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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
9章 進出!! 王都 冒険者ギルド
185/264

第175話 ゴーレム娘、王都にとぅにゃくふぅる

168 ~ 220話を連投中。


11/1(日) 10:20 ~ 23:20くらいまで。(前回実績:1話/6.5分で計算)

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

そんなこんなで ちゃっちゃと朝食を片付けて、ちょっと早めを意識して駆けていけば、王都へはお昼頃どころか、その二時間前には到着していた。


途中でまたオークとかと遭遇してたにのに、遅れるどころか早く到着するのはさすがにおかしい…………


さすがに訝しんで、私の状態を詳細に調べたところ、ケンタウルス型の《快走》、義姉さんの《騎馬》、ゴーレムの種族特性『単純作業の疲労軽減』、ベーシック・ドラゴンの魔石の《疲労軽減》が、四重発動していることが判明。

そりゃあ、これだけ多重発動していれば、全然疲れないわけですよね。

する気は無いけど、街道を爆走すれば、テモテカールからだって二日で来れるかもしらん。



そんなことを考えつつ、五人 (見た目は三人) で王都へ続く街道に乗った。

王都へ続く街道は、テモテカールのものと比べると、何倍も大きい。


具体的に言うと、まず王都行きの大道と王都戻りの大道の二つに別れていて、その大道も徒歩用、馬車用、馬用の三つの小道に別れているのだ。

これだけで単純に六倍。さらに言えば、小道もそれぞれ追越用の小道が並走しているので、最終的には12倍である。


そこを行く人の数もまた大量で、一時間程度でテモテカールの一日分の出入門者数に匹敵するんじゃなかろうかと思わせるほどだ。

道を行く人々は互いの間を広く取って移動しているが、それでも圧倒的な人の多さに、圧迫感を肌で感じてしまっていた。

周囲を見渡すことが出来るなら、まるで同族とは思えないほど個性的な姿形をした人種族が、街道の上に溢れている景色が飛び込んでくるだろう。


そして、その道の終着点には、その大量の人種族を遅滞なく取り込む王都外門。

テモテカールでは、ピーク時でも入門対応は数ヶ所あれば遅れることも無かったが、王都では20ヶ所近くも用意しているらしい。


さて、そんな人混みの中、私たちはどうしているかというと…………


「さすが王都…………人が多過ぎる気持ち悪くなりそうってか、気持ち悪い……」


『同じく~……』


『私も多分 気持ちが悪い……《ロング・サーチ》の反応が多過ぎるせいだな。索敵密度を街中用にまで落とすぞ』


「人の多さは予想してましたけど、これは予想外です……」


私、ナツナツ、ナビ、オズの全員が、この大人数に若干の体調不良に陥っていた。

平気そうなのは義姉さんだけである。


「ギルド飯店の混雑具合に比べれば、大したことないでしょうに……なんでかしら」


「さ、さぁ?」


「あれは多分、『あれくらいの人数が来る』って覚悟してるから大丈夫なんじゃないかと……」


「分かったような分からないような…………疲れたなら、道から外れて少し休んでく? 大丈夫?」


「「…………大丈夫」」


「…………本当にダメなら言いなさいよ?」


私もオズも、予想外の人混みに酔っているだけだから、次来るときは大丈夫だと思うんだけど。

…………いや、だから 今はダメなのか。


左右から義姉さんの腕にぶら下がるように体重を預けながら、外門まで辿り着く。

そのまま列に並んで、入門対応をしている門番さんの前まで行った。


「こんにちは。お連れ様の体調が悪そうですが、何か手助けが必要ですか?」


「ありがとうございます。この子たち、王都は初めてで人酔いしたみたいで…………本人たちは大丈夫だと言い張ってはいるんですが……」


人当たりの良さそうな門番さんに、義姉さんが困ったように言葉を返す。

人酔いなんて、早めに宿にでも駆け込んで休む以外に治しようがないのだから、仕方無いところ。


「あぁ、やっぱり。よくいますよ、そういう子。なので、休憩用の個室が用意してあります。お貸しできますよ」


「…………お願いしてもよろしいですか?」


「はい。では、こちらに」


「……? 義姉さん?」


義姉さんの対応が予想外で、思わず反応が遅れてしまった。


「あのね、ルーシア。貴女たち、本当に顔色良くないわよ? ちゃんと休んでから入りましょう。王都の中は、もっと人が多いんだから」


「…………あぃ」


「ごめんなさぃ……」


視界の外から門番さんの『クスッ』という笑い声が聞こえた。

義姉さんに言われて冷静になってみると、自分が衰弱しているのがよく分かる。

なにしろ、先程から門番さんの声しか分からないということは、顔を上げることも出来ていないということに他ならない。

そんなことにも気付けていないのが、なによりの証拠だ。


義姉さんに引き摺られるがままに門番さんに付いていくと、どうやらそこは外壁内に設けられた一室のようだった。

余程壁が厚いのか、『バタン』と音を立てて扉が閉まると、外の音が一気に半減し、案内された個室に入るとほとんど聞こえなくなった。


「では、こちらをお使いください。お手洗いと水場は、ここを出て左の突き当たりにあります」


「ありがとうございます」


「いえ。では、ごゆっくり」


簡潔に設備を説明した門番さんはすぐに退室する。

個室の中には、ベッドが二つとイスが数脚あるだけだった。

オズと別れて、倒れ込むようにベッドに横になる。


「お姉ちゃん……枕とか、いりますか……」


「いるけど、それは自分で使いなさい……」


オズが枕とタオルケットを差し出そうとしているのを止めて、自分の分は自分で取り出す。


「あぁ、もう。上着くらい脱いだ方がいいわよ」


オズとそんなやり取りをしている内に、義姉さんに上着を剥ぎ取られる。ついでに、ベルトを緩めて拘束を減らしてくれた。


「…………ありがと」


「ございます……」


「はいはい。じゃ、ちょっと休んでなさい」


「ぅん……」


色々と義姉さんに任せて、目を閉じる。

背中から感じる硬いベッドの感触が、今は心地よく感じるのだった。





…………

……………………

………………………………

…………………………………………


どれほどの時間が経過しただろうか…………

爽やかなハーブティーとほんのり甘い薫りで目を覚ました。

ぼんやりとした視界に映るのは、見慣れない天井だけ。


状況は、程なくして思い出した。

王都の外門で並んでいる途中に人酔いにやられて、個室で休ませてもらったのだ。


視線だけ動かして横を見ると、そこには80%くらい予想通りの光景。

小さな机の上にティーカップが三つ、中央にはクッキーが数枚。そして、三人の人影。

ただし、その三人というのは、オズ、義姉さん、門番さんの組み合わせだった。


門番さんの手元には、筆記具と紙、そして分析用魔道具。

多分だけど、あの紙はこの部屋の利用申請書とかで、門番さんが様子を見に来たついでに、オズと義姉さんのチェックだけ済ませて雑談中というところかな?

そして、この位置だと、オズの膝上でクッキーを頬張っているナツナツの姿もよく見える。


……………………? おかしい。さすがに声が全く聞こえないのは不自然だ。

ノロノロと鈍い頭で起き上がると、正面にいたオズが気付いた。


「お姉ちゃん。体調はどうですか?」


「それはこっちのセリフ…………私は大分良くなったけど」


オズの声が聞こえると同時に、耳から薄膜が取れたような感覚がした。

あぁ…………オズの《偽音唱音》か。会話が届かないようにしてくれていたのだろう。

義姉さんはこちらに振り向くと席を立ち、私の額に手を当てて体調を確認するように話し掛けてくる。


「熱はないわね。顔色も良し。ほら、ルーシア。これいくつに見える?」


左手で4、右手で1を作る。

それ、酔っ払いの確認方法では?


「…………14」


「まだダメかしら……41よ」


「それは私と義姉さんの見る方向のせいだと思う……」


「冗談 冗談。大丈夫そうね」


体調が悪くて寝込んでた相手に何してんだ…………


とはいえ、確かにもう体調は問題無い。

義姉さんの冗談半分の質問で、頭も回転し始めた。


一度、大きく伸びをしてからベッドを下り、上着を羽織りつつ机に移動する。

そして、まず門番さんにお礼を言った。


「ありがとうございます。お陰で体調も治りました」


「いえ、私は規定通りに対応しただけですよ。お嬢さんが覚えているか分かりませんが、たまにあることですからね。大事に至らなくてよかった」


話している最中に、オズが私の分のハーブティーを淹れてくれる。

喉が乾いていたので、お礼を言って一息に飲む。

そうするのが分かっていたのか、程よい温かさだった。


「それで、今 何をしてるところ?」


「何ってこともないけど。この人が『外が落ち着いたから』って様子を見に来てくれて、特に問題無いから必要書類の記入と入門審査をしたところね。で、それだけで返すのも悪いから、お茶に誘った感じ」


「私は、門番さんが書類とかを取りに行ってる間に目が覚めて一緒に、って感じです」


「なるほど」


「と、いうことで、貴女もこれに魔力を流してくれますか?」


そう言って門番さんに差し出される分析用魔道具に魔力を流す。

テモテカールでも、お馴染みの表示が現れてチェックが終了した。


「よし、問題無いですね。え~と、『ルーシア・ケイプ』さん、と。

それで、セレスさん。先程までの話を聞くに、目的は『冒険者としての経験を積むため旅をしている』ってところですか?」


「えぇ」


「『冒険者の経験のため』と。じゃ、ギルドカードを見せてください。あ、名前とランクだけでいいですよ」


「はい、こちらです」


義姉さんが自分のギルドカードを差し出すと同時に、こちらに視線を寄越したので、私たちもランクだけ見えるようにして差し出す。

そして、門番さんは義姉さんのギルドカードを見て、驚きの声を上げた。


「おぉ、セレスさん、Aランクですか!? その若さですごいですね!!」


「いえいえ。当時の仲間が強かっただけですわ」


「ははは、それはご謙遜が過ぎる。そんな人達に仲間と認められていたってことは、それだけの力があるってことですからね。羨ましいことです。

そして、お嬢さんたちは…………C!? これは将来有望株ですね!!」


「当然よ。私の自慢の妹たちですもの。それに可愛いでしょう。手を出したら容赦しなませんからね?」


「ははは。ご安心ください。私には、愛する妻と娘がいますからね。娘の友達にでもなって欲しいとは思いますけどね」


義姉さんは言葉の通りに自慢気にそう言うと、左右に座っていた私たちの頭を撫でた。


……………………照れる。


「そ、そういえば、王都の入門審査は随分と細かいところまで確認するんですね。前のところは、ソレだけだったのに」


机に置かれたままの分析用魔道具を指差し、話を逸らすように聞く。

訪問理由とか冒険者ランクとか、初めて聞かれたからだ。


「いえいえ。外の審査だけで終わっていたら、ここまで確認はしませんよ。

ただ、ここは一応、外壁内に設けられた一室。

例えば、敵国の人間やテロリストみたいな者が、休憩するフリをして侵入する可能性もゼロではありません。そして、そんな彼等がここに爆弾でも仕掛けたら、簡単に外壁を壊されてしまうでしょう?

だから、ここを利用した人には、ちょっと厳しめに審査しているのですよ。

まぁ、私の知る限り、そんな人が来たことは無いんですがね。だからといって、手抜きをする訳にもいきません」


「なるほど」


『なら、外に作れば良かったんじゃ?』と思わなくもないが、門番さんに言っても仕方無い。


「それにしても、本当に冒険者なんですねぇ……」


「ん?」


門番さんが『うっかり』という雰囲気でポツリと呟く。

私がそれに目敏く反応したのを見て、慌てて口を塞いだ。


「…………もしかして、疑われてます?」


「あ、いいえ いいえ。そういう訳ではありませんよ。ただ、その、なんと言いますか……」


「「「????」」」


言いにくそうな門番さんに、三人で疑問符を浮かべる。

しばらくどう誤魔化すか悩んでいた門番さんは、『はぁ』とひとつタメ息を吐くと、


「えぇと……バカにしている訳では無いのですが……………………最初に貴女方を見て『お金持ちの御嬢様姉妹が、護衛を連れて遊びに来た』と思い込んでいたもので……すみません」


と謝った。


「…………………………………………一応、念のために聞くけど、私が護衛?」


「申し訳ありません」


なんとも言えない切なげな表情で、義姉さんが言った。

まぁ、私たち三人を見て、三姉妹と思う人は少ないでしょうね。『御嬢様と護衛』に見られるとは思わなかったけど。


「申し訳ついでに、お願いがあるのですが……」


そんな義姉さんを見て、本当に言いづらそうにお願いを口にした。

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