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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
7章 襲撃!! 嘆きの魔獣
135/264

第127話 ゴーレム娘、撤退する (ディアス視点)

100 ~ 140話を連投中。


10/12(土) 13:00 ~ 未定。

前回実績:1話/30分で計算すると1日を超えます。

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「おお!! 無事だったか!! ルーシアナ!!」


「アンタのせいでピンチになったわーーーー!!!!」


思わずホッとして声を掛けたら怒られた。解せぬ。

妹の方にもなにやら睨まれているような気がする。


ルーシアナはともかく、あの妹と妖精はマジで怖いんだよな……


まぁ、それはともかく……


「おい!! 止まれないぞ!! 飛び乗れるか!?」


「もーーーー!!!! ホント何しに来たのーーーー!!!!!!!!」


場違いに不貞腐れたような声を立てながらも、続く動きは素早かった。

くるっと向きを変えて、オズリアの腰に腕を回すと、


「次男!! 受け止めて!!」


「来いや!!」


「え うそ ちょ ま」


オズリアのやたらと慌ててる姿は新鮮だった。


ルーシアナは速度をつけるためにその場で二回転すると、躊躇することなく妹をぶん投げる。

とはいえ乱暴なものではなく、俺の進行方向に合わせてふんわりとした軌道で放り投げたもので、必要十分な気遣いが感じられた。


……………………これを怪我させたらマジやべぇ。


俺は両手を手綱から離して、繊細な硝子細工のように細心の注意を払って受け止めた。

少し掴む場所に苦労して、子供を乗せるように俺と馬の間に乗せる。


「ルーシアナは……」


「よっ……と。あ、二人分増えても大丈夫?」


どうやったかは見ていなかったが、軽い動きで背後に飛び乗ったようだ。


「お前ら位なら大丈夫だろ。…………多分」


「【重量軽減】を強めに入れておこう。オズ、大丈夫だった?」


「ダメです。思いっきり胸を掴まれました。こいつ囮にして逃げましょう」


「…………………………………………」


「待て待て待て待てルーシアナその殺気やめろマジやめろ不可抗力だわざとじゃない感触とか分からなかったしとりあえずごめんなさい!!!!」


「……………………オズ?」


「ふぅ。まぁ、最終的に謝ったからよしとします。それより、情報交換しましょう。あと、ルーシアナじゃなくてルーシアです」


背後からの刺すような殺気が軽減する。…………消えるでなく軽減な。


俺、一応 領主の息子で領軍の副長なんだがなぁ……


周りの部下たちには聞こえていなかったようなので、そこは一安心だが。

一先ずルーシアナたちの話を聞くことにする。


…………

……………………

………………………………

…………………………………………


開いた口が塞がらなくなった。

え、なに、こいつら、たった二人で軍馬16頭討伐したの? こっちは、150人で30頭だぞ。

確かに頭数に応じて難易度が高くなるから単純比較出来ないが、普通は魔獣より大人数で当たるもんだ。


…………この前手合わせした時、こんなに強かったっけ?


それとも、オズリアや妖精の力か。

まぁ、それはともかく。


「感謝する。正直、全滅も覚悟していた」


「どういたしまして。でも、四頭追ってったから、どうなるか…………正直、あのラッセル戦法やられたら、難易度跳ね上がるでしょ?」


「そうだな。正直、残存戦力だけじゃ厳しい。集団戦法が取れないし、拠点防衛用の装備をしているはずだからな」


基本的に軍の戦法は、複数人からなる小隊を組んでの集団戦法になるが、聞いたラッセル戦法には格好の的となってしまうだろう。

かといって分散戦法では、兵士たちの実力は発揮しにくい。


「急ぐしかないかな」


「そうだな」


「その前にこの半死体を、どうにかしないといけませんけど」


オズリアが周囲を包囲しているアンデッド・ホースを横目に見ながら、面倒臭そうに言う。


「このまま合流したら怒られますよ。『余計なもん持ってくんな!!』って」


「そうね。さっきの私たちみたいにね」


「ぐ…………仕方無いだろ。馬を捨てるのは最終手段だ」


ここぞとばかりにタメ息をつかれる。


「しかも、結果として一頭しか倒せず敗走ですか」


「最初から次男が先頭に立てば、もうちょっと善戦出来たんじゃない?」


「無茶言うな。いくら強くても、集団に突っ込んでいったら手も足も出ないだろ。戦法としては、順当だったさ」


「そうですかねぇ…………『演習も兼ねてる』って言ってたし、練度の低い兵士が多かったんじゃないですか? それで死んでたら元も子も」


「オズ」


「…………………………………………」


思わず言葉に詰まった。


「…………ごめんなさい。言い過ぎました」


「私もごめん。実際を見てないから、実感が無いのかも……」


「…………いや、いいさ。実際、俺の責任だ。確かに練度の低い者たちが多かったし、俺もどこかで本気じゃなかったようだしな……」


あの光景は戒めとして心に刻まなければならないものだ。

知らず手綱を強く握り締めていた手を、オズリアが撫でる感触で気付く。


まだ後悔する時間じゃない。さしあたってはこの半死体共をどうにかしないとな。


「そろそろ目標の場所だよね」


「ああ」


「なら、私たちがやりますよ。あなたたちは全力で走り抜けてください」


「さっきのお詫びにね」


「何か策があるのか!?」


驚いて二人の顔を見る。まさか……


「…………自分たちが足止めするなんて言わないよな?」


「…………言わないよ。失言の代償にしては大き過ぎるでしょ……」


「私たちも馬から降りる気はありませんから。しっかり運んでください」


「本当だな?」


「「当たり前です」」


「どんな方法だ」


「えっとですね……」


オズリアが体を捻って簡単に説明してくれる。


…………………………………………


「……………………マジで? そんなん出来んの?」


「ちょっと時間が掛かりますけど」


「私たちの方に来た軍馬にも似たようなことしたし」


ホントかよ…………う~~ん……………………よし。


「信じるからな?…………よし、お前ら伝わったか!? 真っ直ぐに走り抜けるから、止まるんじゃないぞ!!」


「サー!!」×15


《マインド・オブ・オール》で必要な情報のみ部下たちと共有させる。迷いなく返答が返ってくる。

それに驚くのは、ルーシアナ姉妹だ。


「えぇ!? 外に声漏れないようにしてたのに!?」


「反論無用とか、そういう恐怖政治です? その内 不満が溜まっていって、反乱されますよ?」


「人聞き悪いこと言うな。スキルだ、スキル」


失礼なことを言う姉妹にスキルとだけ説明すると、『あぁ~』と納得される。

もっと詳しく聞かれるかと思ったが、もしかしたら誰かに説明されていたのかもしれないな。


それはともかく、そろそろ目的の場所が見えてくる。

街道を挟んで、左右に岩山が張り出していた。

自分で『ここで仕掛ける』とか言ったわけだが、いやこれ思った以上に広いわ……

セヴェンが反論したのも頷ける。


ルーシアナが背後で逆向きに座り直すのを感じる。

落下されては堪らないので、オズリアにロープか何かで、俺とルーシアナを結ぶよう指示した。

と思ったら、不意に現れた妖精がくるくるくるっと三周程して、器用に縛り上げる。


「お前もいたんだな」


「いつでもいるよ。こっそりいるよ。…………二人に変なことしたら容赦しない」


「しませんよ、マジで。その殺気自重して」


オズリアを抱えてるのもあって、その頭に乗って嗤う妖精の笑顔が近くて怖すぎる。


「ほらほら、そろそろ始めるよ。次男、いい?」


「あぁ。まずどっちに行けばいい?」


「じゃ、右で」


「あいよ」


「そっち左だけど、まぁいいや」


…………そういや、逆向いてるんだから、左右も逆になるよな。


今更ながらそんなことに気付くが、『まぁいいや』と言っているので、少し先行させてそのまま右に行く。

それに気が付いたアンデッド・ホースが、牙を剥いて後ろから近付いてきた。


「速いね」


「さっきも言ったが、Bランク相当のステータスになっているからな。適当なところに当てても弾かれるぞ」


「分かってるよ」


軽い口調で頷くと、ルーシアナは虚空から木で出来たような茶色い弓を取り出した。


「なんだ、それ。ロングボウか?」


「いや、グリズリボウ」


言われてみれば、弓の両端に熊の爪のような装飾がある。

逆に言うと、その程度しか特徴がない。


「あれ? グリズリボウって、もっと熊っぽくなかったか?」


「熊っぽいって何さ……」


言葉では説明しづらい。少なくとも毛皮が一部に付いてたと思うが。


それ以上の無駄話は止め、ルーシアナは弓を引き絞る。

牙を剥いて威嚇するアンデッド・ホースを目の前にして、怯えている気配は全く無い。大した度胸だ。


……………………ぼそっと『《三爪》』と聞こえた気がした。


途端に聞こえてくるのは、水を裂いたような鈍った音と巨体が地面を叩く湿った音。

振り向いて惨状を確認したいが、余所見して馬を走らせる訳にはいかない。

なので、《マインド・オブ・オール》を使って、セヴェンに聞く。


『セヴェン!! なんかすごい音したが、何したんだこいつ!!』


『ちょ…………いや、隊長!! なんですかこの少女!! あんな威力の弓スキル見たこと無いんですが!?』


『……………………冒険者ギルド長の娘だ。察しろ』


『あっ…………(察し)。えーと、ですね。背後から口をガチガチさせながら、アンデッド・ホースが迫りました』


『あぁ』


『彼女は弓の先を無造作に動かして、矢を放ちました。

それはどちらかというと、誤射のような不用意さで、正直私はこちらに飛んでくるんじゃないかと、一瞬ヒヤッとしました。

しかし実際には、まるでアンデッド・ホースが招き入れたかのように、開いた口の中に吸い込まれていきましたね。

恐らく、走行で揺れる首と呼吸の動きに合わせて矢を放ったのではないかと思いますが、そもそも最初の狙いの付け方が無造作過ぎて、アンデッド・ホースが警戒心を抱けなかったのではないかと』


『…………理屈は分かるが』


狙ってやれるか?


『その後、口腔内で発動した《三爪》スキルにより、頭から胸、前肢が、三つの岩爪により引き裂かれ、転倒して今遥か後方です。腕くらいの太さと長さがありました。

《三爪》の威力って込めた魔力に依りますけど、あんなに威力上がりましたっけ?』


『…………それはお前の方が詳しいだろ』


セヴェンは弓士隊からのし上がってきたヤツだ。

《三爪》は地属性弓の中でポピュラーなスキルだから、知らないはずはないだろう。


『…………いえ、すみません。反語です。普通、あんなに威力は上がりません』


『だよな』


俺の知ってる限り《三爪》は、『人の指よりちょっと太い程度の岩爪を矢の刺さった場所に三本出現させ、そのまま掻き切る』という程度の効果のはずだ。

決してアンデッド・ホースを三枚下ろしにする威力はない。


『…………続けます。

彼女は立て続けに近場のアンデッド・ホースの口の中に《三爪》を撃ち込み、丁度 今 五体目を開きに変えました。

残りは五体ですが、危険を感じたのか、距離を取っています。彼女はそれに向けて……いえ、正面の地面に撃ち込みました!! すごいです!! 三本の岩爪が進行を防ぐように立ち上がりました!! 胸からざっくり串刺しです!! あれはなかなか追走に戻れないのではないでしょうか!?』


…………お前、ノリがいいよな。


『彼女は手早く残りの四体を同じように串刺しにして、こちらに矢を……あ、死んだ……………………あ、いえ、私ではなく、私たちの後ろから威圧しているアンデッド・ホースを狙ったようです。助かった……

よくは見えないですが、音から察するに開きでしょうね』


…………………………………………


「ねぇ、次男。終わったから逆行ってくれる?」


「…………了解」


位置を変更中に、聞いてみる。


「…………なぁ、ルーシアナ」


「ん? なに?」


「……………………お前、この前の手合わせの時、手加減してたか?」


「してたけど、それは次男もでしょ?」


「いや、なんつーか……………………いいや、ストレートに聞こう。お前、あの時と比べて強過ぎないか?」


「……………………いや、さすがにこの攻撃を人に撃ち込めないでしょう。あの時まだ覚えてなかったけど」


「そりゃそうだが…………うーん…………」


なんか納得いかない。もっと根本的なところで手加減されてた気がするのだが。


「あ、あと、今はナビゲーターの補助が入ってるからね。大分違うよ? この補助があるのとないの」


「そういうもん、か?……………………今度、ナビゲーターありで手合わせしてくんね?」


「…………………………………………あ、この辺でいいよ」


「くそぅ!! そんなに嫌か!!」


……………………………………………………………………………………そんなこんなで、ルーシアナはアンデッド・ホースを秒殺した。

まだ、魔力は切れていないからしばらくすると再生して追走してきたが、十分に距離は稼げた。


これだけでも驚いたのだが、オズリアは岩山の間を抜ける際に岩で出来た門を出現させ、街道を完全に封鎖してしまったのだ。

確かにこうすると聞いていたのだが、実物を目の当たりにすると目を疑う。

そもそもあんな遠くの地面にまで、どうやって術式を伸ばしたんだ? 妖精共々、気持ち悪そうにしている辺り、妖精あっての魔法だと思うが…………


とりあえず、門は解決したら破壊することにして、馬たちにはもう少し頑張ってもらう。




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