第184話 ゴーレム娘と王都の冒険者
168 ~ 220話を連投中。
11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/6.5分で計算)
一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。
word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。
申し訳ありません。
ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。
三十分後。
「いや、本当にありがとう。治療とか色々…………大遅刻した件については、元凶をしっかり叱っておく。本当に申し訳無い」
「あっははー♪ ホントにありがとうね、二人とあいたぁ!?」
「ありがとうございます!! ありがとうございます!!」
「フォズちゃん? そんなに頭を振って、体調崩さないようにね? っと、私が一番お世話になったわね。ありがとう」
「どういたしまして」
「えっと、フォズさん? 分かりましたから、そろそろ頭を止めてください。不安になりますから」
潰れていた二人を治療し、汗だくだった四人を簡易お風呂魔法でサックリと綺麗にしてあげると、とりあえず席に着いて落ち着くところから始めた。
…………え? わざわざお風呂魔法で綺麗にしなくてもいいんじゃないかって?
……………………汗でベタベタになった服を着た人達を見ながら、お話ししたいですか? しかも、だんだん冷たくなっていくんですよ? それが体にくっつくんですよ? 自分がそうなった状況を想像しちゃうでしょ?
故に、私は話したくないです、以上。
で、先程 教えてもらった彼等の情報と特徴をまとめると、こんな感じ。
ココネ・バーミキュラ
短髪赤毛の落ち着いた雰囲気の男性。21歳。パーティリーダー。
サリー・バーミキュラ
ポニーテールと赤毛が内面の活発さを表しまくっている女性。19歳。ココネさんの妹で、今日の遅刻の原因。胸が大きい。
フォズ・アスラエル
ショートヘアの薄桃髪の小さい女の子。16歳。仲間。
マヤ・フォンディーネ
ロングヘアの翡翠髪の大人な雰囲気の女性。22歳。胸が巨きい。
おっと、女性三人に対して、余計な情報をくっ付けてしまったのは御愛嬌。でも、とりあえずフォズさんは仲間。
彼等も私たちと同じく、田舎から王都へやって来て活動している冒険者で、現在フォズさん以外がCランクで、フォズさんはDランクとのこと。
恐縮しまくっているココネさんには申し訳無いが、そろそろ話を進めよう。
「そろそろクエストの話をしてもいいですか?」
「あぁ……そうだね。これ以上僕たちが原因で遅らせる訳にはいかないね。それと、ここからは敬語は無しで行こう」
「そーそー。気楽にいこたあぁぁ!?」
「よろしくお願いしますね。えっと、ルーシアちゃんにオズリアちゃん」
「よろしく。…………ルーちゃんとオズちゃんでいいかな?」
「いいですよ……いいよ。私は普通にさん付けで行くけど」
「私は基本が敬語なので、このままでお願いします」
「分かった。よろしく、ルーシア、オズリア」
「よろしくね、ルーシー、オズリー♪ ……………………あれ!? ツッコミは!?」
ちょっと笑いそうになってしまったので、少し視線を逸らして笑いの衝動を逃がした。
それにしても、ココネさんがツッコんで来るのを前提に会話をするって、サリーさんは芸人か何かを目指しているのだろうか? ……………………私が言えた義理じゃないな。
互い軽く挨拶を交わしたところで、ココネさんが今回のクエストに関する資料を配った。
「今回のクエストは、『ゴブリンの群の討伐』だ。数は100程度で、素材の納品を含む。ホブゴブリンの存在可能性あり。場所は王都から北東に、街道を使って徒歩で一日ほどのところにある洞窟。報酬は記載の通り」
「Dランク上位のクエストだねー。二人はゴブリンとの戦闘経験は?」
「ゴブリンは今のところ無いかな」
「そうですね。獣人系は、お義姉さまがオークを打ち上げてるのを見てたくらいです」
「う、打ち上げ……?」
「私は『お義姉さま』って言うのも気になるかな?」
フォズさんとマヤさんの反応は、とりあえず放置。
「ゴブリンはなんとな~く分かるけど、ホブゴブリンってなに? ゴブリンの進化系?」
「いや、ホブゴブリンはどちらかというと亜種だね。技術系というか生産系というか。コイツがいると、群の武具の質が上がって難易度が上がるんだ。その分、それらが素材として売れるから、報酬は良くなるんだけど」
「亜種だと、他には戦闘系のゴブリンウォリアーとかゴブリンメイジとかもいるかもねー」
その名付けパターンで行くなら、ホブゴブリンじゃなくてゴブリンスミスとかなんじゃ? 誰が名付けているのかは知らんけど。
内心、種族名にツッコんでいると、フォズさんが補足を加える。
「ちなみに、ゴブリンの進化系は、ハイ・ゴブリンですね。これにもそれぞれ亜種がいます。
でも、進化種がいる場合はCランク上位のクエストになるので、今回は気にしなくても大丈夫だと思いますよ」
「でも、見た目で判別が付き難いから、ゴブリン種はなるべく分析魔法で種族を調べるようにした方が安全ね。あと、戦闘場所が洞窟なのも注意。死角が多いから」
「なるほど」
事前に読み込んでおいた王都冒険者ギルドの資料と、ほぼ相違無い。
だが、説明の端々で思い出すような仕草をしていたり、記載されていない情報がポツポツ出たりしていることから、それらの情報が経験に裏打ちされているものなのが良く分かる。
ルーカスたちに続いて、なかなか信頼出来そうな人達で安心した。
…………今朝もお義母さんが、『都会は変態が多いから気を付けてね!!』と、改めて忠告してきたので、ちょっと不安だったのでね。
隣ではオズが黙って話を聞いている…………ように見せ掛けて、これは 多分 人見知り継続中だ。
イスをこちらにぴったりと付けて、寄り掛かるように密着している。
……………………さっきは、割と遠慮の無いことをしていたと思うんだけど…………アレはその場の勢いだったのかな?
「次に、僕たちの基本戦法について説明しておこう。
まず、僕とサリーが前衛、フォズとマヤ姉さんが後衛だ。
僕は楯士寄りの剣士で、地魔法も使える。サリーは遊撃手としての剣士で、風魔法を絡めた双剣使い。フォズが火、生命、光の魔道士で、特に光属性が得意。マヤ姉さんが水、地、時空、闇の魔道士で、全属性得意。あ、もちろん身体強化系は、全員がそれなりに使えるよ」
「あたしたちで精神属性を除く、全属性が使えるんだよー♪ すごいでしょ」
「サ、サリーちゃん……わたし、火魔法はそんな得意じゃ……」
「私も全部得意というより器用貧乏のような…………」
「…………ほぅほぅ、なるほど」
……………………どうしよう。サリーさんがすっごい得意気だ。
彼らの言う『得意』というのは、『その属性の汎用スキルを習得してる』って意味だろうけど、そういう意味なら私とオズは全部得意なんです…………
いや、私は自分の努力の結果ではなく、おじいちゃんのお陰なんですけど。
……………………適当に誤魔化すことにしよう。
「そんなわけで、僕らの基本戦法は、僕が前に出て敵を足止めし、後ろからフォズとマヤ姉さんが攻撃、というスタイルだね。サリーはうろちょろしてて、たまに邪魔」
「ちょっとココネーーーー!!!!」
「サリーちゃん、ストップストップ~~!!」
「そ、それで、二人はどんな役割なのかな!? 出来れば、私たちに寄せてもらえると助かるんだけど!!」
バーミキュラ兄妹がじゃれつき始めるのを誤魔化すように、マヤさんがこちらに話を振ってくる。
まぁ、こちらの方が人数は少ないのだから、あちらの戦法に合わせる方が楽だろう。
「大体そっちと同じかな。今はランクが違うからここに居ないけど、私たち本当は三人パーティなの。
で、その一人が壁役として前に出て、後ろからオズが魔法で攻撃。私は遊撃手として適当に…………と言ったところ。
実は、その三人でパーティを組んで活動を始めたのは最近だから、まだ基本戦法が決まり切ってはいないんだよね。
…………っとと、話が逸れた。だから、後衛にオズを置いてもらって、私もサリーさんと同じように自由に動かせてもらうのがいいかなぁと思う。それでいい? オズ?」
「はい。大丈夫です」
「うん。なら、その方向で行こうか。依頼場所に着く前に何度か戦闘もあるだろうから、それまでに微調整しよう」
…………よし。武器とか魔法属性の話題は適当に誤魔化せ
「その前にさ、二人の使用武器と魔法属性は? それによって、あたしも距離の取り方とか変わるし、フォズちゃんやマヤ姉も互いに干渉しない属性なのか、事前に知っておきたいでしょ?」
…………ダメでした。
なに、この人。さっきまで能天気一色だったのに、いきなり目の色が変わったよ……
でも、好感は持てる。危険の可能性は、出来るだけ事前に排除しておきたいのだろう。
残りの三人も、困ったような顔をしているものの、止める様子はない。
「どうなの? まさか、これから一緒に仕事するのに、そんなことも言えないなんて、無いよね?」
「サリー、言い過ぎ。もっと言い方があるだろう」
ココネさんがサリーさんを咎めるのは、あくまでも言葉使いに対してだ。
…………まぁ、しゃーない。
「そうですね。さっきも言ったけど、私は遊撃手。だから、遠・中・近距離の全距離対応可能だね。具体的には、順に弓・重大剣・片手剣。魔法も実戦レベルで使える。オズの方が得意だけど。
で、私たちの扱う属性だけど…………」
「…………だけど?」
サリーさんの目が真剣さを現すように細められる。
「全属性得意」
「うわーーーーん!! 恥掻いたーーーー!!!! ココネのばかーーーー!!!!」
「なんでぐはぁ!!!?」
「ぜ、全属性なんて、すごいですね!!」
「……………………おねーちゃん、田舎帰る……」
内心 一番ダメージが大きかったのは、マヤさんだったのかもしれない。




