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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
10章 遭遇!! 王都の住人
246/264

第235話 ゴーレム娘のゲーム運

221 ~ 252話を連投中。


10/9(土) 11:00 ~ 18:30くらいまで。(前回実績:1話/13分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

ちゃっ…………とん…………

とん……かちゃ……かちゃ……とん。


「…………ごめん。それ、ロン」


「なんでや!!!!」


夕食シーンに行くと思った?

残念!! そこは飛ばして、ひさしぶりの夢茶会です。


いつも通りに、オズのスパルタ授業と現実では出来ないようなギリギリを攻めた実戦訓練を終え、今は四人でテーブルを囲んで麻雀中です。

……………………振り込みました。

(振り込む:捨てた牌で和了(あが)られること。本来、三人に分散する点数支払いが、一人に集中するため不利になる)


「お……同じ相手に三連続で振り込むとは…………」


「これは、さすがにナビのイカサマを疑うレベル~♪」


「ナ~ビィ~…………」


「してない!! ボクはイカサマなんてしてないよ!!!?」


慌てて否定する姿が可愛かったので信じることにする。


「ま、まだだ…………まだ、終わってない……!!」


「そういえば、役を見てないですね。弱い役ならダメージも少ないですが……」


「確率は限りなく低いけど、チョンボの可能性もあるからね~」

(チョンボ :反則。役が間違えていたなど)


「……………………」


『ぱたっ』と牌を伏せたので、ナツナツが羽交い締めにして、オズが表に返した。


「…………………………………………」


「…………………………………………」


「…………………………………………」


「…………………………………………大三元なんだよ…………」

(大三元:言わずと知れた強役。分かりやすい)


「げっっふぅあぁ!!!?」


「箱点か~」

(箱点:持ち点がゼロ以下になること。大負け)


「まぁ、あれだけ振り込めば、妥当なところですよね」


だろうなとは思ってた!! 思ってたけど!!!!


無情な結果に、天を仰いで背中から床に倒れ込む。

…………あ、今日のお部屋は、ヒトコで使った部屋をベースにしてるから、床に直座りなのでよろしく。


「る~るら~……るらるらるぅ~…………しくしくしくしく……」


「な、なんかごめん……」


「清々しい程に勝てないね~。よしよし♪」


「え~と、待ち牌や捨て牌は……………………特におかしなことはしてないですよね、やっぱり」


ナツナツ、やめて撫でないでマジで泣いちゃう。


あんまりにも負け続けるものだから、もしかして私のやり方が根本的におかしいのかと思って、毎回終わる(負ける)度に、何か良くない行動 (確率の低い待ちをしてたり、通りにくい牌を捨ててたり) をしてないか確認してもらってるんだけど、今のところ特に問題はないという…………

(待ち:あと一牌揃えば和了れる状態。待ち牌が残り1枚、などは良くない)

(通る:捨てた牌が誰かの待ち牌でないこと。通らない = 振り込んでしまった、ということ)


「…………ねぇ、知ってる? 選択に何の問題も無いってことは、ただただ運が悪いだけってことなんだよ……? 改善のしようがないってことなんだよ……?」


「知ってる~」


「何か負けやすい選択をする傾向があるなら、それを修正することで勝率を上げられると思ったんですけど……」


「どうしてルーシアナは、ゲーム運だけこんなに無いんだろう…………普段は、どちらかと言えばツイてる方なのに」


そんなことは私が知りたい。切に。…………切に!!


……………………


「まぁ、いいや。遊びだし。もっかいやろう」


「懲りないね、ルーシアナは~」


「そこは良いところのひとつだとは思う」


「懲りないせいで、反省してないんじゃないですか?」


「反省はしたいが、反省の仕方が分からんのじゃ……」


故に、私は遊ぶ。貴女たちがッ、飽きるまで、遊ぶのをやめないッ!!


「しゃ~ないなぁ~」


「分かった 分かった。付き合うから、それを外で言わないでね」


「マイアナはお姉ちゃんに何を教えてるんですか……」


気にせず身を起こして牌を崩すと、ナツナツたちも席に戻って『じゃらじゃらじゃら』と耳に煩い音を立て始める。

適当に交ぜ終わったところで、全員で牌を2段17枚に積み上げ、親が振ったサイコロの数だけ山を残し、順に牌を取っていく。

手元に13枚集まったら、順番に並べて、親からスタートです。


……………………で、私の配牌だけど…………

(配牌:正確には、牌を取っていくこと。転じて、最初の牌の組み合わせ)


「…………悪いにも程がある」


「ルーシアナ。そういうのは、言っちゃダ~メ~」


「根拠はないけど、そういう所から運が逃げていくんだよ、多分」


「ですね。根拠はないですけど」


それは分かってるんだけど…………誰か……誰か私と一緒に、この配牌にツッコんで欲しい。

この前、ココネさんたちと初めて遊んだ時は、サリーさんが後ろにくっついてアドバイスしてくれたんだよね、初心者だったから。

二人して『うっわー……ないわコレ……』みたいな感じで、ツッコミあって楽しかったなぁ。

…………絶望的に勝てないから、勝ち負け以外の楽しみを見出す他無かったとも言える。


とりあえず、基本的には鳴かないで行くことにする。…………そもそも鳴くチャンスも来ないことが多いが。

(鳴く:誰かが捨てた牌を貰うこと。ポン・チー・カン)


『チャッ、チャッ、チャッ』とリズムよく三回進み、不規則に間が空き、再び三回リズムが刻まれる。

言わずもがな、間が空くのは私の番の時です。

まだ慣れないから、時間を掛けて考えないと何が不要牌なのか分からないのだ。


「そういえば、ルーシアナ~。貴女たちのランクアップって、後どのくらいかな~?」


「まだまだ先かな。今の昇格ポイント、まだ半分くらいだし」


「お義姉さまが加わってから、一気に減速しましたよね。それが目的なんでしょうけど」


「あぁ……経験を積ませたいからってヤツ」


「面倒だよね~…………ランクだけ『ガーン!!』と上げちゃって、経験はじっくりでもいいと思わな~い?」


「本音を言えば、思わないこともない。けど、本来の私たちの目標は、Sランクになってゴーレム種族でも人種族と同等の権利を得るため、太極報が報酬のクエストを受注すること。『可能な範囲で何でも可』なんて報酬のクエスト、実力もそうだけど評判や経験もしっかりしてる人から持ち掛けられるはずじゃない? なら、こういう基礎的なところも疎かにしちゃいけないと思って」


「そうですね」


「それなら別に、ナツナツの言うように、後から経験を積んでもいいんじゃない?」


「ねぇ~?」


「その手もあるけど…………」


「高い報酬のクエストが受注できる環境で、わざわざ安い報酬のクエストを受ける気になりますか?」


「ならないね。のんびり行くのがいいんじゃないかな (キリッ)」


「裏切られた!?」


ナツナツが大袈裟に驚いてみせるが、手の動きに乱れは見られない。

まぁ、本人も分かってるのだろう。


「というか、ナツナツだって今までランクなんて気にしてなかったじゃん。どうしたの?」


「どうしたって言うかぁ~…………オズのランクを早くAにしてみたいかな~……なぁんて」


「私ですか?」


「あぁ……例の伝説を塗り替えてみたいってこと?」


「あ~、アレ? 『15歳でAランクになった』ってヤツ。本人は『黒歴史だから、詮索禁止!!』って言ってたけど」


「そうそれ!! 興味ない!? みんな驚くよ!!」


「興味ないです」


「目立つだけで意味ないと思うけどなぁ~」


「同意。はい、捨て」


「あ、それ、ポン~」


……………………ま、まぁ、まだ始まったばかりだ。


会話に加わりつつ、牌を捨てると、ナツナツに鳴かれて持っていかれる。

そして、再びゲームが進む。


「そっかぁ……ざ~んねん。ところで、セレスの黒歴史って何だろうね? 気にならない?」


「気になるけど……」


「お義姉さまの目の前で堂々と情報収集できるわけも無いですし、実際 集めた訳じゃないですけど、『伝説のAランク冒険者』の情報には良いものしかありませんでしたね」


「嫉妬っぽいのはあったけどね。まぁ、何を黒歴史と思うかなんて、人それぞれだよ。案外、その『良い話』の中に原因があるかもしれないよ?」


「タチアナに聞いたら教えてくれるかなぁ~……」


「やめときなさい」


「そうですよ」


「人が隠したがっている情報を詮索するなんて、悪趣味だぞ?」


「はぁ~い。あ、それ、ポン~」


……………………いや、鳴けばいいというものではない。うん。

でも、私だけ鳴かれるのは、なんでや。


「でも、惜しいなぁ~、オズ伝説」


「そこに話 戻るの?」


「興味ないです。そもそも私、実際には5,000歳越えですし。偽りの名声のために、わざわざ目立つ意味はありません。…………まぁ、太極報を得られる一助になるかもしれませんが……」


「ちょっとデメリットが大き過ぎると思うな。太極報クエストが回って来る前に、変な輩に目を付けられる危険が大きいよ。ナツナツの記憶錯誤魔法を使っても」


「さすがに誤魔化せないかぁ~。あ、ルーシアナ、それ、ポン~」


……………………泣くぞ。


すでにナツナツの手牌は四枚のみ。確実にテンパイ中だ。分かりやすい。

(テンパイ:あと1牌で和了れる状態)


「ナツナツは、よくあんな面倒な魔法を常時発動出来ますよね……」


「極力 ルーシアナたちを思い出さないようにする暗示と、索引作成の妨害だっけ? でも、本当に効果あるのか分かりにくいから、ちょっと不安だよね?」


「まぁ、確かに」


「むぅ。疑うつもり~?」


そんなつもりは…………あるのか、ナビに同意するセリフだったもんね。


ここで、ナツナツの記憶錯誤魔法について、ざっくり説明しよう。

まず、人の記憶というのは、大体四つの段階を経て脳に記憶・読出されるらしい。

それは、『書き込み(ライティング)』『索引(インデックス)』『検索(サーチ)』『読み出し(リーディング)』である。

つまり、経験したことを脳に『記憶 = 書き込み』すると同時に、『タグ作成 = 索引』し、必要な時にキーとなる言葉・情景などから『タグを調べ = 検索』、ヒットした記憶を『思い出す = 読み出す』。

この内のどれかが正しく実行できなかった場合、記憶というのは『勘違い』『忘却』といった事象として現れる。


例えば私を覚えようとする場合、まず、私の顔や体格などの絵としての情報が脳に書き込まれる。

それとは別に『名前:ルーシアナ、目色:濃緑、髪色:金、体格:小さい……』みたいな、ざっくりとした検索に必要なタグが付与される。

思い出す時は、『ルーシアナ』のキーワードでタグを検索して、その他タグ情報と共に関連記憶を読み出す訳だ。


だから、例えば、時間の経過でタグが破損・改変したりすると、正しい記憶を読み出しにくくなる。

誤った記憶を読み出せば『勘違い』だし、何も読み出せなくなれば『忘却』だ。



で、この内、『書き込み』に作用する魔法は難しいらしい。…………いや、説明を聞いたけどよく分からなかったの。

ざっくり言えば、対象の警戒が最も高いので、干渉しづらいのだとか。


次に、『検索』『読み出し』に作用する魔法は簡単らしい。

だけど、精神属性魔法の対抗手段はここに重点を置いているし、対象が『思い出そうとする』時に発動しなければならないので、術式を対象の中に残さなければならない。

つまり、わざわざ痕跡を残すようなもので、即行バレる。


で、最後の『索引』に作用する魔法が、ナツナツが使っている認識錯誤魔法の正体で、言ってしまえば、タグ作成時に誤情報を紛れ込ませるらしいのだ。

この誤情報は、直接 私たちと対面している時には表に現れないので、『お前誰だっけ?』みたいなことは起こらないという。

対面していない時は、『忌避感』のような『思い出すのを躊躇う感情のタグ』も紛れ込ませるので、知人同士で話し合って『あれ? なんか、互いの記憶に違いがありすぎるな』みたいにボロが出ることも防げるのだとか。

『忌避感』なんて紛れ込ませて、こちらに悪感情を抱かれるか心配だったが、オズ曰く『思い出そうとする時に忌避感を感じるだけで、悪感情を抱くかどうかは思い出した記憶に依るので大丈夫です』とのこと。


で、この魔法は、オズが言った通りとても難しい……というか、面倒らしい。


『書き込み』の段階と違い、警戒は薄いので干渉は比較的簡単らしいのだが、『どんなタグを付けるのか?』は人の関心によって様々。

顔の印象を中心にタグ付けする人もいれば、対話した内容を中心にタグ付けする人、はたまた、周囲の環境を中心にタグ付けする人もいるらしい。

だから、術式も画一的なものでは対応出来ないので、状況に合わせて調整は必須。

本当なら、相手の思考などを読み取りながら調整するのがベストなのだろうが、それはさすがに出来ない。

では、どうしているかというと、《エラー・オール》で対象の思考をある程度誘導することで、調整しなければならない範囲を絞っているのだとか。

具体的には、目色、髪色、体格、声色など、文字に起こせる要素に誘導して、目色:赤銅、髪色:濃青など、全く異なる誤情報を植え付けているとのこと。

『文字に起こせる要素』というのは、誤情報だとしても正しいと誤認しやすいらしく、例え正しい私の顔を思い出したとしても、誤情報に合わせて記憶を改竄してしまうため、より安全らしい。


……………………この辺で勘弁して。思い出すだけで頭が茹で上がりそう…………


「あったまイタ……」


「お、おぅ? いきなりどったの~?」


「夢の中なのですから、体調が原因ではないはずですが……」


おっと、しまった。思わず心の声が漏れた。


「いや、以前説明した記憶錯誤魔法の内容を思い出していたみたい。まぁ、ルーシアナには難しすぎるかな……」


「否定はしない。はい、リーチ」


「ロ~ン♪」


「げっふぁああ……」


牌を捨てた姿勢のまま、机に倒れ込む。

殊の外少ない自分の捨て牌が、体に喰い込んだ。


「こらこら。牌を薙ぎ払わないの」


「も~~~~いやぁぁ~~~~!!」


「でも、自分の牌以外は巻き込まないように倒れるのはさすがだね……」


「変なところに感心しないで下さい、ナビ」


『あ~~~~!!!!』と意味の無い声を上げて、不満をぶち撒ける。


四連放銃(スーレンホウジュウ)とか、立直一発栄和(リーチイッパツロンホー)的な役は無いの!?」


「え~と…………『四連続で振り込む』、『リーチで捨てた牌で和了られる』と役有りってことですか?」


「無いよ…………でも、『どうしても』というなら、五連放銃にして、次から入れてもいいけど…………」


「ルールを変えた瞬間、微妙に負け方が変わって役にならない気がするな~」


「そんなことっ……………………ないよ」


「お姉ちゃん……」


「もう無理だよ……オチは見えたよ……」


「どうせ無理だから、一番高い役と同じ得点にしてあげるね~」


「言ったね!? 見てなさいよ!!」


…………………………………………

当然のようにツモ和了りされて、負けました。

というか、私の捨て牌をロンしなきゃいいだけなんだから、役が成立するはずもなかったのだけど。

(ツモ和了り:自分が引いた牌で役が完成し和了ること)


作者は、麻雀のルールをよく知らない。故に、ルール的に間違ったことを言っててもスルーしてください。

ルーシアナに『ロン!!』とか『カン!!』とか言わせたかっただけなのです。 → 結論を言うと、言わせてない。(なぜだ)

なお、書いてる時にイメージしてたのは、女子高生が麻雀する方ではなく、戦後復興期に雀聖と呼ばれる方。


記憶の方法云々については、うろ覚えの情報を元に書いたフィクションなので御注意下さい。

というか、昔こんな感じの話を聞いた気がするんですが、ググってもそれっぽい説明が出てこない…………ので、元々フィクションの話だったのではないかと。


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