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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
2章 激震!!狩りまくりイベント
31/264

第28話 ゴーレム娘、運搬役を全うする

24 ~ 33話を連投中。


2/24(日) 14:50 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:9話を4時間で投稿)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「ルーシーちゃん!! お願い!!」


「ガッテン承知!!」


チコリちゃんが死んだ草食魔獣、鹿の足を持って少し地面から体を浮かせる。

全身に力を入れて、ぷるぷるしている姿がなんとも可愛らしい。

その隙間を狙ってアイテム袋の口を開いた状態で滑り込ませると、『すぃーー……』という感じに鹿が飲み込まれていく。

そのまま前進すれば、全身がアイテム袋に収まるという流れである。

チコリちゃんを置いて街壁までダッシュし、適当な所で鹿を放出すると、チコリちゃんの元に戻る。


「お待たせ」


「ま、待ってないよ。はぁっ!! はぁっ……全然、休めない……はぁ……なんで、そんなに、速いの……」


「鍛えてますから」


ここ一週間程、ガアンの森を走り回っていたのよ。レベルアップとは別に、体力値がかなり上がったわ。


「じゃあ、ちょっと休みますか」


「で、でも……」


「いいでしょ、別に。明らかに私たちが運んだ獲物の数は他より多いし、他に運搬役はいるし」


「…………いいのかな?」


「チコリちゃんが休まなくても、私は休む。行くなら一人でどうぞ~」


「無理だよ~……一人じゃアイテム袋に入れられないもん。……………………はぁ。じゃあ、そっちの方で休もうか」


チコリちゃんが、ふらふらと横に逸れて地面に座り込むのを確認し、その場で『休憩中』を示す旗を掲げギルド員に合図を送る。

元々『疲れたら休んでいい』とは言われているのだ。

チコリちゃんも自前のアイテム袋から、水袋を取り出して飲んでいる。私も何か飲むか。


『ミックスジュースがいいな♪』


『はいはい』


店で買った果物を数種類混ぜて作った、特製ジュースである。

ちょっとトロミがあるが、タチアナさんやセレスにも大好評だった。

いつものように小さな机とイスを取り出し、コップ、ジュースの入ったビン、お茶請けを載せると、[アイテムボックス]から水を流して手を洗って席に着く。

ナツナツも、死角を利用して机の上に降りると、用意しておいたお茶請けにかぶりついた。


「美味し」


『うまし』


『大口を開けて食べるんじゃない。女性である自覚は持った方がいいぞ』


なお、今日のお茶請けは、甘さ控えめのカップケーキである。

ナツナツにナビが注意しているが、どうせ他の人には見えていないのだし、気にしなくてもいいと思うけど。


『なぜ自分が対象外だと思う?』


『……………………』


ど、どうせ他の人から見える距離でもないのだし、気にしなくてもいいと思う。


ナビの『やれやれ……』という気配を右から左へと受け流し、二口目をかじる。

心持ち開いた口が小さかったかもしれないけど、別に指摘されたせいではない。うん。


平静を装ってカップケーキをかじっていると、チコリちゃんが目を真ん丸に見開いてこちらを見ていた。


「……………………欲しいの?」


「え? あ、いや。そうじゃなくて……でも、くれるならもらう……」


「どっちでもいいならやらん」


「欲しいですお恵みください!!!!」


まさかの座り姿勢からのスライディング土下座を披露してくれたチコリちゃんに敬意を表し、用意してあげることにした。

その前に、腕を取って立ち上がらせ、服に付いた土埃を払い、水を流して手を洗わせからタオルを渡す。

その隙に、チコリちゃんの分のイスとカップケーキを取り出して、座るよう勧めた。


「……………………どこから出したの……?」


「えっと……どれ?」


「ぜんぶ」


「全部か~…………いや、よく考えたら、全部 私の収納魔法だったわ。うん。『回答:収納魔法』でひとつ」


「収納魔法って…………こんなに入るもの? Dランクが使える収納魔法なんて、そのアイテム袋くらいの容量が普通なんじゃないの?」


「いや、個人差もあるし、私は時空属性の魔法は得意だから、これくらい普通だよ。ついでに言えば、このアイテム袋はそんな良い物でもないから、チコリちゃんの基準は低過ぎると思うよ?」


「そう……なの、かな?」


「うん」


なにしろ、このアイテム袋は大型の鹿 一頭分程度の収納量しかない上、大抵のアイテム袋に標準装備されている【重量軽減】が掛かっていない。

以前、Dランク冒険者の持つアイテム袋は『猪が二体入る物よりワンランク下』という説明をしたかと思うが、この場合のアイテム袋は【空間拡張】と【重量軽減】は元より、【劣化軽減】や【耐久強化】といった魔法も付与されているものを対象としている。

単純に【空間拡張】だけに極振りすれば、もっと収納量を上げることは可能だ。


その辺りを考慮すれば、Dランク冒険者の扱う収納魔法から、このくらいの物が出てきてもおかしくはないだろう。

…………尤も、出来るからと言って、クエストでやる冒険者は少ないだろうけど。使える機会が限定的過ぎる。



首を捻るチコリちゃんに、そのようなことを適当に説明してお茶を濁し、周囲に目を向ける。

私たちが抜けた分の運搬役は、すでに補充されている。引継ぎに問題はないだろう。

次に、前方の攻撃役の様子を見る。

魔獣の出現量や偏り具合によっては、冒険者側が必ずしも数的有利を取れるとは限らない。

今も、直近の攻撃役のところには、ギリギリ同数程度の魔獣が押し寄せており、討伐に難儀しているよ……あ、鹿に打ち上げられた。これは、討伐するのにまだまだ時間が掛かるな。


周囲の状況を確認してチコリちゃんに目を戻すと、彼女はコップを持ったまま、どこかソワソワした様子でキョロキョロしていた。

その様子はまるで……


「さすがにおトイレは用意してないなぁ……」


「ごぶっふ!! な、なんで突然トイレ!?」


「チコリちゃんがソワソワしてたから。トイレが必要なら、こんなところで休んでないで、一旦 街の方に戻ろうか?」


「ト、トイレ違うわ!!」


「ホントに? 私、嫌だよ? お漏らしした人と仕事するのは」


「ちっっっっがーーーーう!!」


…………本当に違うらしい。


「じゃあ、どうしたの?」


「『どうしたの?』って…………周りが戦ってる中、机まで出して優雅に寛いでることに、違和感を感じてるだけだよ……」


「なるほど。でも、それについては言い訳……でなく、誰もが納得しうる理を説こうではないか」


「申し訳ないんだけど、真面目腐った口調がこの上なく嘘くさい……『言い訳』って言っちゃったし」


「…………じゃあ、私なりの理由を説明するね」


「あ、うん」


真面目な口調はマイナス評価らしいので、いつも通りの話し方に戻す。


「利点その1。地面に座って休むより、視界が広い!! これにより、万一 魔獣が抜けてきたり、他の人の邪魔になりそうな時に、いち早く察知することができる!!」


「察知できても、すぐに移動できないと思うんだけど……」


「それは大丈夫。チコリちゃんがイスから降りるより早く仕舞ってみせよう」


「そんな無茶な……」


ホントに出来るんだけどね。


「利点その2。体力が素早く回復できる!! 少なくとも、地面に座りながら水を飲むだけよりかは確実に早い!!」


「地面に座りながら、コレを飲めばいいんじゃないかな? 飲み物もお菓子も、取り出すだけで食べられるよね?」


それだと、ナツナツに食べさせられないんだよ。言えないけど。


「利点その3。え~と…………な、なんか優雅」


「それが違和感の原因なんですけどぉぉ!?」


「おっと、そうだった。え~と、言い訳 言い訳……」


「もういいよ……『言い訳』って言い始めちゃったし」


「あ、そう?」


まぁ、正直なところ、私は街の方に戻ってから休むつもりだったのだけど、チコリちゃんが戻らずに休むようだったから、それに合わせただけなんだよね。


「でも、他の人の邪魔になるようなら、すぐに片付けようね」


「大丈夫だと思うけど。これだけ離れてれば」


「まぁ、そうなんだけど」


周囲からの視線は痛いが、気にしなければ問題ない。


「まぁ、落ち着かないのは分かるし、早く食べて復帰しよう」


「そだね……いただきます…………ん!? これウマァーーーー!!!! ジュースも美味しい!!!?」


『ウマァーーーー!!!!』の声でさらに注目を浴びたけど、チコリちゃんは気付いていないようだから黙っておこう。

夢中で頬張るチコリちゃんに気を良くして、他にも色々出してあげた。


「ルーシーちゃん、なんなの……一家に一人欲しい、万能妹なの?」


「妹をこき使う気なの……?」


「顎で使われるから、御褒美に作って欲しい……」


「安いな」


あと、私は多分アンタより歳上だ。


「チコリちゃん、何歳?」


「もぐもぐもぐもぐ…………この前14になった。ルーシーちゃんは?」


「女性の年齢を聞くもんじゃないわ」


「そっかー……もぐもぐもぐもぐ……………………私も女性だよ!?」


「反応 鈍いな」



…………

……………………

………………………………

…………………………………………



10分程休んだので、仕事を再開することにした。なんだか、魔獣の数が増えてきている気がする。


「ごちそうさまでした。顎で使ってください」


「お粗末様でした。自分を大切にしなさい」


お菓子で身を売るな。


テーブルセットを片付けて周りを見渡すと、全体的に魔獣の出現量が増えているのではなく、私たちの正面、ガアンの森南部からの出現量が増えているように思える。

そのせいで、この辺りの冒険者の密度が妙に上がってしまっていた。

今も、苦労して魔獣を倒した攻撃役が、休む間もなく次の獲物に向かって移動していき、直後に複数の運搬役が残された魔獣に群がっているのが見える。


「ん?」


「どうしたの? 早く私たちも回収しにいこうよ」


「……………………なんか変な声聞こえなかった?」


「そう?」


チコリちゃんには聞こえなかったようだが、確かに何か……?

具体的に『どんな声?』と聞かれると困るんだけど。


『なんか変な感じがするよ~……?』


『気を付けろ、ルーシアナ。《サーチ》には反応が無いが、何かおかしい』


《サーチ》の索敵範囲は10mくらいまでしか届かないから、ガアンの森の様子はさすがに分からな



▽時空魔法マスタリーのレベルが上がりました!!

▽時空魔法:ロング・サーチを取得しました!!

▽《サーチ》が《ロング・サーチ》に統合されます。

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・時空魔法マスタリー Lv.6 → 7


取得スキル

・ロング・サーチ:《サーチ》の水平・垂直射程が伸びる。ただし、トータルの索敵範囲は変わらない。



…………………………………………

おじいちゃん、もしかして見てる? タイミングでも計ってる?


『ナビ』


『承知した。《ロング・サーチ》』


取得したスキルをさっそく発動させる。

現在、私を中心に半径10mの半球状に展開されている索敵範囲を、私の正面2m四方程度に絞って伸長させる。

当然のように木の反応しか返ってこな……あれ? 人間の反応が二つ? 追立役がこんなところまで来てるのかな…………!?


『ナ、ナビ!?』


『《スキャン》中…………ルーシアナ、不味いぞ!!』


人間の反応の直後に壁のような反応があり、凄い速さでこちらに移動しているのが分かった。

瞬時に《スキャン》を発動したナビが、分析結果を表示する。



名前:―

性別:男

年齢:4歳

種族:ベーシック・ドラゴン

レベル:12

HP:10,680

MP:1,450

力:8,600

体力:5,270

魔力:800

敏捷:900

運:Better

スキル不明



「ドラゴン……」


「え?」


呆然と呟く声にチコリちゃんが反応する。それを聞いて一気に頭が回り出す。


「全員!!!! 街に向かって走れ!!!!」


ナツナツが声を拡大してくれたので、周囲に配置されている攻撃役と運搬役には届いたと思う。

しかし、私はそれを確認する前に、チコリちゃんを担ぎ上げて駆け出した。


「ちょ、ちょっとーー!?」


抗議の声は聞こえないフリをする。

周りの冒険者が怪訝な表情でこちらを見ているので、逃走を指示して走り抜ける。


街壁まで十数秒。

そろそろ辿り着くといったところで、ガアンの森から冒険者が二人飛び出してきた。

私にしつこく絡んできた、例の4人組連中の二人だ。


「うわああああああああああああああああ!!!!!!!!」


「ひいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」


その様子に、ようやく只事でない事態を察した冒険者達が本気で動き出す。

そして、


どがああああぁぁぁぁ!!!!!!!!


「グギャアアアアアアアアァァァァ!!!!!!!!」


ガアンの森の入口辺り、倒木などが積もって出来た自然の壁を紙のように破り、ベーシック・ドラゴンが姿を現した!!


「うわああああぁぁぁぁ!!!?」


「ド、ドラゴン!? なんでドラゴンがああああぁぁぁぁ!?!?」


「逃げろおおおおーーーー!!!!」


動きの遅い冒険者達も、ここに来てようやく本気で走り始めた。遅いわ。


「ホ、ホントにドラゴン出た……」


呆然と呟くチコリちゃんの声が、肩上から落ちてきた。まぁ、信じないか。


街壁に辿り着くと、さすがにギルド員というべきか、急いで低ランクの冒険者たちを街中に避難させているところだった。

ただ、丁度 獲物を街中に運ぶ運搬役が外に出ていたタイミングだったらしく、我先にと狭い扉に殺到する冒険者たちのせいで、なかなか避難が進んでいない。

チコリちゃんを地面に下ろすと、避難指示をしているギルド員を捕まえる。


「街に連絡は!?」


「した!! だが、この状況では討伐隊が出てくるのに時間がかかる!! 南門に向かえ!!」


「倒せないの!?」


「無理だ!! 後衛にいた弓使いもよくてDランク相当だぞ!!」


ギルド員はそういうと、他の冒険者にも同じように北門と南門への分散を指示していくが、ほとんどの冒険者は西門から動かない。

みんな、目の前の逃げ道しか見えていないのだ。


「チコリちゃん。南門に行って」


「ル、ルーシーちゃん?」


「はやく!!」


困惑の表情でこちらを見るチコリちゃんを、南門に追い立てる。

ドラゴンを見ると、あと数十秒もあれば西門に辿り着きそうな速度のまま。草原にいた魔獣に気を取られる様子もない。

あれがここに到達してしまえば、ここにいる冒険者たちの辿る未来は、ただのひとつであろう。


「どうする……?」


『狂防孤高』。これを使えば最悪 死ぬことはない。なんとか出来るのは、私だけだ。

だが……


「どうしますか……ね……」


視界の中で、ドラゴンが亀のように首を引いたのが見えた。


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