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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
3章 探索!!天人の遺跡
38/264

第34話 ゴーレム娘、今日の予定は武器工房

33 ~ 57話を連投中。


3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

クックドゥルドゥルドゥゥゥゥゥ……


「……………………なんの音だ……」


『鶏では』


「私の知ってる鶏は、あんなに(よど)んだ鳴き声はせん……」


「『コケコッコー』なんて鳴く鶏は幻想だよ~……」


「そんな幻想はぶっ潰す……」


『やめんか。可哀想だろ』


どこからともなく聞こえてきた謎声に目を覚ました。あれが鶏だなどとご冗談を……


『むぅ……』


「…………今日は鶏料理が食べたいな……」


待て。アレはシメた時の断末魔じゃないでしょうね?


クックドゥゥゥゥゥ……


良かった。生きてる。


寝起き早々によく分からない心配をしてしまったが、気分を切り替え起き上がる。

ベランダに面した大きな窓からは、朝日がサンサンと射し込んでいてとても明るかった。

私は寒くない限りはカーテンを閉めない派なので、日の出の少し後に目覚めますことが多い。


ここはグランディア家に用意してもらった私室だ。

元々来客用として用意されていた部屋を、私のために空けてくれた。感謝です。

広さはセレスの部屋の半分くらい。ただ、物がほとんど置かれていないので、同じくらいの広さに感じる。

この部屋で最も大きい私物は、ナツナツのドールハウスであろう。


シャルドさん謹製のドールハウス。こう言ってはなんですが、かなり大きい。高さは私の胸くらいある。

さらに内部を魔法で拡張しているので、体感的にはこの屋敷より大きいかもしれない。

まぁ、ナツナツにしか知りようはないのだが。


「二人とも。おはよう」


『おはよう』


「おは~……」


二人に挨拶しながら、ベッドを下りる。ナツナツも目を擦りながら、ドールハウスから出てきた。


うん。玄関扉があるのだから、そちらから出ましょうね。


私は真っ直ぐにクローゼットに……向かわない。服はすべて[アイテムボックス]内にある。

セレスにもらったネグリジェを脱いで、戦闘服に着替えた。


色々と快適過ぎてこの服ばっかり着ている……


女子力が瀕死だ。あ、予備はあるから、洗濯はしてるよ?毎日。


「きょ~は~……何するんだっけ~……?」


「チコリちゃんとこに行くよ」


「りよ~か~い……」


『ナツナツは朝が弱いな。逆にルーシアナは強すぎないか?』


寝坊助女子(ねぼすけじょし)がお好みで?」


『ノーコメント。だがナビゲーターとしては、少しだらしないくらいの方が、サポートのし甲斐があるな』


「覚えておくよ。とりあえず今はナツナツが落ちないようにフォローして」


『ふふ。分かった』


肩の上でうつらうつらしているナツナツを任せて出口に向かう。

髪は整えないのかって?寝起きに払えば二秒でシャランよ。


『起こさないのか?』


「いいんじゃない?」


手に持ったネグリジェをベッドに放り投げる。

宙を舞ったそれは空気を孕んで広がり、ベッドの膨らみ(・・・)に合わせて重なった。


「毎回毎回どうやって入って来てるのか……」


『何故か普通に開けて入ってきたがなぁ……』


「ZZZzzz……」


そこには何故か私のベッドの半分を使って寝ているセレスの姿が……

とても幸せそうな顔をしている。

毎晩毎晩、私が寝た頃を見計らって忍び込んでくるのだ。


『男だったら犯罪だぞ……』


「ナビ…………不法侵入に男女の(べつ)はないよ……」


『そういう意味ではない』


「そっちにだって男女の別はない」


セレスは放って洗面室に向かった。(ギルド長には会いませんでした)





「おはようございます」


「あら、おはよう。今日も早いわね」


「タチアナさんには負けます」


「主婦ですもの」


カラカラと楽しそうに笑った。

そのままタチアナさんの隣に並び、朝食の準備を手伝う。最近の日常風景だ。

メインは任せて、サイドメニューを作っていく。


「いつも悪いわねぇ」


「いえ。お世話になっているのはこちらの方ですし、それにこういうのは続けていないと忘れますしね」


「ルーシアナちゃんの収納魔法だと、買溜めし放題だものね。ファストフードばっかりになって健康に悪そう……」


「それは懸念の(ひとつ)ですね」


まぁ、自炊したからといって健康的かどうかは怪しいところだけど。気を付けないと、朝から串焼きとかくらいは普通にありそうだ。

準備の中頃にギルド長がやってきて、『朝から妻と娘の手料理を食べられる、幸福。神に感謝する』と、窓から空に祈りを捧げていた。


いや、別にいいけど。実の娘はいいのか、ギルド長。


準備が終わる頃にセレスがやってきて、『妹がお姉ちゃんのためにと朝食を作ってくれる、奇跡。神よ、ありがとう』と、膝をついて(こうべ)を垂れた。


父娘だなって思った。


なお、この国に国教はない。一神教、多神教様々な宗教が存在するが、グランディア家は無難に自然信仰である。万物に神が宿る的な。

これといった教義や教典などもなく、教祖もいないので、宗教といっていいかは不明だが。だからというか、祈りの捧げ方もバラバラである。

まぁ、この二人の場合、その場のノリだろうが。


机に朝食を並べていると、セレスがすれ違い様にギュッと抱きついていく。ここまでいつもの流れなのだが、何がしたいのか。



「いただきます」×5


今日はギルド長の前にもしっかりとした朝食が並ぶ。

さすがにひと月も一緒に暮らしていれば、いい加減学ぶ…………こともなく、時々ギル裸長に遭遇する。

最近 遭遇しないのは、私がギルド長の行動パターンを学んだからだ。


「「うまい……感謝を……」」


ギルド長とセレスが示し合わせたように涙した。もういいよ……

今日の朝食のメインは、チキンサンドだった。甘辛いタレが美味しい。


「作り立てだね!!色んな意味で!!」


「ごっふ……」


ナツナツこら。


「そうよ。シメたて焼きたて挟みたてだからね!!」


「……………………ごちそうさま」


「「冗談冗談」」


最近この二人はツーカーで通じることがある。それをこんなところで発揮しないで欲しい……

ギルド長とセレスは気にせず食事を進めている。


「そういえば、今日はどうするの?」


「チコリちゃんとこに、武器作成の依頼」


「チコリちゃん?」


「ドラゴン討伐が終わった時、ルーシアナを泣きながら叱っていた子供がいただろう。あの娘だ」


さて、ここでひとつ、情報追加。

狩った魔獣は、様々な物に加工される。

武器、防具、魔道具なんかは言うに及ばず、家具やインテリア等 様々だが、冒険者にとって重要なのは、やはり最初の三点だ。

ちなみに魔道具というのは、術式が刻まれた魔石が取り付けられた道具の総称のことなので、厳密に言えば武器防具も大体これに該当するが、ここで言う魔道具とはそれ以外の補助用魔道具のことを指す。

それぞれ、武器=武器工房、防具=防具工房、魔道具=錬金工房 で作成される。シャルドさん?アレは大分特殊です。


チコリちゃんの家は武器工房らしく、ベーシック・ドラゴンを狩ったことを知ったチコリちゃんは『是非、我が工房へ……!!』と、商魂逞しくプレゼンを始めたのだった。


「あぁ、あの娘。武器工房の子だったの?」


「『武器工房 フィンメル・アルバ』。こう言っては悪いが、可もなく不可もなく、といった工房だな。腕は悪くないと思うが、主人が『そこそこの物を、そこそこの値段で提供する』ことを重視しているため、設備がよくない」


「あら、ジット。それはちょっと違うんじゃない?低ランクの武器加工に適した設備が充実しているのであって、中ランク以上の武器加工に適した設備をあえて用意していないんでしょう?」


「む。まぁ、その通りだ。設備は使わなくとも維持費が嵩む。つまり低ランクの武器加工を専門に行うことで、費用を抑え、工賃を安価にしているというわけだ」


「いや、必要な工房なのよ?そういうのは。低ランク冒険者は数が多い上に、予算も少ないんだから。他にも似たようなコンセプトの工房は多いでしょう。でも正直ベーシック・ドラゴンの素材が、取り扱える限界じゃない?」


「ベーシック・ドラゴンは、冒険者ランクで言えば、ギリギリBランクに届かないCランクといった難易度の魔獣だ。あそこの工房が扱える素材は、Cランクまでだろうからな」


「つまり何が言いたいかと言うと、今後の事を考えるなら低ランク専門の工房に頼むより、中ランク以上が対応可能な工房に今の内から頼んでおいた方がいいんじゃない?ってことなんだけど」


「というか、多分、別の工房を勧められるな」


「え~……」


チコリちゃんから勧められたんだけどなぁ……


『まだ子供だから、その辺が分かっていなかったのでは?』


『そうかな?なんか必死っぽかったんだけど……』


…………………………………………


『もしかして、経営が苦しい?』


『子供が気にしなきゃならないほど苦しいってどうなの……』


『体調や服装に違和(いわ)はなかったが……』


「もしかして、チコリちゃんとこの武器工房って、経営苦しい?」


聞いてみた。


「いきなり何の話だ」


あ、しまった。ナビとナツナツとは、普通に話していたから、ギルド長たちにも聞こえてると勘違いしてしまった。


「えっと、ですね。低ランク専門の工房なのに、チコリちゃんが妙に必死に誘ってたから、工房の経営が宜しくないのかと……」


「ふむ……確かにライバル工房は多いはずだがな……」


「でもどの冒険者だって早く整備を終えて欲しいはずだから、余程の問題でもなければ均等にバラけるはずだけど……少なくとも、私たちの時はそうだったでしょう?」


「あぁ」


「直接聞くしかないんじゃない?答えてくれるか分からないけど」


「まぁ、そりゃそうですよね……」


たくさんある武器工房の経営状態なんてギルドに伝わってる訳もないし、初対面の小娘にわざわざそんな立ち入ったことを話すとも思えない。

ご主人じゃなくて、チコリちゃんに聞こう。


「ごちそうさまでした。じゃあ、出掛けてきますね」


「お粗末様でした。ちゃんと歯を磨いていきなさいね」


「オカンかよ……」


「あら、私だって娘が二人も出来たようなものなのよ?ルーシアナちゃんとナツナツちゃん」


「あの…………お母様…………私のこと忘れてませんよね…………?」


「若返った気分だわ~」


「あ、週末は四人(・・)で領主に呼ばれてるからな。遠出するなよ」


「それ以前に日を跨ぐ依頼を受けたら一言連絡してね」


「分かりました~」


「しくしくしくしく……」


大丈夫だよ、セレス。

愛だよ、愛。


結論:執筆ペースは変わらなかった。

ただ長くなっただけでした。

思いつくまま書いたので、説明回というか冗長だなと思われる回が多いかもしれません。

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