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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
191/264

第181話 ゴーレム娘、ヒトコ再稼働

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/6.5分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

…………………………………………


途中で二度ほど休憩を追加し、目的地の地下二十七階に到着したのは、階段を降り始めてから大体一時間後のことだった。


「つっっっっかれた!!!!」


「おつかれ~♪」


「いや、飛んでるヤツは疲れんよな」


「え~~? 応援してて疲れたよ~♪」


「ルーシアナの上で?」


「うん♡」


「……………………まぁ、ルーシアナに文句が無いならいいか」


いや、無いとは言ってないんだけど。


「さすがに私でもこの高さはしんどいわ…………はい、オズ。降りて~……」


「ありがとうございます」


一言 シンプルな感想を吐き出して座り込む私の隣で、義姉さんがオズを背中から下ろしている。


「不思議床のお陰で脚は痛くないけど、もうこの高さを降りるのはやりたくないね……」


「不思議床…………まぁ、確かに不思議な床よね。光を透過し、柔らかい訳でもないのに反動が少ない」


「後半の性質は、表面に被覆した衝撃吸収素材のお陰でしょうね。大抵の床材に広く使われています」


座り込みながら床を撫でるが、掌からの感触は普通の石材のような感触しか返ってこない。不っ思議~。


「でもさぁ~……『半都市型空間転移ジャンクション』だっけ? 他にも似たような施設があったら、また同じ苦行が待ってるんじゃない~?」


「いや、ナツナツ。この苦行は、山中にあるせいで強いられたもので、『半都市型』のせいではないぞ」


「…………聞きたくない」


「同じく。というか、今更だけど、私がいなかったらオズはちゃんと辿り着けたの? ここに」


「……………………」


義姉さんが『ふぅ……』とタメ息を付きながら漏らしたセリフに、オズは『スッ』と視線を逸らした。

その意味は、私にも通じているので、話を逸らすつもりでオズに話を振る。


「『半都市型空間転移ジャンクション』って、他にもあるの?」


「ありますけど、あっても十施設くらいだったと記憶しています」


「あら? そうなの?」


「はい」


よし。義姉さんが喰い付いた。


「てっきり『半都市型』は、通常の空間転移施設の進化系だと思ったから、こういうのがメジャーなのかと思ったんだけど、そうじゃないってことかしら?」


「いや、かつての文明はどこかのタイミングで崩壊したのだ。『半都市型』に移行し始めた頃にそれが起きたのではないか?」


「あぁ、そういうことも考えられるわね」


「え~と…………残念ですが、ナビの予想は多分外れです。『いつ文明が崩壊したのか?』が、正確に分からないので確実なことは言えませんが、『半都市型』の普及が進まなかったのは、重大な問題点があることが判明したからです。

そして、その原因究明や対応策の確立が至らなかったため、『半都市型』への移行計画は凍結されたという経緯があります」


「問題点?」


なんだろう? 非稼働時の移動が大変とか? すっっっっごく良く分かるわ。

私のそんな内心を察してではないだろうが、オズが言いにくそうに話を続ける。


「言っておきますけど、本当の原因は不明ですよ?

…………当時、ここには千人ほどの人々が試験的に入居して、使用者目線の不具合や意見の収集などを行っていたようです。そして、試験期間の一年は特に問題が無かったので、他の施設も建造計画も進みました。

問題が起きたのは、そちらの入居作業などが終了したタイミングでした。ヒトコの古参入居者たちが体調不良を訴えだしたのです。大体、居住年数が五年を超えた人たちですかね。

症状としては、原因不明の頭痛、吐気、身体の痛み、果ては幻覚や幻聴まで。症状は個人差が激しく、複数の症状を同時に発症する者もいれば、特定の症状のみの者もいますし、ひとつ治れば別の症状が発症する者等々……

最有力として考えられた原因は、『閉鎖空間における長期間の定住』とのことでしたが、それを確かめるために実験台となる者など当然おらず、原因は不明のまま計画は凍結、といった感じです。

先程 見てもらいましたから分かると思いますけど、閉空間による心身影響はちゃんと考慮されていて、十分に空間を確保していましたし、内部環境も自然環境を再現する乱数制御式で管理していたようですが、ダメだったようですね。

……………………ひと月ふた月レベルなら全然影響はありませんから、そんなに青くならなくても大丈夫ですよ、三人とも」


「おk。早く再稼働して、明日には外に出よう。クエストもあるし」


「あははははははは…………まぁ、気分良くないのは確かよね。五年と聞いても……」


「ねぇ、オズ~……集団ヒステリーの可能性もあったんじゃないの~?」


「その可能性は否定できませんね。私も当事者ではありませんから、よく分かりませんけど」


「あぁ…………細部までしっかりと話すものだから勘違いしてしまうが、その頃 オズはガア・ティークルの管理AIだったものな。共有化された情報か?」


「そうですね」


かつてここに住んでいた人たちも、こんな気分だったのかな?

三人で乾いた声で落ち着け合っていると、オズがふと思い出したように付け足す。


「あ、地下に深い空間転移施設なら他にもありますよ。地下資源や海洋資源の採掘施設と一体型となっているもので、その辺りが残っていれば また下り階段のお世話になると思います」


「…………………………………………聞きとうなかった」


ホンマに。





ゴゴォゥゥンン…………


「お、稼働した?」


『あぁ』


オズと義姉さんが、中枢システム区画へ移動してしばらく経つと、レイミーの時と同じように鈍い振動音がヒトコを震わせた。

ようやく再稼働させることが出来たのだ。


「な~んか、長く感じたわ……」


『実際、長かったがな。山頂からにしても、麓からにしても』


ナビを相手に、文句とも言えぬ文句を溢しつつマキュームレイタ室から出ると、ヒトコでは初見となる円筒が駆け抜けていった。

…………妙にスタイリッシュな円筒だった。


「…………ナニアレ」


『何ってルーシアナが鈍円筒と呼んでいるものの仲間だろう』


「いや、それは分かるけど、なんかこう…………格好良かったよ?」


『シンプル・イズ・ベスト』を突き詰めたような、地金が剥き出しになったようなメタリックカラーの鈍円筒たちと違って、落ち着いた色合いで配色され、全体的に柔らかさを感じさせるデザインになっていた。


『恐らくだが、アレは元々ヒトコに導入されていた修復デバイスか何かだろう。少なくとも五年は多くの一般人が暮らしていたようだし、当然 施設の維持管理に必須のデバイスたちも共存していたはずだ。

技術者や研究者ならともかく、そういった人間と共存するには、親しみのある形状であるのも、必須の機能であったのだろうさ』


「義姉さんの監視用デバイスはシンプルだったけど……」


『アレは非常用だろうからな』


「なるほど」


…………………………………………


「私はガア・ティークルとかにあるシンプルなデバイスも、可愛くて好きだよ?」


『誰に対するフォローだ?』


のーこめんと。





途中でドローン型 (デフォルメされた一頭身キャラクターだった) とか人型 (普通に人間に見えた) とかにもすれ違いながら合流場所まで戻ると、すでにオズたちが待っていた。


「お待たせ」


「いえ。問題ありません」


「そ~そ~」


「……………………凄かった……」


ひとりトリップしている人がいた。


「ねぇ、義姉さんどうしたの? なんとなく予想はつくけど」


「予想通りだと思います」


「中枢システム区画がね? 凄かったの~」


本人曰く、『珍しい道具が好きなだけ』とのことだけど、遺跡オタクでもいいんじゃないかな?


「一見 静寂な空間かと思いきや、絶えず小さな環境音が世界を満たし、時折 何かの反応を示すかのような硬質な音や聞いたこともない異質な単音が耳を打ち、無機質で清涼な気配は一等な聖地のように厳かな雰囲気を匂わせ、しかし視界を圧倒する無秩序な柱や構造物が、確かに人間の手によるものであることを、明確に示している。つまり……………………すっごいの♡」


…………やっぱり、遺跡オタクじゃない?


『ぽ~……』っとした雰囲気でふわふわしている義姉さんの背中を押して、地下二十四階へと上がると、『一体、今までどこにいたのか』と不思議に思うほどの大量のデバイスたちが動き回っていた。


「さすがに圧巻だね」


「それと、一気に明るくなったな」


ヒトコを再稼働したことで、照明や換気などの基礎インフラシステムも本格稼働している。

これまで淡い光と静謐な空気に包まれ、まるで眠っていたかのようだったこの施設も、今は煌々とした輝きと慌ただしい雰囲気に包まれ、俄に活気付いていた。


「あ、義姉さん大丈夫かな?」


「? なんでだ?」


「静かな雰囲気の遺跡に感動してたみたいだから」


ここまで印象がガラッと変わってしまったのを見て、変にガッカリしていないか心配になったのだ。

普通ならこんな心配はしないが、先程のトリップ状態を見た後では、不安が無いとは言えない。

後方からオズと共に上がってきていた義姉さんに振り返ると…………


「オズ、オズちゃん、オズさん!? 凄いわね!? 凄いよね!! あんなにたくさん動いてるわよ!! 飛んでるわよ!! キラッキラしてるわよ!!!?」


「そ、そうですね。はい、はい。喜んで貰えてうれしいです、はい」


「ちょ、セレ、オズを揺らさないで!? わたしも揺れる!!」


「……………………大丈夫そうだね」


「だな」


オズの肩を掴んでガクガク揺らしながら、語彙力を枯らしてはしゃぎ倒している義姉さんに、一先ず問題は無いと判断しておく。

ちなみにナツナツは、オズの頭の上で落ちないように必死に堪えていた。


「今は多分、暖機運転と自己診断中だよね」


「だろうな」


「レイミーと同じなら、ある程度終わるまで待機だったけど…………」


「どこで時間を潰せばいいのか、そもそもどの程度時間が掛かるのか、分からんな」


非常用階段をずっと降りてきたから、いつも時間潰しに利用しているフードコートの場所が分からない。

また、レイミーよりも遥かに巨大だが、一度 再稼働したことがあるヒトコの自己診断に、どのくらい時間が掛かるのかなんて見当も付かない。

そして、その辺が分かるオズは、現在 テンションMaxの義姉さんに絡まれていて手が出せない。


「いや、助けてやれよ……」


「…………なんか、私も巻き込まれそうで……」


『酷い』とか言わないで。ギルド飯店でのウェイトレス経験が囁くのだ。


『アレは面倒だ』と。


対応策は、騒ぐに任せて疲れて落ち着くのを待つことか、思わず正気に戻るようなインパクトを与えることだけど、基本 前者を選択せざるを得ないので、目を付けられたら諦めましょう。


「主様」


「「「「「へ?」」」」」


と、思っていたら、インパクトの方がやって来た。

義姉さんたちの空気を読まずに話し掛けてきたのは、極々一般的な成人男性。

特徴が無いのが特徴、とでも言いそうな、別れたら三歩で顔を忘れそうな印象の人だった。


「主様。一次報告を宜しいでしょうか?」


「へ!? わ、私ですか!?」


「はい」


まあ、当然 彼の目的対象は、義姉さんでも私でもナツナツでもナビでもなく、オズだった。

オズの様子に、義姉さんが念のため間に入るが、男性は特に気にした風もなく、書類の束を義姉さんに差し出した。

思わず受け取る義姉さん。


「詳細は、そちらの書類 及び サーバー上にありますが、口頭での簡易報告は必要でしょうか?」


「え? あ、はい……」


「承知しました」


フリーズしたオズがぼんやりと漏らした返事に、律儀に応える男性…………の外見を持つ人型デバイス。


「メインフレーム、メインシステム、基礎インフラシステムの自己診断は終了。外部通信系に重大な異常あり。

サブシステムは自己診断中、終了まで残り約35分。異常項目は、現在148項目見つかりましたが、重大な異常はなし。随時修復中。

拡張インフラ、その他のシステムについては、指定通り未実施。手動にて実施してください」


「…………あ、ヒューマノイドアシスタントですか。ここって、立体映像タイプでなく、実体タイプなんでしたっけ」


人型デバイスの流れるような説明を聞いている内に合点がいったのか、オズは義姉さんから書類を受け取ると、サッと目を通して回答する。


「外部通信の接続先を空間転移ターミナル『ガア・ティークル』とし、以降はそこをホストとしてシステム同期してください。

サブシステムも、指定した区画以外の商業区画、居住区画、物流区画はキャンセル。

施設の安定維持を確認後、異相空間領域をサノス山外縁から2kmまで拡張。上空は最大10kmまで伸展し、一部現実空間と大気共有。環境安定化してください」


「承知しました」


「それと、ヒューマノイドアシスタントは解除。今後の報告は、サーバーのみで構いません。文書保管は、最大圧縮で規定通りに実施。これもそのようにお願いします。

また、所有者権限が残されたまま放置されている物品については、名称と位置をリスト化して、サーバーに報告。所有者権限が無いものは、一次保管場所へ集積してください。後日、対応・分別します」


「承りました。当機は御命令を実行後、汎用業務に移ります。では、失礼いたします」


オズから書類を返された人型デバイスは、軽く一礼すると自然な動作で踵を返し、私たちが出てきた通路へと消えていった。

それを見送り、振り返るオズ。


「ヒトコの安定化には、やはり今日一杯程度の時間が掛かりそうですので、今夜はここに泊まって行きませんか? 宿泊場所は、一足先に終わらせるようにしていましたから、もう使用可能なようですし」


「「「「…………………………………………」」」」


「? どうしました?」


四人 (ナビ含む) でボケッと無反応に見返していると、可愛く眉根を寄せて首を傾げた。

最初に動いたのはナツナツで、楽しそうな笑みを浮かべてオズに近付くとこう言った。


「そうですね、主様~♪ 早く休もうよ~♪」


オズの表情が『ピシリ!!』と擬音を発して固まった。

そして、義姉さんは(おもむろ)にオズに近付くと、


「そうですね、主様。お手を拝借いたします」


と、片膝を付いて跪き、恭しくオズの手を取った。


「…………………………………………」


「主様~♪ どうしたの~?」


「主様はご気分が優れないようね。早くお休みいただかなければ」


「…………………………………………」


悪ノリである。

硬直から復帰したオズの両頬が、ぷっくりと膨らんだ。


「大変だぁ~~!! 主様がおたふく風邪に~!!」


「まぁ、大変だわ!! 僭越ながら(わたくし)めが抱き上げてお運び致します!!」


「………………………………………… (ちら)」


抵抗する間もなく義姉さんに抱きかかえ上げられて、不機嫌そうなジト目で二人を睨んだ後、こちらに視線を飛ばすオズ。


…………………………………………ふむ。


「主様。こちらでございます」


「お前も乗るのかよ」


「むっきーーーーーーーー!!!!」


ヒトコの地下深くに主様の怒声が響き渡った。

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