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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
8章 参加!! 彼と彼女等の結婚式
169/264

第160話 ゴーレム娘V.S森の仲間たち

141 ~ 167話を連投中。


1/4(土) 11:20 ~ 19:40くらいまで。(前回実績:1話/17分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

ザッ……ザザザザザッッ!! ザザザザザザザザザザ!!!!!!!!


ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!!


「うひーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「オズ!! 右!! 来た!! 右!! 右!!」


「《積……や、【風壁舞踏】!!」


右方から壁のような密度で突っ込んできた甲虫の大群を、オズの風魔法が下方……下草に絡まるように撃ち落とす。

それでも、半分程の甲虫が抜けてくるので油断はできない。


「くっ……!!」


でも、《積層断空》で防いでいたら、一割も防ぐことは出来なかっただろう。ナイス判断。

オズが稼いだ数瞬の猶予を使って、甲虫の軌道範囲からギリギリ飛び出した。

《ショート・ジャンプ》は、先程から連続発動である。


『ルーシアナ。ルート修正。左だ』


「マジで!? 遠回りだよね!?」


『蛇の大群を抜けられるならいいが……』


「左に行きます!!!!」


背後を通り過ぎた甲虫が、高度を稼ぐように羽ばたく羽音を聞きながら、蛇の群の外周を回るように加速する。


「なだらかな山で良かった……!!」


急な山道だったら、こんなに細かくルート変更など出来なかっただろう。

遠心力で外側に吹っ飛ばされそうな体を、真っ直ぐに伸びる樹木の中腹を蹴って打ち消し、前進の力とする。


ビュオオォォォォゥゥ……


風を斬る音が耳に煩い。

いつかのベーシック・ドラゴンと闘った時のような亜音速は出ていないが、かなりの速度が出ているのは間違いない。


「ねぇ!! アラクネ型の方が機動力出るんじゃない!?」


10歩程 先の足場まで見据えて逃走経路を予測しながら、ナツナツとナビに問うた。

最近はとんと ご無沙汰だが、壁やら木やらを登るのに何度も使用したことはある。

全速で走るのも難しくはないだろう。


「う、う~ん……」


『やめた方がいいんじゃないか?』


「なんで!?」


ところが、二人の返答は色の良いものではなかった。


『その前に右から』


「ムササビーーーー!!!?」


「牙!! 牙剥いてるーーーー!?」


「【風壁舞踏】!!」


『いや、あれはモモンガだな……』


どっちでもいい。


一匹程度なら可愛らしいが、10以上の団体で牙を剥きながら滑空してくる様は恐怖しかない。

とはいえ、こいつらは滑空しかできないので、オズの風魔法で後方に逸らしてしまえば、しばらくは追い付いてくることはないだろう。


下草と落葉でふかふかと柔らかい地面を、ナツナツの妖精魔法で圧縮硬化して確かな足場とする。

これをしないで済むなら、ナツナツも撹乱や索敵に回れるのだが、今の私にこの補助なしで山中を疾走するのは不可能だ。

だからこそのアラクネ型の提案でもあったのだが…………


「いやぁ~、あれに限った訳じゃないけど、通常型以外のパーツって基本的に重くなるよね~……」


『数秒とはいえ速度低下は免れんだろう。追い付かれんか?』


「それは追い付かれるかなぁ!! 確かに!!」


最初に蛙から逃げる前に換装しておけば良かった!!


「あと、この山 細めの木が多いから、この速度で飛び付いたら折れる木もあるんじゃないかな~……」


『うむ』


「えぇぇい!! 軟弱な!!」


「若い山なんですよ~~~~!!」


結局 通常型がベターということか。


「でもでもでもでも、このままじゃジリ貧じゃない!?」


『一応、作戦は伝えて了承したじゃないか』


「そうなんだけどおおぉぉぉぉ!! っっっっ!?」


真っ直ぐに行くつもりで足に力を込めた瞬間、『ゾッ』と背筋に走った悪寒に、左へ体をはね飛ばした。

強引に軌道を捻じ曲げた負荷が、またひとつ体に負債を積み上げる。


ゾザザザザザザザザザッッ!!!!


私が突っ込むつもりだった場所に、雨粒のような何かが、それこそ雨滴の如く降り注いだ。


「「「――――――――!!!!!!!?」」」


余りの寒気に声が出なかった。

それらは雨粒などという生易しい (?) ものではなく……………………大量、の……毛虫、だったから……だ……


「ぎゃああああああああ!!!!」


「ムリムリムリムリムリムリムリムリ!!!!」


「ああいうのムリこういうのムリそういうのムリーーーー!!!!」


『…………一応毒は無いが…………まぁ、そういうものではないのだな』


そのとーり!!!!


咄嗟の判断で飛び退いたお陰で、一匹足りとも私たちに届いてはいないはずなのだが、襟元やら服下やらにモゾモゾと何かが動いているような錯覚を覚える……


一度コートでも脱いでバサバサしたいくらいだ。


そして、強引に軌道を曲げた弊害は一時的な速度低下として現れ、最短距離で突っ込んできた甲虫と距離が詰まった。

甲虫の一匹一匹が、各々の判断で弾丸のように加速する。


「それを待ってましたーーーー!!!!」


恐らくは風魔法で加速したであろう それら甲虫の群を呑み込むように、オズが濃い霧状の水壁を出現させた。

加速する前なら回避も出来ただろうが、今は無理だろう。


甲虫たちは次々と霧壁に飛び込み…………あっさりと突き抜けた。

霧壁の厚さは数十cmあるが、物理的な防御能はなく、軌道を乱すような流れも生じていなかったから当然だ。

代わりに、全ての甲虫を平等に濡らしていく。


「やりました!! やりましたよ!!」


「ナイス オズ!!」


もう、甲虫は無視して正面を見た。

そろそろ目的の場所まで半分ほどだ。


「甲虫は離れていくよ~」


『うまくいったな』


「五千年生きてきた中で、過去最高に集中しました!!」


何をしたのかと言えば、甲虫の翅を湿らせただけだ。

多くの人が知っていると思うが、虫の翅は向こう側が透ける程に薄く、軽い。

それを、私たちでは目で捉えきれないような高速度で羽ばたかせて飛翔しているのだ。

当然、水滴が一滴付いた程度でもその重さは激増し、いつものように羽ばたかせることはできない、つまり、飛ぶことができなくなってしまうのだ。

雨の日に虫を見掛けない理由のひとつは、コレだ。


とりあえず、これで最も距離を詰めてきていた虫からは距離が稼げた。

油断は出来ないが、少しは余裕が出来ただ


『正面だ!! 跳べ!!』


「うわマジかこれキターーーー!!!!」


ナビが『跳べ』と言うからには、地を這う魔獣なのだろう。

《ロング・サーチ》の反応にも、大きな鼠のような反応が見られる。

助走は十分以上にしている。


後はタイミング!!!!


「ナツナツ!!」


「ほいきた足場硬化~~!!」


正面、三ヶ所に踏み切り用の足場が硬化される。

それ目掛けて……


「ほっぷ!!」


右足で最後の加速を。


「すてっぷ!!」


左足で体勢を整え。


「じゃんぷ~~~~!!!!」


最後に両足で思い切り飛び上がり、前方宙返り妹担ぎ一回捻り (適当) を決めた。


「「ぎゃ~~~~~~!!!!」」


ナツナツとオズが可愛くない悲鳴を上げたが、それもまた可愛い。どっちだ。


私たちが描く軌道は直線に近い放物線。

足先方向 (要は空) には、木々の枝が多く邪魔だったので、高度は上げ過ぎずに低空をかっ飛んでいく。

頭上方向 (要は地面) に目を向けると、茶色いボール大のモフモフが大量にいた。

鼠ではない。


「なにあれ」


『ナッツイーター。大雑把に言えば、リスだな』


「ナッツ喰ってなさいよ!!!!」


結局、こいつらが何故突然襲い掛かってきたのかは、未だに不明。


《孤独の嘆き》のせいかと思ったが、発動を解除しても追い掛けてくるのを止めないのだから、別に原因があるのだろう。多分。

こちらを見上げて『キュイキュイ』『キィキィ』と甲高い鳴き声をあげるナッツイーターを見ながら、頭上を通り過ぎた。

途中で逆さになった体を正常に戻す。

着地予定の足場は、ボコンと飛び出た平らな岩だ。


「…………っっとぅてぇ!?」


変な声が出た。


なんと、足場にしようとしていた岩の上に、『にょろにょろ』っと蛇が数匹登ってきたのだ。


「シャーーーー!!!!」


「『シャーーーー!!!!』違うわボケェ!!!!」


岩に降りない → 強引に身を捻る → 体勢が崩れる。

岩に降りる → 蛇を踏みつけて足を滑らす → 体勢が崩れる。


『二者択一』ならぬ『二者同一』とでも言うべき状況。

どちらの選択を選んでも、転んでナッツイーターに群がられる運命に変わりがない。

……………………文字面だけ見ると『何が危険?』という感じだが、全員敵意丸出しなんですよ!!


「ちょっとどうすんのおおぉぉぉぉ!!」


「なになになになに、何があったんですかぁ!?」


『無差別範囲魔法は用意してあるぞ』


ナビの用意は倒れた後の対策だ。残りの二人には手がない。

というか、片方(オズ)は状況を確認できていない。後ろを向いてるからね。


となると、もう私に取れる選択肢は先程の二つしかないわけで、せめて蛇くらいは倒して(潰して)防御体勢に入るのがベターかとも思うが…………


素材目的でも、食材目的でも、クエスト目的でもない魔獣を殺すのはちょっと、ねぇ?


「だああああ!!!? 《マテリアルシフト》おおぉぉぉぉ!!」


無意識のままに選択した行動は《マテリアルシフト》。

装備しているベースグローブをスレプネルへと変化させる。


そして……


「ちぇぇぇぇい!!!!」


自由になる右手を振って、その武器スキル《ダークブレッド》を発動させると、その動きに合わせて闇弾が発射される。

その闇弾は『弾』というには異様に偏平した形をしていて、初速こそ速かったが、直ぐに空気抵抗を受けて速度を落とした。

そこに、速度を落とさない私が飛び乗る。


「思いの(ほか)せいこおおぉぉぉぉぉ!!」


不安定過ぎる足場に、冷や汗を流しながら、なんとか岩に下りずに次の足場に向かって跳躍できた。セーフ!!


四大属性の魔法弾と違い、根源属性の光弾と闇弾は、弾が持つ運動エネルギーや熱エネルギーでダメージを与えるのでなく、弾に込められた反発力でダメージを与える。

その反発力の発生方向は、一方向に限定されるものではなく、弾に触れる全方位に発生するものだ。

故に、もし移動しない光弾・闇弾があったなら、その上に乗ることは理論上、可能である。


……………………とはいえ、そんな曲芸じみたことをぶっつけ本番でするのは博打が過ぎる。

なので、闇弾からの跳躍は減速を主目的とし、ある程度速度を落としたら、展開したままだった飛行ユニットを使って跳躍力の補助とした。

闇弾の上でバランスを取るつもりで飛び乗り、その姿勢のまま飛行ユニットで前へ飛ばすイメージだ。


ぎこちない跳躍ではあったが、なんとか成功した。

ただ、この跳躍ひとつで私が溜め込んでいた幸運の大半を消費した気もする。そんな奇跡的な跳躍だった自信がある。


『……!! ナッツイーター共の活動がさらに強くなった!! やはりこの事態は、《孤独の嘆き》が関係していると見ていい!!』


「くっ……!!」


これ以上敵が強化されるのは、堪ったものではない。

すぐに《マテリアルシフト》でベースグローブに戻す…………が、敵の動きは強化されたままだ。


「どういうこと……!?」


「火魔法と延焼みたいに、魔法は切っ掛けでしかないのかもしれません!!」


ナツナツとオズが原因を考えてくれているが、私としてはちょっとヤバイことになっている。

逃走前にも言ったが、飛行ユニットはようやく『一人でゆっくり移動出来る』程度にしか使いこなせていない。

オズを抱えて使用した分の代償が、想定外に体が回転することで現れ始めたのだ。

オズを抱える分 一部の飛行ユニットの噴射を強くしたが、天地方向を軸とした回転(ヨー)のバランスが適正ではなかったらしい。


「まっっっっずい!!」


自ら回転するのなら問題ない。

その状態で着地できるように、足の向きやら重心やらを適切な位置に整えておくからだ。


今は想定外の回転をしてしまっている。

元々真っ直ぐに着地する予定だったため、今の状態でうまく着地の衝撃を吸収して、次の行動に移るのは…………少々難しい。


『結局、虫まみれかなぁ』と諦観と同時に怖気が顔を覗かせるが、『せめて、ナツナツとオズだけを範囲外に投げ飛ばそう』と決意する。

そこに、


「お姉ちゃん。私の体、投げ捨ててください。憑依を解除して情報生命体に戻りますから」


と、オズからある意味根本的な解決策を提示された。


確かに今 私は、オズを抱えていることによって、大分動きを制限されている。

オズに情報生命体に戻ってもらって、義体は[格納庫]にでも仕舞えば、移動速度と精度は格段に上がる。

義体のステータス補整が無くなる分、魔法効果に多少の低下はあるだろうが、身軽になるメリットはそのデメリット分を補うのに十分だろう。


でも…………


「お姉ちゃん?」


なんとなく、それをするのは、嫌だなと思った。


『ぎゅっ』と、より強くオズを抱える力を強くする。

どうせこのままじゃ、転倒して虫まみれだ。

でも、どうせ虫まみれになるだけだ。死ぬわけじゃない。

一か八かの手段を選んでも、デメリットはそう大きく無いんじゃないかと思いやあの虫ども噛み付く気満々だったわむしこわい。


「行くよ!!」


「任せんしゃ~い♪」


『ふぅ。援護しよう。どこを足場にしようと、確実なものとしてやる』


「え、ちょ、おね」


オズの戸惑いの声は無視する。


肩に担いだオズによる重心のズレを、まずは考慮せずにいつも通りのバランスで、回転を止めるように噴射する。

当然、左肩に担いだオズの分だけ加速が弱く、右回りの回転が強くなる。


予想通りだ。


噴射した圧縮空気は回転も強くしたが、体を推進させる力としても作用し、着地点は少し先へ伸びている。

そうして延びた先の木を蹴って、回転力を打ち消した。


そうだ。飛んでいくのが不安なら、いつも通り跳んでいけばいいのだ。


「このまま宙を行くよ……!!」


「おっけ~」


「降りないんですか!?」


『着地する度 多少とはいえ速度が落ちるからな』


それもあるけど、また不意に蛇とかが現れると危ないからだよ。


目的地まで残りの距離はそんなにあるわけじゃない。

慣れない飛行ではなく、慣れた跳躍の方が危険は少ないと考えた。飛行ユニットからは、小刻みに圧縮空気を噴射することで、足りない跳躍力の足しとする。

常時 同じように噴射し続けるのではなく、間欠的に様々なパターンの噴射を行うことで、オズを担いだ状態での経験を蓄積する目的もある。

想定外の動きが大きくなったら、木を蹴る際に微調整する。

ジグザグな軌道を描いて、水平に落ちるように跳躍を繰り返しているうちに、徐々に不要な動きが減っていく……



▽《姿勢制御》から一部機能が分離確立します。

▽格闘技:飛翔が確立しました。

▽格闘技:与撃飛翔が確立しました。

▽格闘技:偏荷重飛翔が確立しました。

▽統合・最適化を検証中……………………可能と判定されました。

▽《飛翔》《与撃飛翔》《偏荷重飛翔》が統合され、《飛翔制御》に変化します。

▽……………………統合が完了しました。

▽《飛翔制御》を最適化します。

▽……………………最適化が完了しました。

▽再起動しました。

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・格闘マスタリーLv.10 → 13


取得スキル

・飛翔:推進器を用いた飛翔動作を補整する。(常時発動) (統合)

・与撃飛翔:周囲の対象物に対し、衝撃を与える飛翔動作を補整する。(常時発動) (統合)

・偏荷重飛翔:偏荷重状態での飛翔動作を補整する。(常時発動) (統合)

・飛翔制御:あらゆる飛翔動作を補整する。(常時発動)



…………何が起きた。

いや、自分のスキルなのだから、何が起きたのかは分かる。予想してなかっただけで。

一言で言えば、既存のスキルから余剰分が分離して、別個のスキルとなったのだ。


今までは、《姿勢制御》で飛行時の動作補整を行ってきた訳だけど、このスキルの本来の用途は地上での姿勢制御である。

故に、姿勢制御のための主な手段は、地面へ加える踏み込みの強弱なのだ。

これに対し、飛行時の姿勢制御は、今の所 飛行ユニットの圧縮空気だけ。

つまり、スキルがベースとしている環境が全く異なるのだ。

なので、今までの《姿勢制御》による飛行時の動作補整は、基本的に跳躍時の動作補整の亜種だった。


それが、飛行の経験を蓄積することで《姿勢制御》の術式が複雑化し過ぎたため、簡略化するために地上用と飛行用に分かれたのだろう。

いずれ術式の共通項を増やして再統合するかもしれないが、今の所二つに分かれた方が良いと判断したのだ。

……………………おじいちゃん、すご過ぎ。と思うと同時に、ひとつ分かることもある。


既存のスキルが複雑化して分離したということは、それだけ私がおじいちゃんの想定を超える動きをしているということだ。


その事実に、嬉しいような怖いような感情が湧き上がる。

…………まぁ、さすがのおじいちゃんも空を飛ぶことは出来なかったのだろ……………………そうかな? スキルでなく、魔道具を使って飛んでた可能性もあるしな。私も半分はそんなもんだし。

うん。私はまだまだだ。一安心。


まぁ、それはともかく注目すべきは統合された《偏荷重飛翔》だろう。

偏荷重、つまりオズを担いだことによる重心の偏りにスキルが対応したということだ。

実際に、格段にバランスを取るのが容易になっている。


『そろそろ目的地だ』


「森を抜けるよ~」


「よしっ!!」


「でもでも団体様も着いてきてますよぉ~~!!!!」


オズの泣き言を聞くまでもなく、背後からやり過ごしてきたナッツイーターやら甲虫やらが集まってきているのは捉えていた。

前を見れば、木々の隙間が徐々に広くなり、射し込む光が強くなっている。

そして、耳に届くのはサラサラとした心地好い水の流れる音。


つまり――


「抜けたああぁぁぁぁああああ!?」


分かるだろうか。『抜けたああぁぁぁぁ (↓) ああああ!? (↑)』である。


「ちょ、高い高い高い!!」


そこは逃走を開始した棚田とは恐らく別に源流を持つ、それなりに大きな川だった。

予想外だったのは、飛び出した森と川原の高低差が思ったよりあったことだ。


『あれ、予想外…………虫用に遠距離の精度を下げていたからか……?』


「直前で《飛翔制御》、取得できてよかったね~……」


「緊張感!! 緊張感持ちましょうよ、ねぇ!!」


オズの意見が正論過ぎる。


おかしいな。一歩間違えれば転落死…………するほど高くはないけど、確実に怪我するような高さと速度なのに、あまり緊迫感がない。

……………………夢の中とはいえ、練習で高々度を飛び過ぎたせいか。


まぁ、でもとりあえず……


「川下に距離を取って着地するよ!!」


「「『了解!!』」」


元々 川下目掛けて飛び出しているので、距離を取るのは然程難しくはない。

途中で加速を切って反転し、川上側を向いて着水した。

そちらを見れば、津波のように小型魔獣の大群が溢れだしているところだった。


「…………明るいところで見ると、またインパクトがあるな……」


「そうだね~……」


『敵は正面からだけだな。左右背後に回り込んではいないようだ』


「お、お姉ちゃん、降ろしてください」


そのままでいいかと思ったが、頼まれたので降ろすことにした。

しばし、待つ。


…………………………………………


小型魔獣の大群が、ある程度近付いたところで行動を開始した。


「焼き払う!!」


「『了解!!』」


魔獣たちに強く警戒させるため、大袈裟な動作で右腕振り上げる。

その右腕全体から轟々と音を立てて焔が吹き上がったのは、次の瞬間であった。


「キィキィキィキィ!!!?!!!?」×たくさん


「ギィギャ!! ギギャギャギャ!!!?」×たくさん


これまでまともに反撃しなかったこちらが、明確な攻撃の意思を見せたのが意外だったのか、単純に焔が怖かったのか……

それは不明だが、明らかに突進の勢いが弱まり、空から来る魔獣たちは、回避しやすいように空間の開けた上空に高度を上げた。


だが、無意味だ。


タイミングを見計らい右腕を振り下ろすと、右から左へ川を横断するように火焔が放射された。

そして、水に触れたにも関わらず、それを燃料とするかのように焔の壁が天高く伸び上がる!!

その大きさは、高空へ舞い上がった魔獣たちすら、余裕で呑み込むほどの高さを誇っている。


そして、焔の壁から魔獣たちに向かって、身を焦がすような熱波が走り抜けた。


「ギュイイイイ!?」×たくさん


「ジャオ!! ギャオ!! ジャオ!!」×たくさん


さすがに、これに突っ込んでくるほど無謀ではなかったようだ。

しかし、脚は止めたものの、未だ戦意を喪わぬまま、隙を窺うようにこちらを睨み付けてきている。


「畳み掛けて!!」


「ガッテン承知!!」


ナツナツが声を上げると、焔が地中から燃え広がったかのように、群の至る所から火柱が立ち昇る。

それは、上空で蛇のようにのたくると、空の魔獣たちをも呑み込もうと鎌首をもたげた。


『じりっ』と先頭の魔獣たちが一歩後退りした…………瞬間。


「キュイイィィィィ!!」


「シャーーーー!!」


「カオオォォォォン!!」


『もう耐えきれない』と言わんばかりに、十数体の魔獣が身を翻して逃げ始めると、他の魔獣も雪崩を打ったように逃走し始めた。


そうなってしまえば、後は一瞬だ。

延々と私たちを追ってきた魔獣たちは、ある者は川を遡上し、ある者は両側の岩を駆け登って、バラバラに山中へ消えていく。


…………数十秒後。

先程までの騒々しさは幻のように掻き消え、本来あるべき静寂に包まれた穏やかな川原がようやく訪れたのだった。


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