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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
216/264

第206話 ゴーレム娘、最後の作戦会議

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

一時間を掛けた道程を、倍以上の時間を掛けて戻っていく。


ゴブリンたちは、20 ~ 30体程で固まっていることが多かったが、不意討ち または 閃光玉による無力化により、驚くほど効率的に討伐することができた。


ちょっと困ったのは、側道側を調べる時だ。

放置していくのは『挟撃を避ける』という当初の目的からすると選択できないけど、全員で向かうのもまた愚策。

制圧した本道の奥にゴブリンが移動してしまう可能性もあるため、つまるところ、誰かが分岐点で見張っていなければならない。

とはいえ、一人で見張るのもまた怖い。


結局、ココネさんたちにナツナツを同行させて、私とオズで見張りをすることで対応した。

ナツナツが付いていくのはアレね。透過してくるゴブリンの監視と透過術式の有無の確認。

こればかりは、オズでも出来ない。

そう考えると、フォズさんにナツナツがバレたのは悪いことばかりではなかった。

精霊には、今まで使っていた隠蔽魔法が効かないとかも分かったしね。



そんなこんなで、元々の情報にあったゴブリン100体なんてとうに超えて、そろそろ討伐数が300に届こうかというところで、最終難関にぶち当たった。


洞窟の入口まで、残り僅か。

その場所は、大きく開けた広場のようになっていて、岩も少なく見通しが良い。

つまり、隠れて通り抜けることは、事実上不可能。

そして、200体はいるゴブリン、ハイ・ゴブリンの混成群の中央に、大柄な大人の人間と比べても、なお巨大な人型が座り込んでいた。


…………キング・ゴブリンである。


すでに、こちらが逃走に向けて動いていることはバレていることだろう。

半数以上の仲間を倒されているのだから、当然のことだ。

私たちは、直前の曲がり角に隠れ、戦闘開始前に最後の打ち合わせを行っている。


「…………当たり前だけど、やっぱり待ち構えられてるね」


「ビビって逃げてくれても良かったのになぁ~……」


「さすがにそれは難しいと思いますよ、サリーちゃん」


「これだけ仲間をやられておいて、『逃げ』は選択出来ないわよね。群の長としては」


とはいえ、ゴブリンたちに見付からずにここまで来ることは、道中の遭遇率から考えても難しかったのだから、なんとかここを突破するしかない。

幸い、まだ閃光玉に余裕はある。…………まぁ、効果があるのは、最初の内だけだろうけど。


「とりあえず、まずは閃光玉。それで無力化出来たら、なるべくキング・ゴブリンから離れて、全員で入口を目指す。前衛を中心に一点突破だ。

でも、さすがにそろそろ、こちらの手の内を読まれている可能性は高い。目が眩んだ『フリ』には気を付けよう」


「閃光玉が効かなかったらどうする? すぐにキング・ゴブリンが動くとは思えないけど、魔法と矢は飛んでくるよね。私たちが弾こうか?」


「光と闇属性は、レミィさんよろしくお願いします。お姉ちゃんは地属性の重いやつを、私はそれ以外を潰します」


『―――――――― ( ´∀` )b』


「うん。魔法と矢は頼む。ゴブリンウォリアーが来たら、それは僕が引き付ける。サリー、フォズ、マヤ姉さんは、予定通り進んで向こう側の通路を制圧して」


「あいよー」


「分かりました」


「ココちゃん…………気を付けてね……」


実妹のサリーさんよりも、マヤさんの方が不安そうな顔をしている。

それに、安心させるように微笑したココネさんは、優しく答えた。


「そんな顔しないで、マヤ姉さん。大丈夫。《楯術》をフルに使って、防御に専念するから。

閃光玉が効く効かないに拘らず、キング・ゴブリンは無視一択。敵の数を減らすより、通路の制圧を優先して。この広場で闘うより囲まれる危険が低いし、通路に敵が少なければ、そのまま撤退してもいい」


「撤退する際は、私が地魔法で通路を塞ぎます。十分離れる時間は稼げるでしょう」


「それは頼もしいな。是非とも頼む。

あと、最後にナツナツ。どの場合でも、透過して隠れているゴブリンがいたら、全て教えて欲しい。

でも、基本的にはオズリアと一緒にいて、隠れていて。流れ弾には気を付けるんだよ」


「あいさ~」


「…………さて、こんなところか」


「あ、ひとつ補足」


ココネさんが一通り説明し終わったところで、私が手を挙げる。


「なんだい?」


「ゴブリンウォリアーだけじゃなくて、キング・ゴブリンも動いたら、私もココネさんの援護に入るから。さすがに、キング・ゴブリン + 配下は、防御専念でも一人でどうこうできる相手じゃないでしょ?」


「……………………はぁ、分かった分かった。信用ないな」


「そりゃあ、『キング・ゴブリンが発生しているなら、僕らで何とかできるレベルじゃない』とか言ってたんだから、信用あるわけないじゃん」


「うぐっ」


ココネさんが『痛いところをつかれた』とばかりに、呻き声をあげる。


「それに油断してたとはいえ、ハイ・ゴブリンの攻撃を受け切れなかったのは確かだし」


「うがっ……」


「結果的にサリーさんも含めて無事だったけど、どっちか死んでてもおかしくなかったと思うよ?」


「ぐぅぅ…………」


分かってるだろうけど、改めて戒めてもらうために、もう一度言葉にさせてもらう。


「あのね、腕が取れても、足がもげても、(はらわた)ぶちまけても、生きてれば治してあげるけど、即死だけはどうしようもないからね? そこんとこ、再認識しておいてよ?」


「…………はい……肝に命じます……」


「よろしい」


自分より遥かに歳下の小娘にこんなことを言われて、自尊心が甚く傷付けられたかもしれないが、それだけで死なずに済むなら言わない手はない。


「そうね。ココネはしっかり身に刻んで。…………で、そういうルーシーは、大丈夫なのよね? ステータスで並んでいても、体格差による不利は覆らないわよ?」


「分かってる」


そう。ステータスが同等なら、体格差で勝負が決まる。…………なら、ステータスで圧倒していればいいだけの話だ。


「奥の手のひとつはバッチリ。体格差も含めて、対等以上にいけるはず」


「ダメなら別の奥の手を使います。念のため渡しておいたブローチは着けてますね?」


私のセリフに続くのはオズだ。

詳細は説明していないが、全員の服にブローチ ― 転移基点端末 ― を着けてもらっている。

本当に敵わないようなら、空間転移ジャンクション『ヒトコ』へ逃げることも考慮して渡してあるのだ。


フォズさんがしげしげと眺めて疑問を口にする。


「見た感じ、どこにでもある普通のアクセサリーのようですけど、本当に魔道具なんですか?」


「しかも、起死回生のすごい魔法の。とてもじゃないけど信じられないわ。というか、わざわざキング・ゴブリンなんて相手してないで、それ使いたい」


マヤさんの意見は尤もだが、ココネさんたちと言えど、空間転移施設は見せたくない。


「奥の手中の奥の手ですからダメです。ただ、今のこの状況の根底が覆るような結果を招きますので、確実に生き残れます。…………その後の色々が大変ですけど。主にココネさんたちが」


そりゃあ、問答無用で洞窟から脱出出来るのだから、根底から覆るでしょうよ。


「だから、即死、ダメ、絶対。これでも、貴方たちを信用して、かな~りオープンにしてるんだからね」


「……………………なぁ。僕らを信用してくれるのは、とってもうれしいんだけど……………………僕らとルーシアたちが出会ったのは、昨日じゃないか。一体、何を根拠にそんなに信用してくれるんだい?」


「そうそう。普通、信頼と時間は…………えっと、ほら、広い意味で一緒、みたいな」


「…………………………………………え~と、『信頼と時間は、比例する』とか?」


「そうそれ!!」


「良く分かりましたね、お兄ちゃん……」


「というか、何をどうすればそんな覚え方になるの……?」


「多分、『比例』と『広ぇ』を勘違いしてるんじゃないかと……」


「…………ぐぅ」


「当たりなんですね、サリーちゃん……」


サリーさんは、一周回って頭がいいのかもしれないやそんなことはないか。

まぁ、そんなことは置いておいて、この短時間でココネさんたちを信用している理由、か…………


「…………………………………………え~と、特殊な教育と人生経験、かな?」


「ルーシア、キミいくつ?」


「15の小娘に人生経験を根拠にされても……」


「それとも、特別な教育って言うのが肝なんでしょうか?」


「フォズちゃん、『特殊な教育』よ。この使い分けにどんな意味を込めてるのかは分からないけど」


「あはははははは…………」


適当なことを言って誤魔化したと思ったのか、ジト目でこちらを見るココネさんたちに乾いた笑いを返す。



…………別に誤魔化した訳ではないのだけど。

私も普段は、まっっっったく気にも止めていないのだが、私には前々世の記憶がある。

……いや、『記憶ではなく、記録だ』と結論付けたんだっけ? まぁ、どっちでもいいや。


前々世の記憶の持ち主、信楽 流紗を所有していた孤児院にとって、彼女は将来 自分たちへ金を呼び込むための投機対象だった。

それは『彼女本人が起業し、金を集める』という以外に、『有力者や資産家に取り入り、金を払わせる』という使い方も想定されていた。

それゆえ、彼女は『他人を思い通りに誘導する方法』、平たく言えば『他人を騙す方法』を良く知っていた。


その彼女の記憶は、私の中にある。

つまり、私も『他人を騙す方法』に長けている…………という結論になるかと言えば、実はそんなことはない。ややこしくて申し訳ないが。


彼女の記憶を元にした、ぼんやりとした全体像は分かるのだ。

『こんな感じのことをして、あんな感じのことをして、そんな感じの方向に話を持っていけば、うまくいく』みたいな。

だが、当然この程度の認識で他人を騙せるのかと言えばそんなことはなく、『じゃあ、具体的にどうするのか?』と詳細を思い出そうとすると、(もや)が掛かったように思い出せなくなる。

『理論は知ってるけど、手段は知らない』とでも言うんだろうか、この状態は。

そして、このような状態になるのは、この記憶だけではない。

全てを思い出して検証したわけではないが、いわゆる『悪いこと』に利用できそうな記憶は、基本的にはこうなるっぽい。


……………………真実は分からない。

分からないけど、私はこれを『おじいちゃんが何かしたんじゃないか』と思っている。


よくよく考えれば、おじいちゃんは私を生き返らせようとした。

その方法は簡単に言えば『新しい体に記憶を移す』というものあったが、その方法において重要な要素である記憶に、他人の記憶が混在していることを、果たして気付かないことが有り得るだろうか?


真実は分からない。

ただ、おじいちゃんが信楽 流紗の記憶を知り、私の役に立つと考えて残したとしたら、この記憶の残り方には作為を感じる。

つまり――――『真っ当に生きろ。だが、悪意に負けるな』とか、そんなことじゃないかと。

それを証明するように、他人を騙す方法は分からないが、私を騙そうとしている相手は何となく分かるのだ。

『あぁ、こいつは今、私に対して良からぬ事を考えているな』とその程度だけど。



そんなわけで、今の私は『自分を騙そうとする相手に対し、妙に鼻が利く』状態であると言える。

一応、昨日からそれなりに気を使いつつ、ココネさんたちに情報を小出しにして反応を見た結果、上から目線で『信用に値する』と結論したのだった。

さすがに これ以上の秘密は、もっと親しくなってからにしたいけど。ナツナツのことだって、本当はバラす予定ではなかったのだし。


なおも、『じー……』と見る四人に、ぱたぱたと誤魔化すように片手を振り、


「まぁ、色々あるんだよ。聞くと泥沼に嵌まって抜け出せなくなるよ。正直、この辺がリスクとリターンの境界線の気がする。ココネさんたちにとって」


「というか、そこまで知られたら逃がすつもりは無いです。ナツナツのことだって、かなりギリギリなんですから」


「それな~」


「…………ホントに何を隠してるんだ…………いや、言わなくていいけど」


「知るだけでヤバイことかぁ~…………想像も付かないわー」


「えと……ナツナツちゃんのことは、ホントごめんなさい」


「そこは仕方無いわよ、フォズちゃん。分かっちゃったものは分かっちゃたんだし」


嘘は言わないように、でも知る危険はしっかりと伝えておく。

『見た目に反して、異常に強くて、異常に知識が豊富なミニ姉妹』くらいに思っててくれるのが、ココネさんたちの精神衛生上も丁度良いと思うんだよね。

まぁ、秘密を抱えていられるなら、知られても危険は少ないと思うけど…………フォズさんとか、かなり苦手そうだしね。


さて…………多分に現実逃避的な感情もあっての この雑談(流れ)だと思うけど、そろそろ現実と向き合ってもらおう。


「そろそろ行きます?」


「軽いな…………まぁ、いつまでも、ここで時間を潰している訳にはいかないからね」


「あぁ~~~~…………想定外の事態になりませんように!!」


「ここが正念場です。力を貸してね、レミィちゃん!!」


『―――――――― ヽ( `皿´ )ノ!!』


「ここまで通りにやれれば、行ける!! ファイト!!」


気合いを新たにする四人の隣で、私たちも簡単に気合いを入れる。


「じゃ、頑張ろうか (危なくなったら、即転移して。ヒトコの空間転移ホールだけなら、まだ誤魔化せる、かも)」


「そうですね (了解しました。あちらの人型汎用デバイスに指示して、なるべく普通の部屋と通路に見えるようにしてあります)」


「は~い、タ~ッチ♪ (というか、念のためそういう部屋を作っておくといいかもね~。後は目隠しして外に連れ出せばオッケーでしょ)」


『…………器用だな、お前ら』


ナビの呆れた声を聞きながら、三人で輪を作るようにハイタッチした。


「オズリア、閃光玉を頼む」


「分かりました」


ココネさんの指示に合わせて、オズが閃光玉を五つ程取り出した。

ルーシアナの記憶の話。


素人的に考えても、『記憶を移植することで蘇生させようとしたからと言って、蘇生対象の記憶を全部確認する必要も理由もないよね』って、推敲中に思ったけど、そのまま行った。

ちなみに、ルーシアナの前々世は、当初は重要な要素になる予定だったけど、今考えてる展開だと、あんまり重要じゃなくなる気がする。

どういう結果になるかは、私の思い付き次第……

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