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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
209/264

第199話 ココネ視点、で!! られるか!!

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

……………………は?


錯覚かと思った。

錯覚だと、思いたかった。

けれど…………何年も見てきた仲間の背中を、血を分けた妹の背中を、見間違いようがなかった。


加速した知覚は、双剣を十字に構えながら、僕と敵との間に体を滑り込ませるサリーの姿をはっきりと捉えている。


ばっ――――!!


意図は分かる。双剣で斧を受けようというのだ。

ただ、長く壁役をしてきた勘が、無情にも『受けきれない』と告げていた。

敵はしっかりと足場と体勢を整えた万全の斬撃。受けるならこちらも同等に万全の防御で無いとムリだと。


理性は、俗物の身勝手さで、未来を拒絶した。

本能は、真っ直ぐに大切なものに伸びている。


とっ…………どけ!!!!



▽体術のレベルが上がった!!

▽《最適動作》を取得した!!

▽ステータスを確認しよう。



盾代わりに伸びていた右手は、サリーのベルトを標的に変えて、最速の軌道を走る。


早く早く速く早く早く速くはやくはやくハヤクはやくハヤクはやくいそげハヤクいそげいそげいそげ!!!!!!!!


掴むと同時に引いた。斧はもう、サリーの体に隠れて、どこにあるか分からない。


「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」


やかましいと思ったら、それは自分の叫び声で、いつの間にか世界はいつも通りの速度を取り戻していた。

悪手も何も関係ない。

サリーごと仰向けに倒れるつもりで、全力で引いた。


――――――――ほんの、僅か。


頭半分程だけ後退したその場所を、双剣を容易く破壊して斧が通り過ぎていった。


――――どござゃああああ!!


(したた)かに背中と後頭部を強打する僕の上に、強張ったサリーの体が重力に従って落ちてくる。

無我夢中で左腕を回し、盾で腹部を隠すように抱き締めた。

そして、何とか首だけ持ち上げて覗き込んだサリーの顔は……………………額から溢れた血で真っ赤だった。


「うああああああああああああああああ!!!!!?!!!!!? サリィィィィーーーー!!!!!!!!」


ぐっちゃぐちゃになった思考は、見えなくすれば消えてなくなるとでも思ったのか、右手を額が覆い隠れるように押し付ける。

ぬるりとした感触と火傷しそうな熱に、吐き気が込み上げてくる。


「サリー!!!! サリー!!!! サリーーーー!!!!」


「…………う…………ぁ、ぉ兄、ちゃん……?」


「サリー!? 良かった!! 無事か!?」


「ぅ……ん……?」


意識があるだけで、無事も何もないのだが。

力を抜いたら、そのままサリーがどこかへ行ってしまうかもしれない恐怖に、一層の力を込めて強く抱き締めた。


……………………そんな恐慌 真っ只中の僕の現状など、魔獣であるハイ・ゴブリンウォリアーに関係などない。

『ハッ』として見上げる僕の真っ正面で、そいつは静かに見下ろすと、心底愉快そうに嗤った。

その肩上には、空振ったはずの斧が静かに舞い戻っている。


「く…………そ!!!!」


僕に出来ることは、盾でサリーの体を隠すことくらい。

それにしたって…………隠れていない所の方が遥かに多いのだ。

絶望の中、サリーを抱き締め、ただただ無力感に苛まれていると、ついにハイ・ゴブリンウォリアーは叩き付けるように斧を振り


ズドムン!!!!


「……………………ぇ」


一瞬。


僕とハイ・ゴブリンウォリアーの間を、高速で細長いものが突き抜けていく。

数瞬遅れて、ひどく鈍い音を立てながら、目の前のハイ・ゴブリンウォリアーも横に吹っ飛んでいった。


そして、『ゴシャア!!!! グシャアア!!!!』と湿った何かと固い何かがぶつかった音が、左手側から鳴り響いた。

のろのろとそちらに目を向けると…………洞窟の壁に、片手剣で縫い付けられるように二体のハイ・ゴブリンウォリアーが釣り下がっていた。


「え…………と…………」


た…………すかった、の、か?


呆然とそちらを見て固まるしかできないでいると、頭上からバタバタと騒がしい足音が近付いてくる。

のろのろと上目使いに見上げると、そちらからやって来たのは、フォズ、マヤ姉さん、そして、オズリアの三人だった。


「お兄ちゃん!! サリーちゃん!?」


「フォズちゃん!! 落ち着いて、治癒魔法を!!」


「一度仕切り直しましょう。【岩壁覆積】」


マヤ姉さんが僕の上半身を抱え起こし、フォズが無意識に抑えたままだった右手ごとサリーの額に手を添え、治療を開始してくれる。

その隣では、まったく動じた様子のないオズリアが、手に持った短杖を一振りし、何と発音したのか聞き取れなかったが、魔法を発動させた。


そして、マヤ姉さんは右側を見ると、切羽詰まった声で呼び掛けた。


「ルーちゃん!! 一旦 戻りなさい!! 」


ここで、ようやく気が付いた。

ルーシアが 今、一人孤立している、ということを。

しかも、先程ハイ・ゴブリンウォリアーを貼り付けにした片手剣。あれは、ルーシアが持っていたものでは無かったか?


焦燥に駆られて、マヤ姉さんの視線を追った僕の視界に飛び込んできたのは、今まさにルーシアに襲い掛からんとする四体のハイ・ゴブリンウォリアーの姿だった。

当然、ルーシアの手に武器など、ない。


「!!!! マヤね」


具体的な策など全く無いまま、ただただ『助けなければ』という焦りでマヤ姉さんに声を掛ける僕の前で…………衝撃の事態は進行していく。


ハイ・ゴブリンウォリアーは、ルーシアを中心として、二体が正面、一体が右、残りの一体が後方に回り込みつつある布陣を取っていた。


まず、正面 右手側にいるハイ・ゴブリンウォリアーが、飛び掛かりながら右手の斧を斜めに振り下ろす。

ルーシアは、その斬撃の下に潜り抜けるように、左へズレながら一歩を進む。と同時に、宙にあった敵の防具に手を掛け、上体を起こすように後方へと押し退け、加速した。

本来であれば、正面から来たそいつの攻撃をルーシアが受けて 動きが鈍った所に、右から仲間が追撃を掛ける算段だったのだろうが、右のハイ・ゴブリンウォリアーの進路を塞ぐ位置に正面のハイ・ゴブリンウォリアーが押し退けられたため、追撃を掛けるのが少し遅れる。


その間にルーシアは、次の行動を終えつつあった。


正面から来たハイ・ゴブリンウォリアーをすり抜けて進んだ先には、ショートソードを持ったハイ・ゴブリンウォリアー。

予想外の高速接近に、しかし、冷静にカウンターとなる横薙ぎを放つ。

ルーシアはそれを、後ろに倒れ込む程に仰け反って回避。同時に、着く先を失った右足が、速度の乗った直蹴りとなって相手の胸部に吸い込まれていった。

まさに、カウンターのカウンター。

ゴブリン種の体格はルーシアと同程度のため、単純に速度の高い方が勝利した。


「ぐぎぇえ!?」


真っ直ぐ後方に蹴り飛ばされたハイ・ゴブリンウォリアーは、背後の岩柱に勢い良くぶつかり、濁った悲鳴をあげる。

そこに、


「ふっ――――!!」


「えぎぇぇ……」


ボキッ。


床に掌底を打ち込むように手を突いて上体を起こしたルーシアは、蹴り足を戻す動きで再加速し、逡巡の躊躇いもなく、岩柱に貼り付くハイ・ゴブリンウォリアーの喉を、踵で踏み潰した。


首の骨が折れる鈍い音が、ここまで届いた気がする…………


あっさりと一体を仕留めたルーシアは、蹴りの反動を利用して半回転。

そこに、後方から回り込もうとしていたハイ・ゴブリンウォリアーと、右にいたハイ・ゴブリンウォリアーの時間差攻撃が…………襲い掛かれなかった。

ルーシアが、回転の勢いを利用して取り出した漆黒の重大剣が、そのまま水平回転斬りとなって、防具の上からハイ・ゴブリンウォリアーを打ち飛ばしたからだ。


低空を水平に飛んでいくような軌道。

あれは……どうだろう? 大きなダメージは与えたと思うけど、死んではいな


「【光槍瞬閃】」


水平に飛ぶハイ・ゴブリンウォリアーを、光槍が撃ち抜いた。これは、さすがにどう考えても即死だ……


いや、それより……


「並列発動に……無詠唱?」


いや、無詠唱ではなくスキルか? でも、どちらにしろあの威力は、どう見ても中級魔法以上…………こんな技能まで持ってたのか……


ルーシアの方に気を取られていて気付かなかったが、僕らの周囲を覆うように岩壁がせり上がりつつある。


「ルーちゃん!!」


呑気にオズリアの方へ意識を向けていると、マヤ姉さんの悲鳴のような声に引き戻される。


見れば、ルーシアは自らの回転斬りに引っ張られ、無防備な背中を敵に晒している。

そこに残ったハイ・ゴブリンウォリアーが、持っていた棍棒を振り下ろす……前に、マヤ姉さんが反射的に杖を向けた。

マヤ姉さんの取得スキルの中で、最速なのは闇属性の《シャドウ・ショット》になるが、あれは物理的な衝撃力に欠ける。

ハイ・ゴブリンウォリアー自身を押し返すことは出来ない。だが、当たり所が良ければ、狙いを逸らすことは可能なはず……


その僅かな可能性に賭けて動くマヤ姉さんの腕を掴み、可能性を消したのは、何故かオズリアだった。


「オズちゃん!?」


「あの状態のお姉ちゃんに手出しは無用です」


「そっ…………う、なの?」


「はい」


信じられない様子のマヤ姉さん。

だが、その答えはマヤ姉さんが逸らしてしまった視線の先で、着々と進行していた。


敵に背を見せつつあったルーシアは、自身の体を横へ大きく倒す。

それは、ルーシアの体を軸とする回転斬りの軌道を大きく変えることに繋がり、重大剣は天を目指す上昇軌道に変化した。

十分な速度を持って昇る重大剣は、使用者を容易く引き上げる。


軽い跳躍で敵の棍棒を回避すると、そのまま重大剣をハイ・ゴブリンウォリアーの背面に叩き込んだ。

先程と違い、十分に速度が乗った一撃は、ハイ・ゴブリンウォリアーの上半身を真っ二つに切り裂いた。…………縦に。


いや、待て。さすがに有り得なく無いか?

普通は、生物の骨だって簡単には断ち切れないのに、防具ごと真っ二つじゃないか。

部分鎧だろうけど、それでも金属製だぞ?


いずれにせよ、残りは最初に飛び掛かったハイ・ゴブリンウォリアー 一体のみ……

体勢を立て直したものの、瞬時に二体の仲間が屠られたのを見て、腰が引けている。


くるくると上空で回るルーシアが、残った敵の正面へ静かに落下する……と同時に、ハイ・ゴブリンウォリアーを中心とした円の動きで瞬発した。

ともすれば、落下中の方がゆっくりとした動きだったような錯覚すら覚える加速だ。


一歩を踏む毎に速度を増したルーシアは、瞬く間もなくハイ・ゴブリンウォリアーの背後へ。

そこに、一撃を入れて終わり――――の、前にハイ・ゴブリンウォリアーの最後の抵抗が放たれた。


それは、目標を捉えることを放棄して、勘だけで放たれた捨て身の一撃…………

『背後に来る』ことに全てを賭けた、破れかぶれの攻撃だった。


「危なっ……!!」


『い』の言葉が、外に出るよりも早かった。

何故なら、背後に回り込んだルーシアは、急制動を掛けるための足を大きく振り上げ……


ガッッ!!!!


飛んできた斧の柄を思い切り蹴りつけたからだ。


重心を狙ったのか、斧はハイ・ゴブリンウォリアーの手からすっぽ抜けて、真っ直ぐに飛んでいった。

反対にルーシアは、速度を十分に落として、今度こそ足を地面に着ける。


残ったのは、無防備に晒されるハイ・ゴブリンウォリアーの背中と…………ルーシアの肩上にて出番を待つ重大剣。


お手本のように綺麗な袈裟斬りがハイ・ゴブリンウォリアーの首を落としたのは、それから間も無くのことだった。

『ハイ・ゴブリンウォリアー』、『ハイ・ゴブリンウォリアー』って、何度も繰り返されるのが気になる…………

でも、『敵』だとシンプル過ぎるし、『ゴブリン』とか『ハイ・ゴブリン』だと通常種と区別出来ないし…………悩む。

一応、分析魔法などで種族名が確定した相手以外は簡略化してます。

※ 戦闘パートの度に毎回思ってたりします。

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