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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
214/264

第204話 ゴーレム娘、オススメの秘策

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

洞窟の奥を目指して進むゴブリンたち。

不可解な光と仲間の悲鳴、そして、僅かに漂ってきた血臭を嗅ぎ取っていたものの、彼等に警戒の色はまだまだ薄かった。

獲物はすでに、自身の作った檻の中で死んでいるはずなのだ。

どうせ、禄に警戒もせず戦利品を漁った挙げ句、照明魔道具でも誤作動させてしまい、慌てた拍子に怪我でもしたのだろう…………と、呑気に考えていた。

夜目の利くゴブリンたちにとって、人間用の照明魔道具は眩しすぎるので、たまにあることなのだ。


…………と、


「ぎゃい?」


道を進むゴブリンたちの先に、自分たちと似た生き物が三匹いた。

『仲間だ』と判断しなかった理由は、匂いと光苔に沈むような白い衣を纏っていたためだ。


「ぎゃ、きっきっきっき…………」


どうやら獲物はまだ、生きていたらしい。

そして、仲間の隙を付いて逃げ出したところで、自分たちと遭遇してしまった。


何としぶとく、不運で…………幸運なのか。


自分たちのオモチャになれるのだから。

見るからに未熟な個体。弱者をいたぶる愉悦に、周りからも嗤いが漏れた。


「ぎゃーい」


「ぎゃいぎゃい」


「ぎゃあぎゃあ」


わざわざ遠くから矢を射たり、透過して死角を突いたりする必要もない。

殊更にゆっくりと、いたずらに大仰に、言葉こそ通じずとも意思の通ずる嘲りと共に距離を詰めていった。


「フォズさん」


「【シャイン・セイバー】」


「ぎゃ?」


不意に聞こえた声に思わず足を止めた。


…………それが命取りだ。


刹那の時を置いて、視界を埋め尽くす暴力的な数の光輝。

それは、無数の光の刃を成しており、刹那の時も掛けずに雨霰(あめあられ)となって降り注いだ!!!!


「ぎゃぎゃああああぁぁぁぁ!!!!」


「ぎいいいいぃぃぃぃ!!!!」


「がぎぎゃああああああああ!!!!」


面で襲う光輝に、驚きと苦痛の声を上げるゴブリンたち。

だが、その光輝は数こそ多かれど、一撃ごとの威力は然程でもなかったらしい。

無防備に先制を喰らった割に、まだ一体も死んでいないのがその証拠だ。

ただ、体に突き刺さったまま残る光剣が、焼け付くような痛みと強い光を発し、いたずらに苛立ちを増させる。


……………………が、ここで終わるわけもない。


「い、今です!!」


まだ幼さの残る声が耳に届いた。

次の瞬間、すぐ近くの岩陰から素早く三匹の人間が飛び出すと、こちらが反応する間もなく五体の仲間の命を奪う。


「ぎぎゃああう!!!! ぎゃう!! ぎゃうぎゃうぎゃあ!!!!」


慌てて残った仲間に敵襲を告げ、手に持った武器を闇雲に振るった。

だが、敵は素早く後方へ下がると、姿を(くら)ます。

刺さったままの光剣が強い発光を続けていて、相対的に暗い場所の視認性を著しく低下させているのだ。


「が……びゃあぅ……」


「ぎっはっ……」


「ぎゃへぇっ……」


そうこうしているうちに、さらに三体がやられた。

ここで、ようやく仲間のゴブリン・メイジが、闇魔法を使って光剣を打ち消す。

だが、今度は強い光に慣らされたせいで、夜目が利いていない。

これまで経験したことがないほど、自分たちの領域であった洞窟が暗く感じ、そうして生み出された闇に恐怖を感じた。


――――ぞ……くり。


暗闇に対する根源的な恐怖よりも、遥かにストレートな恐怖に体を震わせる。

がむしゃらに振るった武器が、予期せぬ硬い感触を返し、腕を痺れさせた。

頼りにならない瞳を大きく開き、そちらを見れば、人間の男が構えた盾にぶつかったのが分かる。

シールドアタックで突っ込んできたのだ。


「がぎゃああぅ!!!!」


《ダブル・アクション》の効果を使い、切り返し速度を上げて迎撃する。


「くっ…………!!」


このスキルは、ゴブリンに限らず、獣人に取っては基本的なスキルで、『二撃目以降の攻撃のある要素を強化する』という効果がある。

単純に攻撃力を底上げする使い方が無難だが、今のように切り返し速度を上げて隙の無い連続攻撃を行うのにも使える汎用的な攻撃スキルだ。


人間が漏らした苦しげな声に気を良くして、三撃、四撃を追加するも、上手いこと攻撃をいなされ、芯のある打撃を加えることができない。


だが、それでもいい。

乱戦状態ならば、奥にいた魔道士共は攻撃することができないし、一対一で敵の前衛を引き付けていれば、数に勝るこちらが有利だ。


しかも…………


「ぎゃうぎゃうぎゃう!!」


「ぎゃぎゃあ!! ぎゃあぎゃあ」


「ぎゃうぎゃぎゃあ!!!!」


騒ぎを聞き付けて、増援がやって来たのを耳が拾う。


このまま圧し切れば…………!!!!


増援の期待に背を押され、連撃速度を上げる…………が。


「よっ」


そこまで、足を止めて攻撃を受け続けていた人間が、後方へ飛ぶ。

さらに、他 二体の人間も、攻撃を止めて同じように下がった。

その行動に疑問を抱くが、それよりも先に周囲の確認を優先する。


…………すでに仲間の半数がやられていた。

だが、増援が加われば、元の数より上だ。すぐに戦況は逆転できる。

それでも、弱者と侮っていた相手にここまで手痛い反撃を受けたことに対し、激しい怒りが湧き起こった。


一気に殺してや……!!!!


かららららん♪ ころろろろん♪


雑音が周囲を満たす空間に、その軽快な音はストレートに耳に届いた。

発生源は、丁度 目の前から飛び退いた人間の足元。

それは、ちょっと大きめの赤い卵のように見えた。


「ぎゃ?」


カッ――――!!!!


自分が疑問の声を上げたことすら認識できない唐突さで、それは莫大量の光を放つ。

いや、それを光と呼ぶには生温い。

先程の光剣など比較に出来ない程 強烈過ぎる閃光は、眼球から直接脳髄を焼き尽くさんと、物理的な暴力となって襲い掛かった。


「がぎゃーーーー!!!?!!!?」


「ぎゃぎいいいいぃぃぃぃーーーー!!!?!!!? ぎーーーー!!!!」


「がや、が、が、がぎぃぃぃぃ!!!!!!!!」


あまりの激痛に、いつの間にか武器を手放して両目を押さえてしまっていた。

自分の口から悲鳴があがっていることに気付いたのは、額に自分の爪が喰い込む痛みに現実に引き戻された時だ。


そして、


「ガッ――――!?」


ついには杭のような太さになった光剣が眉間を貫いたことを、彼が知ることはなかった。





「よっしゃ、ラストぉ~~!!!!」


閃光玉をモロに喰らって喘ぐゴブリンに、サリーさんが素早くトドメを刺す。


「でも、すぐ次が来るよ!! 30秒!!」


この場にいる敵を倒したことで抜けかける緊張を、鋭い一言で引き締め直した。


「状況報告!!」


私の言葉を受けて、ココネさんが報告を促す。


「問題なっし!! すぐ行ける!!」


「わたしも問題ないです!! レミィちゃんがいつになく元気!! 元気ですから!!」


「私も問題ないわ」


サリーさん、フォズさん、マヤさんが、打てば響く反応で応えた。


「ルーシア、問題なし。素材も回収完了」


「オズリア、問題なし。素材回収、術式解除、完了しました」


「ナツナツ、問題なし~。透過してくるゴブリンはいないよ~」


私たちも、一応、名乗りと共に返答しておく。

…………いや、『一応』が掛かるのは、『返答』ではなく、『名乗り』の方ね。


「よし。ナツナツ。悪いけど、警戒を頼む。矢を射ったり、何か怪しいことをしそうだったりしたら言ってくれ」


「おっけ~」


「みんな、すぐ次が来る。配置に着いたら、息を整えて」


「ココネさん。でかいのが先頭に二匹いるから、プランC推奨」


「分かった」


私のアドバイスに素直に頷いたココネさんは、フォズさんたちの方へ下がり、彼女らを護るように盾を構える。

同時に、私とサリーさんは両サイドの岩陰に隠れた。


しばらくすると、『ぎゃうぎゃう』『ぎゃいぎゃい』と喧しく騒ぎながらゴブリンたちがやって来る。

内訳は、ゴブリンが10体、ハイ・ゴブリンが8体、そして、ハイ・ゴブリンの中で強力な力を持つ『ハイ・ゴブリンエース』が2体。

ハイ・ゴブリンエースは、他のゴブリンよりも体格が大きい個体で、キング・ゴブリンへと進化する可能性を秘めている亜種、とのこと。


「ぎゃぎゃう?」


「ぎゃーいぎゃーい」


「ぎぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!」


おっと、囮のココネさんたちが見付かったようだ。

意味不明の鳴き声でありながら、隠しきれない嘲りの感情が伝わってくる。


「まずいっ!! 見付かった!?」


「お兄ちゃん!!」


「ど、どこか逃げられるところは……!?」


「ど、どーしましょう、か?」(棒読み)


……………………妹よ。……………………棒読みも可愛いヨ!!


私たちがゴブリンの鳴き声から詳細が分からずともニュアンスを感じ取れるように、ゴブリンたちも私たちの声色や動作からこちらの感情を読み取ることは、『恐らく可能』と考えられている。

元より数で劣っている現状、なるべく長く油断していてくれるに越したことはない。


と、いうことで、囮になった方々には、『命からがら逃走に成功したにも拘わらず、敵に見付かって慌てふためいている』演技をしてもらってるわけですね。

まぁ、ニュアンスしか伝わらない以上、大根演技でも構わないのだけど、思いの外、フォズさんたちが上手かった……………………と、いうことにしておいてあげて。誰よりも現実を分かっているのは本人だから。


『まさか ひと月どころか、二週間も経たない内に似たようなことするとは思いませんでした!! こんなことなら、すぐに練習すれば良かったです!!』


『どんまい』


後悔先に立たず。…………だって、先に立ったら『先悔』だもの。

と、後悔さんが聞いたら『そういうことじゃないよ!!』と言いそうなことを考えている内に、劇は進む。


「…………僕が囮になる。マヤ姉さん……二人を、頼む」


「お兄ちゃん!? ダメだよ、そんな!?」


「……………………分かったわ」


「マヤお姉ちゃん!?」


「でも、絶対に諦めないで。必ず……必ず助けを連れてくるから……!!」


「ああ!!」


「…………………………………………」


あ、オズが固まってる。


『あの…………ここで私が言うべきセリフはなんでしょうか?』


『フォズさんに同調しておくべきだったかもね。もう遅いけど』


『どんまい♪』


『まぁ、観客はゴブリンだし、そこまで気にすることはないだろ』


ココネさんたちの迫真の演技により、観客は『ぎははは』『げははは』と大盛り上がりだ。


「頼んだよ!!」


「お兄ちゃん!! ダメーー!!!!」


「…………………… (ぐっ)」


「……………………」


決死の覚悟でココネさんが飛び出し、追い縋ろうとするフォズさんをマヤさんが後ろから抱き締めて押さえ、オズが困った顔をして固まっていた。


『私、蚊帳の外ですね』


『『『どんまい』』』


『あんまり、それ続けられたら泣きますよ!?』


『クエスト終わったら、何でもお願い聞いてあげる』


『がんばります!!』


『これは…………いい加減止めた方がいい? (ぼそぼそ)』


『まだ…………まだ、理性は働いてるはず、だ (ぼそぼそ)』


『ん? ナツナツにナビ、何か言った?』


『『オズは安上がりだな』とかそんな感じです。ね?』


『『そ、そーですねー』』


まぁ、確かに。

オズに『何でも』と言ったところで、お金が掛かったり、私が困るようなことをお願いしたりすることはほとんど無い。

大抵は、『髪を()かせてください』とか『新しい料理を作ったので、感想を聞かせてください』とか、どっちのお願いなんだか分からないことが大半である。

たまに髪を梳かしながら抱き着いてきたり、変な味の料理に当たったりすることもあるけど、まぁ、そのくらいなら良くあることだろう。私もするし。


『おい、変な味の料理って…… (ぼそぼそ)』


『大丈夫。ちゃんとした食材しか使ってないのは確認してる (ぼそぼそ)』


『失礼ですね、二人とも。お姉ちゃんに悪影響を与えるようなものを食べさせるわけないじゃないですか (ぼそぼそ)』


『む。すまん (ぼそぼそ)』


『だ、だよね~。ちょっと、疑心暗鬼になってたかも。あはは~ (ぼそぼそ)』


『そうですよ。悪い影響()ないです (ぼそぼそ)』


『『ちょっと待て (ぼそぼそ)』』


……………………なんだか、蚊帳の外感。くすん。


それはともかく、劇の続きだ。

決死の表情をしたココネさんが、盾に全身を隠すようにしてゴブリンたちへ突撃していった。

対するゴブリンたちは、嘲笑を浮かべてココネさんが近付いてくるのに任せている。

弓や杖を持った者もいるが、特に構えるでもなく、油断しているのは明らかだ。


そして、ココネさんが私たちの隠れる岩と岩の間を駆け抜ける…………瞬間。

盾の陰から閃光玉を頭上に放り投げた。


カッ――――!!!!


個人的にはそろそろ慣れてきた光の暴力が、空間に吹き荒れる。

だが、その情景は理由を知らない者にとっては不可解なものだった。

私たちが隠れる岩を境にして、ゴブリン側は光が溢れたのに対し、フォズさんたち側に閃光玉の影響がないのだ。

正確に言えば、逆に少し暗くなったと言った方が正しい。

…………その原因は、


『――――――――!! ――――――――!!』


バグったように荒ぶるレミィちゃんである。

ちなみに、苦しんでいるわけではない。逆だ。


精霊は、自身の属性に合った対象を自在に操り、それを吸収することで強化される。

レミィちゃんで言えば、光を操り、光を吸収して強くなる。

つまり、閃光玉の効果がゴブリン側とフォズさんたち側で違ったのは、フォズさんたち側へ広がった閃光を、レミィちゃんが吸収したことが原因なのだ。

ついでに、ゴブリンの向こうに抜けた光も、軌道を捻じ曲げて吸収していることだろう。

強烈な光を撒き散らしている割に、増援のゴブリンたちの警戒が薄い原因のひとつだ。


そして、真夏の晴天下でもそうそう得られることのない程の光量を吸収したレミィちゃんは、これまでに無いくらいに強化されてテンションが上がっている。

その結果が、あの荒ぶり様だ。


「ファ、【ファンション・メイザー】!!」


『―――――――― ( ̄□ ̄;)!!!!』


荒ぶるレミィちゃんに急かされるように、フォズさんが魔法を発動させる。

そこにレミィちゃんが過剰なまでの強化を加えると、フォズさんの頭上に現れたのは、この世の白を極めたような巨大な純白球だった。

同時に、一直線に駆けていたココネさんが、射線から逃れるように横っ飛びに岩陰に飛び込んだ。

あ、わざわざ表現しなかったけど、ゴブリンたちは全員、両目を押さえてのたうち回ってますよ。

そのゴブリンたち目掛けて、純白球から無数の光線が、幾何学模様のような鋭角を描いて放たれた。


――――――――ッッ!!!!


まさに光芒一閃…………いや、光芒万閃か?

再び閃光玉が炸裂したかのように、世界を一瞬の白で明転させる。

瞬き程度の後には、光条に貫かれて半壊したゴブリンの増援部隊の姿だけが残っていた。

特に、ハイ・ゴブリンエースは、念入りに急所を撃ち抜かれて絶命している。


「今です!!」


「サリー、行くよ!!」


「らじゃー!!」


逆側の岩陰からココネさんとサリーさんが飛び出し、未だ踞るゴブリンたちにトドメを刺していく。

私もスレイプナー片手に、急所を一突きして数を減らしていった。

・注釈(語意系):『暗転』『明転』について

暗転:舞台を暗くしている間に、場面を変えること。

明転:舞台を暗くさせずに、場面を変えること。(ミュージカル等で、役者が演技しながら舞台装置を動かす手法)


本当の意味は上記の通りですが、本編中では『眩しさで見えない内に場面が変わった』的なニュアンスです。

正しい日本語だと思って使用しないようご注意ください。

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