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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
3章 探索!!天人の遺跡
39/264

第35話 ゴーレム娘、チコリちゃんと待ち合わせ

33 ~ 57話を連投中。


3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

チコリちゃんとの待ち合わせ場所に行くと、すでに待っていてくれた。

手を振りながら近付く。


「ごめん。待った?」


「うん。待った」


……………………創作物語のようにはいかないらしい。


「それは申し訳ない…………んだけど、約束の時間の五分前よね?」


「私は一時間前から待ってた」


「……………………次の時は四時間前に来るようにするよ」


「なら、私は五時間前に来るね」


「忘れんなよ?」


「……………………やられた!?」


チコリちゃんの、五時間の待ち惚けが、決定しました。


絵に描いたように愕然とするチコリちゃんの頬を突っつき正気を取り戻させると、


「こっそり隠れて確認するから」


「そんなことするなら、声かけてよ!?」


「それじゃ面白くないじゃない」


改めて絶望に叩き落とす。……………………冗談ですよ?


地面に膝をついて打ちひしがれるチコリちゃんの前にお菓子をぶら下げてやると、水面から魚が飛び付くように食い付いて復帰した。


「おいひぃ……」


「ほら、早く行くわよ」


「ふぁぃ」


勢い余って食い付かれた指を擦り催促すると、口をモゴモゴさせながら動き出す。

目指すは職人街だ。

移動中に今朝 疑問に思ったことを聞く。


「ねぇ、チコリちゃん」


「なぁに?ルーシーちゃん」


「チコリちゃん()の工房は…………儲かってないの?」


「…………怒っていい?」


「そしたら別の工房に行く」


「理不尽!!!!」


オブラートに包もうかと思ったけど、いい表現が見付からなかったので、ストレートに聞いた。

そしたら怒られそうになったので、マウントを取って押さえ込む。

代わりにもうひとつお菓子を放り込んで機嫌を取っておくことは忘れない。チョロい……


再びモゴモゴと沈黙したチコリちゃんが、反論出来ない内に説明を続ける。


「いやね。聞くところによると、チコリちゃんとこの工房って低ランク専門らしいじゃん?私のベーシック・ドラゴンの加工が限界で、普通なら他の工房を勧められるって」


「…………………………………………」


「その割には必死にプレゼンしてたからさ~。後に続かない単発の仕事だろうと、形振(なりふ)り構わず貰わないとやってけないくらい厳しいのかと思って」


「…………………………………………」


「聞いてる?」


「……………………このクッキー美味しいね」


「あ、この工房、高ランク対応可かぁ~」


「ごめんなさい!!聞いてました!!聞いてましたからそっち行かないで~~~~!!!!」


わざとらしく向きを変えると、慌てて腰に抱きついてきた。


「はよ説明。はよはよ」


「うぅ……分かりました……まぁ、元々説明しなくちゃならなかったんだけど……」


「うん」


「ルーシーちゃんの言った通り、うちの工房は低ランク専門なの。でも、安心して。そこそこ儲かってるから、経営の方は問題ないよ」


「ふむ」


なら、問題はチコリちゃんにあるのかな?

だって工房自体は低ランク専門でやっていて問題は起きていないのだから。


「私もね。いずれ立派な鍛冶師になりたいと思ってるんだけど、ちょっとお父さんとは方針が違ってて」


「うん」


「低ランクの武器だけじゃなくて、高ランクの武器も造りたいと思ってるんだ~」


「なるほど」


「あ、もちろん、お父さんたちの仕事をバカにしてる訳じゃないよ?お客様にとって命を預ける大切な武器に、一切の妥協を許さない、立派な鍛冶師だもん。

でもね、やっぱり費用とか強度とか、技術じゃどうしようもない部分で理想通りに出来ないことも多いの。

それが、悔しくて……」


そう言うチコリちゃんの顔は、小さいながらもプロの貫禄を漂わせている、気がした。


「だから高ランク?」


「うん。安直って思われるかもだけど、例えば高ランクの素材を一部使うことで、低ランクの武器もさらに強化出来るんじゃないかって。それなら低ランク冒険者でも手が出せるんじゃないかな」


「今はそういうことしてないの?」


「うん。基本的に同じ素材で造るのが普通だから」


「ふーん」


誰か思い付きそうなものだけど……


「だからね。ルーシーちゃんがドラゴンを倒したって聞いて、思わずお願いしちゃったの。それが私の扱える限界だから、そこから一緒に成長していきたいなって思って」


「チコリちゃん、ベーシック・ドラゴンの素材を使ったことあるの?」


「あるよ。Cランクの依頼で、ふた山向こうの討伐依頼が出ることがあるから。ベイル山にまで近付いて来るのはこの時期だけだけど」


「なるほどね」


大体分かった。理由は工房じゃなくて、チコリちゃんの夢なんだね。

ただ……


「問題がふたつあるね」


「う…………」


「ひとつ。設備が必要だよね?」


「それは鍛冶師ギルドで借りる。……………………お金が余分にかかるけど」


「私に?」


「せ、折半でどうか……」


それは他の人に頼めないよなぁ~……冒険者はみんな安くあげたいんだから。


「ふたつ。お父さんに了承もらった?」


「あの……条件付きで……」


「なんて?」


「今までした説明をして、ルーシーちゃんの了解をもらう……」


当然過ぎる……


ただまぁ、お父さんも頭から否定している訳ではなくて、『やるなら筋を通せ』って感じみたいだし、問題はないかな。

そう思っていると、チコリちゃんが頭を下げる。


「お願いします!!必ず期待に応えるから、私にチャンスをください!!」


「…………いくつか条件があります」


「はい」


チコリちゃんから硬い声が返る。が、それはどんな条件でも呑もうという覚悟の声だったと思う。

頭を上げさせ条件を言う。


「まずは当然だけど、チコリちゃんの技術が、私の持ってくる素材の加工に追い付けなくなったら、別の工房を紹介してもらいます」


「は、はい」


「なお、基準は私です。正当に評価はするけど、無謀ではない要望に応えられなかったら負けってことで」


「うぅ……が、頑張ります……」


別に『紙みたいに薄いが頑丈に』とか、現実的に不可能なことは言いませんよ?


「次は私の専属になること」


「専属?他の冒険者の仕事を受けるなってこと?」


「そこまで言わないけど、例えば領主からの依頼が来てても、私の仕事を優先させる、くらいは欲しいかな~」


「ルーシーちゃん、大物過ぎる……『様』をつけようよ……」


「ダメ?」


「…………まぁ、いいよ。私にそんな依頼が来ることなんてないだろうし、それに来たとしてもタイミング良くバッティングしないでしょ」


「それは回答になっていないでしょ~~」


ぷにぷに。


「ほっぺたつつかないで。分かったよ。もし、領主様の仕事とバッティングしても、ルーシーちゃんの依頼を優先するよ」


「よろしい。あ、でもその時はちゃんと相談してね」


「不安になってフォロー入れるなら、条件に加えないでください……」


バレてる……


「こほん……あと、もしかしたら武器以外も頼むかも」


「防具?さすがにそれは本職に頼んだ方が安心じゃない?」


「違う違う。生活で使う小物とか魔道具の素材とか」


「……………………私、武器職人だよ?細工師じゃないよ?」


「分かってるわよ。別にこれは技術が追い付かなくてもいいから」


「まぁ、それなら別にいいけど……」


魔石は《どこでも錬金》で自作できるけど、魔石を取り付ける本体は造れないからね。

錬金工房や細工工房で造ってもらうと高いし。


「最後にアレね。色々と問題に直面したら相談すること」


「え?でも……」


「『一緒に』成長していきたいんでしょ?素材とか発想とか、何か役に立つかもしれないしね。勝手に自滅しないでねってこと」


「…………うん。ありがとう」


ちょっと涙目になってお礼を言われた。もしかしたら、他の冒険者にも頼んで断られていたのかもしれない。それで自分でも冒険者ギルドに登録した、とか?


…………考えすぎかな?お小遣い稼ぎに冒険者登録することは多いし。


というわけで専属鍛冶師を手に入れました。チャッチャチャー♪


『専属鍛冶師とか、どこの貴族様だ……』


『これ…………相手の弱味につけ込んでないよね?』


『…………それはこれからの無茶振り次第、だな』


シツレイナ……





その後、チコリちゃんとこの工房で、改めて契約を交わす。


チコリちゃんのお父さんから再度説明を受け、私からの要望も伝えた。

領主云々のところは、チコリ父にも失笑されたが了承された。理由は、『もし領主様から依頼が来たとしても、半人前の娘に仕事は任せんよ』だった。


おっしゃる通りです……


契約が終わったら、ベーシック・ドラゴンの素材を渡して、重大剣、剣、グローブ、ロングボウの作成を依頼する。

さすがに時間が掛かるとのことで、後で受け取ることになった。当たり前でしたね。


ただそれまでは現状の武器では不安なので、ここで販売している物の内、最上位の重大剣を購入させてもらった。

とはいっても、今持ってる物のふたつ上くらいの武器らしいけど。

一応ベーシック・ドラゴン位なら刃が通るとのこと。

しばらくガアンの森で依頼をこなすつもりだから、またベーシック・ドラゴンと戦うことなんてないだろうけど、刃が通らなかったのが若干トラウマなんです。

元々持ってたのは下取りに出した。


「そんな装備で大丈夫だったのか?」


「ダメでした。ちょー問題ありました」


チコリ父に当然の返答をした。『大丈夫だ。問題ない』とか言うと思うてか。

チコリちゃんのお友達価格で購入させてもらったので、思ったよりは金額はかからなかった。思ったよりは。


ちなみに契約を交わす際に、ギルドカードを開示したところ……


「え゛!?ルーシーちゃん年上!?」


「え゛!?チコリちゃんドワーフ!?」


「…………お前らホントに友達か…………?」


いや、初対面で種族なんて確認しないでしょ……?


言われてみれば、チコリ父は私よりちょっと大きい位の、どっしり小柄体型だったから、気付きようはあった。


……………………一応、グランディア家のみんなの種族は確認しておこうと思った。


『ちっちゃいけど成人』設定を敢えて利用しないスタイル。

…………ウソです。ホントは鍛冶師にするつもりはなかっただけです。

ちなみに鍛冶師は『金属を鍛錬する者』全般を指し、チコリちゃんはその内の『武器職人』です。


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