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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
10章 遭遇!! 王都の住人
239/264

第228話 ゴーレム娘と秘されし展望広場

221 ~ 252話を連投中。


10/9(土) 11:00 ~ 18:30くらいまで。(前回実績:1話/13分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

再び、遊歩道を行く。

王都の只中(ただなか)にあるの積層市場であっても、建物の高さと木々の深さが俗世から遠ざけてくれるらしい。

静けさすら感じさせる遊歩道に、オズとフォズさんの声が響いてる。

私はそれを少し離れた後方で聞きながら、ゆっくりと歩を進めていた。

…………早々にやらかしたわけではないよ?


不意に、前を歩いていた二人が、足を止めてきょろきょろと周囲を見渡し始めた。


「そろそろ教えてもらった場所のはずですが……」


「『分岐が分かりにくい』とは言ってましたけど、まさか道が無いはずも無いですし、もう少し先でしょうか?」


「そうかもね…………ん?」


今、何だか違和感があった。

思わず足を止めた私に気付いたオズとフォズさんが寄ってくる。


「お姉ちゃん?」


「何かありました?」


「いや…………何か違和感が……?」


そう言って周りを見渡すも、見えるのは林道を思わせる遊歩道と所々 道端に置かれたベンチがあるだけだ。

おかしいところは何もない。


「違和感ですか?」


「特におかしなものは…………無い、ですよね?」


「う~ん……」


すでに覚えた違和感も露と消えた。

こうなってくると、本当にソレがあったのかすら疑問に思えてくる。

ただ…………


オズたちを残して来た道を戻る。

遊歩道は、基本的には真っ直ぐに進むことが可能だが、道の中心を追っていくと実はグネグネと歪んでいる。

道幅の1/4程度の振幅で、左右に揺れていると言えば分かるだろうか?

これも少ない木々を多く見せる工夫なのだろうが…………自然と感覚がおかしくなってしまう気がする。


距離にして10歩程度。

すでに実感は薄いが、違和感を覚えた事実だけは脳に記憶されている。

確かにあったのだ。ならば、過去の行動を模倣すれば、再現も可能だろう。


という訳で、適当に距離を戻ったので振り返る。

先程までと同じように、前方をぼんやりと見ながら、しかし周囲に意識を向ける。

……………………それは、五歩目と六歩目の間にあった。


「…………なるほど」


「えっ?」


「もしかして、本当に何かあったんですか?」


「うん。あった」


半信半疑の表情の二人を手招きして呼ぶ。

程なくして私の隣へ立った二人も、ソレに気付く。


「なんでこれを見逃したんですか……」


「う~ん……でも、少し進んでしまうと見えなくなりますし、絶対に見逃さないとは言えないですね……」


「立看板くらいあってもいいのにね」


探していた分かれ道は、グネグネした道の…………なんて言うんだろ? 湾曲の頂点当たり? に置かれたベンチとベンチの間にあった。

その脇道は少し奥へ延びると、すぐに直角に向きを変える。

このせいで、見える『道』の範囲がそもそも少ないのだ。

加えて、不規則に曲がりくねった本道と統一感の無い太さの木々が、遠近感を狂わせる。

脇道がある分 遠くに見えている木々が、本道に連なる木々の一部のように見えてしまうのだ。

私が違和を感じたのは、コレが原因だろう。

ついでに言うと、置かれたベンチが視線を誘導するため、絶妙に分岐路を隠している…………

ここまで来ると、誰かが意図的にやっているのではないかと疑いの目で見てしまいそう。


「ルーシアちゃん、よく分かりましたね」


「すごいでしょう?」


「ふふふっ。そうですね、オズリアちゃん」


「…………は、早く行くよ~」


何故かオズが嬉しそうに胸を張り、クスクスと笑うフォズさんが同意して頭を撫でる。

なんとなく恥ずかしくなって、二人を置いて先に進む。

分かれ道は、先程まで歩いてきた遊歩道と違って細く、何度も細かく曲がっていた。まるで、この先に進んで欲しくないみたいに。

まぁ本当にそうなら、わざわざ道なんて作らないだろうから、ただの被害妄想だろうけど。


そんな進みにくい道を進んでいると、オズとフォズさんが追い付いてきて、左右から手を取った。

小柄な私たち三人でも、横に並ぶとギリギリだ。


「さっきみたいに二人で先に行ってもいいよ?」


「仕返しは済みましたから」


「オズリアちゃんの気が済んだなら、わたしが続ける意味も無いですね。ルーシアちゃんを泣かすのは本意では無いですし」


「泣かないよ!! ……とは、言い切れない、かなぁ……」


泣きそうだったしなぁ、実際。

まぁ、前から人が来ない限りは、このままでいいでしょう。


再びオズの植物ガイドを聴きながら、のんびりと細道を進んでいくと、不意に道が広がった。

…………いや、ようやく目的の休憩所に着いたらしい。


何か不備があって木々が疎らになったスペースを、それっぽく体裁だけ整えた場所なのか、地面もよく見れば凸凹している。

設備もベンチが一脚あるだけで、他には何もない。

ただ、望んだ王都の展望に関しては期待以上だった。

角にある訳ではないので、パツ子さんの言った通り一方向の景色しか見えないのは確かだったけれど、その視界は想像していた以上に広く、王都の街並みが一望できた。

『展望広場』と呼称しよう。


「おぉ~~、ナイスロケーション。良い風景だね」


「ですね。良い人に出会えてよかったです」


「で、でも、思ったより柵がしっかりしてないですね…………ちょっと、怖いです…………」


はしゃぐ私たちとは対照的に、フォズさんはちょっと腰が引けていた。


まぁ、気持ちは分かる。

私たちは高くて開けた場所に馴染みがある (ヒトコとか) が、王都で暮らしていたとしても、普通の人は3 ~ 4階の建物が精々だ。

しかも、同じ高さの建物が周囲にもあるから、それらによって視界が遮られ、閉塞感に似た安心感を得ることが出来る。

ここは周囲より頭ひとつ抜きん出た6階建ての屋上で、王都全体で見ても高い方の部類に入る。

そのため今までにない開放感と共に不安を感じてしまっているのだろう。


…………………………………………

でも、こういうのを見るとイジワルしたくなるのが人情と言うものでしてね?


「せっかくだから、もっと端の方に行ってみようか♪」


「え゛っ!?」


「そうですね。ここからだと、良く見えませんし」


「え゛っ!?」


「ほらほら行くよ~♪」


「ええええぇぇぇぇ~~~~!!!!!!!!」


ズルズルズルズル…………


悪ノリしたのか本当に興味があるのかは不明だが、オズの賛成により二対一の数の暴力が振るわれ、フォズさんは反論もできずに引き摺られていくこととなった。

きっと、私の手を握ったままだったことを後悔しているに違いない。だが遅い。


フォズさんの方が背は高いものの、素の腕力は私の方が上。ちなみに、オズもいつの間にか逆の手を握っている。

抵抗すること能わず。ただ空と地の境界まで連行されるのみ。


「やぁ~めぇ~てぇ~…………」


「見てごらん、オズ、フォズさん。人がゴミのようだよ」


「強大な力に驕った悪役みたいな感じでお願いします」


「見るが良い、我が同胞(はらから)よ!!!! 人がまるでゴミ虫のようではないか!!!!」


「そうですね」


「振っておいてそれは無いんじゃないかな!?」


「ふふふふ二人とも、余裕ですね!?」


フォズさんをリラックスさせることは出来なかったようだ。残念。

まぁ、高みに登った人間の義務は果たしたので、景色を楽しむことにしよう。


先程 説明した通り、周囲より頭ひとつ高いだけあって、遠くまで良く見える。

ただ、王都にはここより高い建物は他にもいくつもある。

例えば、同様の積層市場やギルドなどであるが、ここから見るべきはそういったものではなく…………


「あれが王城か。でかいね」


「ですね。そして、中心部から真っ直ぐに天へ伸びているのが、デミポーターです」


この国の中枢。国王とその一族が暮らす王城は、王都の中心にある。

その周囲は貴族街が広がり、その外周をぐるっと一周する内壁を挟んで、一般庶民が暮らす平民街が続く。

それゆえ、同じ王都にある王城といえど、ここからでは詳細が分からないほど遠い。


…………それでも、そこは厳かな雰囲気と威容を纏って、泰然とそこに存在していた。

それは、王城の中心から天に伸びるデミポーターの影響も大きいだろう。

雲にも届く程の高さのソレは、綺麗な円錐形をしており、普通に考えれば伝統的な建築様式を踏襲している王城と比べると、取って付けたようなちぐはぐさを感じさせておかしくない。

だが、王城はデミポーターの円錐を王城の一部として取り込み、違和感なくひとつの建築として存在している。

その光景は非現実のようであり、一枚の絵画のような印象を受けた。


『あれだけ見ると、天人の遺跡にも匹敵する技術力はまだまだ残ってるような気がするね』


『そだね~。早朝とかに見に来たら、朝靄に沈んで、もっと良い感じだったかも~』


『そうだな。現在の文明も捨てたものでもないかもしれん』


『…………別に、必要ないから高くないだけで、あのくらいの高さなら余裕ですし。いずれ、ホンモノを見せてあげますよ』


…………あらかわゆい。


何かオズの中のプライドを刺激したらしい。不貞腐れたような反応が返ってきた。

頭でも撫でてあげたいけど、残念ながらオズはフォズさんの向こう側。

唐突にフォズさん越しにオズを撫でるのは、さすがに不自然過ぎだろう。


後で撫でることにしよう。


「そ、そそそそれよりそろそろ離れませんか、離れましょう」


「もうちょっと」


「ル、ルーシアちゃんは、そういうとこセレスさんにそっくりですよね!!」


「誉めても何も出ないよ?」


「たいっへん申し訳ないですけど、誉めて無いです!!」


だよね。知ってた。


適当にフォズさんの懇願を聞き流しながら、しばらくそのままでいた。


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