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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
10章 遭遇!! 王都の住人
243/264

第232話 ゴーレム娘、義理を果たす。……ついでにお節介を焼く

221 ~ 252話を連投中。


10/9(土) 11:00 ~ 18:30くらいまで。(前回実績:1話/13分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

結局、ユーフィさんが満足したのは、お昼を回ってお腹が鳴った時だった。私の。

…………正確にはユーフィさんは満足したわけではなく、私のお腹の音を聞いて『さすがに拘束しすぎた』と遠慮しただけだろう。

『もし良かったら、アトリエに来て。ちゃんとモデル料も払うから』と、自宅兼アトリエの住所を渡されたし。


で、大量のスケッチから各々気に入った絵を二枚ずつ選び、サクッと着色して貰った。

これも《クイック・クロッキー》の応用とのこと。


『長いこと足止めしちゃってごめんね。モデル料にはならないけど、お昼ご飯でも奢るよ』と言われた私たちは、仮名:パツ子さんの飲食店 (多分 屋台) を探しているところである。

ちなみに、ユーフィさんは翼ごと体を覆えるような大きなコートとフードを羽織り、翼が他人に当たらないようにしていた。


「やっぱり人多いね……」


「初めて王都に来たときは、わたしもそう思いました」


「ユーフィさん、大丈夫ですか?」


『だ、だいじょぶ……』


フードのせいではっきりしないが、若干青ざめている気がする。


「やっぱり、翼?」


「大変そうですね……」


「というか、今までよく暮らしてこれましたね」


『人混みが嫌でヒキコモリ気味に → 家でやることない → 本、絵画、音楽で暇を潰す → 受け手側から創り手側に → 芸術家。コレ、鳥系亜人の典型』


「安いな、芸術家……」


さっき、あんなに熱く語ってた人とは思えない。


『家から出ないで済むなら出たくない……専属のお手伝いさんが欲しい……喋るのも面倒だから、勝手に察して色々してくれると尚良し。あと、景色の方から描かれに来てくれるといいなぁ…………』


「……………………いや、ほら、やっぱり現場だからこそ感じる気配とか感覚とか、あるんじゃない?」


『そういうのも、まとめて来て欲しい…………』


割とダメ人間だった、この人。


とりあえず、ユーフィさんを中心に、進行方向に私、後方左右にオズとフォズさんを配したデルタ・フォームと取った。

これでユーフィさんが周りを気にする必要は無いだろう。


…………どこの要人だ。少なくとも、テモテカールの領主たちよりも手厚い警護だよ。


なるべく他人の邪魔にならないよう、空いている道を選んで行く。

現在地とパツ子さんから聞いた番地を比較しながら、足早に進んでいった。


「番地を聞いたときからなんとなく察してたけど、明らかに端っこだよね」


「ですね。多分ですけど、動線が悪くて単価が安い場所なんじゃないかと」


具体的に言うと、四角い建物の角っちょ。

階段は四辺の壁中央付近にあるから、お客さんがぶらりと立ち寄るような場所では無いのは確実。

こういうところでやっていけるのは、お客さんがそこを目的としてくれるような、独自の強味を有するユニークなお店であることが多い。

『安い』以外にアピールポイントが無かったパツ子さんのお店がある場所としては、あまり適切とは思えない。


…………………………………………

目的の場所に近付くに連れて徐々に人気が無くなっていき、目に付くお店も玄人好みのマニアックなものばかりになっていった。

ちゃんと許可を取っているのか不安になるようなお店もあったが…………積層市場のような場所なら管理もしやすいだろうし、違法商店ではあるまい。……たぶん。


そして、ようやく発見したパツ子さんは…………


「……………………」


「……………………」


「……………………」


『……………………死んでる』


いや、死んでませんよ、ユーフィさん。死んだように消沈してるけど。


お昼も終わったばかりだというのに、大量に売れ残ったと思われる料理が悲しい。でも、他に比べて確かに安かった。

声を掛けるのを躊躇っていると、気配を感じたのか、パツ子さんがのろのろと顔を上げた。

視線があった途端、生気が戻る。


「…………あ!! 本当に来てくれたの!?」


「いえ、やっぱり帰ろうかと思っていたところです」


「お願い帰らないでぇ~~~~!! 何でもいいから買ってって~~~~!!!!」


「えぇぇ…………」


「本気の『えぇぇ…………』が胸に突き刺さる……!! でも、負けない……!!」


『ぽよよん』と背中で弾力が弾けたので、帰るのは保留に『お姉ちゃん?』いや、何でもありません。

とりあえず…………


「え~と……」


「どれにする? オススメとか無いけど、一通り買ってみる!?」


「その、なにがなんでも買わせようとする強引さは評価するけど、まずは……」


「まずは一本?」


しつこい。


それだけ切羽詰まってるのかもしれないが、客引きとしては0点だ。

商品を勧めるなら、客に『購入を強制されている』と思わせるのは逆効果だ。

買い物の主体は、常に客にあることを忘れてはいけない。


そんな商人の心得はさておいて、『逃がさん!!』と言わんばかりに腕に抱き着くパツ子さんの肩を軽く押し返し、ちょっと距離を取ってもらう。


「…………名前、教えてくれません? それとも、パツ子さんで確定していい?」


「……………………そういえば、名乗って無かったね」


言われて初めて気が付いた、とばかりにパツ子さんは目を瞬かせた。

ちなみに…………


『パツ子? …………パツ子。ぱつぱつぱつぱつパツ子さ~ん♪』


「あれ? もしかして、ユーフィさん気に入りました?」


「…………これって、パツ子さんの本名 聞いても、修正できないパターンなのでは……?」


……………………多分、そう。





パツ子さんは、自分のことを『パルツェ』と名乗った。

家名を名乗らなかったのは、何か意図があるのか無いのかは不明。家名を重視していないせいで、名乗らない人も多いし。

逆に、家名しか名乗らない人は、個人ではなく、その家の代表としての付き合いを望んでいるとも言える。

なお、名前を聞いたユーフィさんは、『じゃあ、パッツンだね』と言っていたので、フォズさんの予感は多分 的中する。合掌。


…………まぁ、それはともかく。

私は陳列された調理済み料理の中から、比較的マシだと思ったものをいくつか購入し、一口ずつ味見(毒見)していた。


「えっと…………どうかな?」


「…………………………………………」


さて、なんと答えるべきか?


そもそもの大前提として、私は王都の料理が好みではない。

これは、野菜の鮮度が悪いのは元より、刺激の強い調味料で全てを塗り潰してしまうような、濃い味付けが好みではないためだ。

気取るつもりは無いが、調味料は素材が持つ本来の魅力を引き立てるパートナーであってほしい。


で、パルツェさんの料理だが、まず、王都の料理にしては味付けが薄い。

ただ、これは私が好むタイプの味付けを目的としたものではなく、単に王都式調理法からコストの高い香辛料の類を減らして、価格を抑えているだけのよう。


次に鮮度だが、王都で購入できる食材の内、肉類は良いものが出回っている。

これは、王都周辺でオークやミノタウルスなどの獣人から肉が得られるためで、これらは田舎で得られる猪や野牛の肉に比べて上質な場合が多い。

…………を、前提に考えると、肉類もあまり良いとは言えない。

で、王都で致命的な野菜については、もう、なんというか、話題に上げることすら躊躇われる…………


頑張って、どうにか、ムリヤリ……に良い所を上げるなら、それら質の悪い食材を美味しくするべく施された技術は、見た目と香りだけならそれなりの料理に見えるので、パルツェさんの調理の腕は決して悪く無いことか。

あと、口直しに添えられているハーブだけは、他の野菜に比べれば鮮度が良く、その目的である後味を消すことには成功している。


さて…………以上を踏まえて『なんと答えるべきか?』だが、親切にして貰ったのは確かだけど、その程度と言えばその程度の付き合い。

一応の経営を続けていられているのなら、需要はあると考えられる。

私は幸運にも、食事に困るようなことが無く、味に文句を言う余裕があるが、世の中には『食べられるだけで幸運。味も質も二の次。生きるためなら毒だって食らう』という人もいるだろう。…………あ、いや、この料理が毒だと言いたいわけではなく。

そこまで行かずとも、『安くて助かっている』という人がいるなら、余計なことを言って結果的に値上げすることになってしまっては申し訳ない。


でも、自分の料理が『安い』以外に推せる部分が無いということを、半ば自覚しているっぽいにも拘わらず、『どうかな?』と味に関する感想を求めているということは、『料理人として成長したいという気持ちの現れだ』とも考えられる。

ならば、ここで適当な回答をするということは、その気持ちを踏みにじり、成長を阻害することに他ならない。

それは、気紛れを元にした親切だったとしても、恩を仇で返す行為に他ならない。


「……………………」


「……………………」


「…………え~と、ですね?」


「う、うん……」


その表情からは、微かな期待が滲んでいるような気がする。

それは果たして何に対するどんな期待なのか…………

私には、判断が付かなかった。


「人生 一期一会。再び会うことは無いと考え、無難に答えてお茶を濁すか。

人生 一期一会。せっかく知り合えた機会を大切に、心の臓 貫く諫言をすべきか。

貴女の望みはどちら?」


「それほとんど言ってるのと同じだーーーー!!!!」


なので、ズルい私はパルツェさんに問うフリをして、本当のことを言ってしまうのだった。

いや、まぁ、結局のところ、私が『あ~です こ~です』と言っても、聞く耳を持つかどうかはパルツェさん次第だし、結果として値上がりして『安いから買ってる』人が困ったとしても、別にパルツェさんは慈善事業でお店を開いている訳でもないので、増益のために値上げを選択したなら仕方の無い話だろう。

でも、まぁ、一応…………


「お昼も回ったばかりなのに、ほとんど売れてませんけど、お得意様とかいないんですか? こう…………言い方が悪いですけど、安いから買ってる、みたいな人」


「いるよ? いるけど、そういう人は、閉店間際にやって来て、『捨てるくらいなら、半値で買ってやるよ』って連中だから、正直、来なくていい。

…………でも、あんなのでも来ないと、今のギリギリ未満の生活も維持できない……………………ぅぅ」


足下見られてんな…………

両手で顔を覆って泣き言をいうパルツェさんに、まぁ、なんというか、追い討ちに近い問いをする。


「で、本音の感想を聞きたいですか?」


「……………………聞かせて」


「根本的に食材の品質が悪いです。王都風の味付けは好みではないので、味が薄いのはそれ程 低評価ではないですが、その分 食材の品質の悪さが全面に押し出されてしまっていますね」


「ぐっふぅ……」


「ル、ルシーアちゃん!! さすがに言い過ぎですよ!?」


「まぁ、そうかもしれないけど、フォズさんも食べて感想を言ってあげて?」


「…………………………………………」


「フォズちゃん!? その逡巡はボクに効果的!!」


「す、すみません!!」


私が差し出した料理 (お好み焼きを串に刺したみたいなの) を見つめて思わず固まってしまったフォズさんが、パルツェさんにクリティカル。

私と違って王都の生活が長い分、ヤバ気な料理への鼻が効くのかもしれない。


『ルシアン、私も貰っていい?』


「お姉ちゃん、私も」


「ふ、二人が食べるなら……」


「良いけど、覚悟して食べてね。調理の腕はいいから、見た目と香りからの味のギャップがすごいよ」


「しくしくし…………あれ? ボク、今 誉められた?」


「まぁ、元が悪いから、せっかくの努力も報われてないですけど」


食感の良くない筋肉(すじにく)に包丁を入れて食べやすくするとか、旨味の足りない野菜に下味を付けるとか、元の食材が良ければ不要なはずのひと手間に金と労力を奪われており、どう頑張っても普通以下の料理にしかなっていない。

そして、これ以上手を加えたとしても、王都式調理法の最低位にしかならない。

独自色を出すなら、今のままの方がマシだろう。


そんな料理を渡された三人は、一口それを口にすると何とも言えない顔になった。


「さしあたって、私から出来るアドバイスは、『目利きの能力を上げましょう』って所ですかね?

食材がマシなら、他のお店にも負けない味……かどうかは分かりませんけど、特徴的な味になると思います。この味付けなら上京者の心を鷲掴み……には、ちょっとポイントがズレてますけど、十分興味を引けますよ。

あ、あと、ハーブだけは『別の人が仕入れたのかな?』って思うくらい品質が良かったですね。他の食材もアレくらいのものを仕入れられるとよいですね」


「あはは……ありがとう。実は、ハーブだけは購入した物じゃ無いんだよね」


「そうなんですか?」


もしかして、自家栽培ですか? 家庭菜園的な。

でも、王都の集合住宅のベランダじゃ、いくらなんでもスペース的に狭過ぎる。

考えられる場所としては屋上が思い当たるが、確か借りること可能らしいけど、無料ではなかったはず。

大変申し訳ないが、パルツェさんにそんな余裕があるようには思えない。


自家栽培でないとなると……


「もしかして、王都の外に採取に行ってます? ひとりで?」


「え? パルツェさん、冒険者も兼業してるんですか? でも、ひとりは危ないですよ」


「とてもそうには見えないんですけど…………まぁ、でも、一番近い森なら、ひとりでも、ギリギリ……なんとか?」


『そうなの?』


「なーんでナチュラルにひとりで行くと思われてるのかなぁ~? まぁ、確かに、そんなことに付き合ってくれる知り合いなんていないんだけどさ…………

そうじゃなくて、ボク、午前中はここの屋上公園で整備の仕事してるの。具体的に言うと、薬草なんかの手入れだね。

で、良い薬草を育てるには生育の悪いものを間引いたりするんだけど、屋上を全部回ると結構な量になるんだ~。でもそういうのは、薬草としては使えないけど、ハーブとしてはむしろ良品なんだよね。

ホントはそれらも選別して食材屋に回るんだけど、その前に従業員特権で安く買わせて貰ってるの」


なるほど。

薬草 (素材) とハーブ (食材) では、目的とする成分が異なるから、そういう物も出てくるのか。


「……………………ハーブに使いたいからって、間引かなくていいのを間引いてたりしてないですよね?」


「はっはー。言われると思ったけど、ホントに言ったねー。とりあえず、そんなことしてないよ。もし、万一、そんなことしてクビになったら、ボク、生きていけない、し? ね?」


「うん、ごめん。その虚ろな目をして近付いてこないで」


「あははー。せめて、料理屋だけで生活出来るようにならないとねー。……………………ホント、何してるんだろね、ボク」


『はぁ……』ととても疲れた表情でタメ息を吐き、肩を落とすパルツェさん。

突然の落差に狼狽える。


先程までの明るさは、もしかして空元気だったか?


「……………………ねぇ。一期一会で、適当に聞き流してくれていいから、ちょっと愚痴を聞いてくれない?」


「え? 嫌ですけど」


「うん、ありがちょーーーーい!?」


断られると思ってなかったのか、変な単語が誕生した。


「そこは『いいですよ』って、優しくしてくれるところじゃないのかなぁ!?」


「知ってます? 愚痴って、話して解消されるストレスよりも、聞かされて溜まるストレスの方が大きいんですよ? つまり、ストレスはエンドレス。徒労の極み」


「…………諸行無常。この世に神などいない」


「それ、『万物は絶えず変化し、不変は存在しない』って意味で、『世の中 冷たい人ばかり』とかって意味は無いですよ」


無情とは違うのだよ、無情とは。

あと、神はいるっぽいけどね。いちいち一個人に関わるつもりは無さそうだけど。


足下に蹲っていじけるパルツェさんの肩を叩く。

さて、ちょっと真面目な話をしましょうか。


「それよりも、実のある話をしましょう」


「み~の~あ~る~は~な~し~?」


「その通りです。パルツェさんが目指すのは、商人としての大成? それとも、料理人としての大成? それとも、そんな壮大なこと考えてなくて、普通の生活が出来る程度に稼げればOK?」


「ぬ…………」


話の流れが変わったと思ったのか、パルツェさんが困惑した表情でこちらを見上げる。


「私は本職のアドバイザーでも、プロの商人・料理人でもなく、ただの一般人でしか無いですけどね。話して問題を整理すれば、何か光明が見えるかもしれませんよ? 『目利き能力を上げましょう』って言ったとき、なんだか微妙な顔をしてましたよね」


「ぁ~…………」


「良い食材を仕入れられないのは、目利きとは別に問題がある…………そんな感じでしたよ」


「……………………」


さすがに、『ありがとう!! 実はね……』と、ペラペラペラペラ話し出すほど、パルツェさんも能天気ではない。

瞳に疑念の色を滲ませて、私の真意を伺う。


まぁ、私としては別に、屋上で案内してくれた分以上の世話を焼くつもりはないのだが。

ただ、パルツェさんのストレス解消以外に何の意味もない愚痴を聞かされるくらいなら、何かしら意味のある結果に結び付く相談の方がマシなだけだ。

あとは…………パルツェさん次第だけど、私にとってもメリットのある展開になったらいいなぁ、とは期待もしてるけど。


パルツェさんは立ち上がると少し下がって、じっとこちらを見る。

そこに、先程までのふざけた様子は無い。


「えっと…………なんでわざわざそんなことをしてくれるの?」


「大したことはしてないと思いますけど。さっき、パルツェさんがしてきたお願いに応えて、『話を聞きましょう』と言ってるだけです。

ただ、受動的に話を聞かされるのではなく、能動的に話を聞き出すって違いはありますけど。それで必ずしも良い回答が出来るとまでは言いませんよ」


「……………………」


「これは、先程 屋上で案内してくれた親切に対するお礼程度の意味しかないつもりです。『話をしてくれた』に対する『話を聞く』。そんなに警戒するほど、過剰なお返しでもないと思いますけどね」


「…………そう、だね」


「それでも何か、私が主体的に行動する理由が欲しいというなら、パルツェさんの解決法次第で私にもメリットがある…………かもしれないからです」


「それは?」


「まだ秘密です。パルツェさんにとってもメリットのあることですので、これ目当てに本心を誤魔化されたくは無いですから」


「ぁぅ……………………」


恐らく、パルツェさんにとってソレは、安易に納得できる分かりやすい『理由』だったろうが、これに価値を見出だされて良からぬことを考えられても困る。

そんな見方をされた段階で私はもう関わるのをやめるだろうし、そしたら、私たちが狙われかねない余計な情報が無意味に拡散する危険を増やしただけになるのだから。


「どうでしょう?

一期一会。無難に『大変なの』『大変ですね』で別れるのも、正しい選択ですよ? 貴女と私は、それこそ会ったばかりの他人ですし、貴女の弱みに付け込んで良からぬことを考えている悪党の可能性もあるんですから。単純に15の小娘が、それっぽいこと言ってからかってるだけ、という線も捨てがたいですね」


「え? 15歳? 10歳とかじゃなくて?」


「う~ん、ユーフィさんといい、パルツェさんといい、ちょっとお嬢ちゃんとお話しようか?」


「ひぃぃ!!!? これまでに無い威圧感!? 『若く見える』って褒め言葉だよね!?」


「時と場合とニュアンスに依るんだよ、お~けぃ?」


「おーけー!! おーーーーるこれくとおおぉぉぉぉ!!!!」


笑顔で ずいずいぐりぐり 距離を詰める。

大袈裟なくらいに慌てて両手を上げるパツ子さんに溜飲を下げた。まぁ、本気で怒ったわけでもないが。


そんなに怯える必要なんてないのに……

でも、Gと同じでちっこいと下方の死角に入られるから、恐怖が増す効果がって誰がGやねん。黒くないやろ。


「で、どうします? そろそろ空腹が限界ですし、区切りを付けて食事を買いに行きたいんですけど。…………別に、『考えておくから、またの機会に』でも良いですけどね」


『会えたらですけど』と、内心呟く。

今日はフォズさんと遊ぶ…………遊びになってるかな? 今日の色々……………………ま、まぁ、とにかく、フォズさんと遊ぶ流れでここに来たのであって、それ以外の目的でここに来ることは、ほぼ無い。

今後、フォズさんと遊ぶこともあるだろうけど、この広い王都で同じ場所に遊びに来る機会が巡ってくるのは、随分先のことになるだろう。

そして、そんなに時間が経ってしまっては、もう今とは状況は変わってしまっているに違いない。


「……………………」


「パルツェさん?」


「……………………ごめん。貴女を信用できないって訳じゃ無いんだけど…………」


「保留にしとく?」


「ぁ……うん…………」


長く悩んだパルツェさんだったが、意を決したように開いた口からは、断りの言葉が吐き出された。

何をもってそう判断したかは私には分からないが、まぁ、パルツェさんがそう決めたのなら、私にこれ以上出来ることはない。


「ごめんなさい。せっかく気を使ってくれたのに」


「いいよ。気にしないで」


今にも前言を撤回しそうな雰囲気で、謝罪を重ねるパルツェさんに軽い感じで返事を返す。


…………う~ん、気になるな。やっぱり、用が無くても近いうちに顔を出そうかな……?


気になって仕方なくなれば、本能が勝手に顔を出すよう足を向けてくれるだろう。

だが、今日のところは、一先ず保留だ。食事にしよう。


「さて。話も終わったし、みんな、どうする? ここで、お昼…………」


『ここで、お昼でも買ってみる?』と、続けるつもりで、オズたちを振り返る。

……………………だが、そこには誰もいなかった。


「…………………………………………」


「…………ごめん。言うタイミング無かったけど、結構前に三人ともどこか行っちゃったよ?」


…………言ってよ。


『すまん。私も伝えるタイミングを見誤った』


…………………………………………


「……………………パルツェさん」


「うん?」


「ある意味、愚痴を聞いたようなものだし、お礼を求めていい?」


「え? まぁ、いいけど。ボクにできることなら」


「胸を揉みます」


「うんんんんんん!?」


『うん』と発音はしたので、(オズ)の居ぬ間に揉みしだいた。

過去一だったと言っておく。


なお、過剰に払ってもらったお礼 (あくまで私見) の分は、現状で出来そうなアドバイスをしておきました。

レシピの改良とか、宣伝方法とか。


ユーフィさんは多分、緘黙で話せなくなる → 筆談で話すようになる → 筆談能力向上 → 緘黙が治る → 口を使うより筆談の方が速い & 口を動かすのが面倒 になった結果、喋らないのではないかと……


O.Kの正式名称は、oll correct (all correct の表記ゆれ) が有力らしいです。


「話して解消されるストレスよりも、聞かされて溜まるストレスの方が大きい」って、どっかで聞いた気がするんですが、ググっても出てこないというか、逆の説明が出てくるくらいなので、間違いかもしれません。


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