は。


おじいちゃん…………お礼は言っておくよ…………


「お~い。こっち見て~」


「あ、はい。すごくすごいですまる」


「なんだそりゃ」


しまった。頭回ってない。


「○○マスタリーの説明文は見た? そこにある通り、貴女はマイアナの覚えてた魔法を、スキルとして取得できるのよ~」


「うん」


「でね~。分析魔法に対する、偽装魔法ってのがあるはずなのよね~」


「あ、そうなの?」


なんて都合の良い。


「ただ、どれを上げれば覚えられるか分からないの。分析魔法が光属性だから、多分 光か闇だと思うんだけど~」


「えっと……なんで?」


「いや、勘だから。『光に対して光で偽情報を送る』か、『闇で隠す』か、どっちかじゃないかな~って思っただけ~」


「なるほど。じゃ、光魔法か闇魔法に関係する動作をすればいいの?」


「そういうこと。という訳で、はいこれ~」


と言って渡してきたのは、照明のスイッチ。


「ナニコレ」


「照明スイッチ」


「それは知ってる。なんでこれを渡すん?」


「照明魔道具の原理は知ってる~? 光魔法で灯りを作って、闇魔法で打ち消して消すんだよ~?」


「わぉ。一挙両得」


「でしょう。はい、Go」



― 回想終了 ―


そんな訳で、光魔法マスタリーと闇魔法マスタリーのレベル上げを目的に、照明の点灯と消灯を繰り返しているわけです。

まぁ、単純作業だから、さっそく《ゴーレムの心得》の効果である『単純作業を無意識に行え、疲労を軽減する』を利用して、魔力消費も無く行えているからいいんだけど。


机に片腕を伸ばし、そこに頬から頭を乗せてチカチカチカチカ。

ただただ 暇だ。


「……………………」


ナツナツは、照明が細かく点滅するのに合わせて、踊るように回転している。

点滅に合わせて、カクカクカクと飛び飛びに姿が写り、まぁ、何がどうという訳でもないが、暇潰しになっているようだ。


「……………………」


ナツナツの姿は先程述べたように、銀髪赤眼。羽は蜻蛉のような形状の透明なものが二対。服装は、青味掛かった薄い黄色のローブ。

お人形さんのような可愛らしさがある。


「……………………」


…………気になる。『触って良い?』って聞いたら怒るかな?

…………………………………………まぁ、いいか。


「ねぇ、ナツナツ」


「ん~?」


「触って良い?」


「何を!?」


「全身を。すべからく。満遍に」


「わたしをか!!」


あ、そこからですか。


斜めに傾いた頭を振った。『Yes』と伝わるように。

ナツナツは、躍りを中断したポーズのまま、呆れたように半眼になると、ポーズを崩して額に手を宛て、しばし黙考した後、


「いいけど、優しくね」


「結構悩んだね」


「当たり前やろがい」


……………………そうかもしれない。


一先ず『真面目に触ります』という意思表示のため、姿勢を正し、スイッチを胸ポケットに入れると、左手の平を上にして差し出す。

安定するように、指には力を入れ、手の甲は机に押し当てて固定した。


「極端なのよ、貴女……では、失礼して~」


何がどう極端なのか分からないので、改善されることはないだろう。


『ててて』と小走りに左手に近づくと、『えいっ』という軽い掛け声と共に飛び乗り、そのまま女の子座りをしてこちらを見る。


「いいよー」


「……うん」


……………………自分はもしや、とてつもなく破廉恥なことをしようとしている?

いやいや、そんなまさか、女の子同士じゃれ合うだけだもん。普通普通。

ねぇ、そうだと言って、私の良心。


良心が何も言ってくれないので若干の不安に駆られるが、今しないと二度と触れられる気がしないので、不安は見ないフリして右手を伸ばす。


まずは軽く。

力を抜いて人差指を差し出し、触れるか触れないかの位置に移動させ、フェザータッチで前後させる。

が、ナツナツが焦れったくなり、『がばっ』と人差指を抱えるように身を寄せた。


「ぉぉ……」


「気にしすぎだって……」


そうかもしれない。


ナツナツの体は、しっかりとした体温と固さがあり、脆さは感じなかった。

右手を引くと、ナツナツは抵抗せず身を放してくれる。


『もうちょっと強くていい』というお墨付きも貰ったことだし、遠慮をひとつ外して人差指の腹で触ることにする。


頭、頬、首筋、肩、腕、お腹、腰、太腿。ちょっと戻ってみたり。

指に腕を回されるが、止める意思はないようなので、気にしないことにする。


次に親指を追加し、頭……はさすがにアレなので、腕を摘まんでぷにぷにぷに…………


おぉ……細いけどしっかりしてる……


そのまま肩に移動し、胸を前後で挟みつつ下に


「…………んっ……………………ふ…………はぁ…………」


「…………………………………………」


摘ままれていない方の手を口許に当て、何やら艶かしい声が漏らされる。


「…………………………………………」


「……っ!! …………ぁは……………………ゃう…………」


えr…………いや、何でもない。


これ以上はイケない扉が開いてしまいそうだ。やめておこう。

力を抜いて右手を引くと、


「や…………」


『もっと……』とでも言いたそうに親指に抱きつく。最初に触った時とは大違いだ。

しかも、


「あ…………」


自分のしたことに気付いて真っ赤になりながらも、しかし 離そうとしなかった。


「…………………………………………」


「…………………………………………」


不味い。何が不味いか分からないけど、とにかく不味い。

回転の鈍い頭で焦燥感に駆られていると、


「あ」



▽光魔法マスタリーのレベルが上がりました!!

▽光魔法:スキャンを取得しました!!

▽闇魔法マスタリーのレベルが上がりました!!

▽闇魔法:ディスガイスを取得しました!!

▽ステータスを確認してください。



「「うひゃい!!!?」」


ナツナツが何かを口にしようとした瞬間、システムボイスが響いてスキル取得を告げた。


そして、一気に回りだす脳ミソ。貴様ら仕事しろ。

先程までの妙な空気を思い出し、真っ赤になって顔を扇ぐ。


「ぎ、偽装魔法は、闇魔法だったみたいだね!!」


「そ、そうね!! さっすがわたし~!?」


「イエーイ!!」


「イェーイ!!」


私が右の掌を近付けると、ナツナツは両手で『パチン!!』と叩いて、疑似ハイタッチの完成です。


「…………………………………………」


「…………………………………………」


「…………………………………………効果を確認しようか」


「そうだね~」


そのまま固まってしまうと、どうしようもなくなってしまうので、誤魔化すように効果の確認を提案する。

ナツナツは、先程のように私のステータスを投影した。



特殊スキル

・光魔法マスタリー Lv.1 → 2

・闇魔法マスタリー Lv.1 → 2


取得スキル

・スキャン:対象のステータス等の情報を収集する。

・ディスガイス:分析魔法で収集される情報を偽装する。



期待通りのスキルが得られたようだ。

なんで照明のON-OFFで得られるか分からないが。


「あ、それはね。『こういうスキルが欲しいな~』って思いながら そのマスタリーの補助を受けていると、希望に近いスキルの取得度みたいなのが上がっていって取得出来るんだよ~。

今回は『分析系の……』くらいしか考えてなかったから、《スキャン》と《ディスガイス》なのね。

多分、単純に『灯りを……』とか考えてたら、《ライト》とか《フラッシュ》みたいなスキルを取得してたと思う~」


「なるほど。『簡単な順に覚える』とか『動作の結果が似た魔法を覚える』とかで、自動的に取得するわけじゃないんだね。ちゃんと自分で取得しようとしないとダメなんだ」


「そだよ~」


「……………………ところで、声に出てましたか?」


「一蓮托生、以心伝心。まぁ、『伝えよう』とか『聞こう』とか思ってないと届かないし、『聞こえないように』とか思ってれば届かないけどね~」


「そっか」


…………………………………………


「なんか 失礼なことを思っちゃったらごめん……」


「おいこら」


いつも通り (と言ってもまだ、会ってから数時間(!!)だけど) の雰囲気に戻って一安心しながら、おしゃべりを楽しむのだった。


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