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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
7章 襲撃!! 嘆きの魔獣
131/264

第123話 ゴーレム娘V.S軍馬③

100 ~ 140話を連投中。


10/12(土) 13:00 ~ 未定。

前回実績:1話/30分で計算すると1日を超えます。

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

『危ない危ない……』


『分かってて突っ込むな。肝が冷える……』


『ごめんね。でも、ナビだって『あぁ』って言ったじゃん』


『それはそれ。これはこれ』


『ずるい!?』


左手に持ったスティールソードを[アイテムボックス]に仕舞いながら、ナビに謝る。


※魔法を主体とする敵と闘うときの注意点 その3

魔法発動中こそが隙。攻撃を忘れるべからず。


魔法とは、自分の体とは別の全く関係のないものを操る技術だ。同時に動くならば、自分の身体を操るのにも意識を割かなくてはならなくなる。

そうなった場合、単純な動作ならともかく、細かい動作や咄嗟の行動は取りにくくなる。


まぁ、魔法の操作を単純なものにしたり、防御は仲間に任せたりするなど、やりようはあるのだが、先程までの軍馬たちは私を捕らえることに全員が集中していたようなので、檻から脱出出来てしまえば隙だらけだった。


『捕らえるための魔法ではなく、直接攻撃だったらどうするつもりだ』


『その時は防御したよ。スティールブレイドでも鈍装甲とかあるし』


ちなみに忘れているかもしれませんが鈍装甲とは、ガア・ティークルの人型防衛用デバイスのボディ外装のことです。

盾代わりにいくつか保管されています。


今回は直接攻撃ではなく、檻で捕獲しようとされたので、《斬鉄剣》で一部を破壊して脱出した。

相変わらずとんでもないスキルだ……


『残りの軍馬が周回し始めたぞ』


『ナビ。ジャミング』


『承知』


私を中心に、特に大地に向かって術式破壊用術式が照射される。

これは、敢えて他の術式との親和性を高くした術式で、他者の術式と融合することで本来の効果を発揮させなくするものだ。

術式は繊細なものなので、99%以上の確率で無効化できる。残りの1%は効果が軽減される場合で、さらにとてつもない低確率で予期せぬ効果が発動することがある。


『近寄ってこないね……』


『奴等 魔法主体のようだからな』


『やっぱりやりづらい……さっきの移動方法は……』


『もうちょっと魔力を回復させたいところだ』


ナビと作戦を打ち合わせしながら、体を一歩 横にズラす。

右隣を岩礫がすり抜けていった。軍馬の攻撃だ。

周回する軍馬から散発的に攻撃が飛んでくるのを、最小限の動きで躱し、時間を稼ぐ。


右後方、正面左寄り、左後方放物軌道、右から足元狙い、左前方から中心狙い、同時に左後方から3WAY、岩礫同士を当てて軌道を変える などなど…………


さすがに五対一では、休む間もなく攻撃が飛んでくる。

体捌きメインで回避しているが、それはつまり《姿勢制御》などの常時発動スキルが働いているということで、魔力回復速度は明らかに低下している。

それに……


『軍馬たちも魔力を溜めて、大技を出すつもりよね?』


『だろうな』


先程から攻撃に『私をこの場に足止めする』という意図が透けて見える。

…………あまりよろしくはない。が。


『ナビ』


『十歩分くらいだな』


『少ないけど、やるしかないか……』


通常の《クリア・プレイト》ならある程度攻撃を受け止めたところで壊れるようにしているし、そもそも何度も攻撃は受けないから、トータル的な魔力消費はそんなに多くなる訳でもない。

しかし足場にするとなると、踏み込みんだ分の力を全て受け止めて、足が離れるまでしっかりと残るように強度限界を高くしなきゃならないし、何枚も必要になってくる。

そうなれば当然に1枚当たりの必要魔力も多くなり、トータル魔力消費量も甚大なものとなる。


足場の悪い場所での移動方法は、要検討だね。空でも飛べればいいんだけど。


そんなことを考えていると、軍馬たちの動きに変化が現れる。

周回軌道をやめて、直接接近してきたのだ。

グリズリブレイドを構えて、軍馬の出方を窺う。


二頭が近付いてきたものの、武器の間合いから十分に距離を取った位置をすれ違うように通り抜けるつもりのようだ。

残り8m、7m、6m、5m、4…………


『ルーシアナ!!』


『分かってる!!』


軍馬は私から照射された術式破壊用(ジャミング)術式を自分の体で防ぎ、その影で展開させた魔法を放つ。

軍馬の横をすり抜けるように、土塊で出来た大蛇のような岩柱が飛び出し、前後から私を挟み潰すように迫ってきた。

岩柱の太さは直径2m程。

ギリギリで避けても、互いの岩柱がぶつかった衝撃で弾け跳ぶ岩塊に襲われるであろうことは容易に想像がつく。


咄嗟に取った行動は、壁に立つような右後方への跳躍。

さらに《ショート・ジャンプ》で距離を短縮し、背後から迫る岩柱に両足で着地する。

相対速度で体に掛かる衝撃を膝を曲げて吸収し、しかし、岩柱が伸びる加速Gに押されて息が詰まる。

強引に飲み込んで右前方、というか右上方へ跳躍する。

理論的には岩柱の伸長速度+跳躍速度を得られたが、岩柱との相対的には跳躍速度分しか離れることができない。

このままだと弾け跳ぶ岩塊をモロに喰らうことになるので、再度 《ショート・ジャンプ》で距離を短縮した。


ゴガ!!!! シャ……!!!!!!!!


岩柱同士がぶつかる音と、衝撃で岩柱が砕ける音が同時に響いた。

その衝撃で岩柱は無数の細く尖った石片となり、それが石礫(いしつぶて)となって飛んでくる。

それが届くよりも早く、距離を取りつつあった軍馬に背中から衝突すると、軍馬の体に沿って前転し、体の影に隠れ石礫の盾とした。

ついでに前転の勢いを使ってグリズリブレイドを軍馬の横腹から心臓を抜けて鎖骨に引っ掛かるように差し込んで、落ちないように固定する。


軍馬は『ビビクンッ!!』という擬音に相応しい痙攣を発すると、石礫を全て喰らってくれた上で前肢を折り畳んで、横倒しに地面に倒れた。


『重……』


私の上に。

だが、これで残りは四頭。内、岩柱を放った一頭ともう一頭は真逆の方向へおり、後二頭は


『ルーシアナ!!』


『くっそ……!!』


私を挟んで前後にいる。

二頭が岩柱を放った時、残りの三頭はそのまま周回を続けていた。

私が岩柱を躱して体勢を崩した所に追撃するために、離れたところから状況を俯瞰していたのだ。

それが分かっていたから、離れ行く軌道を取っていたこの軍馬に取りついて、防御を兼ねて仕留めたのだが、最後の力で追撃の二頭の間に入るように移動し、さらに私にのし掛かるように倒れた。


……………………絶好のチャンスだろう。軍馬にとって。


地面に倒れているためよく見えないが、両軍馬の正面の地面が爆発するように吹き上がると、上空まで舞い上がり、そこから岩塊が雨霰(あめあられ)となって降ってくる。

さらには、然程吹き上がらずに地面を転がるように飛んでくるが岩塊もある。

【ソイル・ボム】系の地魔法だ。

『バカの一つ覚え』と文句のひとつも言いたくなるが、数が多い。単純な分、数を増やしやすいのだ。


のし掛かっている軍馬を[アイテムボックス]に仕舞うと、急いで立ち上がり、


『《感覚調整》』


知覚速度を最大にした。

視界と《ロング・サーチ》、《マッピング》で作られた立体図に捉えられた岩塊が、水中を行くように緩やかな動きに変わる。

同時に耳に届く音は重低の雑音となって意味を成さなくなった。


久し振りの10倍加圧世界だ。


雑音の中を全力でゆっくりと行く。

正面から地面を転がってくるものは、跨ぐように乗り越え、胸元へ飛んできたものは半身で躱す。

背後から頭に跳ねてものは首を傾げて躱し、足元に転がってきたものは軽く足裏を当てて、加速の一助とする。

身を小さくして隙間を抜ければ、ギリギリのところを頭サイズの岩塊が跳ねていった。

さらに本体とも言える無数の岩塊が届き、互いにぶつかり合って複雑な軌道で弾け合う。


それら全てを見切って、躱して行きたいところだが、現状の技量では不可能だ。

故に致命的な岩塊のみに意識を割いて進む。

軍馬たちもこの岩塊の動きを全て把握し、操作している訳ではないのだろう。

自然な物理法則に則った動きしか見せないのであれば、なんとかなる。

前も後ろも左右も、岩塊とそれが巻き起こす砂煙で何も見えなくなった。


……………………イケるな。


『ナビ』


『大丈夫か?』


『多分。フォローよろしく』


怒濤の岩塊の中、一瞬の空白地帯に飛び込んだ。

予想では、ここから数秒だけは岩塊を避ける必要のない、無風地帯ならぬ無岩地帯となっているはずだ。


砂煙で閉ざされた視界の中に、くすんだ青色の軍馬の影が浮かび上がる。

ナビが《ロング・サーチ》の情報から作り上げ、網膜に投影された軍馬の幻影だ。

たとえ砂煙で敵を捉えられなくとも、目視と同等に狙うことが出来る。


左手を前に出す動きで[アイテムボックス]からベースボウを取り出す。

同時につがえた状態で取り出していた矢を右手で摘まんで一気に引く。

前へと流れる体を一瞬だけ踏ん張って固定し、砂煙の向こう側へ一矢放った。

二重《烈破》だ。


結果を確認する間もなく、ベースボウを[アイテムボックス]へ仕舞い、頭上から足元から前後から、私を肉塊とすべく飛んできた岩塊を紙一重に躱す回避運動に戻った。

再び怒濤の岩塊に呑み込まれる。


その辺りがピークだったのか、徐々に岩塊の密度も薄くなり、随分と余裕を持って回避できた。知覚速度は最大のままだが。

最後に砂煙に身を隠すように大地に飛び込んだところで、ナビから射撃結果が届く。


『軍馬に命中。即死だ』


余裕がないから脳天狙いだったからなぁ…………惨状を確認するのが怖い。まぁ、もう一回するんだけど。


砂煙の底で視界が晴れる前に180°向きを変え、背後から岩塊を飛ばしてきた軍馬をベースボウで狙い撃つ。


『ナビ』


『《ミラージュ》』


二重《烈破》を施した矢を《ミラージュ》で不可視化して放つ。


実はさっきの軍馬にも同じように不可視化して放っていたのだ。

目的は狙っている軍馬に気付かれないようにするため…………ではなく、恐らく離れたところから見ているであろう二頭の軍馬にこちらの攻撃手段を悟らせないためだ。

今のところ軍馬たちには、重大剣と片手剣しか見せていない。つまり近接攻撃しか攻撃手段がないと思われているはずだ。

そこに遠距離から二頭が殺られた。しかも、攻撃方法が見えない。


そうなると残った軍馬たちは、この遠距離攻撃が私に依るものなのか、それとも隠れた増援に依るものなのか判断が付かず、私に集中しづらくなる。

まぁ、大して有利にならないかもしれないが、少しでも有利な状況に自分を置くのは戦闘の基本だ。


矢が砂煙の中に消えていくのを横目にベースボウを仕舞い、《感覚調整》を切る。

途端に岩塊の転がる『ガラガラ』という音と『ボバァ!!』という湿った音が耳に届いた。


『命中。即死だ』


『《感覚調整》切るのもうちょっと遅らせれば良かった……』


音だけで惨状が予想できるとか、精神ダメージがヒドイ。


『《リバース・エコー》を掛けておくべきだったか……』


『いや、冗談だよ、うん……』


『いや、体力も減っているんだ。余計なダメージは喰らうべきではない。ガア・ティークルで鈍人形たちを斬った時と違って、間に休憩を挟めないんだぞ』


『あぁ……うん。そだね』


一先ず砂煙が晴れるまで休憩させてもらおう。

腹這いで大地に身を沈めて《ミラージュ》を掛ければ、容易に見つかることもないはず。


『ナビ。オズはどう?』


『倒せたのは二頭だけだ。残りはルーカスたちを追撃してしまった。今は姿を隠して潜んでいて、場所はここだ』


『……………………なるほど』


思ったよりも近くにいた。


…………それなら、ここに誘い込んで……ああして…………よし、イケるかな。


ざっくりとした作戦を立てて、オズに伝えてもらう。


『これで二頭仕留めたいね』


『そろそろ逃走に入るかもしれん。そこは考慮しておけ』


『了解』


通常の魔獣ならともかく、軍馬は逃がすと情報を共有される危険がある。

本隊と私が闘うかは不明だが、もし闘う場合、こちらの手の内を予め知られてしまうのは避けたい。


軍馬が動き始めた。

もうちょっと休ませてくれても良かったのに……


『ふぅ…………気合いを入れよう』


『あと少しだ。頑張れ』


最後の戦闘に入る。



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