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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
10章 遭遇!! 王都の住人
240/264

第229 ゴーレム娘 can fly without 飛行ユニット

221 ~ 252話を連投中。


10/9(土) 11:00 ~ 18:30くらいまで。(前回実績:1話/13分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「ぅぅぅぅ~~~~…………ホ、ホントに怒りますよぉ~……」


「あ、やべ」


怒るより先に泣き出しそうになっているフォズさんに気が付いて、そろそろ柵から離れることにする。


ちょっとやり過ぎた…………反省 反省。

でも、フォズさんの泣きそうな顔はプライスレス。

オズとは違った可愛らしさがありますね。苛めたくなると言いますか…………うん。ホントにからかい過ぎに注意しよう。


震え過ぎて若干 足取りが覚束なくなりつつあるフォズさんを伴って、ベンチまで戻る。

フォズさんを間に挟んで座らせ、両手を合わせて謝った。


「ごめんね。ちょっとイジワルし過ぎちゃった」


「ごめんなさい」


「ホ、ホントですよ、もう!! …………もう!!」


オズが私にそうしてくれたように、ハンカチに吸わせて涙を拭う。

…………うっかり、オズにされたように軽くキスしかけたのは秘密。あぶない あぶない。


平謝りを繰り返して、フォズさんの機嫌を取り、左右からギュギュっと抱き付いて誤魔化す。

しばらく維持されたフォズさんの頬の膨らみも、割とすぐにしぼんでいき、『もう……』という嘆息と共にいつもの笑みを形作った。

そのまま両手を私たちの頭に乗せ、ぎこちなく髪を撫でてくるのを黙って受け入れる。

オズとも義姉さんとも異なる感触が、おもしろくて心地よい。


「二人とも、すっごく手触りが良いですよね。ずっと撫でていたいくらい」


「髪はちょっと自慢なの。好きに触っていいよ」


「ありがとう。…………ふふふっ。妹が出来たみたいで嬉しいです」


しばらく、フォズさんの好きに撫でられるがままでいた。


『…………ね~ね~。わたしたちもそろそろ外に出た~い。出ても大丈夫でしょ?』


「あ、ごめん、忘れてた」


が、それはすぐに終わりを迎える。

私の胸元から、レミィちゃんを抱えたナツナツがひょっこりと顔を出したからだ。


『ぶぅ!!』


『―――――――― (`Д´)ノ』


おぉ……!! レミィ殿が荒ぶっておられるぞ~。


「ごめんね、レミィちゃん、ナツナツちゃん」


「え~と…………ひとり絵を描いてる人がいますけど、結構 離れてますし、今の隠蔽状態で出てくる分には大丈夫じゃないですかね?」


『え~~!! 結構コレ面倒なんだよ~!?』


『―――――――― (`皿´)』


オズの提案に、ぶぅ垂れる妖精と精霊。仲良いな。


「なんかチラチラ見てるし、念のため。ね? 『臆病は怠惰に勝る』なんて言うしさ」


『聞いたこと無いよ~?』


『―――――――― (ヾノ・∀・`)』


ごめんね、適当言った。

要するに、慎重になり過ぎて悪いことは無いってことだよ。


『あると思うが……』


しゃらっぷ。

ぼそっと溢したナビの呟きをスパンッと断ち切り、ハーフコートの合わせを解いて二人を解放する。

レミィちゃんを抱えたまま『しぶしぶ』と敢えて口にして出てくると、フォズさんの膝の上に座り大きく伸びをした。


『う~~ん……これじゃあ、いつもと変わんないなぁ~』


「ごめんね。あ、でも、声なら出せるようにできるか」


『う?』


「《リバース・エコー》」


「《現影錯誤》」


私が周囲1m程度の範囲に消音魔法を、オズが周囲に対して幻覚魔法を発動させる。


屋外とはいえ、あの絵描きさんの位置なら声も届いてもおかしくは無いが、会話内容の詳細が分かるほど近い訳でもない。

《リバース・エコー》の消音効果を応用して、無音にするのではなく曖昧化させる。

『何を言っているのかは分からないけど、雰囲気は伝わる』くらいが丁度いい。


ここにオズの《現影錯誤》。

私の《ハリューション》同様、対象の精神に作用し、『違和感を覚えても、勘違いだと思いやすくなる』ように誘導する。

幻覚魔法というより錯覚魔法とでも言った方が良いような効果だが、割と実用性は高い。

普段から無意識にしていることを強化する形になるから、抵抗が薄いんじゃないかと思う。


本人たちの隠蔽魔法もあるし、このくらいしておけば大丈夫だろう。

私たちの魔法効果が分からなくて疑問符を浮かべていたフォズさんにも、こんな感じの説明をしておく。


「はぁ。消音……いえ、茫音魔法、ですかね? まぁ、そちらはともかく、錯覚魔法の方はイマイチ使い道が分からないですけど、すごいですね?」


「その口調、よく分かってないね? 戦闘でも日常でも、よく使うんだよ?」


「そうなんですか?」


「戦闘、特に近接戦闘となると、相手の動きを全て目で追うのは不可能だから、視覚以外の五感で見えない部分を補うんだよね。フェイントって言うのは、そういう曖昧になってる部分に誤情報を送り込むことだけど、人間に限らず生き物って『こうなってほしい』『こうなるに違いない』って思ってるものだから。そういう感情を強化されると、フェイントによる違和感を覚えても気付きにくくなるんだよね」


「なる、ほど?」


「日常は…………えっと、ほら……………………私たち、目立つから。同じ顔してるし。だから、注目されない限りは、『なんだ、ただの子供か』って思われるようにしてるの」


「なるほど。確かに」


「その反応は理解できるけど、納得したくない」


オズの髪色くらい変えておけば良かったかなー。でも、あの時はやり方 良く分かってなかったしなー。今から変えるのもなー。


「ぬ~ん……でも、それ掛けるなら、隠蔽無くてもいいんじゃない~?」


「《現影錯誤》は意識して注目されると効果がないですからね。今日は、お姉ちゃんを独り占めして良いですから、我慢してくれませんか?」


「なら、仕方無いかなぁ♪」


「あれぇ~? おっかしいなぁ? 私の話なのに私の意見が求められなかったぞぅ?」


「ふふふっ。じゃあ、オズリアちゃんにはレミィちゃんをどうぞ。今日は、毛玉みたいなネコさんですよ」


「これ、実際に存在する種なんですかね? あ、すごく良い手触り……」


今日のレミィちゃんは、フォズさんの言った通り、まんまるい毛玉に小さな手足と尻尾の不思議なネコ形態だった。

え? なんで見たことも無い種類で鳴き声も無いのに、ネコだって分かるかって?

…………………………………………難しいこと聞きますね?


オズが膝上のレミィちゃんをモフる様子を微笑ましく見つめるフォズさんを横目に、私も久し振りにナツナツを構うことに集中する。


「何かしてほしいことでもあるの?」


「ん~? 特に無いかなぁ……」


「特に理由もないのに、なんで私の独り占めで納得したのか…………」


「えー、分かんないかなぁ? 何もしなくても、一緒にいるのが嬉しいんだよ~」


「そ、そぅ……」


ぐふ…………油断した。不意討ち。


顔がにやけるのを全力で抑えつつ、気を紛らわせるようにナツナツの髪を手櫛で梳く。

いつも通りに細くさらさらで心地よい…………

さすがに、櫛を取り出して梳いたらバレるかな? ……………………バレそうだな。


「…………今日のお風呂は、私が体洗ってあげるね」


「え!? それはもしかして、婉曲的な『お前臭い』発言!?」


『―――――――― (#゜Д゜)ノ』


「ルーシアちゃん!?」


「お姉ちゃん?」


「ひっどい誤解だ!!」


ナツナツのセリフに即行即応したのはレミィちゃんだった。

毛を逆立てて、イガグリのようになって突っ込んでくる。


…………って、


「いっっっった!? ホントに刺さってる!!」


「あ、それ、レミィちゃんが怒った時にする《イガボール》です。よく、サリーちゃんがやられてます。ケガする程じゃないので安心してくださいね。ちなみに、針より細いので、布地は貫通しますよ」


「あぁ、ニードル系の攻撃魔法なんですね。やりようによっては、エグい痛みが残りますけど」


「不安になってきたーーーー!?」


離そうにも触ると刺さるし、魔法で吹っ飛ばす訳にもいかないし、どうすれば!? (解:ガマン)


「やったれ、レミィちゃん♡」


『―――――――― (*´▽`*)ゞ』


「こら、ナツナツーーーー!!!!」


ナツナツの悪ノリに、ますます突き刺さる光棘。


なんだコレ……例えるなら、細胞と細胞の隙間を縫って毛針が侵入し、勝手気ままに動き回られる感じ……!?

痛点を貫かれた痛みというより、痛点の刺激が伝達される神経を直接 触られているイメージだ……!!


いたい。……でも、それ以上に気持ち悪い。

見た目に沿わず、なんて拷問に向いた能力を持ってるんだ、この子は……


そんな拷問じみた理不尽に耐えていると、


――――ゴッ!!!!


「ぉわっ」


「うひゃぁぁ!?」


『―――――――― \(◎о◎)/』


「きゃ……」


「ん……」


唐突な暴風が、一瞬だけ駆け抜けた。


宙に浮くナツナツが突風に煽られバランスを崩す。

そのまま吹き飛ばされる前に掴み、レミィちゃんと一緒に懐へ抱え込んだ。

オズとフォズさんの二人は、顔を守るように片手を翳して風が治まるのを待っている。


……咄嗟に行動してから気が付いたけど、ナツナツがレミィちゃんに串刺しにされる危険があったかも?

実際には、レミィちゃんも突風に驚くと同時に光棘を解除していたから、そんなことにはならなかったけど。

次があるかは知らないけど、気を付けよう。


「びっくりした」


「にゅぅぅぅぅ……」


『―――――――― ((◎д◎))』


「久し振りに吹きましたねぇ……」


「ですね」


突風はその名が示す通り、唐突に吹き荒れ、唐突に吹き止んだ。


私も詳しいことは知らないが、この王都には時折このような強風が吹く。

近くに高い山があるわけでもなく、特に天気が悪いわけでもなく、決まって西から東へと吹き抜けるのだ。

『西にある風の国の影響じゃないのか?』というのが、王都に住む人の大方の想像なのだけど…………特別運搬クエストで王国西部に行った時に、ほんの気まぐれに地元の人たちに聞いてみたのだが、『なにそれ?』と不思議な顔をされた。

あの辺は、風が吹かない時はとことん吹かないが、荒れるときはとことん荒れる、緩急激しい気候なのだとか。

暴風に馴染みはあれども、『突』風には縁がない地域らしいのだ。


もちろん、気象は大小様々な事象の相互作用の結果であるため、西部では微風のような事象が王都では突風として現れている可能性もある。

若しくは、王都と西部の間に何か原因となる何かがあるのだろうが…………原因を究明しようにも、その取っ掛かりも分からないし、分かったところで何ができる訳でも無い。

まぁ、特に被害もないから、どうでもいいんだけど。


「ぁぅっ、ぇぅ、ぁぅ~~~~……!!!!」


「ん?」


そんなことを考えていたら、視界の端を無数の白が掠めていった。

同時に、動転した色に染まった、消え入りそうな声も聞こえる。


無数の白は、無数の紙だった。

突風に巻き込まれて宙に舞い、すでに無風の宙の中、慣性と空気抵抗に乗ってヒラヒラと宙を滑る。

その真下。わたわたと両手両足を動かしながら、帽子を被った女性が追いかけていった。

…………悪口のつもりはないけど…………なんとも どんくさそうな雰囲気である。


「最初からいた絵描きさんか……」


他にこの広場に人はいなかったのだから、当然ではあるが。

察するに、束ねていた下絵の数々が、先程の突風でバラされ、巻き上げられてしまったのだろう。

このまま屋上公園に落ちてくるなら手伝うのもやぶさかではないが、あの様子だと外に落ちてしまいそうだ。

さすがに、何の接点もない相手に、そこまでのことをする理由も……


『ルーシアナ。あの紙、お前たちの姿が描かれていなかったか?』


『…………何してくれとんねん、あの絵描き』


別に風景の一部として描きこまれていたり、よしんばメインの被写体 (?) にされていたとしても、適当にデフォルメしてくれるなら、文句を言うつもりもない。

無いけど、ナビがわざわざ教えてくれるってことは、そこそこ分かるように描かれているってことだよね?

いや、待て。だからと言って、舞い散るあれらを回収する義理が私に発生したわけでもないし……


…………………………………………


『…………ナツナツの姿、ちゃんと隠れていたよね? 描かれてはいないよね?』


『それはなんとも言えん……』


いや、分かる。ナツナツが描かれている可能性は、限りなく低い。

そもそも普段からナツナツが掛けてる隠蔽魔法に加えて、消音魔法と錯覚魔法を重ね掛けしたし、それらが無かったとしても、人形サイズでしかないナツナツの詳細が見えていたとも思えない。

…………が、そう思ってかなり油断していたことは確かだ。


誰だよ、偉そうに『臆病は怠惰に勝る』とか言ったのは。私だよ。なら臆病に慎重に行動しときなさいよ。ごめんなさい。


『…………しかたない』


多分、きっと、恐らく、十中八九。

ナツナツの姿が描かれていることは無いはずだけど、気になってしまったなら仕方が無いのだ。

私たちの姿を勝手に描いたことを口実に、ちょっと中身を拝見させてもらおう。

で、口止めしよう。


「はぁぁぁぁ…………ごめん、ちょっと行ってくるね」


「いってらっしゃい、お姉ちゃん」


「え? は? え? ど、どこへですか?」


ふか~いタメ息を吐きながら、ナツナツとレミィちゃんをフォズさんに預け、立ち上がる。

フォズさんの戸惑う声はしっかり聞こえたが、問答する時間も無いので、答えずに空を見上げた。

すでに紙片の多くは、屋上公園の外に出てしまっている。


こんなことになるなら、真上にあるうちに動けばよかった。

まぁ、後悔先に立たずだ。だって、先に悔いたら先悔だもの。


視線を落とせば、どんくさ系絵描きさん(アーティスト)が、柵に掴まって届くはずもない手を伸ばして固まっている。

そのすぐ隣の柵を蹴って、虚空へと身を投げ出した。


タイトルから英語力の無さがにじみ出る。

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