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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
2章 激震!!狩りまくりイベント
32/264

第29話 ゴーレム娘とベーシック・ドラゴン

24 ~ 33話を連投中。


2/24(日) 14:50 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:9話を4時間で投稿)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「はぁっ!! はぁっ!! ……くそっ!! なんでっ!! こんな目に!!」


ドラゴンに追われる冒険者パーティ。そのリーダーであるバーカスは、全力で逃走しながらも悪態を吐いていた。


「シャハル!! テメェ!! なんとかしやがれ!!」


だが、怒鳴りつけられたシャハルは、バーカスの声に欠片の反応も見せず、真っ直ぐに西門目指して逃走を続けている。


「くそっ!! なんで!! ドラゴンがっ!! あんな場所に!! いやがるんだよ!!!!」


ここに至るまでの流れをざっと説明しよう。

追立役を自分勝手な理由で放棄して、ベイル山に足を踏み入れた四人。

少し進んだところで、ある魔獣を発見する。


「あ!! あれ『ピンククローバー・ラビット』じゃない!!」


「なに!? マジか、やったぜ!!」


「フッ。やはり、この選択は正しかったようだな」


「これだけで、あんな仕事のキャンセル料以上のリターンがあるよ」


『ピンククローバー・ラビット』は、真っ白な毛皮に、アクセントのようなピンク色のクローバー形の模様が現れる魔獣である。

その毛皮は貴族にも人気が高く、高値で取り引きされる。

戦闘力は皆無に等しく、純粋に珍しいだけのレア魔獣だ。


四人は、下卑た笑みを浮かべて憐れな魔獣の周囲を囲んだ。


「おい。早く捕まえろ」


「アーカスが良いわね。土魔法で囲えば楽勝でしょう」


「へへへ……任せてよ」


魔法が発動して、素早くピンククローバー・ラビットの周囲を土で囲う。

そして、全員で近寄ると、腕が入る分だけ穴を開け、乱暴に耳を掴んで引き抜いた。


「へへ。やっ」


ズドオオォォンンン……!!!!


「あ?」

「え?」

「!!!!」

「へ?」


ピンククローバー・ラビットを掲げた瞬間。

アーカスの背後に轟音と共に現れたのは、3m程の高さから獲物を見下ろすベーシック・ドラゴンだった。


ピンククローバー・ラビット。

この魔獣は単体では大した戦闘力はなく、簡単に狩れる獲物でしかない。

だが、知性の高い魔獣は、この魔獣が人間や他の肉食魔獣に対する良い囮になることを知っている。

ゆえに、この魔獣を見つけた場合は念入りに周囲を確認し、他の魔獣の罠ではないことを確認する必要があるのだ。


普通の冒険者であれば、ピンククローバー・ラビットの情報を入手した際に、同時にこのことも注意喚起される。

だが、この四人に情報を与えたのは、闇市で知り合った闇商人だった。

闇商人とは、商業資格を持っていないモグリの商人の総称である。中には、本物の商人並みにしっかりしている者もいるが、類は友を呼ぶのか、その闇商人は正しく悪徳商人であった。

四人との取引で少々良いようにしてやられた悪徳商人が、意趣返しのつもりで半端な情報を与えたのである。

『危険な情報を与えることで尻込みする可能性』を考慮したとも言えるが、『高値で買い取らされた分、痛い目に遭いやがれ』という期待とも言えない期待を込めて蒔いた、悪意の種とも言える。


その種は今、様々な偶然の結果として、アーカスの背後で大きく花開いていた。



最も素早く動いたのは、弓使いのシャハルだった。

弓は用いず、腕を振る動きに合わせて隠しナイフを取り出すと、素早く投擲する。…………アーカスの右足に。


このままでは死ぬと察したシャハルは、冷徹にアーカスを切り捨て、囮にしたのだ。


「ぎゃああああああああ!!!!」


兎から手を離して、その場に転がるアーカス。

拘束から逃れた兎は、脱兎の言葉通りに素早く姿を(くら)ました。


シャハルはそれらを見ることもなく踵を返すと、全力で走り始める。

続いて、バーカス、モネスと続く。誰もアーカスなどに見向きもしなかった。

そして、憐れにも囮とされたアーカスは……


「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」


断末魔の悲鳴をあげてベーシック・ドラゴンの腹の中に収まった。


…………それだけで終わるはずもない。


「ガアアアアアアアアァァァァ!!!!」

「きゃああああああああああああぁぁぁぁ!!!!」

「うわああああああああああああぁぁぁぁ!!!!」


そして、恐怖の鬼ごっこが始まった。





その後、ガアンの森の中程で(つまづ)いたモネスが喰われ、そろそろバーカスが喰われるというところで、二人はガアンの森を飛び出した。

目的は当然、イベント参加中の冒険者を囮として、自分たちが助かるためである。


だが、前に出ていた攻撃役は皆、ルーシアナの指示を聞いてゆっくりとではあるが移動を開始しており、なにより心構えがあったことで、ベーシック・ドラゴンが現れた瞬間、全力で逃走に移ることができた。

ゆえに、バーカスたちとの距離は、なかなか縮まることがなかった。


「くそっ!! くそっ!! くそおおおおっ!!」


このままでは自分が喰われる。森の中とは違い、ドラゴンの加速を妨げるものなど何もないのだ。みるみる音が近付いてくる。


だが、どうすることも出来るはずもなく、無意味に背後を確認して速度を落としてしまう。

見えた視界の中では、ドラゴンが首を縮めているところだった。

何をするつもりなのか。それに考えが至る前に


「ゴア……………………!!!!」


縮んだ首がグンッと瞬発し、己と前を走っていたシャハルをその口内に取り込んだ。


「ぐあ…………!!」

「ひぃっ……!!」


そして


「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」」


バーカスたち四人は自身の命をもって、ベーシック・ドラゴンを狩りまくりイベント(ドラゴン視点)に案内すると、その生涯を閉じた。





迷っている間に追われていた二人が喰われ、聞くに堪えない悲鳴をあげた。

ドラゴンは、一先ず足を止めて咀嚼しているが、その目は次の獲物を探しているようにしか見えない。


『私のせい……? 【バッドラック】なんて使ったから……』


呆然とした様子で呟くナツナツの声を聞いて、覚悟を決めた。


【バッドラック】だけであんなことが起こるわけもない。多分、あの連中が余計なことを仕出かしただけだろう。

ただ、このまま他の冒険者に犠牲者が出たら、多分 ナツナツは後悔して自分を責める。

そんなことはさせられない。


『ナビ。ナツナツ。やるよ』


『御意』


『えっ? に、逃げようよ……?』


困惑するナツナツに、先程の理由を説明したところで賛同はしないだろう。

だから、代わりの理由を取って付ける。


『ナツナツ、見て』


『?』


避難の指示を出すギルド員を示す。


『彼等はドラゴンが来たら、多分 真っ先に前に出る。そして、最後まで残る』


『うん……』


『この一ヶ月、お世話になった人達も多いでしょう? 私、彼等を残して逃げるつもりはないよ?』


『……………………』


『まぁ、ナツナツにはセレスを呼んできてもらってもいいんだけど』


『やる』


本当の理由にも気付いているだろうけど、私がこの建前を理由に引かないことを察したナツナツは、瞬時に覚悟を決めてくれた。


『内からの補助は私がする。ナツナツは』


『外からの補助だね。攻撃の強化や追撃は、私がやる』


『任せる。私は回避や死角の確認、補助魔法の追加だ』


『いつも通りだね。よろしく』


《感覚調整》による知覚速度の向上と、念話による三者高速会議。この程度ならすぐ終わる。


『疲労が心配だ。知覚速度の高速化は、状況に応じて行う』


『うん』


さて、行くか。

ドラゴンに向かって一歩 足を踏み出すと、後ろから服を掴まれていた。


「ぐえっ……」


「な、何してるの!? 早く逃げなきゃ!!」


チコリちゃんだった。

真後ろにいたのに、気付かなかったとは不覚…………というか、まだ逃げてなかったのか。


「大丈夫 大丈夫。私、強いから」


多分。きっと。おそらく。そう願いたい。


「何言ってるの!? 強くたって一人で戦う相手じゃないよ!?」


だよねー。でも、言えないけど大丈夫。一人じゃないので。


「でも、誰かが時間を稼がないとみんな死んじゃうの。ギルド員さんは、喰われてでも時間を稼ぐつもりみたいよ?」


「だ、だからって……」


うーん……この時間が惜しいんだけど……


「なら、急いで呼んできてくれない?」


「だ、誰を?」


「ギルド長とセレス。元とはいえ、SランクとAランク冒険者らしいよ? 二人が来れば、なんとかなると思わない?」


「一緒に」


「ダメ。それでじゃ間に合わない」


「でも」


「『でも』はない。急いでね」


優しくチコリちゃんの手を外すと、ドラゴンへと向けて駆け出す。

すでに咀嚼は終わりに近づき、次の獲物を見定めて動き始めるところだった。


「絶対!! 連れてくるから!!」


チコリちゃんの声が聞こえる。本気で呼んでくるつもりみたいだ。


「でも、間に合わないかな」


『ルーシアナ。一先ずヤツの気を引け。そして、戦場をガアンの森に移せ。ここでは隠れるところもない』


「ドラゴンの弱点は喉元にある逆鱗だよ。あの辺は鱗が小さくてダメージが通りやすいらしいの」


「了解」


難しいな。体が大きいとはいえ、無防備に晒してはくれないだろうし。


ドラゴンは加速するために身を縮め始めている。

距離は遠い。が。


「大地に埋もれし金剛杭。我が意に従いその姿を顕せ。其は堅く硬く太く、踏み締める剛脚は砕かれることはなく……」


『術式構成補助。詠唱省略』


「範囲指定。妖精魔法による魔法抵抗値軽減」


追加術式を施した強化魔法。これなら届く……!!


追加術式の詠唱に合わせて、ナビとナツナツが補助。

本来、必要な詠唱時間を圧縮し、威力を底上げしてくれた。

限界まで身を縮めたドラゴンが、今まさに蓄えられた暴力を加速へと転化させるその瞬間に、魔法を発動させる!!


「【ガイア・スパイク・ゴモス】!!」


一歩を踏み出したドラゴンへの完全なカウンターアタックとして、その半身に匹敵する太さの円錐が飛び出す!!


「グゴギギャアアアアアアアアァァァァ!!!!!?!?」


出来れば顔面から突っ込んで欲しかったところだが、ドラゴンはギリギリ首を曲げて躱し、右肩から岩の杭に突っ込む。

岩杭はドラゴンの鱗を貫き体内に侵入すると、そこで砕けて傷口を広げていった。

ここまでで最大の怒号をあげるドラゴンに、重大剣を引き抜いて襲いかかる。


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