第213話 ゴーレム娘のサービス サービスぅ
168 ~ 220話を連投中。
11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)
一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。
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私たちがテントに引っ込んでいる内に、ココネさんたちは、恐る恐るといった様子でイスに腰を降ろす。
「…………なんか、異様に緊張する」
「同感。机の上に肘とか付けないわー……」
「いや、それはお行儀悪いから、普段からやめてくださいね」
「なるほど。高級感を出せば、サっちゃんもお行儀良くなる、と」
「でもそれ、普段からやるのは大変じゃない~? それに、その内 慣れて来ちゃうだろうしぃ~」
「だね。それで、本当にそういう場で気を抜かれても困るし、サリーの躾は別の方法を考えよう」
「あたしは子供か。それに、そんな場に呼ばれることなんて、きっと一生無いだろうから、杞憂も良いところでしょ」
「それもそうですね。…………て、ナツナツちゃんは、普通に机の上に乗っちゃうんですね」
「土足で乗らないの…………と、思ったけど、ナツナツちゃん、その靴で地面に降りないなら、別に汚くないのかしら?」
「そだね~。わたし、基本的にオズに乗ってるし、地面とか床とか、ほとんど降りたこと無いかも」
……………………そうだったかな?
でも、確かに石の上とか枝の上とかに乗ることはあっても、地面に直接降りることは無かったような…………
そもそも、ナツナツのサイズで地面付近にいることは、踏まれる危険があって単純に危ないので、その方がいいだろう。
まぁ、それはともかく、準備を終えてテントを出ると、ココネさんたちに声を掛ける。
「いらっしゃいませ、お客さま~♪」
「メ、メニューは、こちらになります……」
慣れないオズの様子も、割といつも通り。
二人でメニュー表を配り、コップに冷水を注ぎ全員の前へ。
そして、注文票を取り出す。
「ご注文をどうぞ~♪」
「ど、どぅぞ……」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「ご注文をどうぞ?」
固まる四人に対し、にこやかな笑顔を維持しつつ、首を傾げる。
なお、オズは耳まで赤くして、注文票で顔を隠していた。
うむ。目の保養。
「じゃあ~ねぇ~。メインはチーズ イン ハンバーグで~、スープはオニオンスープにしよっかなぁ~。主食はごはんで、デザート全種類~。サラダはい~らない」
「は~い。チーズ イン ハンバーグ、オニオンスープ、ごはんです。デザートは、食後にお持ちしますね。あと、サラダはオマケですが、全部食べないとデザートは出ません♡」
「ぬああああ!?」
好き嫌いの激しい子供にはムリヤリ野菜を与えておく。
「他の方は、決まりましたか?」
ナツナツの前に注文された料理を並べ、ココネさんへ問い掛ける。
そろそろいい加減慣れても良いような気もするけど、眉間に寄せた皺を伸ばすようにグリグリと眉間に手を宛てたココネさんが、絞り出すように声を出す。
「……………………注文の前にひとつ聞かせてくれ…………その格好は何だ!?」
「ただの給仕服ですよ? 可愛いでしょ?」
「可愛い!! 可愛いけど、なんでそんなの持ってるのよ!?」
「私たちが、テモテカールのギルド飯店で、ウェイトレスのバイトをしてるからだね」
「その割には、オズリアちゃん真っ赤なんですけど!? オズリアちゃん、嫌ならやらなくていいんですよ!?」
「…………ぃぇ。…………ご、ご注文……」
「嫌ではないけど、恥ずかしい、と。でも、なんで二人とも色違いなの? どっちも似合ってるけど」
赤くなっても職務を全うしようとするオズを、フォズさんとマヤさんが慰めるように抱き締める。
ココネさんたちに説明した通り、私たちの格好はテモテカール ギルド飯店のウェイトレス姿で、形状は同じだが、私は標準色のスカイブルー、オズが特別色のワインレッド。
なお、オズの給仕服が特別色なのは、グレイス君の意地悪である。
もう、『ワインレッド = オズ』の図式が成り立っているため、戻すに戻せなくなってしまった。
もう危険もないし、私たちの料理を振る舞うこの状況、『あれ? なんか、料理屋みたいじゃない?』と思ったら、なんとなく料理屋ごっこをしてみたくなったのです。
「なんとなく雰囲気出ない?」
「何のだ…………いや、料理屋のか。まぁ、確かに様になってるし似合ってるが、君らは疲れていないのか?」
「いや、疲れてるって。さっきまで、Bランク魔獣と闘ってたんだよ?」
「とてもそうには見えないんだけど…………疲れてるなら、わざわざ着替えて料理屋ごっこなんてしないだろ?」
「それはそれ。これはこれ」
「驚き疲れで、僕の方が先に潰れそうだ……」
「それじゃ、早く注文して回復しなくちゃ。何にする?」
「そうだな……って、多いな!? 本当にこんなに持ち歩いてるの!?」
「あー…………なんか、どんどん疲労させそうだから、適当に出すよ」
「うぐっ。…………すまない、それで頼む」
私のお遊びで疲れさせてしまうのは本意ではない。
ココネさんには疲労回復によさそうな、野菜たっぷりピリ辛鳥肉をメインに、色んな副菜とパンを出してあげた。
スープは…………ナツナツと同じでいいか。
「サリーさんは……」
「ねね、その前に、もっとこっち来て。よく見せて」
「お? いいよん」
兄と違って、妹はもう驚くだけでスルーする技能を身に付けたらしい。
料理よりも先に、私の服装が気になるようで、手招きされて正面に立つ。
「へぇ~、こんなんなってるんだー。へ~」
「王都のギルド飯店も同じかは知らないけどね」
「分かってる 分かってる。あたし、こういう仕事したことないから、しっかり見るの初めて。ね、回って 回って」
「あいよ~」
サリーさんの前でゆっくり一回転。
見てるだけでは満足できなかったのか、立ち上がって手を伸ばす。
「ちょっと触ってもいい?」
「ちょっとだけよ~」
「わ~い」
反応がいいので、調子に乗って了承する。
サリーさんは、遠慮することなく、自由に触りまくる。
「おぉ~、肌触りがいいね~」
「あ、それ私も思った。意外に良い生地使ってるんだよね。軽いし丈夫だし」
さわさわ。
「ひらひらふわふわしてるけど、動きにくくは無さそう?」
「うん。さっと広がって、ぱっと戻るよ」
なでなで。
「お? こんなところにポケットが。……あ、ここにも」
「結構、注文票が貯まったりするからね。ポケットは多くて大きいと便利なんだよ。予備のペンとかも入るしね」
ぺたぺた。
「いいなー。あたしも食わず嫌いしてないで、やってみれば良かった」
「今からでもやってみれば? サリーさんくらいの年齢なら、若い方だと思うけど」
「歳を気にしてるんじゃないわよ。バイトだと、ある程度連勤しないといけないから、冒険者の仕事に支障が出ちゃうの」
「あー…………なるほどー……」
むぎゅ、むぎゅ。
「う~ん、良い抱き心地…………なんか、ほんのり良い香りがするね」
「制服に香り付けしてるからだね。やっぱり、ああいうところだと、色んな匂いが付いちゃうから」
「そういえば、そっか。あ、ところで、足元も変わってるけど、タイツ?」
「腿まであるニーハイソックスだね」
「どれどれ」
めくり
「ちょっと待てサリーーーー!!!! 僕の前でスカートをたくしあげるな!! ルーシアも抵抗しなさい!!」
「コ~コ~ちゃ~ん~?」
「ナツナツそれは理不尽!!!!」
ナイフとフォークを持った両手を『だらり』と垂らし、幽鬼のように近寄るナツナツが危険過ぎる。
ココネさんに襲い掛かる前に捕獲した。
「こらこら。ココネさんは悪くないでしょ。止めなさいね」
「む~~」
「た、助かった……」
「ちっ……あとちょっとだったのに」
「おいこらサリー、今なんてった」
「なんでもー?」
…………どうやら、兄妹のじゃれ合いに巻き込まれてただけらしい。
それでスカートを捲り上げるのはどうかと思うけど……まぁ、見える前に止めるつもりだったのだろう。
…………だよね? 信じてるからね、サリーさん?
「さて、そろそろサリーさんも料理決めて。私もお腹空いた」
「おっと、ごめん ごめん。んーと…………じゃあ、この餡掛け炒飯と鶏ガラスープで。副菜は、ココネと同じで色んなの欲しいな」
「はい、どうぞ。サラダは大皿に出しておくので、各自取ってもらう形にしておくよ。ドレッシングも数種類出しとく」
「おおぉ~~あんがと~♪ 超豪華~♪」
ナツナツを机の端に移動させて、真ん中に山盛りサラダとトングを置き、取り皿とドレッシングを回りに並べておく。
「さて、次は……」
「あ、わたしたちは、オズリアちゃんに出してもらったから、大丈夫ですよ」
「ルーちゃんも早く席に着いて、食べましょ」
「と、言いつつも、ほんの少し前まで、マヤさんも私を抱えて、サリーさんと同じようなことしてましたけどね……」
残りは私の分だけになっていた。
みんな律儀に待ってくれているので、急いで自分の分も用意する。
私の分は…………適当でいいや。
「お姉ちゃんの分、用意しておきましたよ」
と、思ったら、オズが用意してくれてた。
ミートドリアにトマトスープだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
全員の用意が出来たところで、挨拶して食事を開始する。
「初めて食べる味だけど、旨いね。辛味が丁度良い」
「あっっつ!! ふーふー…………旨っ!!」
「キノコの風味とお野菜の甘味が絶妙で……美味しいです」
「今更だけど、なんで保存してた料理がこんなに熱々なのかしら? ……という疑問もどうでも良くなるわ。美味しい」
「だってさ、オズ。良かったわね」
「だそうですよ、お姉ちゃん。良かったですね」
偶然だけど、私が作った料理とオズが作った料理が、半々くらいで並んでいる。
キッチンで調理するのはオズとお義母さんメインだけど、屋外で調理するのは私メインだからね。
その時に多目に作っておいた料理がストックされているのだよ。
互いに褒め合い、『ふふふ』と笑い合ってから自分たちの分も口にする。
『じわ~っ』と温かさが体全体に広がる感覚に、思った以上に疲労していたことを実感した。
「ルーシア、パンのおかわりをもらってもいいかい?」
「ねーねー、このおにぎりってなにー?」
「マヤお姉ちゃん、それ少し貰ってもいいですか?」
「いいわよ~。代わりに私も頂戴」
ココネさんに新しいパンを、サリーさんに試食用のおにぎりを、フォズさんとマヤさんに取り分け用のお皿を渡してあげる。
「お姉ちゃん。はい、あーん」
「ん、あーん。じゃ、オズも。あーん」
「あーん」
「あ~、ずる~い。わたしも~♪」
「はいはい。あーん」
「あ~ん♪」
私たちもいつも通りに食事を楽しむ。
ココネさんたちが、不思議そうなものを見る目をしているが、気にしない。
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
結構な量の料理を出してしまったから余るかと思ったが、みんなしっかりきっちり食べ切った。よろしい。
今は、最後のデザートの時間。
「デザートは別腹~♪」
…………一人、量がおかしいのがいるけど。
「う~ん……果汁をそのまま固めたような、濃厚なゼリーだな。旨い」
「ごはん食べ過ぎた…………でも、これも食べたい…………うぐぐ……」
「このプリン、卵の味が凄く濃厚です……!! 美味しい」
「本当ね。トッピングのフルーツも瑞々しくて美味しいわ」
「どういたしまして。サリーさん、今 食べられないなら、明日の朝に回すけど?」
「無理して食べて良いことはないですよ?」
「…………いや、イケる……!!」
さいですか。まぁ、本人の意思を尊重しよう。
のんびりとしながら、あまり場にそぐわない話を振る。
「そういえば、今回倒した中にホブゴブリンっていた?」
「うん? う~ん……どうだろうな」
「ゴブリン種ってキングやエースでもない限り、見た目の違いって薄いのよ~。魔石を調べてみれば分かるだろうけどさぁ~」
「亜種も、持ってる武器でなんとなく見分けているだけですからね。確実に見分けたいなら、闘う前に分析魔法で調べるしか無いですけど…………」
「そうすると、不意は突けないってね。でも、どうして?」
『食事中に仕事の話はやめて』とか『食事中に血生臭い話はやめて』とか言われるかと思ったけど、この四人は気にしないようだ。
ホッと一安心。…………『口に出す前に確認しろよ』とは、思わなくもない。
「いや、元々 ホブゴブリンを含むゴブリンの群の討伐って話だったじゃん。ホブゴブリンだけの話じゃないけど、取り逃してたら面倒だなって思っただけ」
「そういうことか。元のクエスト通りの群だったと仮定して話をすると、ゴブリンやホブゴブリンを数体取り逃がしたとしても、クエストクリアに問題ないよ」
「依頼内容は『群』の討伐だからねー。群を維持できない程度に数を減らせばクリアなんだよ。クエストによるけど、ボーダーは大体1/3 ~ 1/4程度まで減らせばOKかな」
「今回の場合は、もう元のクエストがどうこうではなくなってしまっていますから。ホブゴブリンどころか、ハイ・ゴブリン、キング・ゴブリンを取り逃していたとしても、あまり関係はありませんけどね」
「とはいえ…………あれだけ念入りに安全を確保した以上、取り逃がしたゴブリンがいるとは思えないけど」
「あぁ……そうなんだ」
今までも『○○の群の討伐』ってクエストは、何回か受けたことあるけど、毎回殲滅してたから知らなかった。
というか、本来ならクエストを受注する際に、義姉さんが説明しなきゃならないことなんじゃ?
……………………サボったのかな?
『いや、毎回説明はしていたぞ。『○頭以上は倒して』というような表現ではあったが』
『あ、あれ? そうだっけ?』
『うむ』
…………………………………………義姉さん、疑ってごめん。
『今頃、義姉さんも食事中かなぁ』と思いつつ、謝罪の念を送っておく。
「そういえば、今回のクエストって、扱いとしては無効なんですよね?」
オズが食べきれなくなったゼリーをスプーンに乗せ、ナツナツに差し出しながらポツリと切り出す。
「あぁ、そうだね」
「でも、成果が無くても、準備はしましたし、消耗品は消費してしましたよね?」
「……うん、そうだね」
「さらには、ココネさんは武器と盾、サリーさんは武器 二振り。ギルド側のミスでのクエスト無効なら、多少の補填金が出ますけど、トータル大赤字なのは変わりないですよね?」
「…………うん」
「唯一の収入源はゴブリン素材と武装ですけど、当初の契約では『個別に倒した場合は、倒した側。共同で倒した場合は、原則 人数比で2:1 または 要相談。ただし、各々の取り分は各自で解体・収集し、持ち切れない分は共通の報酬として、後日 ギルドの素材回収制度を利用し、ギルドを含めて取り分を相談』でした。
要するに、『価値の高い分だけ厳選して自分達で持ち帰り、残りはギルドに頼む』で、まぁ、一般的な契約内容ですね」
「………………その通りです」
「ここで焦点になるのが、『各自の取り分として確定するのは、自分で持ち帰った分だけ』、『持ち帰れない分は共通報酬になる』という点です。
今回のイレギュラーのせいで、倒した魔獣や武装は全て私たちが回収していますが、この契約内容に沿ってココネさんたちの取り分を計算すると、『( 回収した魔獣他 - 私たちの取り分 ) × 2/3』となりますね。
『私たちの取り分』は おおよそ半分でしたから、結果から言うと、ココネさんたちの取り分は全体の1/3となります。
ちなみに、『どちらが倒したか?』は、傷痕から判断しました」
「……………………はぃ」
「まぁそれでも、素材回収制度を利用した場合と比べれば、報酬は多いと思いますが、赤字を補填する程でないことは変わりがないですよね?
例え、この場でココネさんたちが倒した分から、価値の高いものだけ解体・収集して、取り分を増やしても」
「…………………………ぇえ~と、オズリア……いえ、オズリアさん、ちょっと、素材の取り分について、ご相談が、あるのですが…………」
青くなって冷や汗を流し始めたココネさんが、小さく手を挙げて下手に出た。
「まぁ♪ ちなみに、この食事代金についてもご考慮頂けます?」
「そ、それも含めて、寛大な対応の程、御配慮頂けないでしょうか……?」
「あらあら、構いませんことよ? ただ、お願い事があるなら、何かしら…………ねぇ?」
と、悪役顔で袖の下をプラプラさせる。
…………お金がないって相手に何を求めるというのか……
「うっ…………だ、だが、金が無いための相談であってだな…………」
「あらまぁ、御存知でない? 昔からよく言うでしょう。『金が無いなら体で払え』と。フォズちゃんとか、欲しいなぁ」
「え!?」
「くっ…………!! た、頼む!! サリーには何をしてもいいが、フォズとマヤ姉さんには手を出さないでくれ!!」
「ちょっとぉぉおお!?」
「ココちゃん……!!」
…………え~と。
何故か、ナチュラルに話がヒートアップし始めたので、オズに視線を送る。
突然始まった寸劇に固まっていたオズが、ようやく動いて、ナツナツの口を覆うように両手で捕らえる。
「え~と、ナツナツ。途中から割り込んで、悪役みたいなこと言わないでください」
「むぎゅぅ」
「ココネさんたちも、悪ノリしないでよ」
「いやぁ~…………冗談にしてなぁなぁで済ませられないかと……思ってみたりそうでも無かったり?」
「おいこらぁ。冗談でも妹を売るなぁ!!」
ちなみに、『まぁ♪』からナツナツです。
分かると思うけど。
「…………そういうこと言うと、ホントにフォズさん貰っちゃいますよ」
「サリーならあげるから、それは勘弁して」
「サリーちゃんはいらないかな~」
「うえぇん!! フォ~ズ~ちゃ~ん~~、マ~ヤ~姉ぇ~~!!!!」
「うひゃあぃ!?」
「はいはい、良い子良い子」
兄とナツナツから『いらない』と言われて、フォズさんとマヤさんに抱き着いた。
▽ サリーは、『いらない子』の称号を手に入れた!!




