第32話 ゴーレム娘 VS. ベーシック・ドラゴン②
24 ~ 33話を連投中。
2/24(日) 14:50 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:9話を4時間で投稿)
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「がああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
背後からベーシック・ドラゴンの怒号と不自然な足音が聞こえる。
片脚を千切り取ることは出来なかったが、使えなくすることには成功したようだ。及第点といったところ。
背後から迫るドラゴンは、ナビが《ロング・サーチ》で常に捉えてくれる。
お陰で、視界に入れずともドラゴンの位置も動きも大体 把握することができ、後ろを振り返って速度を落とす愚を犯さないで済むのはありがたい。
ガアンの森まであと少し、といったところで、幾度目かの方向転換を行う。
身を翻すとほぼ同時に、ドラゴンの巨躯が先程まで私が走っていた場所を蹂躙していった。
チラリと視界の端に視線を向けると、怒りで真っ赤に染まったドラゴンの瞳とカチ合う。…………同時に、冷静にこちらの戦力を推し量る理性の光も見えた。
それだけ確認してすぐに視線を切り、余計なことは考えずに森へと一直線に加速する。
少し遅れて、背後から『ドンッ』という大きな音と地を抉る震動。
突進を躱されたドラゴンが無事な左腕を思い切り地面に叩き付け、前へ進む力を左腕を軸とした回転運動に変換したのだ。
それは丸太のような重量感を備えた尾撃となって後方から迫る。
『隙間ーーーー!!』
『いけるよ~!!』
『《クリア・プレイト》。挟むぞ!!』
ナツナツが私の意図を読んで可否を判断し、ナビが必要な魔法を発動。
タイミングを合わせて頭から地面に飛び込み、魔法障壁に乗って草の上を滑走する。
ガッッン!!!!
背中側に展開した魔法障壁に尾撃がヒットした。
角度を調整した魔法障壁は、私の進行方向を歪ませることなく加速を追加し、ガアンの森へかっ飛ばしていく。
『立たせるよ~!!』
速度が落ちる直前で、ナツナツが地面に凹凸を作って正面側の魔法障壁を弾きあげ、体を宙へと浮かす。
砕けた魔法障壁を抜けて地面に着地、速度を殺さずに疾走へとシフトした。
結果だけ見れば、楽に距離を稼ぐことが出来たと言える。ナイス。
『楽じゃないぞ!? 結構ギリギリだからな!?』
『うーーーーわーーーー!!!! 知覚速度上げたいーーーー!!!!』
言ってなかったかもしれないが、二人の知覚速度は個別に向上させたりは出来ない。
あくまで私の《感覚調整》に乗っかってるだけだ。ナビゲーター故の裏技的なものだろう。
『そろそろ森だから我慢して!!』
障害物の多い森の中なら、もう少し余裕が出るはず。
視界の外では、尾撃を躱されたドラゴンが一回転してこちらに顔を向けて、再加速す
『ブレスじゃね?』
『見落とした!!!?』
大きく胸板が膨らんで、全身に力を入れているのが感じられる。
尻尾でこちらを薙ぎ払いつつ、回転している間に準備を整えたか。
『竜咆だ!! 物質化した、咆哮!!』
要するに大声。瞬時に知覚速度を上げる。
『《ロック・スパイク》!! ナビ、共鳴』
『竜咆の振動数を予測計算………………完了。ナツナツと共有』
『おっけ。砕けよ~』
やることやって知覚速度を戻す。
体感的には10秒くらい。実際には1秒も掛かっていないだろう。このくらいなら疲労はないな。
数を優先した石杭が竜咆の軌道を遮るように乱立する。
ドラゴンは構わず竜咆を吐いた。
まぁ、当然だろう。
竜咆はドラゴンの吐くブレスの中では最低レベルの威力しかないが、あの程度の石杭など簡単に破壊できる威力はあるし、ベースは音なので石杭と石杭の隙間を抜けて飛んでくる。
…………通常は。
竜咆が当たるより早く、石杭は無数の小石片に分割した。
その小石片の形状は不自然に整っているが、それ以外に特徴はない。
ヴィヴィヴィヴィヴィ!!!!!!!!
が、竜咆が小石片の舞う場に達すると同時、無数の小石片が高速で振動して、不協和音と共に砂へと変わる。それに呼応するように竜咆も。
竜咆の本質は音であり、周波数を持つ。
その周波数の逆数である振動数と同じ固有振動数を持つ小石片が竜咆と共鳴、エネルギーを吸い上げる。
さらに、個々の小石片が乱雑に共鳴振動を発振。
エネルギーを奪われ弱体化した竜咆は、内外から共鳴振動を叩き付けられ、形を維持できずに内破した。
こちらに届くのは、微かな竜咆の名残とドラゴンの怒気のみ。
気にせずガアンの森へ突っ込む。
暴力的な気配を全く隠すことなく、三本の足を駆ってベーシック・ドラゴンが追撃した。
『ナビ!!』
『足場を固める』
ガアンの森に飛び込んで、数十分。
そこそこ森の奥深いところで見つけた広場にて、ベーシック・ドラゴンを翻弄していた。
広場といっても、このドラゴン一体でぎゅうぎゅう詰めな印象に変わる程度の広さしかないので、ドラゴンの動きを封じて攻めるにはとても都合がいい。
そろそろフェルー草原辺りに、ギルド長やセレスが到着した頃かな……
『ナツナツ!!』
『【マッド・ホール】』
ナツナツの妖精魔法により、ドラゴンの左腕が地面に沈んでいく。
姿勢を崩したドラゴンの首筋目掛けて、水を纏わせた重大剣を叩き付ける。
「っっっっの!!!!」
ビシャタアアアアン!!
やっぱりゴムを叩いたような音がして、重大剣と纏った水が弾かれてしまった。
そして、間髪入れずに飛んでくるドラゴンの反撃。
ブオオオオン!!!!
攻撃の反動が体に届く前に武器から手を離し、飛び込んだ勢いを殺さずにドラゴンとすれ違うことに成功…………が、それは紙一重と言っていい程度にはギリギリのすれ違い。
さらに良くないことに、ドラゴンも私の攻撃に慣れてきているのか、攻撃を受けてから反撃してくるまでの時間が短く、そして狙いも正確になってきている。
回避に失敗するのも時間の問題だ。
重低の風切音に冷や汗を流しながら、すれ違った勢いのまま草叢に突っ込んで身を隠す。
手離した重大剣は、《異空間干渉》の射程範囲にあるうちに[アイテムボックス]へ収納したので、武器を失ってはいないのだが……あまり意味がないな。
先程からヒット&アウェイ戦法で、防御力の弱そうな所を狙って攻撃を繰り返しているのだが、まともにダメージが入るところがない。
どうするべきか……
パッと思い付くのは、危険を覚悟で逆鱗を狙うか、武神『狂防孤高』の圧倒的暴力で叩き潰すか。
私は別に、ギリギリの闘いを楽しむ戦闘狂でも、公平な条件での戦闘にこだわる高潔な騎士でもないので、出来れば後者を選びたいところ。
というか、特に相談したわけでもないけど、そもそもガアンの森に戦場を移した理由は、木々でドラゴンの動きを阻害することではなくて、他人の目の無いところで武神を呼び出すことにあったのだけど……
『すまん。本当に申し訳ない……』
『いや、私もうっかりしてたから……』
『いやぁ~……まさか三人もいて、全員が全員 同じ勘違いをしているとはねぇ~……』
ナビが心底申し訳なさそうに謝るが、非は私たち全員にある。
この場所は、身の丈3m程のドラゴンが その動きに支障をきたす程に狭い森の中である。
そして、覚えているか分からないけれど、『狂防孤高』の身長は約10mもある。
……………………ドラゴン以上に動けるわけがなかった。
別に動けないからといって簡単に負けるほど防御が弱いわけではないが、武神を見たドラゴンは逃げる。多分、街の方に。
あの傷を少しでも早く治すには、肉が必要だ。
狩りの成果の鹿肉が山となっていたのは覚えているだろう。街を襲うつもりはなくとも、それを狙って舞い戻る可能性が高い。
今、街がどういう状況かは分からないが、せっかくガアンの森に引き込んだのにそれでは意味が薄い。
というわけで、急遽作戦を変更して『狂防孤高』なしで倒しきらなくてはならなくなったのだ。
『どうにかして動きを止めないと……』
当たりさえすれば、倒せる算段はある。
問題は、『余程大きな隙でも無ければ、そうそうに当たるものではない』ということと、『まだ一度も試したことのない手段を使う』つまり『ぶっつけ本番』ということなのだけど。
『やっぱりダメだぁ~。泥だけじゃ体勢を崩すので精一杯』
ドラゴンの左腕は肘くらいまでしか泥の中に埋もれず、動きを止めるまでには至らなかった。
沈んだ直後に腕ごと泥を固められれば、もしかするかもだけど……手が足りないな。固まった泥程度じゃ、そんなに強度もないし。
草叢から木の裏へ移動しドラゴンの様子を窺ってみれば、あちらもあちらで頭を高く伸ばした高々度から森に隠れた私の出方を窺っている。
…………いや、誘っているのか。
今の私の攻撃力で自分にダメージが入る可能性がある場所は、首元の逆鱗しかないと分かっているのだ。
ここに来て右腕を千切れなかったのが悔やまれる。
あれが千切れていれば、正面から行くにしても幾分安全だったろうし、逆鱗以外にも肩口から心臓を狙うという選択肢も有り得たのだが。
『『えぐい……』』
『お黙り』
……………………それでもやはり、正面から行くしかないか。
武神を展開できない以上、逆鱗を狙う他ない。
そして、拘束もできないなら、速度で翻弄するしかないだろう。
幸い、近距離戦での小回りなら、こちらに利はある…………はず。
覚悟を決めて木の陰から
『!?』
『ルーシアナ!!』
『まず』
ナビが瞬時に知覚速度を限界まで上げる。だが、多分 遅かった。
ドラゴンを捕捉し続けていた《ロング・サーチ》が、竜咆の予兆を察知している。
それも、前準備の深く息を吸い込む予兆ではなく、竜咆を吐く直前の予兆だ。
竜咆は、諸々の前提をひっくり返すだけの力を有するジョーカーだ。
事前に察知できればこちらに有利に働くが、できなければ盤上ごとこちらを叩き潰しかねない。
だからこそ、ドラゴンの呼吸には特に注意を払っていた。なのに、何故!?
『竜咆ではない!! 竜砲……魔力砲だ!!』
『このタイミングでスキルレベルが上がったの!?』
不味い…………
何が不味いって、ここで何か対策を思い付いても、猶予が数秒しかないことだ。
まず、魔法は無理。間に合わない。
スキルや妖精魔法なら間に合うが、竜砲は大雑把に言えば無属性の魔力を叩き付けているだけだから、物理的な性質を持っていないのだ。
竜咆に対する《ロック・スパイク》の共鳴振動のように、性質を利用した防御は出来ない。
竜砲に対する効果的な防御は頑丈な壁を作ることだが、予想される竜砲の威力を防げる強度の壁を作れるスキルは、まだ取得していない。
妖精魔法も、それだけの強度の壁を瞬時に作り出すことは不可能。
今、ナビが知覚速度を引き上げて稼いだ猶予を使って、スキルと妖精魔法の組み合わせることで、竜砲を最大限軽減できる方法を探しているが、私の勘だと多分 無理。
個別に発動して、全力で魔力を込めた方がマシだろう。なお、当然ながら、この方法では竜砲は防げない。
『狂防孤高』を使う? それとも、ダメージ覚悟で防御する?
…………どうする!?
そして。
木の陰に隠れる弱き存在を見下す高々度から、全身を前へ前へと押し出すように前傾したベーシック・ドラゴンは、口腔から尾までを一直線に伸ばし、その爪で大地を抉り締めると、憤怒の朱に染まった竜砲を煌々と吐き出した。
それは、ベーシック・ドラゴンの巨躯からすれば細過ぎる直線であったが、細く集束させられた魔力砲はただの竜砲ではあり得ない威力を発揮し、ルーシアナの隠れる大木を容易く貫いた。
…………そして、終わらない。
無事な左腕を軸として、左から右へとその身が回る。
竜砲の威力に押されるように、ゆっくりとした動きでベーシック・ドラゴンを中心とした扇状に木々を薙いでいく。
竜砲が消えるまで、数十秒。
それだけでガアンの森が、数十mに渡って破壊され尽くした。
ド……ドドドドドドドドドド…………
その太く長大な幹を根底から抉りとられた大木達が、周りの枝葉を巻き込みながら、次々と大地に身を横たえていく。
全ての崩壊が終わった時、その破壊の痕に無事な者は、ただの一人も存在していなかった。
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
静かに身を大地に伏せ、己の齎した結果を冷静に分析していたベーシック・ドラゴンが、ようやく身動ぎした。
さすがのドラゴンと言えども、得たばかりの力を全力で行使するのは体に堪えるのかもしれない。
体を気遣うように、ゆっくりと身を起こ
ガ!!!! ン!!!!
宙に浮き始めていた頭が、上からの重量撃に再度 大地に押し付けられる。
睨め付けるような視線で己を押さえ付ける愚か者を見上げたベーシック・ドラゴンは、そこに真の愚か者の存在を見付けた。
己を押し潰すのは、白銀の金属光沢に輝く長大な円柱。
焦点が合わないため全長は推し測れなかったが、己の体高よりも遥かに高い。
その中程に、彼の長い寿命を費やしたとしても忘れられないであろう匂いがあった。
…………ルーシアナだ。
『まだ足掻くのか』と、怒りのままに頭を跳ね上げ、身動きの取れない空中でトドメを刺すべく力を入れる。
…………が。
「パイルバンカー」
小さく硬い声が聞こえた。
直後、その円柱から無数の爆音が連打されるとほぼ同時に、押し当てられた頭頂に経験したこともない衝撃が貫通する。
ベーシック・ドラゴンは、その正体も導かれた結果も分からぬまま、その意識を霧散させた。
『背部結合部、解除。高温高圧ガスをパージ』
『ルーシアナの周囲に断熱層を展開中~。保護を継続~』
ナビとナツナツがよく分からん作業をしているが、私としてはまず、心を落ち着かせるのが第一だった。
ベーシック・ドラゴンの竜砲に対し私が採った選択は、まず下半身部のパージだった。
私の体は大雑把に、『頭部』『身体部』『両腕部』『両脚部』の6つに分割出来るが、実はもうちょっと細かく分割することや範囲を変えて分割することも出来ることが、ここひと月の検討で判明している。
で、『身体部の腰から下』+『両脚部』、つまり下半身をパージして取り替えたのが、『アラクネ型下半身部パーツ』だ。
アラクネ。
蜘蛛の下半身に人間の上半身を持つ魔獣。ホントにいるかは知らん。
これを模したパーツの特長は、無数の蜘蛛脚を使った高速移動。それは、木の幹などの垂直移動も容易に熟すほどの物である。
下半身をこのパーツに換装すると同時に、その場で垂直跳び。上半身を地面に水平に倒すと、そのまま大木の頂点に向かって駆け登った。
途中で大木が倒れ始めたため焦ったが、倒れゆく大木から跳躍を数度。
そして、ドラゴンの上空でハーフコートを脱ぎ払うと、今度は両腕部をパージした。
今度はこれ。『パイルバンカー型両腕部パーツ』。
オルハシウムで出来た白銀に輝く『形状だけ』は普通の右腕に、3m程の砲が滑らかに生えている。
左腕も似たようなものだが、こちらは同じ長さの砲の端に1m程のオルハシウム製の杭が収められているのと、砲身のあちこちに無数の爆発術式が組み込まれている。
この両腕を左右に大きく広げると、私の背後ひとつの砲塔として組み上がるようになっていて、その状態で左腕内の爆発術式を発動させると、収めた杭を高速で打ち出すことができる。
私は、落下の勢いと共に右砲身をドラゴンの頭に叩き付けると同時に、カウンターのように振り上げた左砲身を背後で接続。直ちに爆発術式を連続発動させると、音速超過で杭を打ち出した。
その攻撃は、結果として硬く堅いドラゴンの頭蓋骨すら容易く貫き、その脳を破壊したのであった。
これが、『そうそう当たるものではない』『ぶっつけ本番』の算段だった。
初めて使用する、それも人型ではないパーツをちゃんと使えるか不安だったが、思っていた以上に自分の手足として使えた。
これは、武神の展開と同様の機能なのだろう。一度『ある』と認識してしまえば、当然のように操作できるようだ。
それ以外にも、この戦闘中に取得した《姿勢制御》の効果も大きいと思われる。
ただ……
こわ~~…………私、こわ~~…………
ちょっと、いや、かなりビビった。
使用できる場面はかなり限られるが、武神を使わなくても、ここまでの破壊力を発揮できるとは…………
『とはいっても、現状保管されているパーツの中で、通常型義体で使える攻撃用パーツはこれだけだが』
『他のパーツが欲しければ、レシピはあるから《どこでも錬金》で作れるよ~。改造も出来るし~。…………素材さえあれば』
『それが難しいのでは?』
少なくともオルハシウムが必要で、オルハシウムの原料はオリハルコンだよね?
そう簡単に手に入る金属ではないと思うんだけど。
…………………………………………とりあえず。
『私をどうしたいのさ おじいちゃ~~~~~~~~ん!!!!』
『『生きてて欲しいだけだよ』』
新機能を発見する度に人外化が進むのは仕様ですかそうですか。
カルマ値貯まってバッドエンドにいきませんか大丈夫ですか。




