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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
206/264

第196話 ココネ視点、もしかしてもしか……しないか

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/15分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

さて。

朝食と野営の片付けも終えたところで、僕らはゴブリンの巣へ向かって移動を開始した。

目的の場所は、この休憩所から南方、森の中ほどにある。

この森は、木々の間隔も広く歩きやすいため、このペースなら一時間もあれば到着するだろう。


…………それにしても……


「野営中の食事とは思えないくらい豪勢な朝食だったな……」


「ねー♪ お腹いっぱい♪」


「デザートも美味しかったです~♡」


「夜番の時にケーキを頼んだ私が言えることじゃないけど、ホントに食料の在庫は大丈夫なの?」


「大丈夫だよ」


「えぇ」


……………………常識が崩れていく…………あ。


「昨夜も言ったけど、戦力が減ってる夜中に料理なんて御法度だからね、本来は」


「分かってるって。今回は、マヤさんが匂いは何とかするって言ってくれたからやったんだし」


「ごめんね、ココちゃん。でも、フライパンを包む程度の魔法障壁なら、大して消耗しないから影響は無いわよ」


「それは僕も分かってるよ。けど、一応 今は再評価クエスト中だから、念押ししただけさ」


調理なんてすれば、周囲に痕跡が広がる。

それは、煙と言った目に見えるものから、匂いという目に見えないものまで。

特に匂いなんかは、人じゃ分からない程 薄いものでも、魔獣は嗅ぎ取ってしまう。

そういった危険を考慮すれば、食事は調理をしないもので済ますか、安全を確保してから調理するのが望ましい。

…………とはいえ、食事や調理中は、こちらの警戒も増していることは魔獣も察しているのか、そういう時に襲われたことはあまり無いのだけど。(『無い』とは言ってない)


昨日とは打って変わって、口数少なく足早に進む。

まぁ、それはそうか。街の外は魔獣のテリトリー。

人数が多ければ、それだけで魔獣に対する牽制となるけど、六人というのはそれを期待できる数とは言い難い。

ルーシアたちも時々 非常識な部分も顔を覗かせるが、こういうところではCランクに恥じない行動を見せていた。


……

…………

……………………

…………………………


予想通り、一時間程で目的の洞窟が見える位置に到着した。

突入前に最終確認と休憩を取る。

場所は、洞窟の入口から見て右へ60°ほどズレたところにある岩の陰。

もし、洞窟内からこちらを監視しているゴブリンがいたとしても、直接見ることはできない位置だ。

ここに陣取って、まずはあそこが本当に目的の洞窟か確認する。


「あそこだね」


「だね。特徴もあってる」


「洞窟の入口周辺には木々がなく、向かって左側に『153』と刻まれた四角柱の石、右側に入口相当の大きさの岩、ですね」


「まぁ、あの管理番号があってるなら、間違いないわね」


「あんなのあるんだ」


「お姉ちゃん。以前、ロックグリズリーを討伐するために行った、カフォニア山脈地下空洞の入口にも似たようなのありましたよ」


「……………………あったっけ?」


「ありました」


カフォニア山脈か。確か、王都南東に位置する険しい山脈だったっけ?

それと、ロックグリズリーは確か……


「Cランクの魔獣だったっけ?」


「『ロック』グリズリーっていうくらいなんだから、地魔法を使う熊だよね~」


「サっちゃん? それは『当たり前でしょ!!』って、ツッコミ待ちなの? もしかして」


「どんなクエストだったんですか?」


「え~…………っと。あ、生息数調整のクエストだ。五頭討伐しろってクエストだった」


「お姉ちゃん、今 絶対忘れてましたよね? 私はあの時、結構不安だったから、よく覚えてますよ。

あ、ちなみに補足しますと、ロックグリズリーはCランク下位に位置する熊系魔獣です。グリズリーの地属性適応種ですね」


「グリズリー系は、熊の中でも躰が大きくて威圧感があるからなぁ……ステータスでは対等でも、気持ちで負けたら容易にひっくり返る。そりゃ、不安にもなるか」


意外に常識的な話になったので、ちょっと安心。


僕らはロックグリズリーと闘ったことは無いけど、グリズリー系の魔獣となら何度かある。

種族的な特徴としては、今言った通り巨体で、でも その割に動きが素早く、なかなか闘うのが難しい魔獣だった。

後衛が距離を取っていても、前衛を無視して距離を詰めたりするので、僕が防御専念で行動を阻害し、手数の多いサリーが徐々にダメージを与える、という戦法を取った。

で、動きが鈍ったところに、フォズとマヤ姉さんの魔法で畳み掛ける、といった感じだ。


ルーシアたち ふたりなら…………やはり、ルーシアが注意を引いて、オズリアが魔法でトドメ、だろうか?


「ちなみに、どうやって倒した感じー?」


「あ、それは気になるわね」


同じことが気になったのだろう。サリーがルーシアに尋ねていた。

尋ねられたルーシアは、腕を組んで首を傾げ、記憶を捻り出すかのように答える。

そんなに印象に残らない戦闘だったのか?


「なんか……………………オズを抱えて走り回った気が…………」


「忘れたんですか? そうやって罠を張った場所まで誘導して、罠に掛かったところを確殺です」


「あぁ!! そうだったそうだった。確か、『なるべく綺麗に倒そう』ってことになって、オズがロックグリズリーに追われながら罠まで誘導して、私がトドメを刺したんだっけ」


「えぇ。特に最後のが やたら大きくて怖かったですねぇ。長寿命個体でしたし」


「「魔道士に何をさせてるんだ!?」」


印象にしか残らないだろ、そんな戦闘!!


まさかの無茶な倒し方が出てきて、兄妹で同時にツッコんでしまった。


「オ、オズリアちゃん……大丈夫だったんですか? トラウマ抱えてたりしませんよね? 『不安だった』って言いましたけど、不安どころか恐怖ですよね!?」


「あのね、ルーちゃん。オズちゃんが『嫌』と言わないからって無茶させちゃダメでしょう? お姉ちゃんなんだから、妹の気持ちになって行動しなきゃダメよ」


若干 顔を青くしたフォズがオズリアに近付き、おろおろしながら頭を撫で、険しい顔付きになったマヤ姉さんがルーシアを叱る。

当の本人たちはケロッとしているけど。


「いやいやいや…………ちゃんと安全には配慮して闘ったよ?」


「えぇ。別に、私が一人で囮になったわけではなくて、すぐ近くをお姉ちゃんが隠れて並走してくれてましたし、それに手段や素材の状態を問わなければ、お姉ちゃん一人で倒せてしまいますから、私が足を引っ張るくらいで丁度良かったくらいかと」


「結果を気にしなければ倒せるのは、オズも同じでしょう」


「えぇ、まぁ」


「マ、マジで言ってるのか…………」


ふたりとも口から出任せを言っている様子はない。

自信過剰に自惚れていないのならば、本当にどちらも一人で何とか出来ていたのだろう。


…………冒険者ギルドのA ~ Dランクのクエストは、標準的な冒険者パーティを基にランク付けされる。

つまり、『平均的な実力のCランク冒険者四人のパーティが、比較的安全に達成できる難易度のクエスト = Cランク中位のクエスト』ということだ。

これを基準に、大体『八人だと比較的安全 = Cランク上位』、『二人でも比較的安全 = Cランク下位』となる。

ちなみに、平均的な実力のCランク冒険者四人のパーティが、Bランク下位のクエストに挑むと、ほぼ確実に死傷者が出ると言われている。


魔獣の生息数調整のクエストであれば、対象の魔獣一体を討伐するクエストとほぼイコールの難易度になるから、クエストランクも魔獣ランクと大体一致するはずなので、Cランク下位のクエストとなるはずだ。

今 説明した通り、Cランク下位のクエストであれば、二人でも比較的安全に討伐することは可能だけど、それはあくまでも『倒せる』だけの話。

毛皮などの素材の状態は考慮できない戦闘となるので、『なるべく綺麗に倒そう』なんて考えている余裕はない。


また、人数の増減と難易度の関係は、単純に比例関係にあるわけではない。

二人での戦闘に比べて一人での戦闘は、敵の攻撃が常に自分に集中することを意味しており、ちょっとした油断やミスから一気に追い込まれる危険が高く、強い緊張感の中、高い集中力を長時間継続する必要があるため、同様の戦果を求めるならば、難易度は倍以上となるだろう。


…………ルーシアとオズリアの二人で、『ロックグリズリーを何とか倒した』だったら、まだ理解できる。

だが、実際は、素材の状態に気を回せる程度には余裕があったようだし、自己申告の予想でしか無いけど、一人でも討伐だけなら可能だと言う…………

常識的に考えれば、『一人の戦闘と二人の戦闘の違いを理解していない自惚れ発言』と取ることが妥当だけど…………ここまで、散々非常識な実力を見せ付けられてきたことを考えると、『正当な実力である』というのも信憑性が高くなる。


…………もしかして、この二人、実はCランクどころの実力じゃない……?


ふと、そんな非常識が頭を掠めた。

が、すぐに『いやいやいや……それはないないない』と、自分の常識が否定する。

ステータスや知識であれば、努力や才能でなんとかできるかもしれないが、経験だけはどうしようもない。

まだまだ15歳と13歳の二人の少女が、十分な経験を積むには圧倒的に時間が足りなさ過ぎ……そういえば、最年少Aランクも15歳だっ……いやいや、確かあの人は身近にSランクがいて、幼いときから経験を積む機会が……そいうや、この二人もAランクと一緒なんだっけ……?


…………………………………………

もしかして…………ありうるのだろうか…………?


まさかの結論に達し、自分でも信じられない気持ちで二人に視線を向けると……


「あのね、ルーシー。冒険者足るもの、油断大敵なのよ。そりゃあ、確かにクエスト内容によっちゃ、綺麗に倒すのが必要な場合もあるけど、罠まで自分たちを囮にして誘導するなんてリスクの高い方法を取る前に、試してみる方法はいくつもあるでしょうが、分かる? 分かるかしらパツキン小娘」


「パツキ……!? いや、確かに金髪だけど、今ソレ関係ある!?」


「ですからね、オズリアちゃん。魔道士は基本的に、敵に近付いちゃいけません。確かに《杖術》に近接戦闘スキルは含まれますが、それはあくまでも牽制のためのものであって、それで敵を倒すためのものではないんです」


「え、あ、はぃ。それは重々承知の上ですけど、あの…………」


「ルーちゃんもオズちゃんもその歳でCランクは凄いけど、その分 経験は不足しているんだから、石橋を叩いて渡るくらい用心しないとダメよ。基本的に魔獣と人間とじゃ、『一撃貰ったら即死』みたいなところがあるんだから、不意討ち または 多対一が重要なのよ」


「はい…………ごめんなさい……はい…………」


「うにゅぅぅぅぅ…………」


……………………サリーたち三人に正座させられて叱られている姿からは、そんな気配は微塵も感じられないな…………


やっぱり気のせいだと思うことにして、僕は周囲の警戒をすることにした。

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