第197話 ココネ視点、突然の反抗期。女子って難しい……
168 ~ 220話を連投中。
11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)
一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。
word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。
申し訳ありません。
ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。
十分後。
「さて、十分休んだし、そろそろ行こうか」
「え゛!? 本気で言ってるの!? 私たちずっと叱られてたんだけど!?」
「ずっと座ってたじゃないか」
「お説教でな!? 正座でな!?」
「うぅ~~…………足が痺れてますぅ~…………うひゃあ!?」
「~~~~~~~~!?!!!?!!!?!!!?」(声にならない悲鳴)
悲鳴を上げなかったのはよろしい。
可愛い妹に文句など言えないのか、はたまた文句を言う余力も無かったのかは不明だが、全ての関節を直角に曲げた不思議なポーズを取ってルーシアは石化した。
オズリアは…………あ、こっちも石化してるな。
石像と化したルーシア姉妹を余所に、僕らは洞窟進入に必要な準備を進める。
「ほれ、早く準備しな。それとも、本当にもっと休憩が必要か?」
「…………あ、あと……二分…………」
「さ、散々……『準備は万全に!!』……と、説いた人たち、の……行動では、ありません、よね……?」
「それはそれ。これはこれ」
「「理不じぬわああぁぁぁぁ~~…………」」
最期に『理不尽だああぁぁぁぁ!!!!』とでも言いたかったのだろうけど、まだそれは許されていなかった。足に。
しばらく地面を転がって悶絶していたが、こちらの準備が終わった頃に、ようやく二人も動き始めた。
「そういえば、ココネ?」
「ん? 何かあったか? サリー?」
「あったというか、無かったというか……結局、魔獣と遭遇する機会が無くて、ルーシーたちを含むパーティでの戦闘を経験してないけど、いいの?」
「まぁ、それは仕方無いよ。無理して探し出した魔獣が、必ずしもここの洞窟の魔獣より弱いとも限らないし、ぶっつけ本番で行こう。そもそもDランクのクエストで、フォズ以外はCランクだしね」
「まぁ、そうなるか。仕方ないね」
ふと視線を感じて、そちらに顔を向けると、僕ら姉妹の会話を盗み聞きしていたルーシアが、何か言いたそうな半眼でこちらを見ていた。
「どうした?」
「……油断大敵とは…………」
「共有のゴミ処理設備に油を流して詰まらせないことだな」
「油断快適じゃないよ」
「…………自分で言っておいてなんだけど、よく分かったね。王都下水道局の広報に書かれてたキャッチコピーなんて」
「うん、自分でもびっくり……」
だよな。
ほら、こっちだって、フォズ以外 疑問符浮かべてるじゃないか。
「というか、お兄ちゃん……」
「ん? 何だい?」
「今のルーシアちゃんが反応できなかったら、どうするつもりだったんですか……?」
「…………………………………………」
言われてみれば、確かに。
何故か印象に残ってたフレーズだったから、『通じるだろ』と何の根拠もなく確信して口に出してたけど、『なにそれ? どういう意味?』とか言われてたら、自分で自分のボケを解説することになってたのか…………
「…………ルーシア」
「なに?」
「…………君はどうやら、僕の救世主だったらしい。まさしく救世主」
「いやそれメシア」
「………… (ぐっ!!)」
「………… (ぐっ!!)」
互いに黙ってサムズアップ。
再び無意味に危ない橋を渡るというリスクを冒したが、この短時間でルーシアとの信頼度が飛躍的に向上した気がする。
「ちょっと、ココネ。ボケるの、あたしの役目。出番を取らないでよ」
「いや、サリーには無理だろ」
「なんでよー!!」
「知力的に」
「…………その通り過ぎて、グーの音も出ない……」
「多分だけど、お前は今 勘違いしていると思うよ」
「グー……」
「しかも、ぐぅの音出てるし」
「私も一因の気がするけど、ココネさんがボケに回ると、なかなか止まらないね」
それは否定できないな。
まぁ、それはともかく。
「で? みんな準備はいいかい?」
「あたしは、おっけ~♪」
「大丈夫ですよ」
「まぁ、大してすることも無いしね」
「私たちも大丈夫。…………多分としか言えないけど」
「洞窟は初めてですし、こういう状態も まぁ、初めてですからね…………」
足の痺れを確認するように、ぴょんぴょん飛ぶ二人。
…………問題はなさそうだな。格好以外。
ルーシアたちの装備は、一見ドレスのように見えるロングコートとロングスカートに、ルーシアが栗毛色の片手剣、オズリアが藍色の短杖。
見た目からは、何の素材で出来ているのかは、分からなかった。…………というか、
「オズリアはともかく、ルーシアもその格好のままなんだね……」
「え? うん」
「……………………そんな装備で大丈夫か?」
「もしかして、『一番いいのを頼む』って言うとなんか出てくるの?」
「いや、出てこないんだけど……」
それでも聞かずにはいられない…………後衛用の装備としか見えないくらい軽装なのだから。
そんな僕の心配を余所に、残念そうなタメ息を吐くルーシア。
「なんだ、残念。でもまぁ、大丈夫だよ。問題ない」
「…………そのセリフには、得も言われぬ不安を感じるな」
「なんでや」
なんかボロ負けしそうでな。根拠は無いんだけど。
ルーシアは、スカートの裾を摘んで、くるりと一回転して全身を見せると、
「この格好については、問題ないから気にしなくていいよ。後衛用にしか見えないだろうけど、ちゃんと前衛での使用を考えて造った服だし、防御力も高いから」
「そ、そうか……」
場違いなのを自覚しているのか、ほんのり頬が赤い。
まぁ 確かにルーシアの言う通り、『実はダメなんです』とか言われても予備があるわけでもないし、そもそも そんなことを気にするなら、王都を出る前に言えという話だ。
義姉がAランクらしいし、その辺から強力な素材を融通してもらったのかもしれないしな。…………それでも、あんな形状にする意味が分からないが。
あ、一応、僕らの装備についても説明しておこうかな。
僕の装備が最も重装 (一般的には軽装に分類されるだろうけど) で、エレファント・ビートルの甲鎧に兜、テルミ鋼の片手剣と盾。鎧兜は軽さ重視だが、剣盾は強度重視で重い。ま、壁役だからね。
サリーは、エレファント・ビートルの双剣、ハイ・オークのなめし革鎧に、モルフォ鳥の帽子。全体的に軽さ重視で、特に武器は軽くて斬れ味の良いものとなっている。
フォズは、白雷鳥の長杖、ライトシープのローブとケープ。ルーシアたち二人には言っていないが、レミィの関係で、あいつが好む光属性の装備となっている。
マヤ姉さんは、アサルト・パイソンの長杖、グリーントレントのローブと髪飾り。水・地・時空・闇と幅広い属性魔法を使用するため、癖が無く、魔法威力を高められるものとなっている。
以上。王都のCランク冒険者としては、標準的な装備だろう。
「よし、行こう」
気を取り直して全員に合図し、先陣を切って洞窟の入口へと距離を詰める。
…………………………………………
周囲を警戒しながら進んで、数分で入口へと辿り着く。
洞窟の入口は予想通りの大きさで、地下に向かって緩く傾斜していた。
僕が洞窟の奥からの攻撃に警戒しつつ、サリーたちが地面に付いた足跡を調べる。
「入口近くにゴブリンはいないな……見張りもいない」
「でも、ゴブリンの足跡はあるよ。…………結構多くない?」
「確か、100体程度でしたよね?」
「まぁでも、実際に数えた訳じゃないでしょうから、その辺は誤差かしら」
洞窟の周囲はもちろん、入口付近にもゴブリンの気配はない。
…………違和感を覚えた。
ゴブリンに限らず獣人が洞窟を住処とする場合、その群の規模に応じて巣の深度が変わる。
群が小さい場合は、危険が迫ったらすぐに逃げられるように、洞窟の浅い所に巣を作ることが多い。
群が大きい場合は、罠を張って敵に備えるために、洞窟の深い所に巣を作ることが多い。
今回の情報にあった100体程度の群なら、入口に見張りくらいいそうなものなのだけど……?
四人で頭を捻っていると、申し訳なさそうにルーシアが声を掛けてきた。
「えっと……」
「ん? ……あぁ、すまない。情報にあった規模の群だとすると、この状態はちょっと予想外だったもんでね」
「ま、結局は感覚的なものでしか無いんだけどね~。『100体ならもうちょっと足跡が少ない気がするなぁ~』ってね」
「それと、規模の小さな群は、洞窟の浅いところに巣を作ります。100体くらいなら、入口に見張りがいるものなんですけど」
「とはいえ、絶対とは限らないし、ギルドの情報が間違ってる可能性もあるから」
「なるほど」
「とはいえ、予想外なら一段と注意して、ですね」
「うん。その通りだ」
先程、長々と説教されたせいか、気を引き締めるオズリアのセリフに満足して頷く。
こちらも負けてはいられないな。
「念のため、隊列を変更しようか。サリーは後ろに下がって後方を警戒して。ルーシアはサリーの代わりに、僕の援護。出来るかい?」
「もちろん」
力強い返答が返ってきた。
未だ僕らとルーシアたちの連携は調整が出来ていない。
だから、ルーシアは自由に動けるようにしておいた方が、どちらにとってもやりやすいだろう。
サリーが後ろに下がるのに合わせて、ルーシアが僕の隣へ移動してきた。
「では、行こう」
「「「「「はい」」」」」
再度、全員に声を掛けて、薄暗い洞窟へと足を踏み入れた。
そして、何事もなく、約一時間が経過してしまった。
「……………………おかしい。なんで、一体もいない?」
「気配はしてるんだけど…………進んでも進んでも近付かないというか、近付くにつれて曖昧になってくというか…………」
「マヤお姉ちゃん?」
「……………………ごめんなさい。私の索敵魔法じゃ さっぱりね。ルーちゃんたちは?」
「う~ん……洞窟内は精度が低いし、それがなくてもサイズ的に10m以上離れると、正確には分からなくなっちゃうんだけど…………20mくらい先にチラホラ反応あったりなかったり。
要は、そのくらいの距離を維持して下がってる感じ?」
「ですね。奥へ奥へと誘い込んでいるのかと思いましたけど……」
「行き止まり、だね…………」
僕が最後にひと言そう言って、現状を締め括った。
入口からここまでほぼ一本道。
マヤ姉さんの索敵魔法に反応は無かったものの、生き物の気配は確かにずっと進む先から感じ取れていた。
それは、ルーシアたちの索敵魔法からも証明されたってか、洞窟内だっていうのに随分遠くまで索敵出来るものだよね、ホント。…………と、恒例になりつつある、ルーシアたちの非常識は置いておいて、要は『恐らく、ここにゴブリンはいた』ということだ。
それは、『ここにいたはずのゴブリンたちは、いったいどこへ行ったのか?』という問題に繋がるのだけど、これが分からない。
確かに『ほぼ』一本道ではあったものの、側道はいくつもあったし、そちらに少しずつ逃げられた可能性もないとは言えない。
が、もし、ゴブリンが側道に少しずつ分かれて逃げたのだとしても、本道を直進したゴブリンがここに追い詰められているはずなのだ。一体もいないというのは、さすがにおかしい。
ここには少なくない数の足跡が残っているし、それは間違いないと思うんだけど……
僕らの中で最も痕跡を調べるのが得意なサリーが、ひとつタメ息を吐いて立ち上がった。
「ダメだ~……足跡がたくさんありすぎて、移動先なんてさっぱり…………ついさっきまでゴブリンがいたっぽいのは確かなんだけどなぁ~……」
「まぁ、それが分かっただけでも収穫だよ。う~ん…………見えないところに抜け穴があるなら、痕跡が残りそうなものだしな…………壁の一部が隠し扉になってて、そこから脱出した…………とか?」
「でも、ゴブリンに限らず、獣人が扉などの建具を作ったなんて話、聞いたことないですよ? それが、一見して壁と見分けがつかないほど精巧な隠し扉なんて、作れるものでしょうか?」
「そうね…………実は抜け穴があって、光魔法とかの幻影で隠してるとかが考えられるけど、そんな様子は無いんでしょう? フォズちゃん」
「えっと……はい。そうですね」
「そうなると、他に心当たりが無いんだよ。隠し扉みたいな、一見考えられない原因も候補にあげちゃうくらいに」
「「「「う~ん……」」」」
四人で額を突き合わせ、揃って首を捻るが、理由はさっぱりだった。
サリーの言う通り、足跡に残る水気や土の乾燥具合から考えるに、これらはついさっき出来たもののはず。
また、周囲の壁に付いた傷も新しいし、なによりこの行き止まりに残った獣臭さが、先程までそれなりの数の生物がいたことを示している。
でも、それなら……………………ゴブリンはどこに?
「やっぱり現実的なところだと、小さな抜け穴でもあるのかなぁ~……」
「100体が殺到したなら、痕跡が残ると思うけど…………複数あるとか? もう一回、探してみようか」
「敵が隠れてる可能性を忘れないでね」
自分でもあまり信じていなさそうな口調でそう言うサリーの意見に、けれど他に可能性も思い付かず、壁際を調べ始める。
…………………………………………無いよな、やっぱり。
一通り確認したところで、予想通りの結論に達する。
……仕方が無い。一度外に出てから、今後の方針を考えよ
「ココネさん」
突然、ルーシアから緊張した声で名前を呼ばれた。
『そんな声も出せるんだな』と、失礼なことを思いつつ振り返ると、声質と同様 緊張した面持ちのルーシアがいた。
まさか…………ゴブリンの襲撃か?
「どうした?」
僕らの会話にサリーたちも、緊張した様子で集まってくる。
だだ、オズリアのみ反応することなく、じっと壁を睨み続けていた。
「後方から反応です。恐らくゴブリン。数は約10」
「まずいな…………まだ敵の手の内が予測も出来ていないってのに…………」
「言ってる場合じゃないでしょ!! 10体くらいなら、壁を背にすればなんとか…………!!」
「は、はぁ~~~~……ふぅ~~~~…………よし、頑張ります!!」
「ココちゃん、いつも通り。いつも通りよ」
敵の掌の上で踊らされている感覚に焦りを覚えるが、仲間たちのお陰で、パニックになる前に気を持ち直すことができる。
ふぅ……………………よし。
「そうだね。僕が前に出る。サリーとルーシアは援護。他は、隙を見て魔法でトドメを。同士討ちは絶対に避けて、一体ずつ確実にいこう」
「うん!!」
「はい!!」
「任せて」
「了解…………オズ?」
奮い立たせるように力強い返事が返る中、一人だけ無反応な者がいた。
オズリアだ。
未だ彼女だけが、鋭い顔付きのまま 行き止まりとなった岩壁を睨み付けている。
その表情に…………老練の魔道士のような印象を覚えたのは、果たして錯覚か否か…………
だが、僕の中の常識的な経験は、それを錯覚と一蹴した。
「オズリア!! 原因究明は後回しだよ!! まずは、目の前の敵に集中!!」
「…………………………………………」
「オズリア!?」
こちらの言葉を無視するような態度に、思わず声を荒らげてしまうが…………
「…………待って」
絶妙なタイミングで差し出された掌に、反射的に続く言葉を飲み込んでしまう。
ルーシアは確認するような口調でオズリアに語り掛けた。
「オズ。必要なんだよね」
「……………………ごめんなさい。確証は無いんですけど…………目を放してはいけない気がするんです」
「謝らなくていいよ。…………私もなんか致命的な気がするしね」
二人のやり取りは…………十分に予想できたものだった。
まったく…………突然、我が儘を言い出すなんてらしくないな。
『ちらり』とサリーたちに目配せすると、三人とも呆れ半分の軽い頷きを返してくれる。
…………元々これはDランククエスト。で、あるならは、僕らだけでも十分に対処可能だ。
下手に気を逸らしながら闘われるより、完全に傍観していてくれる方が、危なくないだろう。
もちろん…………再評価クエストとしては赤点を付けなければならないし、後で色々と叱るのは確定だけど。
「オズ。いつも通り、背中は任せた」
「はい」
「と、言うわけで、オズの分も私が働くから、それでよろしく」
僕らの中で方針が決まると同時に、ルーシアたちの方でも話が決まったらしい。
まぁ、ほとんど変わりようが無かったけど。
「……………………はぁ。聞く耳なしか」
「ごめんね」
「分かった。そういうわけだ、みんな。護衛対象がひとりいると思え」
「…………ココネがそう決めたなら、文句は言わないけど…………外に出たらお説教だからね、二人とも」
「あはははは……」
「そうね。でも、オズちゃん。流れ弾には気をつけて。遠距離系がいないとは限らないんだから」
「分かりました」
まぁ、『何を任せるんだ?』とは思わないでもないけど。
行き止まりとなっているこの場所は、入口から続いていた本道が、そのままぶつ切りになったような形状をしている。
つまり、五人で闘うのに十分なスペースがある、ということだ。
それでいて、人の背丈ほどの岩がそこかしこに乱立しているお陰で、遠距離から一方的に攻撃されたり回り込まれたり、といった心配は少ない。
となると、やはり、この岩を盾にして接近、乱戦状態に持ち込むのが、向こうの狙いか。
そこまで考えて、岩と岩が近く狭まった所から数歩離れた岩影でゴブリンを待ち受けることにする。
丁度 最も狭くなる場所へ一歩で距離を詰められる場所だ。
僕が左側の岩陰に隠れると、その近くにサリーが、逆側にルーシアが配置に着き、一旦照明魔道具を消す。
現状、これが最善だろう。
・注釈(雑学系):『荒らげる』について
読み方は、『あららげる』と『あらげる』の二通りがあって、前者が本当は正しい (昔からある言葉) らしい。
ただ、後者の方も、口語では認められていたりするらしいので、100%間違いではないみたいですな。
その内、送り仮名も『らげる』から『げる』に変わるのだろうか……?




