表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
1章 活動開始!!まずは地道に下積み
25/264

第23話 ゴーレム娘 VS. ダーチョ

13 ~ 23話の連投を終了しました。

2/11(月) 17:20。


ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「おぉ……これが薫茸(かおりだけ)。おっきい……」


「10cm以上の大物に限定して採取してね」


「分かりました。これって食用?」


「いんや、香木と一緒でお香の材料だな。基本的には、大きいほど薫りが良いし、高く売れる」


「私たちには縁遠い趣味のもの」


「まぁ、魔獣たちのテリトリーに侵入するのに、匂いを纏わせてるわけにはいかないからな」


その場所は、地層が剥き出しになった崖下にあった。

何故か、崖の近くには木々が生えていないため日当たりも良く、下草がうっそうと茂っている。

それらを掻き分けて崖に近付き、壁面を見上げると、地面から5mくらいの高さまで、びっしりと薫茸が生えていた。


三人はバラバラに散って採取を始め、私は一番 背の高いルーカスとペアになった。


「じゃあ、俺は上の方の採るから、お前下な」


「はいよー」


『私はもっと上のやつ採ろっか~?』


ルーカスに適当な相槌を返すと、ナツナツがちょっと楽しそうな顔をして、そんなことを提案する。


『いや、ルーカスも届かないところの採ってたら怪しまれるから。私と探そ?』


『りょーかーい』


念のため、私の陰にナツナツを隠すようにしながら、採取を開始した。

サンプルとして渡された薫茸を片手に持ち、それ以上の大きさのものに限定して採取しているが、残した薫茸も十分に大きいものばかり。

穴場なのかもしれない。


黙々と採取を進める…………には、私の忍耐が保たなかった。


「そういえばさー」


「んー?」


「食用のベイルシメジ? とか魔獣も一緒に狩るとか言ってなかったっけ?」


「言ったぞ」


「でも、ここまでベイルシメジも魔獣も採れてないよね? 別のキノコは採れてたけど」


「ここに来るまで遭遇しないとなると、魔獣は今回の探索じゃ難しいかもな。いつもは、ここに来るまでに2 ~ 3回は遭遇するんだよ。ベイルシメジは、ほれ、後ろ 後ろ」


「後ろ?」


言われて後ろを見ると、離れた場所に(そび)える木々の、こちらの面に限定して、確かにシメジらしきもの生えているのが見えた。


「なんでこっちの面だけ……」


「よく分からんが、陽の当たる時間が関係するらしい。当たり過ぎても、当たらな過ぎてもダメなんだと。逆に薫茸は、陽がよく当たるとよく育つから、こういう壁面によく生えるんだってよ」


「へ~。不思議。同じキノコなのに」


「いや、お前、それ『人間なら皆同じ』って言ってるようなもんだぞ。そんな訳ないだろ?」


「……………………びっくり。大人みたいなセリフだった」


「おいこら」


ぶん。ひょい。


採取した薫茸を袋に仕舞う流れで放たれた平手を、軽く首を傾げることで回避する。

まぁ、ルーカス『君』と呼ぼうとしたくらいには、下に見てましたから。


攻撃が回避されたことは、特に気にした様子もなく作業に戻ったので、こちらも気にせず話を続ける。


「何歳なの?」


「25」


「10歳差だ~」


「ふふん。敬えよ」


「南~~無~~」


「なんだそれ?」


「しまった!! 文化違い!!」


ちなみにこれもおじいちゃん文化。

そんな私たちに、リリアナさんたちから呆れた声が投げられる。


「…………あんたら、煩いわよ……」


「さすがロリコン。チャンスは(のが)さない」


「まぁ、それだけ騒がしくしていれば、魔獣も近寄って来ないから都合がいいか」


「…………怒られたの? 誉められたの?」


「からかわれたの」


…………………………………………


「「ぶふっ」」


思わず揃って笑いを漏らしてしまった。


「全く……」


「ロリコンの魔の手が……」


「騒ぐなら、もっと声出せ」


他の三人も含めて、楽しく採取しました。





「さて、こんなもんかな」


「そうだな」


「ルーシアちゃん。こっちも収納してくれる?」


「これもよろしく」


「はいはい」


ルーカスの言葉で採取を終了とする。

リリアナさんとフェリスさんは、途中からベイルシメジを採取していた。


それぞれの袋にパンパンに詰まったキノコを、まとめて[アイテムボックス]に仕舞い込む。

壁面を見上げると、まだまだ基準サイズ以上の薫茸が生えている。


「まだあるよ?」


「上の方にな。俺とキリウスだけじゃ効率が悪い。それにあの高さに生えてりゃ、次のキノコの胞子を蒔いてくれるから、全部採っちまうのも具合が悪い。だから、今日はお仕舞いだ」


「なるほど。了解」


なかなか考えていた。


「それに、すでに予定より多く採取できた。後は、帰りの道すがら何か採取できれば、上々だろう」


「食用のキノコがいいかな? 来るときも、たくさん採取してたものね」


「じゃ、それで」


というわけで、キノコ採取しながら帰ることになった。

ルーカスの足取りも軽い。

森の中を歩くコツを掴んだらしい。今頃かい。


まぁ、今までコツを掴んでいなかったのも、仲間がルーカスのペースに合わせてくれるのに甘えてサボっていただけで、経験自体は十分に溜まっていたのかもしれない。

やれば出来る子なんですね。


帰路は、来た道をそっくりそのまま逆順に辿って出口を目指すルートを選択していた。

そのせいか、来た時と違って採取確率はガクッと低下している。


「うーん……来るときに粗方見付けてしまったからか、キノコはほとんど見付かりませんね」


「それなら、別のを探せばいいよ。他には……何があったかな?」


「常設クエストは基本、『薬草類』『肉類』『果実類』『特産品類』に分類される。キノコは『特産品類』。『肉類』は、魔獣が出てこないと無理だから、残りは『薬草類』か『果実類』になる……けど」


「ガアンの森に、『薬草類』はほとんど無いんだよな。『果実類』はあるんだが、高い木の上に()るのがほとんど。つまり、この帰りの道中で探すなら、キノコしかないんだよな」


「なるほど」


では、最初のリリアナさんのセリフは何だったのか…………

あ、ある意味面目を潰れされたリリアナさんが、笑顔でルーカスを睨んでる…………気付かなかったことにしておこう。


「と、思ったら見付けた」


「何を『思った』のかな? ルーシアちゃん?」


「『じゃあ、別ルートで帰った方がいいのかなぁ』的な?」


「なるほど。一理あるわね」


セーーーーフ!!


咄嗟に口から出たデマカセは、リリアナさんだけでなく、言った本人すらも思わず納得できる完璧なものだった。

きっと、本能が全力で生きようとしたのだろう。


今更のように溢れた冷や汗に気付かない振りをして、見付けたキノコに近寄る。

岩の影に隠れるように生えた食用のキノコだ。確か、ナントカ茸。(覚えてない)


採取のためにテテテーと近付く私の背に、キリウスさんが思い出したかのように情報を投げ掛けた。


「そういえば、この辺にはダーチョという大きな鳥がいて、そいつの卵も『特産品類』だったな」


「オスもメスも卵を産む鳥。大量の卵をお腹に貯めてて、それを撃ち出して攻撃する、ある意味デンジャラス」


「10 ~ 20羽くらいのコミュニティーを形成していてね。ヒナが産まれる卵を抱えてるダーチョの顔は、赤くなっているの。遭遇すると、まずそのダーチョを逃がすために、他のダーチョが攻撃してくるわけ」


「つまり、赤いのを逃がさないようにしつつ、他の鳥を煽って攻撃させる訳だ。で、卵が割れないようにキャッチする、と。でも、気を付けろよ? 下手な金属より堅いから、当たり所によっては大ケガするからな」


「とはいえ、堅いのは先端だけだ。横からの衝撃には弱いから、落としたりすると大抵 割れる。正面から行くしかない」


「へ~……危ない鳥もいるもんですね」


金属より堅い卵とは、いったい……鉱石でも喰ってんのかね?


「ははは。そうでもないさ。冒険者連中の間では、『ボーナス鳥』とか呼ばれてるくらいだ。ま、その分滅多に会えないんだがな」


「ボーナス……」


酷い名称だ。

でも、その分ならそんなに危険はないのかな?


そんなことを考えながら、岩に片手を突き、地面に生えるキノコに手を


ぱくっ。


「は?」


「クェ?」


寸でのところで岩陰から伸びてきた、短毛に覆われた山芋みたいなものに『ぱくっ』といかれた。

向こうも想定外だったのか、冗談のようにまん丸い目をして固まっている。


だけど、そのお陰で、ソイツの姿はじっくりと観察することができる。

まず、視界に入るのは、山芋の先端に付いた黄色く長いモノ…………うん、(くちばし)かな。

嘴があるなら、それは頭だろうと仮定して根元に視線を移すと、なるほど、仮定は正しかったらしく、一抱えもある楕円球の胴体に行き当たった。

その胴体は柔らかそうな羽毛に包まれており、下部から太く長い鳥脚が伸びている。

脚の先端には凶悪そうな爪が、がっしりと大地を掴み、僅かな光を反射して鈍く輝いていた。

最後に、もう一度 頭に視線を戻す。よく見たら、嘴の周りの顔は赤かった。


「クェ~……」


「えっと……」


「ボ」


何故か、互いに見つめ合って固まっていると、後ろからルーカスの驚愕したような声が届く。


「ん?」


「「「「ボーナスキターーーー!!!!!!!!」」」」


「クエエエエェェェェ!!!!!!!?」


「うわああああ!!!!!?」


いや、四人の絶叫が届いた。

それに合わせて目の前の生き物…………ダーチョもようやく頭が回り始めたのか、『くわっ』と目を見開き、その場でピョンピョンと、謎に飛び跳ね始める。


目の前で、いきなりそんな奇行を見せられた私は、びっくりして仰け反り尻餅をついてしまった。

そして、二度三度とその場で跳ね回ったダーチョは、『ピタッ』と止まると…………勢いよくこちらに首を降り下ろす!!


「のわああぁぁぁぁ!!!!!!!!」


『ルーシアナ!?』


「あっぶねぇ!!!!」


咄嗟に両腕で頭を覆うと同時に、襟首を思い切り引っ張られた。


「ぐえっ!!」


でも、そのお陰で(くちばし)の一撃は避けることが出来た。

腕の隙間から覗く景色の上から下へ、ダーチョの首が高速で降り下ろされていく。

それは、速度を殺さぬまま、抉るように地面に突き刺さった。


そして、ルーカスに襟首を引かれ、ダーチョから距離を取るに従って、全体像が見えてくる。

一体、どこから湧いたのか……?

今 地面に顔を埋もれさせているダーチョと見つめ合っていた間に、岩陰の向こうに10を越えるダーチョの群れが出現していたのだ!!


ルーカスは、ダーチョの群から5m程 距離を取ると、私を『ぽいっ』と適当に地面へ打ち捨てる。

同時に、私たちとすれ違うように、フェリスさんとキリウスさんがダーチョの群れに向かって走っていった。


「クエエエ!!」


「クエ!! クエ!!」


「クエ!! クエエエエエ!!」


「クエエエエエエエエエエエエェェェェ!!!!!!!!」×たくさん


「何処にいたああああぁぁぁぁ!?!?!?!?」


「しゃがんでたんだよ!! はよ立て!!」


「はいいぃぃ!!」


ルーカスの鋭い声に、反射的に答えて立ち上がる。


1、2、3、4、……………………18、19!!


多いな!! そのうち、3体の顔が赤い!!


群れに向かったフェリスさんとキリウスさんが、左右から挟むように接敵した。

二人の武器は、フェリスさんが鞘に入れたままの剣、キリウスさんが革のグローブだ。

二人とも、最寄りのダーチョを選んで、挑発するような攻撃を散発する。


それに対する、ダーチョたちの反応は二種類だ。

赤い顔のダーチョ3体は、素早く身を翻し、一斉に森の奥へ駆け出す。

残りの黄色い顔のダーチョ16体は、それに反発するように前へ出て、『クエエエエエ!!!!』と威嚇の声を上げた。


その急先鋒は、当然ながら、フェリスさんとキリウスさんに最も近い2体だ。

一瞬だけ、腰を落としたかのように姿勢が下がると、二人に目掛けて、流れるような三段回し蹴りを放つ。

そして、残りの14体は……


「来るぞーーーー!!!!」


『くるっ』と合わせたように、一斉にこちらへお尻を向けると、『ぶぶぶぶぶぶぶ……!!!!』と湿った音を響かせて、大小様々の卵を撃ち出してきた!!


『思ったよりも速ーーーーい!!!!』


『スカート!! スカート使って!!!!』


『そか!!』


下手な投擲なんぞより、よっぽど速い発射速度に、シンプルな感想を叫ぶ。

同時に、冷静なナツナツのアドバイスにより、思考はともかく体は動いた。


私のスカートは、ヒダの多いプリーツスカート。ヒダの分だけ布はあり、見た目以上に面積がある。

体を卵の射線上から左側にズラし、右手でスカートを広げて包み込むように卵を受け止める。


ぼふぼふぼふぼふ……


速度を失った卵が、重力に従って地面に落ちる前に、スカートを手繰って包み込むように回収する。

合計10個程。これだけ見れば多いように感じるが、私に向かってきた卵の1/5程だ。ちょっと効率が悪い。


「ごめん!! 10個くらいしか捕れなかった!!!!」


「うお!! そんなに捕れたのか!?」


「や、やるわね!!」


謝りつつ見やるが、二人が捕れていたのは片手にひとつずつ、合わせて4個だけ。

残りは、足元や後ろで割れていた。


「少な過ぎるでしょーーーー!!!!」


「お前が異常なんじゃーーーー!!!!」


「ルーシアちゃん!! 卵 仕舞って!! 次 来るよ、次!!」


「投げないで!?」


二人が、こちらも見ずに放った卵を、冷静にキャッチ。

自分の分と合わせて[アイテムボックス]に仕舞った。


第一射を放ち終えた黄ダーチョたちは、一度こちらに首を向けて、戦果を確認している。

…………って


「ああああ赤いの逃げるよ!?」


「リリアナ!!」


「フェリス!!」


「いつでも!!」


ルーカス → リリアナさん → フェリスさんと、リレーのように声が飛ぶ。

フェリスさんは、いつの間にか逃げる赤ダーチョたちの逃走経路を塞ぐように回り込んでいた。


でも、一人だけじゃ止められるのは、よくて一体だけだよ!?


どうするのかと思っていると、フェリスさんは、鞘に納めたままだった剣を抜き放ち、勢いよく地面に突き刺した。


「【サンド・ウォール】!!」


ほぼ同時に、リリアナさんがひとつの魔法を発動させる。

それは、何故かフェリスさんの突き刺した剣を中心に発現し、高さ2m程の幅の広い砂壁となって()り上がった。


「高っ!! それに、なんであんな離れた場所で発現すんの!?」


「フェリスの剣には、リリアナの術式に呼応する魔石が組み込まれてるんだよ。離れた所からでも、アレを目印に魔法の発現点をズラせるし、フェリスが補助することで、魔法効果を高めることもできる。

『合体魔法』っつーらしいぜ? 結構 難しくて、うちのパーティじゃ、リリアナとフェリスででしか、うまくいかねぇ」


「そ、そんなのあるんだ……」


「おいおい……できる できないは別として、割と基本的な知識だぞ」


知らんかった……時代か? それとも、私が世間知らずなだけ?


でも、赤ダーチョたちは、高い壁に全く躊躇することなく近寄ると、その勢いのまま壁に爪を突き立て、重力を無視して駆け上がっていく。


「ちょーーーーい!? 越えられちゃうよ!?」


「気にすんな!! それより、次来るぞ!!」


「えぇ!?」


再びこちらにお尻を向ける、16体の黄ダーチョたち。

フェリスさんの姿は、砂壁の向こうに隠れているため、そいつらの狙いは、全て私たちの方に…………あれ? キリウスさんどこ行った?


いつの間にか、群れの右側にいたキリウスさんが見当たらない。

私たちの周囲にもいないから、もしかしてフェリスさんのところにいる?


…………と、消えたキリウスさんを気にしている暇はないので、とりあえず放置。

新人冒険者が気にするのも、大きなお世話でしょう。


『ナツナツ。加速する。援護して』


『あいよ~』


ゴーレム種族の種族特性による《感覚調整》で、知覚速度を向上させる。

その倍率、およそ10倍。


視界に納まる全てが(ぬめ)るように遅くなり、耳に届く全てが急速に間延びしながら低くなって雑音となり、意味を成さなくなる。

当然、私も眠くなるような速度でしか、身動きが出来ない。だが、全てのダーチョたちは視界に入っている。見落としはない。


もったりとした動きの中で、16のダーチョのお尻から、『ぷ、ぷ、ぷ、ぷ……』と卵が撃ち出されていくのが見えた。


さて、ここで私の《異空間干渉》について、再度 説明しよう。

名前から分かる通り、おじいちゃんが私に用意してくれた異空間への扉を開くスキルである。

では、その扉を開ける射程、速度、同時展開数、総展開面積は如何(いか)程のものであるのか?

まさか、知覚出来ないほど遠くに展開できたり、無数に展開できたり……ということは、さすがにない。

その答えは、至って普通で、射程は約10m。速度は最速で0.1秒程。数と大きさは影響しあっていて、合計で10㎡程度。ただし、数が増えると、その分 私の意識が割かれるので、戦闘中は5個くらいが限界。


つまり、何が言いたいかと言えば……


『卵の射線上に順に展開すれば、全部収納可能!! でも、この状態だとルーカスたちの声を聞き取れないから、それはナツナツに任せるね!!』


『分かった 分かった。分かったから、テンション下げて。ね?』


『テンションでき生きてる妖精に テンション下げろと諭されたよ!?』


と、その辺で最初の卵が、射程範囲に飛び込んできた。

初撃は小手調べのつもりだったのか、弾幕が先程の比ではない。

これだけ数が多いと、個々の卵を目で追っていては間に合わない。


『すっ……』と瞳の焦点を視界全体に広げ、一個一個を追うではなく、まとまった『群』としてとらえる。

そして……


『《異空間干渉》……!!』


発動させた。


1、2、3、4、……………………54、55、56。


『ルーカス(以下、ル):な!?』


『リリアナ(以下、リ):え!? 消え……!? …………ルーシアちゃん!?』


ナツナツが聞いた言葉を圧縮して送ってくれるので、感覚的には数テンポ遅れになってしまうけど、ルーカスたちの反応は間違いなく受け取れる。


あ、でも、二人に何するか説明してないから、無駄な時間を使わせてしまっている。

『驚いてなくていいから、赤いの止めて~~……!!』と言いたい。言えないけど。


……………………100、101、102。


でも、その懸念は杞憂だった模様。

視界の奥で、砂壁を駆け上がる赤ダーチョたち。

しかし、彼女らが中程まで登ったところで、砂壁に変化が現れる。

突然、爪を突き立てていた壁が強度を無くし、脚が『ズブズブズブ……』と埋もれていくのだ。


なるほど。

【ソイル・ウォール】でも、【ストーン・ウォール】でもなく、【サンド・ウォール】を使ったのはこのためか。


恐らく、途中で魔力供給を切ったため、壁としての機能を失い、急速に砂として崩れ始めたのだろう。

当然、赤ダーチョたちが崩してしまった部分ほど強度低下は著しい。

バランスを崩して砂壁に突っ込んだ赤ダーチョたちの上から、雪崩れ落ちるように大量の砂が降り注ぐ。


……………………163、164、165。


そして、全ての卵の収納を完了した。

さすがに連発は出来ないのか、黄ダーチョたちにも疲れが見える……気がする。

その黄ダーチョたちの奥では、3体の赤ダーチョが揃って砂に埋もれてもがいていた。


『ル:ルーシア!! 分散した方がいいか!?』


『リ:キリウス!! 水!!』


いや、止めて。できれば纏まっててくれた方が、攻撃が集中するから収納しやすいです。

とはいえ、全員こっちにいたら逃げられるしな……

……………………分からん。ルーカスに聞くしかないか。


《感覚調整》を切る。


ゆっくりと皆の動きが元の素早さを取り戻し、雑音が意味を持って耳に届く。


「クエクエクエクエ!!」


「クエエエエエ!!」


「ルーシア!? どうなんだ!?」


「【ライト・レイン】!!」


ルーカスの怒鳴り声とキリウスさんの魔法が聞こえた。

砂に埋もれた赤ダーチョたちの上から、シャワーのように水が撒かれる。えぐい。


「卵の回収だけ考えれば、纏まっててほしい!! でも、それだと逃げられちゃうかも!!」


「リリアナ!! 来い!!」


「了解!!」


「フェリス!! キリウス!! 影に隠れろ!! 狙われるな!!」


二人はコクリと頷き、木の影に隠れて見えなくなった。


「リリアナ、次いくぞ!! ルーシアは、収納だけ考えろ!!」


「えぇ!!」


「はい!!」


ルーカスは槍を構えると、素早く連続突きを放つ。


「《疾風突き》!!」


「【ストーン・ブラスト】!!」


ルーカスの繰り出す槍先から不可視の衝撃波が飛んだ。

同時にリリアナさんの背後に現れた、無数の拳大の石がバラバラと後を追う。


ドンドンドン!!!!

ガガガガ……!!!!


直撃を受けたダーチョたちが一、二歩 後退(あとずさ)るも、すぐに体勢を立て直して、苛立った様子で飛び跳ねる。


「クエエエエェェェェ!!!!」


「クエ!! クエクエ!! クエーーーー!!!!」


三度(みたび)こちらにお尻を向ける黄ダーチョたち。約10体。

残りの6体は埋まった赤ダーチョに近付き、脚で掘り起こし始めている。


赤ダーチョも気になるけど、とりあえず《感覚調整》ーーーー!!!!


再び10倍速の雑音の世界に飛び込む。

先程より卵を撃つダーチョが少ないので、割と余裕です。


『ル:とんでもねぇな……』


『リ:ルーカス、赤ダーチョどうする?』


『ル:そろそろ撃ち止めだろ。潮時だ。フェリスとキリウスも戻って来てるだろ?』


『リ:そうね。多分、今 真ん中ら辺』


あぁ……そりゃ、限界もあるよね。撃ち出す量にも。


気を付けて見れば、元々 病気かと思うくらい黄色かった黄ダーチョたちの顔色は、今はむしろ血の気が引いたような青色になっていた。

子持ちじゃない卵持ちのダーチョは、黄色くなるらしい。何故だ?


卵を撃ち尽くして青くなったダーチョは、赤ダーチョを掘り起こす作業に加わり、入れ替わるように黄ダーチョが射撃に加わる。

そうして、ほとんどの黄ダーチョが青ダーチョに変わる頃になって、ようやく赤ダーチョが助け出された。

助け出された赤ダーチョたちは、一度『ぶるぶるぶるぶるっ』と震えて砂を落とすと、一目散に逃げ出す。

それを追って青ダーチョが逃げ出し、最後まで残った黄ダーチョも、青くなるまで粘るとそれを追っていった。


《感覚調整》を解除する。


「ふぅ……肉は、狩らないのね……」


てっきり一匹くらい狩ると思っていたので、そう聞いてみる。


「鬼か……」


「ダーチョは卵を作ってくれた方が良いからね。それにそんなに強くないから、他の魔獣に狩られやすいし」


「基本的にノーハント or リリース」


「それにギルドにバレると、罰則案件だ。ちなみに、ダーチョを倒して卵を取り出そうとすると、(ことごと)く割れてるらしい。冒険者にとって、狩るメリットは少ないな」


「そうなんだ」


いつの間にか背後に戻ってきていたフェリスさんとキリウスさんからも、狩らない方針を教えられる。

見ると、私に背を向けて周りを警戒してくれていた。


『む。私も警戒してたよ~? 後ろから魔獣が来ても大丈夫だったし~』


『そっか。ありがと。私は完全に忘れてたよ。《サーチ》も切れてるし……』


『うーん……自動発動か、常時発動に出来ないかな~……』


まぁ、課題は後で考えよう。それより、今は……


「疲れたーーーー!!!!!!!!」


その場で地面にペタンと直座りすると、天を仰いで絶叫した。

《感覚調整》の、特に知覚速度向上は、倍率に従って疲労度が激増する…………ことに、今気付いた。


命のやり取りをするマジ戦闘中に気付かなくて良かったよ……


「はははっ!!!! お疲れさん!!!! よくやったぜ!!!!」


「そうね!! よーしよし、頭を撫でてあげましょう!!」


「私も」


「ぶっちゃけいくつ手に入った!? 普通は50も手に入れば良い方だぞ!?」


あ、そうなん? えーーと……


「1,000、くらい?」


「「「「よっしゃーーーー!!!!」」」」


クールなフェリスさんやキリウスさんまで、諸手を挙げて喜びを表した。


そんなにポイント高いのん? あ、それとも報酬?


「よーしよーし。八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍をしてくれたお嬢さん。嫌じゃなければ背負ってやるぞ?」


「ちょっとルーカス。布!! 布挟んで!! 鎧の上に直じゃ痛いわよ!!」


「マントを重ねよう。キリウスのも」


「そうだな」


「え? え?」


突然のノリについていけずオロオロしてると、リリアナさんが準備を終えたルーカスの背中に乗せようとしてきた。


「だ、大丈夫。歩けるよ!!」


「いいから いいから。顔色悪いわよ?」


「そろそろ陽も暮れる。ちょっと急ぎになるから、背負われな」


「そうそう。恥ずかしいなら、門の手前で降ろす」


「ほれほれ。乗った 乗った」


「……………………分かった。お願いします」


確かに全身がダルいのは本当なので、皆の厚意に甘えることにした。


「よし、行くぞー!!」


「「「おおー」」」


…………………………………………


「ところで、卵って報酬っていうか、昇格ポイントっていくつなの?」


「ん? あぁ、お前が知るわけないか」


「ふふふ~♪ 聞いて驚きなさい? ……一個に付き1ポイントと100テト」


「…………………………………………」


1ポイントと100テト…………


「うえぇーーーー!? 1,000ポイントと100,000テト!!!?」


Eランク飛んだーーーー!!!!


次回。

ファンタジーの定番モンスターと戦います。

もうちょっとしっかり書きたいところ。

ダーチョ戦は緊張感がなかったですよね…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ