第118話 ゴーレム娘、誠意を持ってやり過ぎる
百合展開にご注意ください。
100 ~ 140話を連投中。
10/12(土) 13:00 ~ 未定。
前回実績:1話/30分で計算すると1日を超えます。
一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。
word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。
申し訳ありません。
ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。
「あぁ~~~~…………疲れました……」
「あれだけ暴れまくったのに、頭に巻いたタオルが崩れなかったのは不思議」
「不思議ですねぇ……」
だらけた口調からは、オズにも分からないのか、オズが何かしたのかは読み取れなかった。
今は石鹸やトーナメントを洗い流して、髪と体を乾燥させているところである。
あ、髪を纏める所までが第一段階、体を泡まみれにするまでが第二段階、石鹸とトーナメントを洗い流すまでが第三段階、乾燥させるまでが第四段階 (イマココ) です。
水魔法で全身の水と床や壁に付いた水を落とし、風魔法で湿気った空気を[トラッシュボックス]へ。
これで余分な水のほとんどは除去できる。
あとは、程よく乾いた冷風を頭上から浴びながら、手櫛で髪を持ち上げて根元までしっかり乾燥させるだけである。
二人同時に行うために、互いに向かい合って相手の髪に手を伸ばしている。
…………顔近い。
「ま、まぁ、あれね。タオルが要らないのは助かるよね」
「普通はそのために魔法は使わないですけどね。さすが、マイアナの血統です」
「オズも見た目だけならおじいちゃん血統だよ?」
金髪に濃緑眼。何者にも侵されないおじいちゃんクオリティ。
「…………………………………………」
「? どしたん?」
「いえ…………嬉しいな、と」
「…………………………………………」
時々、不意に覗かせる子供のように素直な本音と表情に私はメロメロですよ、オズのお母さん。
「…………オズ」
「はぃ」
そんなつもりはなかった。魔が差した。ホントは寝る直前に、言葉で伝えて軽くするつもりだった。
…………………………………………
気が付いたら、髪に差し入れた手で頭を軽く押さえて、正面からガッツリと口付けしてました。
ついでに言えば、それまで考えすらしていなかったのに、自然と舌まで差し入れていました。
「ん…………ふ……ちゅ……」
「ふぁ……ちぅ…………んん……」
触れ合う唇から漏れる声がなんとも艶かしい……いや、自分の声なんですけどね。
30秒程か。自分でも意外なほど冷静に時間をカウントできる。
最初の時なんて、走馬灯のように人生リピートしたくらいなのに。
静かに口を離す。オズの反応が怖くて顔を見られなかったので、そのまま抱き付く。
…………やり過ぎた。嫌がられてたらどうしよう…………
でも、ここで私まで黙っていては話が進まない。
というか、やり過ぎた以上ちゃんと伝えないと、オズもますます戸惑うばかりだろう。
「オズ?」
意を決して口を開くと、ビクッと震えるのが分かる。
「好きだよ、オズのことが。いつもお説教を優先させて、ちゃんと伝えてなくてごめんね。
…………ねぇ、オズ。やっぱりオズが人前でキスをして見せるのは、親子や姉妹みたいな終わることのない関係になりたいってことなのかな?
でも、そんな関係は後天的には得られないと分かってるから、せめて夫婦に似た関係だと思われたいとそういうことなのかな?
周りの人から『あの二人は特別で、他人の入り込む余地がない』って思って欲しいのかな?」
「……………………私も、考えていたんです」
ギュッと、顔を私の胸に押し付けて、小さな声で答える。
「切っ掛けは、やっぱりあの日なんです。ギルド飯店で、ムリヤリお姉ちゃんにキスをさせた、あの日……
あの後、お客さんに言われたって言いましたよね。『寝起きにもしてるのか』って言われたって」
「うん」
確かにそんなようなことを言われた。だから、次の日寝起きにさっそくされた訳だし。
「アレ、その話になる前にも少しあったんです……アルコールが回ってて良く覚えてないんですけど……
確か『ホントに仲が良いんだな。でも、血を分けた姉妹なら、あんな風に仲を証明する必要はないんだぞ』って」
「うん」
「でも、その時思ってしまったんです。『血を分けた姉妹でないなら、仲を証明し続けなければならないのかな?』って」
「…………なるほど」
「はい……それでちょっと固まってたら、そのお客さんに『寝起きにもしてんの? やっぱり』って言われて……」
「それで朝のアレに繋がるのね」
「もちろん、酔っ払ってまともな思考が出来なくなってる人たちですから、真に受ける必要はないと分かってはいたんですけど…………でも、不安は消えなくて。
……私たちの関係って何なんでしょうね?
友達と言うには、もう近すぎますよね。
周りには妹ということになっていますけど、それは周囲を誤魔化すための嘘で、血が繋がってる訳でも、義姉妹として契約した訳でもないです。
なら、恋人? でも、お姉ちゃんを独り占めしたい訳じゃないんです。お姉ちゃんが将来、誰かと結婚するとかって話になったら、まぁ、すんなり認める気は無いですけど、祝福できると思います。
他にも色々な関係を考えてみたんですけど……結局納得できるものは見付からなかった……」
悲しそうに呟くオズの背中を優しく叩き、オズが探していたであろう問いを口にする。
「そっか。オズは『終わらない関係』が欲しかった訳じゃなくて、『私たちの関係』を定義できる言葉が欲しかったんだね」
「えぇ。そうみたいです。
多分それは、私が統括管理AIだったことが影響してるのかと…………誰かに存在を定義されるからこそ、あの頃の私は自分を確立できたのですから」
「なるほどね……」
情報生命体として生物へと進化を遂げたとはいえ、過去からの影響がなくなる訳ではないということか。
「でも、もう情報生命体に進化して、オズは正しく一個の生命として独立できてるでしょ? もう外から自分を定義する必要なんてないんじゃない?」
「そうなんですけどね…………そう、なんですけど……」
「まぁ、必要でもないものを求めてしまうのも、生命の性というものだけどね」
さらに気落ちして小さくなるオズを優しく撫でつつも、私もどうすべきか解決方法に見当が付かないでいた。
というか、例え同じ言葉で定義される関係であったとしても、真実同一の関係なんていうものは存在しないのだ。
ある二人の友人関係と別の二人の友人関係は、共に友人関係であるが、その中身は当然に異なる。
しかも当事者たちの認識の違いだけでなく、それを観測する第三者によっても変わってくるから、定義なんて自分でするしかないのだ。
…………………………………………なんか今重要なこと言った。
「そうだね。適切な言葉が見付からないなら、自分で創って定義すればいいんだ」
「えっ…………と?」
私の言葉に戸惑った声を返したオズの肩を掴み、体を離して瞳を見つめる。
私は自信を持って告げる。
「私たちは、友達以上であり、姉妹以上であり、でも恋人未満であり、その他色々な関係の集合だよね。それを横断的に全てを満たす名称なんて、まだこの世には存在してないんだよ。…………なら、私たちで創ってしまっていいよね?」
「いいよねって言われても…………いいんですか?」
「いいでしょ。そもそも言葉なんて、常に変化して新しくなっていくものだし、消えてくものもあれば、生み出されるものもあるよ」
「それは……そうですけど…………ん」
渋るオズの口を再び塞いだ。もう手を繋ぐのと、大して変わらなくなってきてるな。
数秒で離して続きを進める。
「どうかな? 友達以上で、姉妹以上で、恋人未満だけど、恋人以上に仲良しな関係。お互いに信頼して助け合って、これからもっと仲良くなっていく、そんな関係。私たちで名付けてみない?」
「…………………………………………ん」
「んぅ」
オズは少し考えた様子を見せると、改めて抱き付き直して口付けてきた。
しかも先程の私へのお返しなのか、ガッツリと舌を差し入れてくる。
まぁ、私から始めてしまったことだ。ウェルカム。
少し長めに続け、首に腕を回したまま離れると、
「それで? 何か名前の候補があるんですか? グッとくるようなのを期待してますけど?」
「う…………」
いたずらっぽい表情で言うオズに私は口籠る。
何も思い付いてないからこそ『私たちで名付けてみない?』と、オズを巻き込んだつもりだったんだけど…………
「ほらほら。この世に新しい言葉を生み出す時ですよ。生半可な名前じゃ認められませんよ」
「お、追い込むね、オズ!! え~~と…………」
「(にやにやにや……)」
「えっとぉ~~~~~~~~…………し、真姉妹、とか?」
「『うわダサっ!!!!』」
それまで一切口を挟んでこなかったナツナツとナビが間髪入れずにツッコんだ。ただただ私が悪い。
「うーーーーわーーーー!!!! 今のなし今のなしーーーー!!!!」
「無いわー。今のは無いわー」
『どこが新しいんだ。『真』と『新』を掛けたわけでもあるまいに』
「ナビやめてーーーー!!!! それ傷口抉るヤツーーーー!!!!」
数秒前の私を張り倒したい。
二人の声を遮るように大声をあげてオズの胸元に飛び込む。
私と同じ薄い胸板に額を押し付けると、オズが『気にしないで』と言いたげに肩を叩いてくれる。
「まぁまぁ、失敗することもありますよ。再挑戦をお待ちしてますね」
「それオズもダメって思ってるってことだよね!?」
「え? 当たり前ですよ。5点です」
「辛辣…………!!」
「ちなみに何点中の5点?」
「ノーコメントです」
『100点だろ』
「ナツナツ!! ナビ!! わざわざ傷口を抉らないで!!」
ここまで黙っていた分を取り戻すかのように二人の言葉が止まらない。
一言増える度に、等比級数的に傷跡が深くなっていくんですけど!!
「くちゅん!!」
傷が心の臓を貫いて背中を貫いた頃に、オズが可愛らしいくしゃみをした。
不意のことであろうに、正面に《積層断空》で魔法障壁を張って、つばがこちらに飛ばないようにしているのがさすがだ。
[アイテムボックス]からハンカチを取り出して鼻を拭いてあげる。
『…………私から言うと地雷な気がしてたので黙っていたが…………そろそろ服を着たらどうだ』
「ちなみにナビの視覚は遮断したままだよ、安心してね~。
なお、もう周りはみんな寝てるみたい。私たちもそろそろ寝ようよ~」
「……………………そだね」
「布団に入ってからするべきでした」
「私が悪ぅございました……」
ところで『する』って、『話し合い』を? それとも『キス』を?
手早くコート以外の戦闘服を着込むと、[アイテムボックス]から旅用の布団を取り出してテント中央に敷く。
なおテントには、内部の環境を適した状態に調整する空調用魔石が付属しているので、寝袋のような寝具を用意する必要はない。普通はそのまま毛布に包まって寝るらしい。
ナツナツだけは上部の隠しスペースで寝る。あそこはテント内におけるナツナツのプライベートスペースでもある。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ~」
ふたりの頭を軽く撫でて、戯れてからおやすみの挨拶をする。
外に出ているときは、大体ナツナツとオズがペアになるから、触れ合えるのは寝る前だけだと言うのに、ちょっと時間を使いすぎたからね。
「また夢茶会で~♪」
「今日はちょっと短めにしましょうね。遅くなってしまいましたし」
……………………まぁ、まだまだ夜はこれからですけどね。
今日の議題は『真姉妹 (仮)』の正式名称を考える、です。もう傷口は裏側まで貫通したというのに、さらに抉る気かしらね。
まぁ、私としてもオズだけでなく、ナツナツやナビにも改めて日頃の感謝と好意を伝えようと思っていたので、丁度良いと言えば丁度良い。
ナツナツはともかく、ナビはこちらに実体がないから、言葉で伝える以外しようがないからね。
ナツナツを見送ると、私たちは布団に入って照明を消す。
明かりに慣れていた私たちの目には、照明の消えたテント内は真っ暗だ。
横を向いて手を伸ばす。向こうからもこちらに伸ばされていた手を伝って身を寄せると、
「おやすみ。…………ちゅ」
「『常識が~』と言っていたのに、一度タガが外れると止まらないタイプですね」
「『人前でするのはやめよう』って言ってただけだから、嘘は言ってない」
「そうですね。…………ちゅ。おやすみなさい」
オズからもおやすみのキスを貰い、今度こそ眠りに入る。
早くも暗闇に慣れ始めた目には、テントを通じて入り込む月明かりで闇の中を見分けることができるようになっていて、そこに浮かぶオズの顔に不安の色は見えなくなっていた。
それにホッとタメ息をつくと、私は目を閉じる。まだ夜は長い。
なお、真姉妹に替わる素晴らしい名称は、リアルに思い付かないので、最後まで謎のままです。多分。ご了承ください。




