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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
7章 襲撃!! 嘆きの魔獣
128/264

第120話 ゴーレム娘、フラグを回収される

100 ~ 140話を連投中。


10/12(土) 13:00 ~ 未定。

前回実績:1話/30分で計算すると1日を超えます。

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「それじゃ、この辺で終わります。ちゃんと整理整頓は習慣付けるように」


「へ、へぃ……」


ちょっと長くなってしまった。

途中でオズに、森の魔獣の件については報せに行ってもらったので、その辺は大丈夫だが。


「あ、終わりましたね」


「おかえり。どうだって?」


「半信半疑っぽかったですけど、ルーカスさんが支持してくれたので、とりあえず信用する方向で聞いてくれました。

ただ、下手に突付いて攻撃されても対処しきれるか分からないので、とりあえず静観の方向で。警戒班には伝えるそうです」


「了解。ありがとう」


ルーカスたちは、この前 森の中で鹿を察知したのを知ってるし、魔力次第で性能を上げられるのも話したので信用してくれたのだろう。

やっぱり見た目の印象って大事だね。


「何の話ですか? …………何の話だ?」


お説教されモードが抜け切っていなかったらしく、思わず敬語が出た仮料理長。別に言い直さなくても良いのに。


「仮料理長にも話しておきましょうかね。ここから西に森があるでしょう?」


「あるな」


「あそこに馬か鹿かヤギなどの四足獣系の魔獣が集まってきているので、注意しましょう。以上」


「は?」


「吹き散らす」


「早ぇぇって!!」


二度ネタ禁止。時間を置きましょう。


…………ブーメランになりそうな気がするけど。


それは置いておいて、テントの布越しに西の森を指して、もうちょっと詳しく説明する。


「私の索敵魔法に、西の森の外縁部に魔獣の反応があるの。遠すぎてよく分からないんだけど、馬っぽい四足獣。流れ的に『軍馬かなぁ』って思うけど、確証はないかな。それで一応、情報提供って感じ」


「森の外縁って…………何m離れてるんだよ……」


「200mくらい」


「マジかよ…………普通 索敵魔法って、よくて数十mだろ? 魔方陣で補助するレベルじゃん……お前、なにもんだよ……」


「ただの冒険者だよ」


「そうですよ。冒険者ギルドの義娘だったり、ひとりドラゴンキラーだったり、Eランク飛ばしてみたり、防具がドレスっぽかったり、ギルド飯店の看板娘だったり、人形遣いだったりするだけです」


「ただの冒険者 難易度たっけぇ」


「……………………」


オズさん…………なんで、ちょっと自慢気なのです?


腕を腰に当てて少し胸を逸らし、笑みを浮かべる姿は、分りやすくドヤッている。

でも今言ったいくつかは、オズも該当しますよね。


そんなオズが、さらに余計なことを言わないように抱き寄せて、仮料理長に続ける。


「まぁそんなわけで、ちょっと警戒しててね。貴方が逃げるか闘うかは、知らないけど。ここの拠点長は、静観することにしたみたいだよ」


「まぁあの人は、事なかれ主義だからなぁ…………」


そこは慎重派と言ってあげましょうよ……


まぁ、伝えることは伝えたので、オズを連れて外へ向かう。


「ちょっ……手伝ってくれてもいいんだぜ?」


「その頼み方で手伝ってもらえると思うなよ?」


「お手伝いいただけないでしょうか!? お願いします!!」


「……………………はぁ、仕方ない。半分だけだよ?」


「あざっす!!」


態度を改めたので、仕方無く手伝うことにした。まぁ、大した手間ではないし。


「それで、何をどこへ?」


「えっとだな……まずはここにジャガイモ」


「ここですね」


「ん? そうだが、何故妹がここに?」


「出口だから」


「????」


オズを仮料理長の指し示す場所に移動してもらい、私は山積みとなった木箱の方へ向かう。

その中からバラバラに置かれた数箱のジャガイモ木箱を見つけると、その真下に[アイテムボックス]への扉を展開し収納する。

完全に沈んだら、次はオズの番だ。

オズは指示された場所の床面に[アイテムボックス]からの扉を展開する。

その扉をゆっくりと上げていけば、ジャガイモ木箱は下から出現していく。

出現したジャガイモ木箱は、縦に二つ積み重なった状態で綺麗に表示面をこちらに向けて整列していた。


パーーーーフェクト!!


この方法なら、ものの数秒で木箱の移動が終わる。


持ち上げて運ぶだろうと考えていた仮料理長は、面白い表情をしていた。


「ど、どうやったんだ?」


「秘密」


通常の収納魔法は指定した空間の容積を拡張させる。

アイテム袋はその典型で、『袋の中』を指定して拡張している訳だ。

さらに高度になると、物理的な制約の無い空間を指定することが可能で、何もない空間に仕舞えるようになる。

見た目だけなら私たちの[アイテムボックス]と同じように見えるので、多分 他の冒険者などは、私たちがこの方法を使って仕舞っていると思っているはずだ。

ただしこの指定空間は、使用者を中心とした相対位置に固定されるのが普通なので、私が仕舞った木箱を離れた所にいるオズが取り出すのは驚きの対象になるのだ。

まぁ、それでも手品の部類に見えると思う。


私に答える気が無さそうだと判断した仮料理長が、オズにターゲットを変更すると、若干ドヤ顔のオズが答えた。


「種も仕掛けもありますよ」


「そこは無いというんじゃねぇの?」


「嘘は付けない性分なのです」


「……………………そのセリフが嘘ってオチか?」


「人体切断マジック (種無し) って知ってます?」


「すんませんっした……!!」



〈人体切断マジック (種無し) 概略〉

① 生命魔法で神経を鈍らせる。

② 良く斬れる剣で人体を切断する。

③ 血が吹き出る前に、水魔法で血流を制御し循環させる。

④ 切断できていることをアピール。

⑤ 切断箇所を本体に接続して、再生魔法で治す。

⑥ 繋がっていることをアピール。

※1 ①③は、結果さえ同じならば魔法の種類は問わない。

※2 ⑤は治癒魔法でなく、再生魔法を使用する。

※3 どれかひとつでも失敗すると、大惨事になるので注意。



オズが仮料理長と戯れているのを横目に、『人体切断マジック (種無し)』の概要を考えてみたが…………何も知らない観客がコレを見て喜んでいたら、とってもシュールですね…………手品コワイ。


ちなみに、治癒魔法と再生魔法の違いは、自然治癒で治るケガの回復速度を上げるのが治癒魔法、自然治癒で治らないケガを強引に治すのが再生魔法。

魔法を使わない方法で表現するなら、治癒魔法は投薬、再生魔法は手術、みたいな感じ。


当然、治癒魔法より再生魔法の方が難易度は高いが、切断してすぐの肉体を繋げる程度ならば、使用者はそう少なくない。

これが『治癒完結』『部分欠損』『全欠損』などしてしまったりすると、使用者はガクンと激減する。

単純に難しい上に、生物を無生物と同一視する 一種の屍霊魔法(ネクロマンシー)に近いため、順当に生命を尊び生命魔法を極めてきた人間には、その思想がなかなか相容れないためだ。


私? 余裕ですよ。

保存中の自分の義体はまさしく『無生物』だけど、それが繋がればこうして『生物』として活動していることを目の当たりにして生活しているのですからね。

ついでに、オズに教えてもらったかつての知識に、人体構造学みたいなものがあるから、まぁ、大抵のケガは治せると思う。明らかに目立ち過ぎるからやらないけど。


あ、ちなみに『治癒完結』っていうのは、例えば切断された腕を治癒魔法でくっつけて治してしまったり、欠損状態で治癒させてしまったりした場合のことね。

この場合『腕があっても動かない』『腕がない』状態で、自然回復が止まってしまうので、かなり面倒なことになる。それこそ、もう一度切り落として全欠損から再生した方がいいくらい。


まぁ、それはさておき。


「ほら。遊んでないで次の指示」


「イエッサー!!」


「サー違う」


一晩経ってるから多分OK。


…………

……………………

………………………………

…………………………………………


まぁ、移動させるだけなら10分もあれば終わるよね。


「いやー、マジで助かりました。ありがとうございます」


「結局全部やらされたな……半分だけって約束だったのに」


「この前隊長に貰ったドライフルーツ美味しかったですよねぇ……」


「……………………そのうち差し入れさせていただきます」


「3つで」


オズさん、鬼畜♡


契約外のお仕事報酬については、それで良しとして三人揃って外へ出た。

前線拠点は中央テントを中心に東西南北に大きめな通路が空けられているが、中央テントの入口が南を向いているので、北側は見えない。

が、西の森の方は見える。当然ながら。


……………………今のところそちらに魔獣の姿は捉えられない。


じっとそちらを見つめていると、


「気になるか?」


仮料理長が話し掛けてきた。


「まぁ、ね。そっちこそ、気にならないの?」


『襲撃があるかも……』と伝えてから一応 仮料理長の様子を見続けていたが、伝える前後で様子が変わったようには見られない。

いつも通りだ。…………と言っても、知り合ってからまだ二日くらいだが。


「なるけどな。まだ、事が起こっていないときからピリピリしてても、体力やら精神力やらを消費するだけで、損だぞ」


「別にそういうつもりじゃないけど……」


『そういう理屈は頭で分かってても、感情は言う通りにならないってのが、普通じゃないの?』と、言って良いものやらと思ってしまって、言葉を飲み込んだ。

確かに仮料理長の言う通りで、わざわざ不安になる必要は無いのだ。

とはいえ、何か言葉を飲み込んだことは察したらしい。話を続けた。


「う~ん…………正直、まだ情報が少なすぎるし、非常時においても平常心を保つように訓練を受けてるしな。

それに実は向こうから見えないように、西側に残存兵力を集めてるんだよな。20体くらいの防衛戦なら なんとかなるはず」


「そうなの? …………あれ? 拠点長に伝えたのって、貴方が来てからだし、誰か伝えにも来なかったよね? あと、魔獣の頭数って教えたっけ?」


それらの情報は、オズ経由で拠点長に伝えはした。

ただ、それは仮料理長が来てからだから、拠点長が兵力を西に集めたこととか魔獣の数とかを、中央テントに来る前に知ることできない。


「ん? あぁ。兵士には全員、短距離通信用の魔道具が配られるんだ。守護結界の範囲内のみだけどな。これで説教中に連絡が来た。お前の情報とは思わなかったが」


と言って、首元に取り付けられたシンプルなブローチのようなアクセサリーを突付く。シンプル過ぎて、ボタンか何かだと思ってた。


「これで拠点内の連中とは相互に連絡が取れるし、全員に連絡することもできる」


「そんなのあるんだ」


「ちなみに、隊長どのには『指揮下の者』を対象にした似た効果のスキルやステータス向上効果のスキルなんかがあるんだぜ? そのお陰で、あの規模の人数でも一心同体の作戦行動が取れる」


「なるほど」


次男が領軍の副長に就いている理由はそれか。確かに指揮官向きのスキルだ。


「一応、お前が異変を察知したらすぐ伝えるように言われてるから、すぐに言ってくれ。どうするかは拠点長次第だがな」


「了解。でも、そういうことは先に言って」


そんなことを話していると、近くのテントからルーカスたちが現れた。


「お? どうした、ルーシア。こんなところで。食材の確認は終わったのか?」


「あ、ルーカス。お疲れー」


「お疲れ様です」


仮料理長は軽く手を挙げて挨拶とした。

その後ろ姿からは残りの三人の他に、兼業冒険者の二人もいた。


「確認も片付けも終わったよ。ただ、ほら。ちょっと気になっちゃって」


「あぁ……魔獣が集まって来てるんだって?」


「大丈夫かしらねぇ……」


「いつでも闘える準備はしてある」


「ま、そのくらいしか、しておけることはないからな」


ルーカスたちは警戒をしているものの、必要な分以上の気負いは無いように見える。仮料理長と同じだ。

問題は兼業冒険者の方。


「ほ、ほほはほほんとに軍馬が集まっているのか!? に、逃げた方がいいんじゃ……」


「落ち着け。軍馬の可能性があるだけだ。あと、まだ何も起きてないのに逃げられるわけないだろ」


さっきは『逃げてきたら自分が討伐してやる』とか言ってたのに……


正直、この人に伝えるべきか悩んだのだが、逆の意味で伝えるべきじゃなかったかな。

いや、ひとりで特攻して足並みを乱す可能性を懸念していたんだけど、この反応はこの反応で勝手に消耗して倒れそう。

まだ冷静な方になんとかして欲しいところだが、良く見なくても顔色が悪い。


まぁ軍馬だとしたら、単体でCランク、集団でAランクの魔獣なのだから、普段は戦闘とは無関係で安全な街中で生活している兼業冒険者にとっては当然の反応なのかもしれない。Dランクだし。


それを見て不安になったのか、仮料理長がちょっと真面目っぽくなって言った。


「安心しろよ。もし軍馬だっとしても、20頭くらいならここに残ってる人数でも大丈夫だ。ただまぁ、ちゃんと指示には従えよ?」


「あ、あぁ……そうだな。大丈夫。大丈夫……」


「な? 大丈夫だって言ったろ。ほれ、深呼吸しとき」


「は、はぁ~~~~、ふぅ~~~~……」


なんとか大丈夫かな。


『ルーシアナ』


『ん?』


『何か動きがありそうだ。一列に並び始めたぞ』


『南北ってことですか?』


『あぁ』


ナビの報せに《リバース・エコー》を使い、兼業冒険者たちに声が聞こえないようにして、仮料理長に伝える。


「仮料理長。なんか、魔獣が南北に一列に並んでるっぽい。伝えた方がいいかも」


「なに……?」


訝しげな表情をしたものの、仮料理長は襟元の魔道具に手を当ててすぐに伝えてくれる。


「南北に並んでるだと……?」


「不味いかもしれないわね」


「キリウス?」


「ん? あぁ。普通の魔獣なら一列に並んだりはしない。側面からの攻撃に弱くなるからな。

つまり、そんな特殊な行動を取るということは、軍馬の可能性が高く、しかも攻撃の前兆と考えられるんだ」


「なる」


なるほど。そこまで読めるのか。


キリウスさんの説明に心の中で感心していると、《ロング・サーチ》で捉えている兵士たちの配置が変わっていく。迎撃に適した配置に着いたのだろう。


ただまぁ、ここから見えるのは、未だに青々とした草原とその先の森の木々だけ


「は?」


草原が立ち上がった。

何を言っているのかわけが分からないだろうが、私もよく分からない。


通路の先に見えていた風景は上から、① 空の青、② 葉の濃緑、③ 幹の焦げ茶、④ 草原の薄緑、だった。

その④が『みょん』とでも言いたげな気安さで、持ち上がったのだ。イメージとしては、草原色の何かが身を起こしたような……………………『草原色の何か』?


それで、気付いた。あれは……


『軍馬だ!! 草原の風景に擬態して伏せていたんだ!!』


ナビの警告が真実過ぎる。


確かに言われてみれば、幹の色を削る形は馬を正面から見た形状に良く似ている。

さらに、


ゾッッッッ…………わ!!!!!!!!


背筋を今まで経験したことのないような悪寒が滑り落ちると同時に、


「逃げてーーーーーーーー!!!!!!!!」


ナツナツの甲高い声がここにいる全員の耳を打った。


「北へ走れ!!!! 逃げろーーーー!!!!」


ほとんど、条件反射で声をあげると、流れる動きでオズを俵担ぎで肩に乗せる。

そして中央テントを回って北行きの通路を全力の疾走を開始した。




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