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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
219/264

第209話 ゴーレム娘 VS. キング・ゴブリン①

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

数分後。

ゴブリンたちが土砂を掻き分けているのが分かったので、ココネさんの盾を囮として差し込んで気を引き、それを悠々と掲げて背を向けるゴブリンを串刺しにする。

同時に、オズの魔法で土砂ごとゴブリンを吹っ飛ばし、戦場の確保と戦況のリセットを行った。


「んじゃ、行ってくるわ」


「いってらっしゃい、お姉ちゃん」


何事も無かった風を装い、キング・ゴブリン目指して駆け出した。

なお、内心は先程のミスを引き摺っている。


『慣れないことするもんじゃないわー……』


『答えたくなければ答えなくてもいいが、なんであんなことをしたんだ?』


『……………………いや、あそこで『ビシッ』と格好良いこと言ったら、ココネさんたちも安心するかな、と』


『結果としては不安にさせただけか……』


『ナビ、冷静に傷口を抉らない』


『む、すまん』


あっはっはっはっはー……


このなんとも言えない感情は、ゴブリンにぶつけるしかないね? (八つ当たり)

せめて、痛みを感じる前に即死させてやるわい。(いつも通り)


キング・ゴブリンの咆哮を受けて、ゴブリンウォリアーが私の周囲を取り囲むように集まり、ゴブリンアーチャーが先制とばかりに無数の矢を降らせた。

狙いは全て私。思惑通り。


この広場は、洞窟内に限って言えば、上にも横にも最も広い空間だ。

だが、自由に矢を振らせることが出来るほど空間に余裕がある訳でもない。


キツイ放物線を描く矢の多くは、真っ直ぐに天井に迫り…………一切の抵抗も痕跡もなく、天井の中へと潜り込んだ。

今日だけで幾度となく見た光景だ。

『天井の中』という完全な遮蔽を得た矢の着弾点は、本来なら、天井から矢の先端が顔を覗かせるまで予想しづらいため、避けるのが難しいという利点を持つ。…………が、


『軌道予測完了。予測データを投影』


『おっけ、何となく分かるわ』


単純な放物線なら、上昇軌道だけでも観測できれば、ナビが軌道も着弾点も全て予測してくれる。

上から来る矢は慌てて射たせいか、私を中心とした広範囲に雨のように降り注ぐと教えてくれた。

オズたちのいる通路の透過術式は、崩落と共に破壊されているので後方を気にする必要はない。

故に、重心を前に倒し、倒れるように加速する。


正面には、武器を斜めに構えたゴブリンウォリアーたち。

人間の冒険者と同じように、壁役として敵の足を止めさせる者…………ではない。

そいつらは迫る私を見て、『にやり』と嫌らしく嗤った。

次の瞬間、そのゴブリンウォリアーの陰から…………いや、そのゴブリンウォリアーの体そのものから直接 矢尻が飛び出す。

仲間の体、それ自体を遮蔽とした奇襲攻撃だ。

透過対象に応じて、使用する矢を変えるか何かしているのだろう。


…………でも、その攻撃もナビの予測した範疇だ。


「よっ」


スレイプスレイドでゴブリンウォリアーたちを(あお)ぐように振り抜く。

当然、刀身は当たらない……が、


「げぎゃあ!?」×そこそこ


嫌らしい笑みを浮かべていたゴブリンウォリアーたちから、突如として悲鳴が上がる。

中には、それも出来ずに絶命している者もいた。

そして、私に向かって放たれていた矢の尽くは、ゴブリンウォリアーたちの体内で止まっている。

いい加減 常套手段となりつつあるジャミング術式だ。

さすがに、近接戦を行いながらタイミングを合わせるには難しいが、遠距離攻撃ならこの通りである。


「《地重斬》!!」


そして、硬く重い岩を刀身に纏わせて重量を増すと、スレイプスレイドの勢いを殺さず加速を追加し、水平大回転斬りへと派生させる。

ただでさえ重い重大剣が更に重くなり、普段なら加速させるどころか、握り続けることも難しいものとなったが、強化されたステータスは問題なく振り切ることを可能とした。

その一撃は、シンプルな暴力となってゴブリンウォリアーたちに襲い掛かる。


ごぎがぎぐぁぼぢゃああああんんんん…………!!!!!!!!


ゴブリンウォリアーたちを打ち出すつもりでフルスイング。

斬撃音ではなく打撃音が響き、彼らの背後のゴブリンたち目掛けて、ゴブリン弾として飛ぶ。

…………の、陰に隠してスレイプスレイドが纏う岩をキング・ゴブリンへ向けて射出した。


《シザー・ロック》を使用して形状変化させた岩刃は、高速回転しながら、チャクラムのように飛ぶ。

キング・ゴブリンは配下の者をけしかけた後、自身の腕程もある大豪剣を肩に担ぎ、推移を観察している。

岩刃は吹っ飛ぶゴブリン弾の陰に隠れているので、気付くのも躱すのも難しいだろ


めぎぼごお!!!!


「……………………」


気付いてもいたし、躱すつもりもなかったらしい。

キング・ゴブリンは飛んできた配下ごと岩刃を叩き落とす。

その一撃は、ここまでかなりの距離があるにも拘わらず、風圧を感じるほどの剣速だった。


「ごあがぃ、がぁぃがぁ……」


「ぐ、ぐぎゃ……」


「ぐがああ!? がああごがいがぎゃあああ!!!!」


「ぎ、ぎぎゃい!! ぎぎゃいぎいい!!」


「がごあ!! がああごがああごこお!!!!」


「ぎゃい!!」


「ぎゃいぎゃいぎゃあ!!」


「ぎゃきぎぃ!!」


…………参ったな。

油断している内に、せめて一撃くらいは入れておきたかったんだけど。


キング・ゴブリンは、不機嫌さを隠そうともせず、仲間を睨み付けながら何かを捲し立てると、『ビシッ』とこちらを剣で指し示す。

…………いや、それは正確に言えば、オズたちの方を向いていた気もする。


どうやら、向こうとこちらの作戦が、期せずして合致したらしい。

つまり、私 VS. キング・ゴブリン、オズたち VS. 配下たち。


まぁ、完全に戦闘相手を分けるのではなく、隙があれば遠慮なく攻撃が飛んで来るだろうが。私もそのつもりだし。

配下のゴブリンたちは、キング・ゴブリンの機嫌を損ねないようにいそいそと大回りでオズたちの方へ移動していく。


それに、つと意識を逸らした瞬間、


「がああああ!!!!」


「っ!!!?」


約10mの距離を一息で詰めきったキング・ゴブリンが、力任せな一撃を右上から振り下ろした!!!!

咄嗟にスレイプスレイドを斜めに掲げ、刀身を盾にする。


――――ッガッゴッッッッ!!!!


「ッッッッぅっう!!!!」


…………唐突だけど、グランディア家では、よく戦闘訓練をする。

基本的に私がボロ負けするわけだけど、勝ち負けに拘わらず、必ずすることがある。

それは『攻撃を受ける』ことだ。


要するに、『どんなダメージを受けると、どんな悪影響が自分に現れるのかを知っておけ』という話で、心構えというか慣れというか、痛みを経験しておけば、『思わぬ痛みに動けなくなること』や『怪我の程度を見誤ること』を防ぐことが出来る…………かもしれないという話。

まぁ、『冒険者として活動する以上、万一を考えて知っていた方がいいだろう』というお義父さんの方針で、事情を知らない人が見たら、トチ狂ってるようにしか見えない訓練をしているのだ。

……………………一応、オズやナツナツも、ね。

ほ、本人たちの希望、だから……うん……………………毎回、こっちが泣きたくなるんです、ホントに。(泣)


…………………………………………な、なんでいきなりこんな話を始めたかと言うと、ですね? この訓練しといて良かったなってこと。

基本的に敵の攻撃は回避する私にとって、防御の上からでもキング・ゴブリンの一撃は予想以上に強烈だったと言わざるを得ない。

訓練でお義父さんの攻撃を受けていなかったら、結構 混乱していたに違いない。


『ナビ!!』


『飛行ユニット射出…………姿勢制御』


ナビが落ち着いて射出した飛行ユニットが指定位置に付くと、各々 向きと噴射量を自動調整して、減速してくれる。

途中で飛行ユニットの制御権を受け取って、姿勢をうつ伏せ状態に移行し、片手と両足を突いて踏ん張って制動。即座に再加速して、キング・ゴブリンへ瞬発した。

急激な加速ベクトルの反転に、一時的に貧血時のようなふわふわした感覚に包まれるが、気にせず加速を続ける。


なぜなら……


『整調中…………完了』


クリアになった視界の先では、私を殴り飛ばしたキング・ゴブリンが、そのまま前進してオズたちに向かっているところだったのだから。


『――――っの!!』


言葉になら無い悪態をついて、真っ直ぐにキング・ゴブリンへと加速する。

途中、配下のゴブリンが立ち塞がるように現れるが、相手にしないで加速を優先させてもらう。


キング・ゴブリンの向かう先では、サリーさんが青い顔をしながら双剣を構え、強い眼差しで睨み付けている。

同時に、キング・ゴブリンの姿が『ギュッ』と圧縮され、移動速度が低下したように見えた。

ナツナツの《妖精魔法》による、疑似空間転移の逆用だろう。

拡張された空間に入り込んだため、外からは圧縮されたように見えるのだ。


『トッ、タッ、トッ……』とリズムを刻む。

加速は十分。速度も乗っている。

邪魔するように現れた三体のゴブリンウォリアーの内、真っ正面の一体が放った斬撃を、軽く置き去りにして跳躍。

そいつの顔面を踏みつけて、脚力と飛行ユニットの加速で天井近くまで飛び上がった。


下界を見るように戦場全体を視界に捉える。

今、戦場の中心は、入口に通じる通路の前。サリーさんとキング・ゴブリンだ。

周囲には、ゴブリンとハイ・ゴブリンの混成群が散らばっていて、遠距離系のゴブリンアーチャーとゴブリンメイジがこちらを見上げて攻撃を放っている。


それを確認している内に、倒立するように反転。

天井を蹴ると同時に、飛行ユニットも反転させ、自由落下を遥かに凌ぐ速度で落下。ゴブリンアーチャーたちの攻撃を置き去りにして、キング・ゴブリンの頭上から襲い掛かる。


ガ――ィィイイイインン!!!!


しかし、それはキング・ゴブリンも予想の内か。

空いた右手で、左腰に下げていた大豪剣を抜き放つと、抜刀術もかくやの速度で、打ち払うように振り上げた。

振り下ろしのスレイプスレイドと振り上げの大豪剣が真正面からかち合う…………寸前に、蹴り上げるように体を回転させる。

回転と共に傾いたスレイプスレイドの刀身上を、ギャリギャリと嫌な音を立てて大豪剣が滑り行き、それに押されて体はさらに強く回転した。


スレイプスレイドと大豪剣は、雌雄を決することなく、互いの身にキズを刻んで距離を取る。

私とキング・ゴブリンは、刺突のような爪先蹴りと金属のような頭突きで最接近した。


『ぐぐっ……』と、地面を蹴った時のような反力が爪先から返ってくる……

これ以上は危険と判断して、爪先蹴りから踵を付く踏み付けにシフト。

キング・ゴブリンの額を足場にして、直角に跳躍した。


今度はスレイプスレイドを両手に構え、その分 腰を落としてバランスを取りながら地面を滑り、サリーさんの近くでようやく止まった。


「ふぅ…………ごめん、やられたわ」


「い、いや、いいというか助かったわ、ありがと……………………ごめん、コレなに?」


「ヒミツ」


サリーさんが割と逡巡してから飛行ユニットを聞いてくるが、答えられる訳がない。

それに…………


「…………………………………………」


額に滲んだ血を拭うキング・ゴブリンと目が合った。

背後から聞こえた息を飲むような音は、サリーさんかマヤさんか…………

声も上げず、もしかしたら睨みもしていないのかもしれないが、ただ見られているだけでも威圧感が半端ない。


ついに二刀となったキング・ゴブリンが動く…………直前にこちらから飛び込んだ。


ガギッ!! ギィン!! ギャリ!!


両手の一刀と片手の二刀。

通常なら、一撃の威力は一刀に、速度と手数は二刀に分がある。

だが、この場においては、一撃の威力は二刀が勝り、速度は一刀が勝り、手数は対等だった。


私は、飛行ユニットと踏み込みを連動させ、高速の一撃を放つ。

キング・ゴブリンは、片方の大豪剣でやすやすと一撃を受けると、動きの止まったこちらに豪風を伴った斬撃を放った。


飛行ユニットの向きを変え、一瞬で深くしゃがみ込むと、数瞬前まで私の胴体があった場所を恐ろしい威力を秘めた斬撃が通り過ぎていく。

再度、飛行ユニットを反転させ、立ち上がると共に天を衝くような高速突きをキング・ゴブリンへと撃ち込む。


さすがに突きを剣で受けるのは危険に思ったのか、キング・ゴブリンは半身となって確実に回避しながら距離を取った。


『厄介だな……』


『そうね』


キング・ゴブリンとサリーさんたちの距離が近い。

私とキング・ゴブリンの戦闘に巻き込まれる……とは思わないが、突然ターゲットを変えてサリーさんたちの方に襲い掛かる可能性が無いとも言えない。

10m程度の距離なら、ほぼ一瞬で詰めることが出来るのだ、コイツは。

出来れば、50m……せめて30mは離れたい。


だが、真正面から馬鹿正直に打ち合っても、キング・ゴブリンに攻撃を受けられている間は、ヤツを下げることは出来ないだろう


『防御ではなく、回避させないとダメか』


ただ、私の基本的な闘い方は、相手を動かすのではなく、自分が動いて隙を突くやり方なので、今まで通りにはいかない。

さて、どうしたものか……


『こちらから、強烈な攻撃を当てて吹き飛ばしますか?』


私の迷いを察したのか、オズからそんな提案がされる。が、


『いや、あまり注意をそっちに向けたくない。ココネさんやフォズさんもいるし』


『でも……』


『大丈夫』


今まで通りのやり方でないのは確かだが、まったく経験が無い訳でもないのだ。


『お義父さんたちとの訓練で似たような状況はあったからね。それを参考に行くよ』


『…………気を付けてください。いつでも援護しますので』


『了解』


安心させるように答えるも、オズが真に安心してくれるのは、キング・ゴブリンを倒した後だろう。

だから……


『ナビ。小ささを活かす。脚を狙うよ』


『分かった。私は、《ロング・サーチ》に注力する。キング・ゴブリンの手足・武器だけでなく、周囲のゴブリンも補足するが、予想外の行動に注意しろ』


『分かった』


とっとと倒して安心させてあげなきゃね。


距離を取ったキング・ゴブリンが、動かない私に痺れを切らして一歩を踏み出す。

その脚を狙って、地面を這うような飛び込みと同時に、斬撃を放った。


それは予想していなかったのか、キング・ゴブリンは半端な位置に脚を下ろし、バランスを崩しながらも大豪剣を打ち付ける。

だが、万全でない状態での攻撃なら、私も余裕をもって躱せる。

斜めに跳躍して斬撃の裏に回り込むと、そのまま さらに踏み込んで、執拗に脚を狙った。


さすがに位置的に剣では受けられず、キング・ゴブリンは後方へと引いて、状況のリセットを狙う。…………が、させない。

引いたキング・ゴブリンの一歩と同じ距離を詰めて、愚直に脚を狙い続ける。


二度、三度、四度、と繰り替えした段階で、追い詰められ続ける現状に嫌気が差したのか、一度大きく咆哮すると、キング・ゴブリンは待ちの姿勢になった。

代わりに、周囲のゴブリンから、攻撃が飛んでくるようになる。


『ナビ』


『問題ない。全攻撃補足中……』


ナビの言う通り、配下のゴブリンたちの放つ全攻撃は、その軌道も含め完璧に補足している。

これなら、全て回避できるだろう。


『もうちょっと距離を離す。それが終わったら、攻撃に転じるからよろしく』


『御意』


お堅いナビの言葉に薄い笑みを浮かべて、キング・ゴブリンを追い詰める作業に戻った。

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