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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
10章 遭遇!! 王都の住人
238/264

第227話 ゴーレム娘、反省はする (もうしないとは言えない)

221 ~ 252話を連投中。


10/9(土) 11:00 ~ 18:30くらいまで。(前回実績:1話/13分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「あ、オズリアちゃん、見て見て。綺麗なお花が咲いてますよ。なんてお花でしょう?」


「紅班スプラ、イエローチャフ、アザミスレ……辺りですね。先程フォズさんが教えてくれた通り、傷薬の素材となりつつ、綺麗な花を咲かせる種類です」


「具体的な答えが返ってくるとは思いませんでした…………オズリアちゃんの知識、どうなってるんですか? 詳し過ぎません?」


「まぁ、知識を仕入れるのは趣味みたいなものですから」


「偉いですね~。…………この木は?」


「ミニオーク」


「これは?」


「テクストリネ」


「こっち」


「シロガネモチ」


「……逆に聞きますが、分からないのはどれですか?」


「根本に生えてるカタバミっぽい草とか、ソウテンツユリっぽい草とかは流石に分からないです」


「それ結構分かってる人の解答ですよね!?」


私の前で、オズとフォズさんが仲良く手を繋いではしゃいでいる。

あの後、『そろそろ戻らなきゃ。もし、気が向いたら覗きに来てね!! 安くて…………安いから!! 安いのは確かだから!!』と、色々察せざるを得ないアピールをするパツ子さん (そういえば、名前聞くの忘れた) と別れ、現在 彼女にオススメされた休憩所を目指して、遊歩道をのんびり歩いていた。


フォズさんの身長は、オズや私に比べれば高いが、一般的に見れば小柄な方。

オズの手を引くその姿は、初めて出来た妹分にはしゃぐ少女にしか見えない。

…………まぁ、普段は私も同じように見えてるんだろうけど。


「…………えっと、オズ? フォズさん?」


「あ、フォズさん。あれは知ってますか?」


「あれ? どれ?」


「あの赤い実が出来ている木です」


「あ、外で見たことあります。甘い実が成るんですよ」


「『イケヤ』という木です。実は甘くて食べられますが、種には毒があるので注意です」


「それは知りませんでしたよ、危なかった!!」


「…………………………………………」


泣きたい。さっきから二人に無視されてるの、私…………

いったい私が何をしたと言うの……


『言わなきゃ分からんのか』


『見境無く大きな胸に目を奪われて、隙あらば触ろうとして、ちっちゃな胸を蔑ろにしたんじゃないかなぁ~』


『うぅ……』


違うの。誰かを蔑ろにした訳じゃなくて、羨ましいだけなの。どちらかというと、蔑ろにしてるのは自分の胸なの、本能なの。


『まぁ、別に本気で怒っている訳でもあるまい』


『自分には絶対に向かない視線を他の人に向けてるから、ちょっとヤキモチ焼いてるだけだって~』


『諦めてそのくらいの罰は受け入れろ。それが近道だ』


ううぅ…………ナビが辛辣ぅ……。


でも、言ってることには全面的に同意しかないので文句は言えない。

『はぁ……』とタメ息を吐くと、自分が道端にしゃがみこんで雑草を毟ってるのに気が付いた。

オズとフォズさんも、少し先の道端で足を止めておしゃべりしてるから、それに合わせて私も止まった結果だろう、多分。


「……………………」


ふと自分の手元を見る。

無意識の行動していたせいで気付かなかったが、それなりの範囲の雑草が毟られて、無惨な姿を晒していた。


…………食材としてでもなく、素材としてでもなく、ただ自分の気紛れで植物の命を奪うとは…………酷いヤツだね、お前は。

オズやフォズさんに嫌われても仕方ないよねー、そっすよねー…………泣きたくなってきた。


「お姉ちゃん……勝手に予想外の方向に飛躍して卑屈にならないでください」


「えっと……やりすぎちゃいましたかね」


しゃがみ込んだ私と同じ高さから届く声に振り向くと、視線を合わせるように膝を折ったオズがいて、その数歩 後ろでフォズさんが困ったように頬を掻いていた。


「オズぅ……」


「懲りました?」


「懲りました……」


「反省しました?」


「反省しましたぁ……」


「もうしませんか?」


「…………しませ……………………ぅぅ。約束できる自信は無いですぅ~……」


「でしょうね」


「ルーシアちゃん、真面目 過ぎます……」


そうは言っても、適当なことは言いたくないのですよ。オズには特に。


「別に『もうしないで』とは言いません。それも含めてお姉ちゃんですし。ただ、私が不機嫌になるのも、私である以上 不可避ですので、そこはご承知おきください」


「…………許してくれるの?」


「許すも何も……ただ、私が機嫌を損ねて、拗ねただけです。だから、拗ねるのに疲れたら、元に戻っただけ。

全ては因果応報ですよ。行動と、それに伴う結果。それが許容できるなら、変わる必要はありません。

お姉ちゃんは好きに生きてください。

私は好きに生きます。

その上で、私はお姉ちゃんが好きです。嫌われるまで側にいます。それだけです」


「うん……ありがとう。私も好き」


『ホッ』とした拍子に、うっかり涙が零れた。

目尻からついっと一筋。

苦笑したオズがハンカチを取り出して、そっと体を傾け距離を詰める。


――――チュッ。


……………………何故か、目尻に軽い口付けをされて涙を拭われた。


「…………そのハンカチの意味は?」


「ここで残りを拭くためですね」


ハンカチは流れた軌跡に残る僅かな水分を吸うのに使われる。

目元を拭ったオズがすっくと立ち上がり、黙って正面に手を差し伸べてくれた。


…………まぁ、いいか。


素直にその手を取って、私も立ち上がる。


「…………相変わらず仲が良いですね……不安になるくらい」


「妬いた?」


「う~ん…………何と返せば良いのか判断に困ります。でも、ちょっとだけ羨ましいかもしれませんね」


「まぁ、男性(ココネさん)の前じゃ、こういうことは出来ないよね」


「そういうことがしたいって意味じゃないですよ!?」


「うん、知ってる」


「もう!!」


恥ずかし紛れにフォズさんをからかうと、『怒ってますよ!!』と態度で示してそっぽを向いた。


「ごめん ごめん……っと、その前に」


「??」


その場を離れる前に、無惨な姿にしてしまった草むらへ、[アイテムボックス]から取り出した瓶に入った液体を振りかける。

ほんのり茶色のちょっと変な臭いのする液体だが、変な物ではない。ただの液体肥料である。

そして、手をかざす。


「えーと、ベースは《バイタル・グロージィ》で、対象を生物から植物に変更、《メガヒール》の術式を少し応用して…………と。大地に根差す草木の息吹たらん者よ。喝采せよ。讃頌(さんしょう)せよ。生を謳歌するために……【プラント・グロージィ】」


かざした手の平から、柔らかな光が綿毛のようにふわふわと舞い降り、葉を毟られた雑草に吸い込まれるように消えていく。

…………そして、何も起こらなかった。


「「『『……………………』』」」


「ちゃうねん」


「何がですか」


無言の視線に耐え切れず、咄嗟に出た否定はバッサリとオズに斬り捨てられた。

ちゃうねん。


「別に魔法が失敗したわけじゃないの」


「知ってます」


「え? 本当に失敗じゃないんですか? オズリアちゃん」


フォズさんがナチュラルにヒドイ。

そんなフォズさんに、オズが詳しい説明をしてくれる。


「お姉ちゃんが使った魔法は、植物用の生命賦活魔法です。人間用の同系統の魔法としては、公衆浴場などで掛けてもらえる疲労回復魔法ですね。フォズさんは知ってますか?」


「はい。私たちもたまに利用しますから」


「であれば、想像は容易いかと思います。あの魔法は、原理としては自己回復力の強化なので、疲労回復の他、軽度のケガの治癒促進や体調不良の改善などにも効果がありますね? お姉ちゃんはそれを応用して、自己回復力ではなく成長力を強化させたんです。あえて名付けるなら成長促進魔法でしょうか」


「成長促進ですか……その割には、その……特に変化がありませんけど……」


フォズさんが言い辛そうに、私が魔法を掛けた雑草たちに目を落とす。

ええんやで、気にせず言ってくれても。


「それは、あくまでも『成長促進』だからですね。疲労回復魔法も、瞬時に疲労を消し去ったりはしませんよね? それと同じで、成長促進魔法を掛けられた植物は通常よりも早いペースで成長しますが、治癒魔法や再生魔法のように見てわかる程の速度で変化はしないのですよ」


「なるほど~…………あの、もしかしたら、当たり前のことなのかもしれませんけど……治癒魔法や再生魔法の応用で治すのはダメだったんですか?」


「良い質問です。フォズさんのおっしゃる通り、素人目には雑草にしか見えなかったとはいえ、誰かが管理しているはずの薬草を無遠慮に毟ってしまったので、なるべく早く元の状態に戻ってくれた方が都合が良いのは確かです」


「そんなことを言ったつもりはこれっぽっちも無かったですよ!?」


ギクッ!!

ば・れ・て・るーーーー!!


そう!!

生い茂っていた草の陰に看板が隠れていたので気付かなかったんだけど、私が毟っていたのは雑草ではなく薬草だったのです!!

……………………管理してる人、ごめんなさい。いや、ホントマジで。


「まず、治癒魔法ですが、人に使った場合を思い出してください。『欠損』は治せませんよね? 『葉を毟る』という行為は、人で言えば『腕や足を千切る』という行為に等しいので、『欠損』に当たります。ですので、治癒魔法の応用では元に戻らないのです」


「…………言いたいことは伝わりますけど、他に表現は無かったんですか……」


「? そんなにおかしな表現ですかね? ごく普通の対比表現ですけど…………」


「それはそうなんですけど、そうじゃないんです……!!」


あー……手足を千切られる人間を想像しちゃったのかな?

千切っ(それをし)ているイメージが私じゃないことを祈る。


「ふむ……まぁ、いいです。で、次に再生魔法。これは治し方に寄りますが、元通りに戻すことは可能です」


「そ、そうなんですか?」


若干 警戒しながら、それでも興味があるのか、フォズさんは話を遮るつもりはないらしい。

相槌を打って続きを促した。


「再生魔法は名前の通り、無くなった部位を再生することで元の状態に戻す魔法ですが、完全に無の状態から再生させた場合、『新しく再生した部位』と『無事だった部位』とで齟齬が生じてしまうんです。誤解を覚悟で言えば、義……義…………それっぽく形だけ整えたようなもので、『無事だった部位』から見れば異物なんですよね」


「気を使わせてごめんなさい……義手って言っていいですよ」


「そうですか? では、お言葉に甘えて。

それで、まぁ、無から再生させた場合、義手と本体を馴染ませる作業が必要になってくるんですが、動物の場合は違和感を覚えて意識的に動かしたりして馴染もうとするので、そんなに時間は掛かりません。馴化の難度は、再生魔法を施した術者の技量に左右されるので何とも言えませんが、真っ当な術者が再生したなら一週間もあれば馴染みます。

問題は、再生魔法を植物に応用した場合ですが、植物の場合は自発的に動くことが出来ないので、馴染むのに時間が掛かるんです。再生した部位の大きさにも依りますが、2 ~ 3倍は掛かる感じですね」


「なるほど~。でも、それだとどうしてダメなんですか? 見た目には問題ないんですよね?」


「素材として使用できないからです。何が原因かは定かではありませんが、馴染む前に採取してしまうと品質がとても悪く、製薬や錬金術としての利用だけでなく、食材としても利用できないものになってしまうんです」


「そうなんですか。…………でも、ちょっと安心しました。それだけ採取に時間が必要ならやる人はいないですね。自分で聞いておいてアレですが、やっぱり魔法で治して採取して……が簡単に繰り返せちゃうのは、何かおかしいですもん」


言葉通りに『ホッ』とした様子でひと息吐いたフォズさん。

多分フォズさんは、毟られた薬草を見てこんな話を始めたのもあって、薬草ベースでイメージしているっぽい。

オズが比較対象として人を挙げたときに、微妙な顔をしたのもコレが原因だろう。

だから、『2 ~ 3週間採取に間が空くなら、普通に育てる方が楽だしメリットが無いから、誰もやらない』と判断したのだろうけど、彼女はひとつ誤解している。

それは彼女に知られないように、念話で届いた。


『まぁ、実は再生魔法でやるメリットもあるんですけどね。生物素材を量産するときとか。元々、養殖から派生・検討された技術ですし』


『怖いな、さすが人間こわい』


でも、ドラゴン素材とかだったら、私もちょっと考えてしまうかもしれない。

いや、養殖するとかって話ではなく、真っ当に倒して素材を回収してから再生して放流するって話。

…………十分外道ですやん。怖いな、さすが私こわい。


『ちなみに、家庭農園ではやってません。…………やってませんよ?』


『強調すると怪しさ爆発だね!?』


なお、家庭農園では動物を放し飼いにしてはいるけど、食肉用ではないので本当にしていないです。

…………本当ですよ?


「なお、切断などで元々の部位が残っている場合は、これを利用することで馴化時間が短縮できます。つまり、『無から再生させた量が多いほど、馴化時間が長くなる』ということですね。

ただこの方法は、適切な傷口に適切な部位を再生結合させる必要があります。要するに……えっと、右腕を左腕にくっつけちゃダメと言う話で、植物にも同じことが言えます。

お姉ちゃんは葉を毟った先から適当にばら撒いちゃったので、どの葉がどこについていたのか分からなくなってしまったので……」


「な、なるほどー」


いや、再生魔法で治す場合、残った部位を傷口にあてがわないといけないからね? 魔法で勝手にくっついたりはしないから。

さすがに数が多いので、もし適切な位置が分かったとしても、再生魔法で治すのは面倒くさい。


そんな話をしている間も絶えず【プラント・グロージィ】を掛け続けたおかげで、パッと見には『ちょっと密度が薄いかな?』くらいには成長したので、この辺でやめておく。

なお、最初に撒いた液体肥料は、植物の成長に必要な栄養の他、光合成に必要な二酸化炭素を放出する効果もある。

光は必要ないのかって? 【プラント・グロージィ】の副効果で光が降り注いだでしょ? 無駄は無いのだよ。


…………ごめん。さすがに、光は嘘。

いや、効果はその通りなんだけど、私が意図したわけじゃなくて、《生命魔法マスタリー》が自動的に補助してくれたっぽい。

だからという訳だけど……



▽生命魔法マスタリーのレベルが上がりました!!

▽生命魔法:プラント・ヒールを取得しました!!

▽生命魔法:プラント・リザレクションを取得しました!!

▽生命魔法:グロウアップを取得しました!!

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・生命魔法マスタリーLv.15 → 18


取得スキル

・プラント・ヒール:自己回復力を強化し、ケガの治癒速度を向上させる。植物限定。

・プラント・リザレクション:生命の理を超え、欠損部位を再生する。再生に必要な物質は、肉体に蓄積された栄養素を利用するため、再生部位が大きい場合は注意が必要。植物限定。

・グロウアップ:成長を促進する。別途、栄養源などが必要。植物限定。



新しいスキルを取得しました。

今後、使うことはあるんかな?


「さて、足止めさせちゃったね。そろそろ行こうか」


「はい」


「え……? わぁ!! もうこんなに成長したんですか!?」


ちょっと目を離していた隙に、思いの外 成長していたことにびっくりしたのか、フォズさんは口に手を当てて驚いた。


うん、いいね。

これが目的じゃなかったけど、素直に驚いてくれると私も気分がいい。ついでに、フォズさん かわいい。


しばらく、急成長した薬草を見て触って確かめていたフォズさんだったが、一瞬だけ『つい』と視線がある部位に向いたのに気付く。


…………………………………………


「フォズさん」


「え? ど、どうしました? ルーシアちゃん。そんな真面目な顔をして」


「希望を潰すみたいで、大変申し訳ないんだけど…………この魔法を使っても、胸は成長しませんよ?」


「そっ!? そんなこと思ってませんですことよ!?」


「そっすねー。そういうことにしておきましょう」


「ル、ルーシアちゃん!! もうっ!!」


確実に視線はフォズさんに胸に落ちていたと思うが、そういうことにしておきましょう。

ふふふ……


「そうですよ、フォズさん。もしそんなことができるなら、お姉ちゃんが真っ先に自分に使ってるはずです」


「げはぁぁああああ!?」


致命の一撃は身内から飛んできた。


「あ、そうですね」


「フォズさああぁぁぁぁん!!!?」


フォズさんの欠片の悪意もない感想も何気にダメージがデカかった。





なお、この一画は液体肥料と【プラント・グロージィ】の相乗効果で、しばらくの間やたらと高品質な薬草が短期間で収穫できるようになってしまう。

その異常事態に気付いた公園の管理者が、原因究明に頭を悩ませてしまうことになるのだが、私たちがそれを知ることは無かった。

ちなみに、何の成果も得られぬまま事態が正常化し、管理者の彼はしばらく消沈することとなる。


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