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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
199/264

第189話 ココネ視点、遭遇三日前

まさかの展開 = ようやく戦闘回に入ると思いきや、話の時間軸が戻る。

しかも、理由はただの思い付き。



168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/6.5分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

僕は、ココネ・バーミキュラ。

現在、王都を中心に活動している冒険者パーティの、一応リーダーをやっている、21歳だ。


パーティメンバーは、実の妹であり、『何か問題が起きたら、大体コイツのせい』と故郷では有名だった問題児、サリー・バーミキュラ。

僕ら兄妹の幼馴染みであり、僕と一緒にサリーの尻拭いに奔走してた頼れる姉貴分、マヤ・フォンディーネ。

そのマヤ姉さんが面倒を見てた関係で知り合い、幾度となく『こっちが実妹なら良かったのに……』と思った理想的過ぎる妹分、フォズ・アスラエル。


一部腐れ縁が混ざっているが、全体として見れば良縁に恵まれたこの四人でパーティを組み、早一年。

フォズもそろそろCランクに上がれそうだし、なかなか順調と言えるのでは無いだろうか。


そんな僕らに再評価クエストの協力者として打診があったのは、数日前のことだった。


「再評価の協力者、ですか……」


「そうそう。内容としては、Dランク上位のゴブリン討伐。再評価クエストは、難度の割には報酬がいいし、やってみない?」


「確かに、報酬はいいみたいだけど~……」


「「う~~ん……」」


王都に来てから色々とお世話になっている冒険者ギルドの受付嬢 ナタリィさんの言葉に、僕とマヤ姉さんは渋い声で唸ってしまった。


再評価クエストは、王都周辺の魔獣生息区分外からやって来た冒険者が、最初に受注することを義務付けられているクエストのこと。

当然、その受注者は、実力はあれども王都での身の振り方が分からない『素人』であると言える。


この『素人』というのが微妙な問題で、本当に何も知らない『新人』ではない。

つまり、元の地域では経験豊富な『玄人』や『中堅』といった冒険者であり、各々の知識と経験に裏打ちされた『こだわり』があるのだ。

『プライド』と言い換えてもいい。


それが完全に悪いことだとは言わないが、得てしてそれは再評価クエストの意義に反する行動を取らせてしまう。

具体的に言えば、『素直に協力者の言うことを聞かない』『無駄に協力者に反発する』ということだ。

もちろん、再評価クエストは、受注者のために行うものなので、そういうのが強い人でも『一度くらいは仕方ないか……』と、大人な対応をするのが殆どではある。


…………『殆ど』にならない可能性が高い、条件。


その1:受注者パーティに比べ、協力者パーティのリーダーが若い。

その2:受注者パーティの主力が男であり、協力者パーティに女性がいる。


僕らのパーティは、大体においてこれにモロに引っ掛かるのだ。



まず、その1。

まぁ、僕のことなのだけど、21歳というのは、一般的な冒険者であれば『そろそろ一人前か?』と言ったレベル。


最速の13歳で冒険者登録したとして、学業や諸々の合間にクエストをして、14歳でFランク、15歳でEランクに。

16歳で学業が終わり専業冒険者になることにしたらDランクを目指して、25歳でCランクになれるかどうか。

その後は、30代でBランク、40代でAランクになれるかどうかで、その後の身の振り方を考える冒険者が多い。


これは『パーティを組まずに一人でクエストをこなした場合』という現実的ではない前提が付く目安で、しかも、根拠も特に無いので、本当にこの通りにランクアップしたからと言って、順当なのかどうかは怪しい。

でも、他に信頼度の高いデータがあるわけもなく、『大体こんなもんだよ』とざっくりと信じられている。


僕らのパーティは…………『ちょっと優秀』くらいの部類には入るのかもしれないね。


まぁ、中にはこういうのを軽く超越する天才もそこそこいるので、僕らなんて凡人の範囲内だろうけど。

例えば、10年くらい前に15歳でAランクになったキチガ……いや、鬼才がいたのは、王都の冒険者の間ではあまりに有名な話。

これが凄すぎて、20代でAランクになるような人が現れても、軽く流されるようになってしまったという派生ネタまである。


……………………話が逸れたね、戻そう。

詰まるところ21歳の僕は、再評価クエストを受けるような玄人冒険者から見たら、『まだまだヒヨッコ』と第一印象で軽く見られてしまいやすいのだ。

『元の地域で、僕くらいの冒険者に指導していた』ということも考えられる。


そりゃあ、そんな相手に指導されたら面白くないだろうことは目に見えているよね。



続いて、その2。

僕も男だから、分からなくもないけど…………男は女性に対し、見栄を張りがち、というところだろうか。

冒険者というものが、やはり男主体の仕事である、というのもあるかもしれない。


本人たちは無意識なのかもしれないけど、女性冒険者を軽んじている言動をしている男冒険者は多い……らしい。

あ、これ、ウチの女性陣からのリアル苦情です。

『意見を聞かない』とか、『聞いても考慮しない』とか、『初めから出来ないと決め付けてくる』とか、なんでみんな僕に言うの…………

遠回しに『直せ』と言われてるのかとも勘繰ったけど、違うらしいし…………疲れる。

まぁ、『なんとかして』とか無茶なことを言われないだけマシかもしれな…………いや、また話が逸れた。


とにかく実体験として、『再評価クエストとはいえ、女に教わるのかよ』と思う男冒険者は多いようだ、ということだ。



で、その1とその2が混ざるとか、もう最悪でしょう。


ウチの女性陣の前で『格好悪いところは見せられねぇ』と思っている人達が、元の地域ではアレコレと口を出してた若造と同年代のヤツの話を聞くと思いますか? 思わないですよね?

仮にこれらが全部被害妄想で、とても友好的に接してきたとしても、『心の内ではどう思われているのか……』と考えてしまって、胃に穴が空きます。ホント。


そんなわけで、僕は再評価クエストの協力者というのは、出来れば避けたいクエストのひとつなのだった。

…………というか、以前こういうことを知らなかった頃、逆に再評価クエストの協力者として参加しようとした際、今のような理由から参加を止めたのはナタリィさんなのだけど。

それで、ウチの女性陣や他の冒険者から、それとなく情報を集めた結果、『信憑性のある情報』として記憶していたのだ。


「理由を聞いてもいいですか? 僕らが再評価に参加するのは、時期的にまだ早いと教えてくれたのはナタリィさんでしょう?」


「あら、感心感心。ちゃんと覚えてたのね、えらいえらい♪」


からかうようにそう言って、これ見よがしに僕の頭を撫でるナタリィさん。


完全に子供扱いだが、そういえばナタリィさんは幾つなのだろうか……?

まぁ、若そうに見えるが、先輩冒険者からの情報などから『聞いてはいけない年齢』なのだろうと予想はしているが。


「お? なんか、このまま頭を握り潰したくなる衝動に駆られたわね」


「どこかで誰かが、失礼なことでも噂してるんじゃないですか? まぁ、八つ当たりで潰されるのも、撫でられるのも恥ずかしいので、そろそろ止めてください」


「はいはい。じゃ、代わりにフォズちゃんに」


「え!? な、なんでですか!?」


…………危ない危ない。


表には出さないように、内心の冷や汗を拭っているうちに、フォズを撫でて満足したナタリィさんが話を続ける。


「それで理由なんだけど、それは単純で『勧められない理由が無くなったから』ってだけよ」


「無くなった……?」


「どゆこと?」


サリーが何も考えずに首を捻る。

勧められない理由……僕の年齢とパーティ内の女性陣についてだが、僕ら側に条件の変化はないのだから、変化の原因は相手側にある。


つまり……


「相手は歳下で女性……ということですか?」


「そゆこと。女性というより、女の子ね。13歳と15歳のCランク」


「13歳と15歳でですか!?」


「それは…………すごいわね」


確かに、それは凄い。

先程言った、15歳でAランクになった鬼才の再来じゃないか。特に13歳の方は、記録を更新する可能性だってある。


「そそ。本人たちは気付いてないのか、気にしてないのか分からないけど、期待の新人よね」


「はぁぁぁぁ~…………世の中は広いね~……」


「確かに。フォズも優秀だと思ってたけど、遥かに上を行く子たちに遭遇するとは……」


「い、いえ、わたしの場合は、お兄ちゃんたちが引っ張り上げてくれてるのが大きいですから」


「いや、フォズちゃんもしっかり優秀だと思うわよ?」


「あ、変にプレッシャーとか過信とかに繋がって欲しくないから、あんまりその子たちに話しちゃダメよ」


「了解です。…………あ、でも、そんな子達の再評価の協力者が僕らでいいんですか? もっと実力と経験があるパーティの方がいいんじゃ……」


再評価クエストは、最悪の想定として、受注側の冒険者が役に立たないどころか足を引っ張る可能性もある。

であれば、協力者側の冒険者には、受注側の冒険者もまとめて護り切れるような実力があった方が安心だろう。

特に、そんな期待の新人であるならば。


「その辺もちゃんと考慮してるわよ? これでも私、貴方たちのこと高く買ってるんだかね」


「…………それはどうも……ありがとうございます」


初めて言われたよ、そんなこと。


素直に喜ぶべきか、悩む。

隣では、ストレートに受け取ったサリーが得意気になっていたが、僕もこのくらい単純になれればなぁ……


「……………………それと、実は向こうの保護者的な人からの要望で、『なるべく女性メインのパーティで!!』っていうのがあってね…………」


「そっちがメインの理由なんじゃないですか……」


『女性メインのパーティ』というたったひとつの条件により、協力者として参加できるパーティはぐぐっと狭くなる。

まぁ、それでも少なくない候補の中から、僕らを選んでくれたのは、それなりに信頼してくれているのもあるのだろうから、『全くの嘘』という訳でも無いだろうけど。


「ちなみに、その保護者はAランクの冒険者なんだけど、『ウチの子に手を出したら(ピロ)す』って、マジトーンで言われてるから、ココネ、絶対に手を出さないでよね。優秀なCランク冒険者パーティが壊滅して、Aランク冒険者が捕まるとかマジで勘弁」


「ぜっっっったいにしませんけど、肝に命じます」


こえぇぇ。


まぁ、フォズよりも歳下の子たちに対して、そんな気にはならないから大丈夫だと思うけど。


「というか、ナタリィさんから見て、その可能性があるくらい可愛い子なんですか?」


「あら、意外に興味あり?」


「ココネ?」


「お兄ちゃん?」


「ココちゃん?」


「そんなつもりは全く全然これっぽっちも無いけど、わざわざ伝えるってことは、そういう方向で意識させてしまう効果もあるわけで、そのデメリットを考慮した上で伝えたのなら、『伝えなくてもそう意識するだろう』と思える相手なのかなって思っただけですサリー痛い離してホント」


「おっと、思わず」


わざとらしい笑みを浮かべて、二の腕を掴んでいたサリーがその手を離す。


まったく……僕が誰と付き合ったとしても、大して気になんてしないだろうに、サリーは。


そんな僕らの様子を面白そうに見ていたナタリィさんも、わざとらしく嘆息しながら続けた。


「なんだ、ざ~んねん」


「さっき、『手を出したら(ピロ)す』って脅迫まで付けて釘を刺した人が、それを言いますか…………」


「それはそれ、これはこれ。…………で、その子たちのことだけど、親バカならぬ姉バカの贔屓目を考慮しても、高レベルでハイスペックな将来有望株って感じ。あと五年は待ちたい感じだけど、あのまま成長しない可能性も否定できないわね」


「つまり、フォズちゃんタイプかぁ~。ロリコン大歓喜だねぇー」


「どういう意味です!?」


「フォズちゃんみたいに、いい子で可愛いって意味よ。ところで、サっちゃん。この後、ギルド裏に来なさい」


「僕はフォズと先に帰ってるから、マヤ姉さんよろしく」


「ココネきさま!?」


自業自得だから、しっかり怒られて来い。骨は拾わない。


マヤ姉さんが、サリーの背後に回ってしっかりと捕まえるのを気配で察するが、特に気にしないでおく。

ナタリィさんも、特に気にせず話を続けてきた。


「そんなわけで貴方たちに参加して欲しいのよ。ちょっと持ち帰ってでもいいから考えてくれない?」


「…………………………………………みんな、どうする?」


「あたしはどっちでもいいかな。ところで助けて」


「わたしはやってみたいです」


「あれ? フォズちゃんスルー?」


「私もどっちでもいいかな。協力者としての初参加が、そんな有望株相手っていうのがちょっと不安だけど。ところで、今日は遅くなるかも」


「夕食までには戻って。……………………分かりました。やります」


「見限ったなココネ!!」


所々 雑音が聞こえてきたけど、クエストが終わったばかりだし、きっと疲れてるんだと思うことにしよう。

それはともかく、マヤ姉さんの言う通り協力者としての初参加がコレというのは少々不安だったが、反対意見も無かったし、参加することにした。


それに……


「~~~~♪」


フォズと同年代で、まだ横の繋がりが出来ていない同ランク冒険者なんて、そうそう いるものでも無い。


王都にいる同年代の冒険者は昔ながらの友人の輪があるし、再評価を受けるような人は年上ばかり。

元々 内向的なフォズに、そういう人たちから友人を作っていくのは難しいようだった。

このような歳の離れた者しかいない中での生活にストレスも溜まってるだろうし、あわよくばフォズの友だちになってくれるとありがたい。


「よかった~♪ じゃあ、待ち合わせは三日後の朝6時でお願いね。場所は待合室だけど、部屋は当日空いてる所になるから、ここで確認してね」


「分かりました」


「それじゃ、サっちゃん、行きましょう」


「へるぷみ~~~~!!」


こうして、僕らと彼女たちの付き合いが始まったのだった。


…………………………………………まさか それが、こちら側の遅刻という大失態から始まるとは、想像もしていなかったけど。

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