第205話 ゴーレム娘、そういや原因ってなんなの?
168 ~ 220話を連投中。
11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)
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一分も経てば、その場に生きたゴブリンは一体もいなくなっていた。
《ロング・サーチ》で先を確認するが、次の敵が来る様子はない。
とりあえず、付近のゴブリンは殲滅できたと見ていいだろう。
「ふぅ…………ちょっと、休憩しよう」
「さんせー……」
「お疲れ様でした。レミィちゃんもありがとうね。大活躍だったよ」
『―――――――― (^-^)/』
「警戒は私がしておくから、ルーちゃんたちも休んでね」
「ありがと」
「ただ、休むのに環境が良くないですね」
「血生ぐちゃ~い…………おりゃ」
オズの頭上で鼻を摘まんだナツナツが、ぐるりと周囲を見渡すと一瞬で血臭に澱んだ空気が消え去った。
『もしかして?』と思って、袖の匂いを嗅いでみると、服に付いた匂いも無くなっているっぽい。
「おぉ~、すごい。でも、どうやったの?」
「『どっか行け~!!』ってやったら出来た~♡ 誉~め~て~♪」
「よしよし。ナツナツは気が利く良い子だよ~」
「わ~い♪」
オズの頭上から、私の胸元に飛び込んできたナツナツを優しく撫で、軽く抱き締めてあげた。
「……………………」
「ココネ。こういうもの」
「あはははは…………でも、他に妖精を知りませんから、これが普通の可能性も…………無きにしもあらず……………………かも」
「フォズちゃん。無理しなくてもいいのよ」
サリーさんたちが何か言ってるが、私もナツナツが平均なのか知らないから何とも言えない。
一頻り撫で回してから適当な場所に腰を降ろすと、オズも隣に腰を降ろして寄り掛かってくる。
ココネさんたちも、思い思いの場所に腰を降ろした。
「ところで、何か新しく気付いたことはある?」
「? 気付いたことと言うと?」
「大雑把に言えば、『このまま作戦通りに進めても大丈夫?』ってこと。何か敵の反応に怪しいところがあったとか、誰かに予想以上の負担が掛かってるとか」
「特にフォズさんとレミィさんには、いつもと違う闘い方をしてもらってますし、やり辛いところとか、ムリしてるところとかあったら、相談してもらえれば対応できますから」
オズの言葉を聞きながらフォズさんに視線を移すと、両手をパタパタ振って問題ないことを示している。
「わたしとレミィちゃんは全然問題ないですよ。むしろ、レミィちゃんが絶好調ですし、それに影響されているのか、わたしもいつになく好調ですから」
『―――――――― ( ^▽^)♪』
『そのとーり♪』と言う感じで、レミィちゃんがくるくる回って両翅を広げる。
それに苦笑しながらも、しっかりと苦言を呈すのはココネさんの役回りだ。
「うん。確かに調子がいいみたいだね。ただ、『調子がいい』のも普段とは違う状態だと言うことを、忘れちゃいけないよ。例えば、普段より魔法の威力が上がって予想外の被害を出したり。例えば、普段より闘えてトドメの確認を怠ったり。調子がいい時ほど、普段との違いを正しく認識しないと、予期しない失敗に繋がるからね」
「は、はい……ごめんなさい、お兄ちゃん……」
暗に『調子に乗るな』と言われたと思ったのか、途端にしゅんとなるフォズさん。
ココネさんは慌てたようにフォローを口にした。
「ああああ!! そ、そうじゃなくて!! 叱った訳じゃないから!! フォズは自己管理がしっかりできてて、普段から調子が良い悪いの差が少ないだろ? だから、今は慣れてない状態だと思ったから、気を付けてと言いたかっただけなんだ。
うっかりルーシアやサリーなんかに攻撃を当ててしまったら、とんでもなく後悔するだろ?」
「!!!! そ、そうですね。そんなことになったら、わたし…………ありがとうございます、お兄ちゃん。普段通りに、でも ちょっとだけ頑張れる、くらいのつもりでがんばります」
「うん。その通りだ。頼りにしてるから、がんばれ」
両手をぐっと握って気合いを新たにするフォズさんの頭を、ホッとした様子で撫でるココネさん。
そして、霧散する怒気。
言葉のチョイスをミスったココネさんに向けられた女性陣+αのものである。ちなみに、私も向けておいた。
これもココネさんの役回りである。
「じゃ、次、あたしー。ハイ・ゴブリンエース出現。マジでキング・ゴブリン湧いてるかも」
「あぁ、それか。せめて進化直後なら、まだマシなんだろうけど……」
サリーさんがかる~く告げたセリフに、どっと空気が重くなる。
みんな分かっているのだ。洞窟中に張り巡らされた透過魔法が、下っ端ゴブリンに扱えるようなシロモノであるはずがないことを。
さらに、ここまで下準備ができているということは、進化直後ということはあるまい。
「せめてもの救いは、『透過魔法に特化し、直接的な戦闘力はそれほど高くないだろう』と考えられることですね。
それでも、種族的にハイ・ゴブリンよりも弱いとは考えられませんけど」
「だよね……」
「事前調査したのは、一体誰なのよぉ~~!! 絶対、中まで見てないでしょぉぉぉぉ~~……!! キング・ゴブリンなんて、CランクどころかBランクのクエストでしょが!!!!」
「依頼人は、小さな村らしいですから……多分、冒険者ギルドも無いでしょうから、自警団や青年団の人たちが確認した程度なんでしょう。
それでも、出入りする頭数や種族、持ち込む獲物の量や頻度辺りの情報は持ってくるはずなんですけど…………」
「そうね。その辺の情報があれば、ここまで依頼内容と実際が異なることも無いはずなんだけど…………それか、別のクエストと資料が入れ替わったとか? …………無いか。クエスト番号は全部同じだったし」
依頼書 及び その添付資料には、統一されたクエスト番号が記載されている。
これは、ギルド側のミスで資料が入れ替わるのを防ぐと同時に、入れ替わった場合に冒険者側で間違いに気付けるという効果がある。
……………………とはいえ。
「番号を降る前に入れ替わったら意味が無いよね? ギルドの依頼受付の手順ってどうなってるの?」
「いや……さすがに知らないな……」
「依頼を出したことはないしねぇ~」
「でも、受付に提出する前に、依頼人自身で何かに記入してませんでしたっけ?」
「んん~~…………確か、決まった様式があって、依頼人はそれに大体の内容を記入して提出してたはずだけど……それと照らし合わせながら詳細を受付で確認する、くらいしか想像できないわね」
残念ながら、ココネさんたちから詳しいギルドの内情が判明することは無かった。
まぁ、そりゃそうだ。
依頼を出したことがあったとしても、それがギルド内でどう処理されて依頼書として貼り出されるかなんて、ギルド員でも無い限りは知ることは無いだろう。
「確かねぇ~、依頼人が作った申込書を確認しながら、受付で直接 依頼書の作成をしてたよ~。作成した依頼書は、一旦 受付の背後に置いてある箱の中に放り込まれてたなぁ~…………その時、すでに番号は振ってあった気がする~」
「クエスト番号を見るに、『日付-受付番号-通し番号』って感じでしょうか? これなら、番号を振ってしまえば間違いようは無いですかね。…………となると、事前調査で手を抜いたか、依頼内容の聞き取り中に資料が入れ違ってしまった可能性くらいしか考えられませんね。受付同士の距離は結構近かったですし」
「前者はどうしようもないから置いておくとして、後者も可能性はあるかなぁ~…………依頼書の他にはクエスト先を記入する白地図が用意してあったけど、無駄に大きくて隣の方にまで届いてたし~。地図だけ入れ替わっちゃったら、今の状況は説明が付くよね~」
「そうですね。それと、ここ数年のクエスト結果の傾向をまとめたものが資料室にありましたけど、『依頼書と実際に討伐した魔獣のランクが異なっていた』という報告は、月100件程度の頻度で発生しているようです。まぁ、クエスト総数自体は、月十数万件発生しているので、確率としては0.1%程度。高いかと感じるか、低いかと感じるかは人それぞれですけど、被害にあっている以上、報酬は搾り取れるだけ搾り取りたいですね」
「「「「「…………………………………………」」」」」
何故か、王都の冒険者ギルドに二度しか訪れたことのない二人から、よっぽど詳細な情報が提供された。
ちなみに、二度のうち片方はココネさんたちとの待ち合わせなので、実質一度である。
「えーーーーと…………なんでふたりとも、そんなに詳しいの?」
ココネさんたちは、いつものように頭を抱えているので、代わりに私が聞いた。
「え? だって、最初にギルド行った時、全部終わるのに2時間くらい掛かったじゃ~ん。で、テモテカールと色々違うみたいだから、ちょっと気になってさ~」
「しかも、手続きに私は必要無かったので、その間ふたりでずっとギルド内をうろちょろしてましたし。資料室にもその時に行きました。 (《仔細分析》で資料の内容を読み取れば、中を確認するのは後で出来ますし。データ自体はお姉ちゃんの記憶領域に保存されていますから、お姉ちゃんも自由に閲覧できますよ。そこから分析できるかは別ですけど)」
…………そういえば、初日は再評価クエストだけでなく、スリの囮の件もあって無駄に時間が掛かったんだった。
その時、私は『しばらくはルーシアナたちだけでクエストの受注もするでしょうから、一緒に話を聞きなさい』と言われ、義姉さんと一緒に拘束されていた。
ナツナツとオズが、暇潰しにギルド内を回っていたのは知っていたけど、まさかそんな情報を集めていたとは…………気付かなかった。
『いや、オズが読み取ったデータをルーシアナの記憶領域に保存するのに、一応確認はしたぞ? 私は』
……………………気付かなかったの。そういうことにして。
どうせ、『オズのやることだから無問題』とか思うことすらせず、了解してたに決まってるのだ……
「2時間ちょっと自由時間が出来たからって、そんなこと気にするか? 資料室だって、一日で確認し切れるような蔵書量じゃないんだぞ……」
「こういうもの。こういうもの」
「あの……マヤお姉ちゃん。お兄ちゃんたち、無理矢理 自分を納得させてませんか……?」
「何を言ってるのフォズちゃん。…………それ以外にあると思う? 私も頭が痛いわ」
グリグリとこめかみを押さえるココネさんたち。何度も思うけど、慣れてください。
でも、この四人の中では、フォズさんが一番先に慣れてきたようですね。
「よし。何も良くないけど、良し。こうなってしまった原因は、一先ず後回しにしよう。考えても意味ないし」
「そだね~……」
「他に何か気付いたことはありますか? マヤお姉ちゃんは?」
「私は特に無いわね。あ、でも、オズちゃんがいる分、私は普段より余裕があるから、咄嗟の援護が必要な場合は言ってね。水弾と闇弾は、最高威力で待機させてるから」
闇弾……闇属性の魔法弾か。
光属性と同等の飛翔速度を誇るが、闇属性という性質上、着弾した相手を弾き飛ばす力は弱い。
闇属性の本領は、命中した対象の体力を奪ったり、エネルギーを打ち消したりといった、補助系魔法なのだ。
敵の攻撃を妨害するなら、水弾の方がいいのだろうけど、こっちは地属性に次いで飛翔速度が遅い。
そう考えると、魔法攻撃の主力はマヤさんに任せて、フォズさんは指揮役に注力した方がいいのかもしれない。
まぁ、その辺は、今後のココネさんたち次第だろう。
「ルーシアたちは何かあるかい?」
「私は特にありません。今のところ敵は油断し切っているようで、積極的に透過魔法も使ってこないみたいです、とは伝えておきます」
「わたしも~」
「私も特に無……あ、ココネさんとサリーさんに確認しておきたいんだけど、ハイ・ゴブリンエースを瞬殺出来なかった場合、私はどうすればいい? 周囲のゴブリンから倒したほうがいい? それとも、ハイ・ゴブリンエースを抑えた方がいい?」
『私も特に無い』と言い掛けて、割と重要なことを思い出した。
先程は、フォズさんの先制で瞬殺できたけど、毎回うまくいく保証はない。
一応、ハイ・ゴブリンエースが現れた場合は、私は『敵の数を減らす=周囲のゴブリンを倒す』ことになってたけど、実物を見た後で意見が変わっているかもしれない。
そんなことを思って聞くと、ココネさんとサリーさんが、信じられないような顔をしていた。なして?
「…………えっと、その前に確認なんだけど、ルーシアはハイ・ゴブリンエースを任されても大丈夫そうなのか?」
「え? うん、多分。確かに他のハイ・ゴブリンに比べるとステータスも高かったけど、ランクが変わるほど高い訳でもなかったし、普通に倒せると思う。ただ、体が大きいから、複数を相手にするのは、ちょっと遠慮したいけど」
「ルーシー、それ普通だから。むしろ、『エースじゃ無きゃ、複数と闘うのは大丈夫』っていうニュアンスなのがおかしいから」
『うんうん』と頷く中に、ナツナツとオズがいるのに納得がいかない……
「ルーシアは、一対多の不利状況に陥ることに危機感が薄いよね~」
「普通の冒険者は、地形を利用したり、仲間と連携したりして、なるべく多対一の状況を作り出すのに腐心するんですからね? 敵陣にいきなり突っ込んだりしないんですからね?」
「わ、分かってる、分かってる。ちゃんと注意するから」
「注意しないと突っ込むのか……」
「普通は、二の足踏むと思うんだけどね~……」
「マヤお姉ちゃん。ルーシアちゃんの方、注意高めでお願いします」
「任せて」
おかしい…………ハイ・ゴブリンエースの話のはずが、私へのお説教になっている…………
いや、確かに一対多の状況になるのをあんまり気にしてないけど、それは《ロング・サーチ》で死角にいる相手の位置や動作が手に取るように分かるからであって、これが無きゃ私だって敵陣に突っ込んだりしない…………多分。
『そこで『多分』と付けるのが問題なんだと思うぞ』
『ナビが分かりやすく《ロング・サーチ》を維持してくれるのも原因のひとつだと思うなぁ!? いつもありがとう!!』
『どういたしまして』
このままでは、埒が明かないので強引に話を切り替えることにする。
「そ、それで、ココネさんとサリーさんは、ハイ・ゴブリンエースを任せても大丈夫なの!? 頑張れば、二体くらいなら抑えられると思うけど!?」
「わ、分かったから、落ち着け。声が大きい。そうだな。今、話題に上がった通り、弱い敵でも数が多いのは、単純な脅威だ。まずは、僕、次にサリーが優先してエースは抑えるから、ルーシアはなるべく早く敵の数を減らしてくれ」
「実際、ルーシーはハイ・ゴブリン相手でも、ほぼ瞬殺じゃん? 逆にするより、早いと思うのよね」
「了解」
思わず大きくなった声を、意識して小さくして答える。
まぁ、結論から言えば、元から決めていた通りだった。
全員分の意見を確認し終えて、ココネさんが疲れたようにまとめる。
「じゃ、フォズは調子がいいのは頼もしいけど、それゆえ やり過ぎるのに注意すること。
あと、ハイ・ゴブリンエースの出現で、キング・ゴブリンの発生がかなり現実的になった。気を付けよう。
それと、ハイ・ゴブリンエースが出てきたら、まず、フォズの先制で倒すことを目指す。倒しきれなかったら、僕、サリーで抑え込んで、その隙にルーシアが敵の数を減らす。もし、エースが3体以上生き残ったら、前衛は引いて、後衛の攻撃で数を減らす。
あと、ルーシアは、絶対ひとりで敵陣に突っ込まないで」
「りょーかい」
私一人に向かって放たれた言葉に、ぶぅ垂れながら返事を返す。
私の様子に苦笑しつつ、ココネさんは深いタメ息を吐いた。
「ま、色々話したけど、まだまだ出口には程遠い。
確実に不意を突いて、被害を最小限に届けるしかないな。はぁ……」
「ココネ、タメ息ばっかり吐くと、幸せが逃げるよ~。分かるけど」
「ココちゃんの幸せゲット~♪」
「ナツナツちゃん!? そんな勢い良く叩いたら潰れちゃいますよ!!」
「フォズちゃん、そこ重要!?」
ココネさんから吐き出された幸せを、虫を潰すように両手で捉えたナツナツ。
ホントにそこに幸せがあったら、今頃ぺらっぺらでしょうね…………
「…………ナツナツの手で潰れる程度の幸せならあげるよ。大事にしてくれ……」
「分かった~♪」
「……………………あれ? ネタよね、ナッチー? ココネの幸せ、逃げてないよね? ね?」
「ヒ・ミ・ツ♡」
「…………タメ息吐かないようにするわ、あたし」
「一応 タメ息は、ストレスを解消するリラックス効果があるので、自然と出るなら出した方がいいですよ。出ないに越したことはないですけど」
「どうしたらいいの、あたしーーーー!!」
「安心しろ、サリー。お前にストレスは無縁だから」
「…………そういえば、そっか。あたし、タメ息なんて吐いた記憶ないや」
「だろう?」
「うんうん。でも、こここら出たら覚えてろ」
「さて、そろそろ進もうか」
「ココネこらーーーー!!!!」
ゴブリンの巣とは思えないくらい、しっかり休めましたね。




