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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
227/264

第217話 オズの再発防止策

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

転がるように部屋を出て行ったナタリィさんを黙って見ていた支部長が、気を抜くように鼻から息を吐いて肩を落とす。


「…………しまったな。飲み物くらい用意させてから行かせるべきだった」


「あの様子じゃ、溢しまくって水浸しにしちゃいそうですけど」


「間違えた依頼書を持ってこられるよりはマシだ。しかも、あの様子だと、余計に時間が掛かりそうだしな」


「一度、休憩しますか? お茶くらいなら私でも淹れられますけど」


「そうだな…………」


オズの提案に、顎に手を当てて悩む支部長。

気のせいでなければ、隣から縋るような気配を感じる…………


「…………いや、申し訳ないが、交渉相手に頼むのも決まりが悪いしな。このまま続けることにしよう」


「ですか」


何時の時代も、世界は無常である。どんな小さな願いも、叶わない時は叶わない。

明らかな絶望の気配が、隣から溢れ出た。


そして、支部長が姿勢を正すと、僅かに緩んでいた空気が再び重苦しいものへと戻る。


「さて……次は何を場に上げる?」


「そうですねぇ……………………お姉ちゃん、何かあります?」


「私? う~ん……そうだなぁ……」


突然、オズに話を振られ、内心びっくりしたものの、表には出さないように腕を組んで考える。

それに合わせて…………か、どうかは不明だが、支部長の視線もこちらへ飛んでくる。


うん。当たり前だけど、直接こちらを睨まれると、威圧感が半端ないね。

隣に座ってるココネさんは、弱り目に祟り目である。申し訳ない。


「私は何も思い付かないかな」


「ですか。お義姉さまは?」


「あら、私に聞いちゃう? でも、私は当事者じゃないから、遠慮しておくわ」


「そうですか。……………………」


どちらからも意見は出なかったので、オズは『一応』といった様子で、私越しにココネさんに視線を向ける。

……………………すんごい勢いで首を振られた。ですよねー。


ただ、ココネさん以上に焦り出したのは支部長だ。


「ま、待て!! だとすると、ゴブリン鉄はどうなる!?」


「運搬クエストで120の差を埋められなければ、ここまでの交渉は無かったことになるでしょうね」


「くっ…………ぐぐぅ……!!」


まぁ…………ここまでの結果を見れば、そこまで大きな成果が得られるはずもない。

後は、『公平性』の面から値上げを止めた買取価格を上げるか、支部長から別の交渉材料を持ち出すか、ゴブリン鉄を諦めるか…………支部長には、みっつの選択肢しか残されていないのだ。


もっとも…………


「冗談ですよ。交渉を決裂させて、冒険者ギルドの信用を落とすのは本意ではないですからね」


「そ、そうか……」


「ただまぁ、交渉事である以上、何らかの対価で折り合いは付けなきゃならないので…………」


「い、いや、別に、無償で譲歩してくれても……」


「そうですね。では、アレを対価としましょう」


「聞く気なしか、このやろう」


『野郎ではないですから』と、オズなら言いそう。

とはいえ、明確にオズから『交渉を決裂させる気はない』と言われ、支部長は明らかにホッとした様子。

それでも、オズの言う『アレ』に警戒しつつ、続きを促す。


「で、アレとは何だ?」


「今回の『クエストランクと魔獣ランクの不一致』という問題の原因。恐らくは『クエスト資料の取り違え』というミスについて、現状の方向だけでもいいので、どのような対策を取ろうとしているのか、それを聞かせてください。

失礼ですが、もし、『効果が薄そう』だと判断した場合は、当事者として意見させていただきたいです」


「ぬ…………」


その言葉は支部長にとって予想外だったのか、それとも、終わったつもりの話を蒸し返されて嫌だったのか…………どちらとも取れる渋そうな表情で言葉を詰まらせた。


「……………………悪いが、まだ問題が発覚してから、大した時間も経っていない。故に、詳細な原因究明も完了しておらず、具体的な対策はまだまだ先の話だ。だから、その件は答えることが……」


「そう結論してしまうと、交渉がまとまりませんよ?」


「ぬぅ…………」


支部長としては、『だから、別の議題にしよう』と言いたかったのだろうが、暗に『交渉決裂ですね?』というニュアンスを匂わせるオズのセリフに、再び同じ言葉を詰まらせる。


「別に、何も具体的な対策を聞きたいわけじゃないんですが。例えば、原因究明はどのように行うつもりで?」


「それは…………だな。資料が入れ替わった可能性が最も高いのは、やはり、受付で依頼書を作成している時だろう。それを行ったギルド員 二名は、調べればすぐに分かる。そうしたら、なぜ資料が入れ替わってしまったのか、両者から状況を聞き取り、原因を究明。各々に再発防止策を立てさせる」


なんとか言葉をひねり出す支部長に、オズは眉根を寄せて口を挟む。


「それは、つまり…………今回のミスの根本的な原因は、『その二名の仕事の進め方にある』と考えているってことですか?」


「それは当たり前だろう。他のギルド員は、そんなミスを起こしていないんだ」


「そうでしょうか? 他のギルド員は、『資料の取り違え』というミスを犯すことはあっても、途中で気付いて直しているだけかもしれませんよ」


「同じことだろう。ミスしたとしても、途中で直せればそれでよい。直せなかった者には、『直せなかった』『気付けなかった』要因がある。それを明らかにして、修正させることが、再発防止となる。違うか?」


「違いますね」


支部長の答えを、真っ向からバッサリと斬り捨てるオズ。

さすがの支部長も、頬をひくつかせて言葉に詰まる。


「ミスを『直せなかった』『気付けなかった』要因を究明し、修正しても、それでミスを直せるようになるのは、その者だけです。それに、そもそもミスが発生する下地は残ったままなのですから、再発防止策とは言えないでしょう?

その対策は、ミスを潜在化することは出来ますが、消失させることは出来ません。いずれ、対策が形骸化したり、別の人間が同じミスをすることで、容易に顕在化します。

再発防止策というのならば、『ミスを直す』ための対策ではなく、『ミスをしない』対策でなければ、真の再発防止策とは言えません。それでは、よくて応急措置です」


「『ミスをしない』だと……? 人間は必ずミスをする。どんなに集中していたとしても、集中が途切れないことはないし、どんなに気を付けていたとしても、見落としは必ず発生する。

10回や20回なら、ミスしないことも可能だろう。100回も人によってはいけるかもしれない。だが、1,000回、10,000回、100,000回と回数を重ねれば、いずれ必ずミスをする。それが人間というものだ。

それを『しない』ようにするなど、現実を見ていない妄想家の戯言に過ぎんぞ」


「そうですね。人間はミスをします。必ず、です。人間にミスの発生する可能性のある作業をさせれば、どんなに低確率でもいずれ発生します」


「なら……」


『どういう意図のセリフだ』とでも続くセリフを、オズは別のセリフに繋げた。


「なら、ミスの発生しない作業だけ、させればいいことですね」


「はぁ?」


『なに言ってんだ、コイツ』という意図が良く込められた、お手本のような『はぁ?』だった。

気持ちは分かるけど、ちょっとイラっとしたのは秘密。

オズは、全く気にせず話を続ける。


「例えば、依頼書を清書する仕事があったとします。しかし、購入している用紙は、依頼書として使うには大き過ぎるため、半分に切断する必要がある。

当然、紙を切るには刃物が必要ですが、『人間はミスをする』の前提に立てば、いずれこのギルド員さんが手を切るのは必然ですね?」


「あぁ」


オズが何も持たずに机の上で紙を切る動作をするのを、支部長は頷いて続きを促す。


「では、再発防止策を考えましょう。なぜ、手を切ったのか?

同僚に呼ばれて、よそ見をしたから。では、作業中に声を掛けられないよう、作業中の看板を立てます。

前日、遅くまで起きていて、寝不足だったから。では、毎日21:00に寝ることを義務付けます。

その日は、刃の切れ味が悪かったから。では、週に一回、必ず研ぐことにします。

支部長なら、これらを再発防止策だと言うのでしょうね?」


「それは…………」


自信を持って肯定できなかったのは、支部長もその対策が不完全なものであると、簡単に察していたからかもしれない。

言葉を濁らせる支部長に関せず、オズは話を進める。


「でも、同僚が看板を見逃したら、また声を掛けられてしまいますね。

21:00に寝ても、隣人がうるさくて寝付けなかったら、また寝不足になってしまいますね。

毎週研いでいるせいで、一回一回が疎かになったら、また切れ味が悪くなってしまいますね。

はたまた、別のギルド員さんにこの仕事が回ってきたら、その人は全く違う原因で手を切るかもしれませんね」


「……………………」


「この場合、『手を切る』原因は、ギルド員さんの不注意でも体調不良でも道具の品質でもありません。

『刃物を使う』。さらに言えば、『紙を切る必要がある』。これでしょう?

ならば、最も簡単な再発防止策は『依頼書と同じサイズの紙を購入する』。次点で『ペーパーナイフを使う』当たりでしょう」


「それは…………あくまで、作り話だろう」


支部長はなんとか反論を口にするが、その言葉は支部長自身すら納得させられていない。


「ですね。でも、私の言いたいことは伝わったかと思います。

つまり、真の再発防止策とは、人間の注意を高める対策ではなく、人間が組み込まれているシステムを作り替える対策のことを指すのです。

もちろん、全てが全てこのようにうまくはいきませんが、まずシステムを変えることから考え、次に道具を、最終手段として人を動かすルールを変えることで対応する。当然、後者に行けば行くほど、定期的に違反していないかのチェックが必要になります。指定した道具を使わなかったり、改造していたり、ルールを守らなかったり。

これが出来ないと、ミスは延々と発生し続けますよ」


要するに支部長の考えている対策が、『失敗しました → 失敗しないように注意します』程度の、いい加減な対策でしかないと言っているのだ。

冒険者ギルドで日々発生する問題の対応が全てそうだとは言わないが、少なくとも今回の件については、そういう方向で話をまとめるつもりだったのは明白だ。


「む……ぅ……い、いや、待て。その理屈だと、今回の『資料取り違え』と同様のミスが、今までも発生し続けていたことになる。だが、俺はこんな話を聞くのは初耳だぞ」


「自分でも言ったじゃないですか。多くのギルド員は、『途中で気付いて直してる』んでしょう。でも、問題というのは『誰かが、何かがひとつ違えば起きなかった』という、奇跡的な確率の先で起きるものなんですから。

それに、私見ですけど、同様のミスが原因じゃないかと思われる事例は、王都の冒険者ギルド全体を通して見ると、月に100件ほどの頻度で起きているようですよ」


「待て。月100件? どんな事例だ? というか、一体どこからの情報だ?」


「王都の冒険者ギルド本部で年一回まとめられている、クエスト統計資料ですね。ここの資料室にもありましたよ」


洞窟でオズが言っていた内容だ。

私たちはそれどころじゃなかったこともあってスルーしていたが、支部長はさすがにそうはいかず、信じられない様子で目を剥く。


「…………お前は、学者か何かか? 決算書の件もそうだが、ちょっと中を見た程度で、そんな情報は読み取れないぞ……」


「まぁ、情報収集と情報分析は趣味なので。で、そんな情報を聞いた支部長としては、これをどう考えますか?」


「どう考えると言われてもな…………実物を見たわけではないから、確かなことは……」


「あ、こちら、ここ数年分の該当資料です」


「なんで出てくる!?」


サッと分厚い資料を差し出すオズに、間髪入れずに支部長が突っ込むも、オズはそれに付き合わず、大したことも無いように一言で片付ける。


「資料室に複製魔道具はありましたから」


「だとしても、わざわざ複製するか!? こうなることを予期していたとでも言うのか!?」


「まぁまぁ。私のことはどうでもよいので。で、どうです?」


「ぐ……むぅ…………」


支部長は、なおも何か言いたそうな顔をしていたが、オズに促され、不承不承といった様子で資料に目を通す。


「…………確実なことは言えないが、これは『ギルドに入った情報と実際に討伐した魔獣のランクが異なっていた』というデータだろう。討伐までに時間が掛かったせいで、討伐対象が成長した可能性もあるんじゃないか?」


「その可能性もありますね。では、こちらの資料は知ってますか?」


セリフを先回りするように差し出された資料を、嫌そうな顔で見下ろす支部長。

ちょっと固まった後、時間を稼ぐように短い問いで答えた。


「…………一応、聞こう。何の資料だ」


「魔獣成長指数と、平均クエスト完了日数のデータです。お姉ちゃんは知らないでしょうから簡単に説明しますと、『魔獣成長指数』というのは、ギルドが無作為に抽出した魔獣やその群が、時間経過によりどの程度 成長するのかを観察したものになります。簡単に言えば、クエストや魔獣がランクアップするのに掛かる平均的な時間ですね。

『平均クエスト完了日数』は名称そのままですが、具体的にはギルドが依頼書を掲示してから、冒険者が完了報告するまでの日数になります」


「ふん。その通りだ。つまり、こう言いたいのだろう? 『平均クエスト完了日数は、魔獣成長指数に比べ、圧倒的に短い。ゆえに、『討伐に時間が掛かったせいで、魔獣のランクが上がった』という説明では無理がある』と」


「その通りです。まぁ、それでも支部長が『所詮どちらのデータも、『平均』や『傾向』と示すデータでしかない。それらデータに乗らないクエストがそれだったのだ』と言い切るならば、『そうですか』としか言えませんが」


見定めるような視線で『じっ』と見つめるオズに、ココネさんたちと似たような色を滲ませ始めた支部長は首を振った。


「……………………いや、さすがにそう言い切ることは出来ん。無論、その可能性もあり、詳細に調査させるが、現時点の情報だけで判断するなら、別に原因があると見た方が無難だろう。…………それが、『資料の取り違え』かどうかは分からんが」


最後に、申し訳程度に逃げ道の一言を追加したが、支部長本人もそうとは思っていなさそうな口調。


苦々しい表情で、オズの提出した資料に目を通す支部長。

残念ながら、あの資料はオズが意図的に集めたものなので、見れば見るほどオズの意見が正しいように感じるだろう。


「…………一応、忠告しておきますけど、その資料は私が集めた資料ですので、私に有利な情報しかないですよ?」


「分かってる。見方が変われば、こうまで導かれる結果も変わるのかと、思い知らされているだけだ」


「なら、いいですけど」


「しかし、資料の取り違えが常態化し、今回のような問題が発生していたのなら、なぜ、その報告が俺の元に届かない? 王都全体で100件も発生しているのなら、この支部でもそれなりの数が発生しているはずだろう?」


「その辺はよく分かりませんけど、大きな問題に発展しなかったから、ギルド員も冒険者も慣れていて、大したことじゃないと思っているんじゃないですか? 今回の件だって、お義姉さまが受付で騒いだから支部長を呼ぶ事態になって大事になったって聞きましたけど」


「む…………確かに、俺のところに最初に届いた報告は、『厄介な冒険者がいる』だったな」


厄介な冒険者……

でも、まぁ確かに。『大した問題ではない』と考えていることに対して、しつこく喰らい付く相手が現れれば、現場の人間にとっては『厄介な人間』以外の何者でもないのだろう。

今回は、そのお陰で支部長の耳にまで届いて、ようやく『大きな問題だったんだ』と現場の人間が知る機会ができた訳だが。

慣れって怖い。


支部長は疲れたように眉間を抑えて揉み解すと、手に取っていた資料を机の上に放り出す。


「…………もう単刀直入に聞いてしまおう。オズリア、といったな。これだけの資料を事前に用意できているお前のことだ。今回の取り違えの件について、自分なりの原因と対策に目途が立っているんじゃないか?」


「そうですね。ただの一個人の、一面から見ただけのものですが」


「構わん。教えてくれ。そうしたら、そうだな。交渉の差額は、俺の自費で払うとしよう」


これにはさすがに、オズも驚いた表情で一瞬固まる。


「…………よろしいのですか? それなりの大金になると思いますが」


「よくは無いが…………まぁ、俺がこれまで見落とし続けていた問題だからな。自業自得というものだと思って、納得するさ。それに、支部長なんてやってると、金を使う機会がそもそも少なくてな。貯蓄は十分ある」


「ですか」


だからと言って、仕事の損失を自分の損失として処理してしまうのは何か違うと思うが…………まぁ、支部長から言い出したことだし、問題はない……と思いたい。


「…………まず、原因の方ですが、私はやはり、依頼受付での作業環境が悪いのが大きな要因だと思っています。

ひとつの受付上に並べられる資料は、申込書・依頼書・白地図の三枚ですが、隣の受付との距離が近いせいで、資料が互いにはみ出し合っており、取り違えの危険が非常に高いです。特に、クエスト先を記入する白地図が大きく、最初に目的地を記入した後は、折り畳んで端に寄せてしまうため、入れ違う可能性が高いです。折り畳んでしまうため、開いて中を確認しないと入れ違ったことに気付けませんし。

また、そこで作成した依頼書と地図には、その場で同じクエスト番号を振ることとなっているようですが、忙しいと一番上の依頼書だけにしか番号を振らないこともあるようです。

加えて、作成した依頼書を一時的に溜め込む箱も、限界以上に積まれていることがありますので、倒壊からの混入の可能性もあります」


「なるほど。では、その対策としては…………作成中の資料は必ず決まった場所に置く、記入する前に全ての資料にクエスト番号を振る、作成した依頼書はもっと頻繁に回収する…………は、ダメだな」


「ですね。全て、人を動かすルールを変える対策ですから」


「むぅ…………原因、原因か……」


オズに原因を聞いた割には、安易に続きを促さず、自分で原因に頭を悩ませている。

オズも、すぐに答えを告げることはせず、答えに至る指針のような助言を送るに留める。


「こういうのは、シンプルに起こった事象にだけ注目した方がいいです。

起こった事象は『資料が入れ違った』。これだけです。その原因は何でしょう?」


「入れ違った原因…………白地図だけ端に()けた、クエスト番号が無い、留め具が外れて交ざった…………」


分かりやすく眉間に皺を寄せて悩む支部長。

でも、多分、その発想をしている時点で、オズの言いたい原因を無意識にスルーしている。


「やっぱり難しいですかね」


「…………くそ。悔しいが、さっぱり分からん。年取って頭が固くなったせいだと思いたいな。…………悪いが、答えを教えてくれ」


言葉通りに、心底悔しそうな表情でオズに答えを請う支部長。

まぁ、見た目は、10かそこらの小娘ですからね。これまでのやり取りから、見た目通りの中身ではないことは、百も承知だろうけど。


そんな支部長に、見た目にそぐわない苦笑を浮かべながら、言葉少なく答えを告げる。


「私の答えはシンプルですよ。『依頼書と白地図が2枚に分かれている』。原因はこれだけです」


「は…………?」


こう言っては大変に申し訳ないけれど、オズの答えを聞いた支部長は、とてもとても間抜けな表情をしていた。

『鳩が豆鉄砲を喰らった顔』とは、まさにこの顔のことだと確信できる。


「『入れ違った原因』ですから。『どうやって入れ違ったのか?』は、関係ありません。資料が複数あるから入れ違うんです。なら、資料を1枚にすれば、絶対に入れ違わないですよね?」


「い、いやいやいやいや!! 待て!! ちょっと待て!!」


「はい」


落ち着いて言葉を重ねるオズとは対照的に、慌てふためいて言葉を連ねる支部長。


「依頼書と地図だぞ!? 全然違う資料じゃないか!! どうやってひとつにしろというんだ!? 地図に全てを書き込めとでもっって、それかぁぁぁぁ!!!!」


「はい」


自分で答えを言って、絶叫した。

そして、『いや、しかし……』と、思い付くままに不都合な点を挙げていく。


「白地図には確かに未記入部分も多いが、元から描かれている地図がある。その上から文字を書いたら読み間違う可能性が高くなるし、別に記入用のスペースを空けたら ただでさえ大きい白地図がさらに大きくなるし……」


「白地図って、確か、王都を中心とした広域図ですよね? 例えば、地図の部分は四分割して、上部に1/4の地図、下部に同サイズの依頼書記入欄にしたらどうでしょう。今の白地図の、半分の大きさになりますよ」


「む……う…………あ、た、例えば、地図の境界線上が目的の場所だとしたら、分かりにくくなるんじゃ……」


「別に、きっちり四等分にするんじゃなくて、境界付近は両方の地図に載せればいいんじゃないですか?」


「お、ふぉう……ふ…………あ、と、だな…………確か、未記入の依頼書を置く場所に余裕は無くてな。少なくとも、4種類の用紙を置くスペースは必要になるようだし、それは難しい……ような気も……」


「置くスペースって、受付の背後の棚ですよね? 縦長のスペースが、横に連なる形状の棚だったと記憶していますが、真ん中で区切るように新しく棚板を追加すれば、置くスペースは倍になりますよ。

元々、依頼書と白地図の2種類を置いていたなら、丁度4種類置けるようになりますね。全種類、今と同じ枚数用意する必要も無いでしょうし」


「…………………………………………そうだな」


あ、諦めた。

このお話は、リスクアセスメントのリスク低減対策を、適当に聞きかじった人間の思い込みとノリで作成されております。

(意訳:世界観に合わなかったり、間違ったこと言ってても気にしないでね)

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