第128話 ゴーレム娘、辿り着く
100 ~ 140話を連投中。
10/12(土) 13:00 ~ 未定。
前回実績:1話/30分で計算すると1日を超えます。
一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。
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申し訳ありません。
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次男の馬に揺られて補給拠点Bへと辿り着いた。
ここに来る途中で、ズタボロになった軍馬の死体を四頭分発見したので、[アイテムボックス]に仕舞っておいた。
そこには人の死体はなかったので、一先ず安心だ。
…………まぁ、残して移動する可能性は少ないと思うし、重傷を負っている可能性もあるのだが。
どうもルーカスたち、というか前線拠点の兵士たちは、森に入ってやり過ごさずに真っ向から相対したらしい。
軍馬の得意とする戦場は草原のような、なだらかで広い場所だ。森は得意ではない。
森に入れば軍馬が追い掛けてくることも無かったと思うのだが、次男にそのことを言うと『もし軍馬に北に行かれると運搬役の冒険者が襲われるから、少なくとも兵士たちは合流しようとするはずだ』とのこと。
一応、信号弾は上げたのだから運搬役の冒険者たちもすぐに引き返すと思うが、襲撃の時間的に結構近くまで来ていた可能性もある。
基本的に運搬役は、命の危険が無い限り荷馬車を捨てる選択はしないので、兵士たちが森でやり過ごすと、背後から例のラッセルを喰らうことになる。
兵士たちの本質は市民を護ることで、それは冒険者も該当する。
今回、徴兵みたいな形になってはいるが、それでも本当にどうしようもない状況でもない限りは、冒険者を見捨てるようなことはしない、ということなのだろう。
…………と、そこまで確認したところで、そういえばルーカスたちと別れ際に『途中で運搬の冒険者と合流してね』とか言ってたことを思い出した。
気付いてんじゃん、私……
とはいえ、最悪の状況は回避されてるっぽいことが確認できたので、私たちは少し気を緩めることができた。
ただ…………気を緩めることが出来たのは、私、ナツナツ、ナビ、オズの四人で、次男を代表とする領軍の面々は補給拠点Bに近付くにつれて、深刻そうな表情になっていった。
次男なんか、先程『また手合わせしないか?』などと面倒なことを言い出したので、補給拠点Bに着くまでしつこくお願いされるかと思ったら、一番深刻そうな表情だったので、私が軽口を叩いて雰囲気を和らげるのに腐心してしまったくらいだ。
……………………やっぱり、私の方がおかしいのかな? 詳しいことは聞いてないが、兵士たちに結構な被害が出たようだから、多分死者も出たんだろうけど…………正直『他人事』感が強い。
これが前線拠点にいた兵士や冒険者なら、また違うんだろうけど……
補給拠点Bに近付くにつれて、徐々にその慌ただしい雰囲気が空気を伝わってこちらに届いてきた。
慌ただしく動き回る兵士たちの中に、撤退した本隊の兵士たちの姿があることから、すでにその多くが戻ってきていることが分かる。
次男たちが補給拠点Bに到着すると、誰かが報せたのか、ここの拠点長が出迎えてくれた。
「隊長!! 御無事だったんですね!!」
「あぁ。状況を聞いていいか」
「はい。とりあえず、水と食料です。指令部へ移動しながら説明します」
「分かった。セヴェン。騎兵隊と馬たちを休ませろ。終わったら来い」
「はい」
「ルーシアナ。お前たちも来てくれ。場合によっては、お前たちの戦力に頼るかもしれん」
「はいよー」
拠点長が訝しげにこちらを見るけど、私も『聞いてないよ!?』って言いたかった。
『この野郎』
『ちっ……』
『先にこちらの了承を得るのが礼儀でしょうが』
『どうどう……落ち着こう』
なんで私が三人の機嫌を取らねばならないのか…………
あと、馬の頭数で食料を持ってきたらしく、私たちの分の食料が無かったのも原因だろう。
まぁ、あんまり美味しそうじゃないので、自分たちのを取り出して食べることにする。
拠点長の後に続きながら、話を聞く。
「テモテカールへは、本隊の者から情報を聞き早馬を飛ばしました。信号弾でも増援を依頼してありますが、到着するのは早くて三日後になると思われます。
無事な冒険者は運搬役へ回し、次の軍備品は医薬品が主となります。同時に拠点Aの軍医も呼び寄せています。
それと負傷者ですが……」
拠点長は言いづらそうに一呼吸分だけ言葉を区切る。
「本隊の内、帰還者は80名。内、重傷者が38名、軽傷者が42名。
前線拠点の内、帰還者は20名。全員帰還です。内、重傷者が2名、軽傷者が8名。
戦線復帰可能者は、60名です」
「…………? 冒険者は?」
口出ししちゃいけないかと思ったが、思わず声に出していた。
『無事な冒険者は運搬役へ回した』と言っていたのだ。わざわざ。
嫌な予感に不自然に視線が振れた。
拠点長を見て、次男を見て、周りを見て、また拠点長に戻る。
その視線を受けて、拠点長は先程よりも言いづらそうに答えた。
「……………………重傷者の内、回復が見込めない者は19名です。その内1名は、Cランク冒険者のルーカス・アドワイア。他5名の冒険者は軽傷ですが、元々のパーティメンバーである3名は戦力としては数えられないでしょう」
「ルーシア!!」
気付けば次男の声を背後に置いて駆け出していた。
駆ける。駆ける。駆ける。駆ける。
多くの兵士でごった返す、しかし先日よりも遥かに密度の薄い拠点内を駆け抜ける。
…………しばらく進んでどこに行けばいいか分からないことに気が付いた。
『ナビ!!』
『こっちだ。中央テント。そこが重傷者の集中治療所となっているようだ』
『ありがとう!!』
無意識に真っ直ぐ進んでいたので、無駄にならずに済んだ。
正面や横から不意に現れる兵士たちの間を、縫うように進む姿は忍者のようだと思って、『忍者って何だっけ?』と思い至る。どうでもいい。
身に染みた体捌きは、《姿勢制御》が無くとも最適な動作を実行し、最短距離で目的地に向かう。
空は抜けるような蒼さで、なのに風は粘っこくて気持ち悪い。そのせいで、蒼い空も見ていて目障りな印象がするから不思議だ。
……………………あれ? なんでこんなに急いでるんだっけ?
思考がフラフラと落ち着きなく揺れるからか、一瞬色々と全てが分からなくなった。
それもこれも空が蒼いせいだ。違う。関係ない。
気付けばもう中央テントの入口前に立っていた。
入口の垂れ幕を最小限の動きで開けると、隙間から滑り込むように侵入する。
誰も私が入って来たことには気付かない。どっちでもいい。
中央テントの中は、むせ返るような血臭と聞くに耐えない呻き声、飛び交う怒号、鼻につく薬品の匂い。
それらが体に纏わり付いて、水中を行くようにうまく歩けない。
いや、もしかしたら、本当に水中なのかもしれない。
だんだん、だんだんと、息が苦しくなっていく。
そんな中でもナビの案内は優秀だった。
それぞれ好き勝手に行動する兵士の動きすら予想して、最短ルートを示してくれる。
……………………ちょっと、それが恨めしかった。
そして、見た。
白い布を敷いただけの寝床に横たわる、至って普通の体格の、冒険者の男性。ルーカス。
その周囲では、リリアナさんが右手を握って俯いていて、反対側でフェリスさんが両手を組んで祈っていて、その隣でキリウスさんが腹部に手を当てて汗だくになりながら治癒魔法を施していた。
……………………ダメだ。あれは、いけない。
キリウスさんが両手を当てている、腹部。
両手を並べているのに、覆いきれていない抉り取られた傷口。明らかに薄すぎるお腹。
そして……………………肘から先の無い、左腕。
誰かが叫んでいた。耳元で叫んでいた。体の芯に響く大声で。
叫んでどうするのか。叫んでも傷は治らない。魔法を、治癒……いや、再生魔法で…………も、治、る、のか?
分かる。分かってしまう。治らない。いつか学んだ、かつての知識が断定する。
これはもっとしっかりとした施設と設備で、一時的に魔道具で延命して、その間に遺伝子やらを調べて、万全の準備を整えた上で、再生魔法を施さなければ、無理だ。
あぁ、そうだ。無理。どうしようもない。何も出来ない。出来ないからこそ……………………私は叫んでいるんでしょう?
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
初めて自分の声が耳障りだと思った。
7章予告で伏字になってた部分。
でも○○○のに当たって、ちょっと繋がりが薄いかなぁ~と思いまして。それで事前に相談に乗ってもらって親しくなる話を追加して、そのネタとしてオズが酔っ払って暴走して、ついでにルーカスたちもカップルにして相談する下地を作って…………
↓
でも『苦戦=瀕死のルーカスを助ける』のに当たって、ちょっと繋がりが薄いかなぁ~と思いまして。それで事前に相談に乗ってもらって親しくなる話を追加して、そのネタとしてオズが酔っ払って暴走して、ついでにルーカスたちもカップルにして相談する下地を作って…………
以上。注釈終了。




