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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
8章 参加!! 彼と彼女等の結婚式
156/264

第147話 ゴーレム娘、錬金術師クエスト (ライ村編)

141 ~ 167話を連投中。


1/4(土) 11:20 ~ 19:40くらいまで。(前回実績:1話/17分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

次の日の朝食。


「ルーシアちゃん、どうしたの?」


「なんだか不機嫌?」


「…………なんでもないです。ちょっと夢見が悪かっただけで……」


「『『あ、あはははは……』』」


リリアナさんとフェリスさんが不思議そうに尋ねてくるのに対して、あまり失礼にならないように気を付けて答えた。

なお、その原因のオズたちは、視線を逸らして乾いた笑い声をあげている。

それだけでは意味が分からないリリアナさんたちが、やっぱり不思議そうに突っ込んできた。


「夢見? 悪夢でも見た?」


「追われる夢とか、落ちる夢とか?」


「そうですね、オチましたね。気絶する的な意味で」


「夢の中で気絶するんだ……」


「レア……」


そうでしょうよ。私も初めてでした。


《夢渡り》で侵入した夢の中で、瞬間的に一定以上のダメージを受けると強制的に排除されるんですね。

夢設定でダメージを無効化はしてたはずなんだけど、それとは関係がないらしいです。

もし、夢魔に襲われた時は、諦めずに攻撃しましょう。


今日の朝食は、ノーラさん(リリアナ母)たちが用意してくれた。

昨日、あんなに酔っ払ってたのに、もう普通の顔をして座っている。強い……


「……………………だっっっっる」


「…………そうですね~……お義母さん」


…………外見だけだった。


「ロキオン、水取ってきてくれ」


「俺も」


「……………………あいよ」


祖父と父に水を持ってくるように言われたロキオンさん(リリアナ兄)は、『なんで俺が……』という雰囲気を出していたが、黙って取りに行った。

賢明な判断である。


「みんな飲み過ぎよ……」


「もしかして、最近はいつもああなの?」


あまりの惨状に、リリアナさんとフェリスさんが呆れたように苦言を呈す。


「いやいや、さすがに昨日だけじゃわい」


「そうそう。まだ収穫は終わっていないしね」


「そうなんだよなー。まだ終わってないんだよなー、ちくしょうめ」


それに対し、コルトさん(リリアナ祖父)パイソンさん(リリアナ父)は苦笑いしながら否定し、ロキオンさん(リリアナ兄)は後悔するように天を仰いだ。


「じゃあ、なに? 昨日のドンチャン騒ぎは」


「お肉でテンション上がった?」


あれ? 私のせいですか?


なんとなくそんな流れに持ってかれそうだと警戒したが、リンザさん(リリアナ祖母)ノーラさん(リリアナ母)は、ニヤニヤしながら片手を振ると、


「何言ってるのかね、この子は」


「リリーちゃんの結婚報告に浮かれただけじゃない~。そ・れ・で、どこまで行ったのかしら~?」


「ごぶはっ!?」


「私とキリウスは最近キスするようになったばかりです。それ以上はしてないと宣言し、以降は黙秘します」


「フェリスちゃん!?」


リリアナさんが口から水を吹き出して慌ててる隙に、フェリスさんが口早に必要最低限の情報を伝えて黙秘を宣言した。

少なくともリリアナさんは、これ以上のインパクトを与えないと解放されないだろう…………


「あらぁ~♪ キリウス君もやるじゃないさね」


「それでも最近なのね~♪ どうだった? どうだった?」


「黙秘」


「ならここはリリアナちゃんかね」


「どこまで行ったのぉ~~♪ 手くらい握った?」


「私は子供か!!」


祖母と母に絡まれ始めたリリアナさんたち。

ちなみに周囲の男性陣はこんな感じだ。


「…………孫娘の恋愛進展状況を聞かされる、この苦行。嬉しいような悲しいような、複雑な気分じゃな」


「親父。父親として、キリウスのヤツ一発くらい殴る権利はあるよな」


「逝ってこい、我が子よ」


「…………じいちゃん、父ちゃん。嫌われんぞ」


キリウスさん、逃げて。


そんなこんなで、今日も始まります。

あ、別にナツナツたちとはケンカしてるわけではないですからね?





さて。

朝食も終わり、リリアナ家の面々は農作業に、リリアナさんとフェリスさんは式の打ち合わせに、私たちは錬金術師ギルドに向かいました。

私たちは昨日、ノーラさん(リリアナ母)たちに頼まれたアイテムを作成するため、情報を収集するのが目的だ。

とりあえず、冒険者ギルドの方から建物の中へ入る。


「やっぱり、この時間帯なら人も多いね」


『でも、テモテカール程じゃないね~』


『さすがに街と村じゃな』


「ですね」


テモテカールよりも小さなギルドにも関わらず、人で一杯という程ではない。

なんだろう。『そこそこいる』くらいの密度だ。

今は受付嬢も複数おり、やっぱりそこそこ忙しく動き回っている。が、逆に言えば、その程度で済んでいる。


「えーと…………錬金術師ギルドへの扉があるって言ってたけど……」


「あれじゃないですか?」


冒険者ギルドに入って左右の壁には、同じような扉が設置されていて、その上部には行き先が表示されていた。

その錬金術師ギルド側の扉をくぐる。

そして、思った。


…………………………………………人いねぇ。


時間が悪いのか何なのか、錬金術師ギルドには人っ子一人いなかった。

受付台の上には呼び鈴があり、『ご用の方は呼び鈴を鳴らしてください』の注意書き。


…………何となくだけど、鳴らしても なかなか人は来ない気がする。


「受付嬢さんは全ギルド共通?」


「かもしれませんね。職員用の通路も繋がってるんじゃないでしょうか」


つまり、他のギルドでの対応が忙しいこの時間帯は、錬金術師ギルドは放置気味なのだろう。

冒険者と違って、錬金術師は早朝にギルドに来る必要性は少ないからね。


「…………まぁ、人の視線を気にせずにうろつけるから、いいかな」


「『基礎錬金レシピ集』みたいなの無いですかね?」


壁際に設置された本棚へ歩み寄る。

錬金術師ギルドには、基本的な素材の採取場所や時期、そして基礎アイテムの錬金レシピなどが記載された参考書が置かれているのが普通で、誰でも読むことができる。

逆に言うと、『このくらい作ってくださいよ』という、ギルド側の期待(圧力)でもあるのだが。

本棚の上の方にギルド規約などのルールに関する本がずらっと、残りの段に参考書の類が並んでいるのだが…………


「同じヤツばっかり?」


「ですね。種類で言えば、五種類くらいしか無いんじゃないですか?」


「なんで同じ本がたくさんあるの~?」


『いや、複数人が同じ本を読みたいと思ったときに、待たせないためだろう。…………まぁ、他に置く本が無いだけの可能性もあるが』


なるほど。そういえば、テモテカールの錬金術師ギルドも同じ本が複数あったし、無くてもモニトロさんに言えば奥から出てきた。


「《フル・スキャン》」


「《仔細分析》」


「…………読みなよ」


『まぁまぁ』


サクッと魔法で内容を読み取る私たちに、ナツナツが呆れたように言うが、それは早合点というものだ。


「いやいや。後で読み返せるように《フル・スキャン》を使っただけで、今日は読むよ? これから」


「そうですね。じゃあ、そこの席で読みましょうか」


オズの頭の上から『じとー……』っと見てくるナツナツを誤魔化すように、ぽんぽんと叩いて席に移動する。


まず見るのは、『ライ村錬金術師ギルド 基本アイテムレシピ集 中級』だ。

初級はFとGランク、中級はDとEランク、上級はBとCランクのレシピが載っていて、AとSランクは自力でレシピを考えるしかない。これはテモテカールでも同じだった。

違うのは冊数だ。テモテカールでは中級-1~10まであったが、ここでは一冊だけだ。


私が席に着くと、オズも当然のように隣に座り、ナツナツがその間から顔を出すように納まった。

そして、ナツナツの正面辺りに本を広げる。


「え~と……ポーション、ポーション…………これか」


「作り方は複数あるみたいですね」


「どれがいいんだろ~?」


「分かんない」


「あ、でも、今時分に創れるレシピは一つしかないですから、選択肢はこれだけですね」


「あ、ホントだ」


ふむふむ…………

必要な素材は、『クリキノコ』と『(いけ)ヨモギ』か。

作り方は……………………フェルル草を素材にしたポーションと殆ど変わらないな。

ただ、特徴としてクリキノコの甘味が残るので、比較的美味しいポーションになりやすい、と。


続いて、活力薬、風邪薬、肥料のレシピとそれぞれの素材の採取場所を確認する。


「採取場所も大体同じか……」


「そうですね」


「でも、このレシピだと あんまり効果が良くないね~」


『ふむ……効果を高める増強素材でもあれば良いのだが……』


まぁ、その辺は何が採れるかによるかな? でも、レシピに載ってないってことは、無いのかもしれない。


とりあえず、目的は果たしたので、早速採取に向かおう。

参考書を本棚に戻して振り返ると、受付にセイディさんが座っていた。


「ルーシアちゃん、オズリアちゃん。いらっしゃ~い♪」


「お邪魔してます」


「……………………(ぺこり)」


オズが警戒している…………


私の背後に隠れて、小さくお辞儀するオズを連れて受付の方へ行く。


「どうしました?」


「いやそれ、私のセリフだから。冒険者ギルドに入ってくるのは見てたけど、出ていくのは見掛けなかったから。まさかと思って、ぐるっ回ってきたんだけど…………こんなところでどうしたの? ここ、錬金術師ギルドだよ?」


「知ってます」


「そうなの? なら、依頼でもあるのかしら? こう言っちゃアレだけど、ここの錬金術師はEランクが精々よ?」


「私もこの前までEランクだったから、それになんて答えればいいです?」


Eランクが精々だから…………簡単な消費アイテムしか創れない? 創るまでに時間が掛かる? なんだろうね?


ちなみに、私がDランクに上がったのは、本当についこの間です。

最近は、『Sランク魔獣と闘ったばっかりだし、しばらく冒険者ギルドはいいかな~』って思って、錬金術師ギルドに通ってたので。


そんなことを考えていると、セイディさんは両目をぱちくりとさせて、


「え…………? ルーシアちゃん、錬金術師なの? アホの子っぽいのに」


「唐突のディスリスペクト。怒っていいですか?」


「あ、ごめんごめん。思わず本音……いや、率直な……端的な……………………まだ早いけど、私のおやつ食べる?」


「『食いもんで釣っとけば誤魔化せる』とかそういう意味なら殴りますけど?」


「謝罪の代わりにお納めください」


と言って差し出される袋を受け取る。

中を見ると、飴色で楕円形の板のようなものがたくさん入っていて、ほんのり甘い香りが漂ってきた。


「なんです?か コレ」


「あ、あれ? 知らない? 干し芋だけど」


「知らない……」


「名前だけなら」


「カ、カルチャーショックだわ……」


私たちの答えに受付台に崩れ落ちたセイディさんに、『ジェネレーションギャップでは?』と言う感想は飲み込んでおいた。

復帰までに時間が掛かりそうなので、せっかくもらったし、干し芋をいただくことにする。


…………堅いかと思ったけど、妙に柔らかかった。


何だろうね、コレ。いや、芋なんだろうけど。


「干し芋は、さつまいもを蒸したものを、適当な大きさに切って乾燥させたものです。そうですね…………冷めて乾燥した焼き芋だと思っていただければ、大体あってるかと」


「それ、美味しくなさそうなんだけど……」


「その説明には大変な悪意があります!!!! 美味しいんだよ!?」


『ガバッ』と、受付台から勢いよく身を起こして、文句を言うセイディさんは ほっといて一枚いただく。オズとこっそりナツナツも。


もぐもぐもぐもぐ…………


…………………………………………


「美味しいかも? お腹に溜まりそう」


「そうですね。何と言いますか、歯応えがいいです」


『モチモチしてて美味しいね~』


『……………………誰も味について評価していないんだが…………でも、私にもください』


言われてみれば確かに。


もぐもぐもぐもぐ…………

もぐもぐもぐもぐ…………

もぐもぐもぐもぐ…………


「えっと、ルーシアちゃん? 気に入ってくれたのは嬉しいんだけど、朝食食べたばかりでしょう? あんまり食べると太るわよ?」


「は…………!!」


い、いかんいかん。謎の中毒性があるぞ、コレ。無意識にもう一口を求めてしまう…………!!


「でも、これは頂いておきます」


「お姉ちゃんが買収された!?」


「どうぞどうぞ。今度作り方教えてあげるね」


食べ過ぎないように[アイテムボックス]に仕舞っておこう。あと種芋も買って、オズに栽培してもらおうそうしよう。


「それじゃ、私たちはそろそろ失礼しますね」


「失礼します」


「うん、またね~……………………いや、ちょっと待って!? 私、おやつ巻き上げられただけじゃない!!」


「別に巻き上げたつもりはありませんけど……」


慌てて受付台から乗り出して、こちらの肩を掴んで引き留めるセイディさんに、反論ともつかない言葉を返した。


「なら、代わりに私たちのおやつをあげましょう。バームクーヘン詰め合わせ」


「ご親切にどうも…………なにコレ? 不思議な形……」


食べやすいように、棒状に切ってあるからなぁ…………

何形って言うんだろ? 扇柱形?


「え~と…………こう、棒に生地を着けて焼いてを繰り返して、円柱状にしたお菓子なんですよ。で、食べやすいように縦切りにしてあるんです。私は横切りにしてある方が楽しいんですけど」


「ふ~ん……………………あ、美味しい」


「それは良かった。では、私たちはこれで。お邪魔しました」


「お邪魔しました」


「またね~……………………って、だから待ってよ!?」


再び受付台から身を乗り出して私の服を掴むセイディさんに、仕方無く応える。


「分かりました。じゃあ、一本物のバームクーヘンあげますから」


「わーい、ありがとう♪ …………おっきいね!?」


「でしょう? じゃまた」


「さよならー」


「そろそろ私泣くよ!?」


さすがにそろそろ誤魔化されなくなった。

いや、ここまで誤魔化せれば十分過ぎか?


「だって、なかなか本題に入ってくれないから……」


「話題を逸らしてたのそっちだったよねぇ!?」


そうだっただろうか? ……………………そうだったかもしれない。


「それで、何かご用ですか? わざわざここまで探しに来たみたいですし」


「あ、いや、ここに探しに来たのは、単純に興味。『どこ行ったのかなぁ』って。頼みたいことは、ルーシアちゃんが錬金術師だって聞いてから思い付いたのよ」


「つまり、錬金術師としての依頼ってことですか?」


「そうそう」


そう言ってセイディさんは、受付台の下から一枚の依頼書を取り出した。


「ちょっと急ぎなんだけどね。他の錬金術師に断られちゃって。王都の方に回すしかないかなぁって思ってたんだけど、ルーシアちゃんできない?」


「まぁ、内容に依りますけど……」



依頼名:井戸の修理

依頼人:農業ギルド

場所:ライ村 農耕地区北西部

期間:なるべく早く

募集人員:―

報酬額:200,000テト (素材代、その他手数料含む)

対象:第27号井戸

内容:該当の井戸が壊れてしまったので、点検・修理をして欲しい。詳細は事前調査資料を参照の事。



井戸の修理…………錬金術師の仕事か?


ちょっと首を傾げていると、セイディさんは続けてもう一冊資料を取り出す。


「これが事前調査資料だけど、ざっくり説明すると、水が出てこなくなっちゃったのよ。頑張ればちょっと出てくるんだけど、泥水で使い物にならないの。

原因は単純で、井戸の壁が崩れちゃったのと、水を吸い上げる配管が腐食して穴が空いちゃったのね。

崩れた土砂が底に溜まってるせいで、汲み上げる水流に乗って、泥水になって出てくるし、大部分は漏れて戻っていくわけ。

だから、まず新しい配管を作ってもらうでしょ。そしたら古い配管を外して、崩れた井戸壁を補修。そのまま、底まで潜って土砂と砂利を撤去。この砂利は必要な物だから、土砂と篩い分けして戻してもらうわ。

それらが終わったら、新しい配管を入れ直して完了……って感じ」


一応、事前調査資料を捲ってみるが、セイディさんの説明以上の情報は書いていなかった。

いや、設計図とか必要素材の錬金レシピなんかはあったけどね。


「どう? 出来そう? せめて交換用の配管とかだけでも」


「う~ん……何分 初めてですからね……」


「そりゃそうか。…………やっぱり王都かなぁ」


「いえ、一回現場を見てきますよ。回答は明日でもいいですか?」


「ホント? 助かるわ~♪ とりあえず、一週間後には王都に回すか判断するから、それまでにある程度進展して欲しいかな。上の方に説明しなきゃならないし」


「分かりました」


とりあえず、仮受け付けをしてもらう。

その間にふと思い出したことを聞く。


「そういえば、これからポーションとかの素材を集めに行くんですけど、そこの参考書に書かれたレシピだと効果が低いですよね? 何か効果が上がる増強素材って知らないですか? あとついでに、ここって錬金素材店ってないんですか?」


「もしかして、ポーション納品してくれるの? 助かるわ~」


「まぁ、納品はしますけど…………私は、ルーカスとリリアナさんのお母さんたちに頼まれただけだから、他に回す分を創る予定は無かったんですけど」


「それだけでも十分よ。でも、余分に出来たら納品よろしくね。常設依頼なんだけど、最近不足気味で……」


『困ったわぁ~』とでも言いたそうに、溜息を突いて見せるセイディさん。


「何か怪我人が増えるようなことでもあったんですか?」


「ん? あぁ、違う違う。逆よ逆。需要が増えたんじゃなくて、供給が減ったの。

ほら、今は収穫の時期でしょう? 冒険者と同じで、錬金術師も兼業が多いから、この時期はどうしても供給が滞るのよね。冒険者はまだ人数が多いからそこそこいるけど、錬金術師は絶対数が少ないからね~。人っ子ひとり来ない日もあるわよ、ここ」


それでこの状況か。


そして、セイディさんはギルドカードを返却してくれると、からかうような笑みを浮かべた。


「それで、効果を高める増強素材だっけ? ルーシアちゃん、初級本読むの飛ばしたでしょう。あれに全般的に効果を高めてくれる追加素材の説明あるわよ? 増強素材じゃないけど」


「……………………なんですと?」


「ちょっと見てきます」


セイディさんのまさかの発言に、思わず固まる。オズが慌てて本棚に向かった。


「というか、貴女たちテモテカールだっけ? そっちのギルドの参考書にもなかった?」


「え~と……ですね、必要なページをピンポイントで見ることが多かったので、そういう全般的なところは見てなかった……かも」


「あらら~……ダメよ? 勉強サボっちゃ」


『え~……? 今、テモテカールの参考書見返してるけど、ないよ~?』


『だよなぁ…………効果を上げるもの……上げるもの……』


セイディさんにしどろもどろに言い訳している間に、ナツナツとナビが記録しておいた参考書を見返してくれるが、テモテカールの参考書には該当しそうな情報は無いらしい。

ここの参考書は、オズが持ってきた。


「ありましたね。ほら、ここ」


「え~と、なになに……? 『ライ村周辺の素材は、魔道具の錬金素材として不向きな物が多く、そのため出来上がるアイテムも効果が低くなる傾向にある。その対策としては、刻み込む術式の属性に合わせた追加素材を加えるとよい。ただし、この方法で効果があるのは初級~中級のアイテムまでに限り、上級のアイテムでは逆効果になる可能性が高いので注意すること。また、追加素材が無くとも十分な効果がある場合も、不純物扱いとなり効果が下がるので合わせて注意すること』」


「そうそう。で、よく使うのが翡翠(しょうびん)系の羽根ね。ポーションなら、刻み込む術式は生命属性になるから、『橙翡翠の羽根』になるわね」


「なるほど……」


読んでて気が付いた。コレ、知ってる。


『あぁ~……テモテカールの参考書には、逆の事というか、効果が下がる方を重視して書いてあるね~』


『『術式の属性に合わせた追加素材は、初級 又は 中級、かつ、低品質なアイテムに限り効果を高める可能性があるが、多くの場合効果を低下させる方向に働く。ただし、この方法で効果を高めても、元々の錬金素材の品質が良いものには敵わないことが多く、また追加素材分の費用等が加算されるのでオススメしない』だ、そうだ』


同じ現象でも、捉え方でこうも違うのか…………


私がなんとも言えない表情をしているのに気が付いたセイディさんが、もの問いた()に見ていたので説明しておく。


「あぁ…………いえ、テモテカールの参考書にも似たようなこと書いてありました。ただ、向こうのは『効果が下がることが多いからやめなよ』的な内容だったので、気付かなかっただけですね」


「あ、あら、そうなの? 知らなかったわ……」


「それぞれの土地柄に依るんですねぇ……これは、他の街に行ったら、一通り参考書は見た方がいいかもしれませんね、お姉ちゃん」


「そうだね……」


以前も説明したが、《フル・スキャン》しただけでは知識とはならないのだ。


「ちなみに知ってるかもしれないけど、増強素材はオールマイティに効果を底上げしてくれるわ。この辺には無いけど」


つまり、追加素材は『初級 又は 中級、かつ、低品質なアイテムに限り効果を高める』素材で、増強素材は『あらゆるアイテムの効果を高める』素材、という訳だ。

まぁ、『あらゆる』とは言ったものの、『回復アイテムの』とかの制限はあるが。


「後は錬金素材店だっけ? それは私たちがやってるから、欲しいときは声を掛けてね。メニューはこちら」


「なるほど…………あんまりないですね」


「田舎だからね」


さて、長々と話し込んでしまったので、そろそろ行こう。

今日は錬金素材を集めるだけのつもりが、井戸の修理も加わっちゃったから、ちょっと忙しいかもしれない。


「それじゃ、そろそろ行きますね。ありがとうございました」


「ありがとうございました」


「どういたしまして。井戸とかポーションとかよろしくね~♪」


セイディさんに手を振って、まずは井戸に向かうことにした。




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