第110話 ゴーレム娘、馬狩りへ
100 ~ 140話を連投中。
10/12(土) 13:00 ~ 未定。
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一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。
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ざわざわざわざわ…………
がやがやがやがや…………
「よーし。全員揃ったな~!!」
次男からクエストの打診があってから一週間後。
テモテカール南門前の広場は、大量の人間で埋め尽くされていた。
街外でこれだけの人間が集まるのは、狩りまくりイベント以来ではなかろうか。
具体的な人数は分からないが、依頼書の通りであるなら冒険者は80名。そして、領軍はそれよりも多いことだけは分かるが、具体的な人数は分からない。
その領軍はパッと見た感じだと、楯士隊、槍士隊、弓士隊、魔道士隊、騎兵隊に分かれており、楯士隊が一番多い。
さらに、魔道士隊はそれぞれの得意とする属性か役割かによってグループ分けされてるようで、装備の色毎にまとまって固まっていた。
あとは荷馬車がいくつか。中には大量のアイテム袋と木箱が放り込まれていて、これらは途中で補給拠点を作ったら、徐々に減っていくのだろう。
「これより軍馬討伐に出発する!! 総員、進軍せよ!!!!」
「オオオオオオオオォォォォ!!!!!!!!」×たくさん
「うるさ!!」
「お姉ちゃん。これは予想可能ですよ……防ぎましょうよ」
混成軍の先頭で次男が重大剣を掲げ、全員に通る大きな声で進軍を開始させた。
いや、呼応の声があがることは予想していたものの、ボケ~……と聞いていた、私は堪らず耳を塞ぐ羽目になった。
なお、オズは《偽音唱音》で消音していた模様。私が耳を塞ぐ上から、さらに両手を当てて音を防いでくれる。
「仲が良いわねぇ~」
「癒されるね」
「さすがギルド飯店の看板姉妹だな」
「お~い。そろそろ進むぞ」
そんな私たちを、リリアナさんとフェリスさんがほんわかとした表情で眺めて、にっこにっこしていた。
喜んでもらえて何よりです。
まずぞろぞろと楯士隊の一部が進み、その後ろに槍士隊、弓士隊、魔道士隊が続くと、その周囲を残りの楯士隊が囲むように追従する。こうすることであらゆる方向から不意を打たれても対応できるようにしているのだ。
『汎用防御陣形』とでも言うのだろうか。
魔獣も少ない街道に沿った行軍なのにちょっと大袈裟な気もするが、演習を兼ねているらしいし、こういうところもしっかりとやるんだろう。たぶん。
そして最後に、魔道士隊の後ろを荷馬車と冒険者がランクの低い順に付いていく。
騎兵隊はその一団の周囲に配置して、外部の警戒と行軍に遅れが出ないように指示を出したりするらしい。
なお、この場の最高責任者である領軍副長の次男は、最後尾に位置して全体の状況把握に努めている。
まぁ、数千人規模のもっと大きい一団だったらこうはいかないのだろうが、このくらいの規模ならその位置でも大丈夫なのだろう。
ちなみに、街道はこの人数が歩けるようには出来ていないので、荷馬車が街道を通るようにしつつ、残りは周囲の草原にはみ出しまくっている。
そして私たち……私、オズ、ルーカス、リリアナ、フェリス、キリウスの六人は、あろうことか最後尾である。
Cランクの冒険者が私たちだけだったからだ。
「そういえば、ルーシアちゃん。改めて ありがとう」
「そうだな。ちょっと予想外だったが」
「いえいえ。以前お世話になりましたし、それにいつも色々と情報を教えてくれますし」
「はい。あ、でも、今回のこれは秘密でお願いしますね。しーです」
リリアナさんとルーカスに今回の件についてお礼を言われるが、まぁ、こちらとしては言った通りだ。正直、情報収集は得意ではないので助かっている。
オズも否は無いようだが、義姉さんに忠告された『秘密』については、念押しのつもりか口に人差指を当てていた。
…………狙ってやってるのだろうか。
「キリウス、キリウス。どうしよう、かわいい……」
「落ち着けフェリス。後で撫でさせてもらえ、な?」
フェリスさんがあまり見せない、蕩けた笑顔でキリウスさんの袖を引っ張っている。そのフェリスさんを見るキリウスさんの表情も、困った様子を滲ませつつも優しいものだ。
それを聞いていたオズが、自分の仕草に気が付いて、ほんのり赤くなって私の背後に隠れた。
オズ…………多分、それ逆効果だから。
案の定、フェリスさんだけでなく、リリアナさんの表情も蕩ける。
「おい…………早く出発してくれよ」
そんなことをしていたら、背後から呆れた声を掛けられるのは当然であった。
「あ、じな…………隊長。ごめんごめん。すぐ行くよ」
「頼むぜ。あと、呼び名を気にするなら、口調も気にしようぜ」
「承知しました。以後、気を付けます」
「……………………口調は丁寧なのに、バカにされてる気がするのは気のせいか」
「気のせいだよ…………ですよ……」
ホントに。あと、人の口調に文句を付けるなら、自分の口調も合わせて欲しいところ。
一瞬で不機嫌になったオズと、それを不思議そうに見るルーカスたちを伴って、冒険者たちの最後尾に並んだ。
「ルーシアちゃん、ふっつーにディアス様にタメ口なのね……」
「驚いた」
「ギルド長の義娘とはいえ、そうなったのは最近だろ? 普通はタメ口で良いって言われても、なかなか直せないもんだと思うんだが」
「そしてオズリアは、何故にそんな不機嫌になってるんだ?」
「…………なんでもないです」
最後尾に並ぶと同時におしゃべり再開だ。
不機嫌そうなオズの頭を撫でて機嫌をとった後、手を繋いであげる。お互いまだグローブは着けていないので、素手のままだ。
「あ~…………私、次男の初対面の印象が最悪だから、オズはずっとコレなんですよね。印象 改善した後も」
「最悪って…………何されたの?」
「(コクコク)」
訝しげにリリアナさんが尋ね、フェリスさんが頷く。男性陣も口を挟んでは来ないが、気にしているようだ。
「次男だけ悪者に出来ない話ではあるんですけどね…………ちょっといちゃもん付けられて、模擬戦させられたので……」
あの時は大変だった…………って、思い出した記憶が模擬戦後の着替えなんだけど、これは説明できんな。
一瞬 意識を思い出に逸らして現実に戻すと、ルーカスたちが『とんでもないことを聞いた』とでも言いそうな顔をしていた。
「あ、あれ?」
「ルーシアちゃん…………大丈夫だったの?」
「オズリアが不機嫌になるのも当然。何考えてるの、あの男は……」
「お前、その頃Dランクになったばかりだろう? 確かにベーシック・ドラゴンは倒したが、ようやく一人前みたいな冒険者に何してんだよ……」
「…………少々、領主たちの認識を改めねばならないな」
一瞬にして次男と領主の評価が最低ランクに転落してしまった。
背後の次男には聞こえないように気を付けてはいるものの、難しい顔をして考え始めてしまっている。
…………説明って難しいね……
「そうなんですよ。しかもあの男、疲れて眠るお姉ちゃんの」
「オズ、ストップ。それシャレにならんレベルで誤解を招くから」
一瞬の隙を突くように、オズが恐らく次男が私の髪を触ろうとした場面を、悪意を持って説明しようとしていた。
あまり騒ぐと周りに注目されかねないので、静かにオズの口を押さえて発言を停止させる。
危ない 危ない。口に出されていたら致命的に終わる気がしてならない。次男が。
「えーと、ですね。お義父さん…………ギルド長がですね、『そろそろ実力を確認しておきたい』って思ったらしく、領主たちと共謀して模擬戦を仕組んだんですよ。
だからまぁ、次男の責任は…………まぁ、1/4位はありますけど」
一応、領主、長男、次男、お義父さんが犯人だと思っているので、等分の責任は背負っていただきたい。
なお、この説明だと主にお義父さんが企てたように聞こえるが、実際は全員ノリノリだったので、このような責任配分とした。
ちらっとオズを見ると、納得していない顔をしているが、わざわざ訂正するつもりは無さそうだ。
口を押さえていた手を頭に移して改めて機嫌をとる。うりうり。
「それにまぁ、一応手加減もしてくれましたしね。終わった後、ボッコボコにしましたし」
「あ、あら…………勝てたの?」
「一応。奥の手で不意を突きまして」
「噂では個人戦力としては、Bランク相当と聞いてる。やるね、ルーシア」
「おぉ……マジか。もう俺ら四人掛かりでも敵わねぇかもな……」
「今後ともよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします。まぁ、戦闘だけなら期待してもらってもいいですよ。
…………まぁ、そんな訳でアレは次男だけのせいではないので、そんなに警戒しなくても大丈夫です。
ただまぁ、そんなこともあって、私は特に次男に対して敬意はなくなりまして。直せと言われないこともあってそのままです」
なんとか次男の評価が地に墜ちるのは回避できたようだ。…………たぶん。
そこからはポツポツと言葉は少なくなっていき、事務的な会話……『足場が悪いから気を付けて』とか『ちょっと進みを速めよう』とか以外しなくなっていった。
これは別に話すことが無くなったとかではなく、喋りながら歩くのは意外と体力を使うからだ。
今日はまだ移動だけとはいえ、散歩ではないのだから体力は温存しながら行くべきだろう。
『まぁ、私たちは念話で話しまくるんだけどね』
『誰に話してるんです?』
『私も混~ぜ~て~』
『周囲の索敵は継続するが…………ほとんど意味ないな、コレ』
即行で念話による雑談に入った。
ナビが言っているのは、《ロング・サーチ》についてだ。
このスキルの射程範囲は大体20m。この混成軍の後端にいると、前端まで届かない。
まぁ、後方を警戒出来ると言えば出来ているのだが、街道を進んでいる中心部隊が先行しがちなので、左右端は私たちと同等か場合によっては後ろに下がっている。
つまり私のいる位置は、混成軍の後端ではなく若干中心寄りに位置しているため、索敵範囲の2/3程が自軍の反応で埋め尽くされていることになる。
『形状を変化させて、後方傾注型にするか?』
『私のマルチデバイス飛ばせば、全体をカバーすることも出来ますよ』
『うーん…………というか、そろそろ新しく索敵系スキル覚えないかな? 《ロング・サーチ》ってベーシック・ドラゴンと闘ったときに覚えたスキルだよね?』
あれからそれなりにレベルも上がったし、そろそろ上位スキルを覚えても良さそうだけど…………
ちなみに、『もっと範囲の広い索敵魔法が欲しい!!』とは思っているので、今まで通りなら取得してもおかしくはないはず。
『残念だが、ルーシアナ。索敵系は《ロング・サーチ》が最後だと思われる』
『うん』
『そうですね』
『あれ? そうなの?』
ところがその期待は、ナビたち三人に一様に否定されてしまった。
《ロング・サーチ》が限界? おじいちゃんが?
……………………てっきり半径1km位の大規模索敵魔法でも控えてるかと思ったのに。
なんとなく違和感に首を捻っていると、
『現在の半径20mの《ロング・サーチ》は、ルーシアナの魔力回復量からMPが減少しない程度の魔力量で発動させている』
『マイアナの魔力回復量はもっと上だったから、もっと索敵範囲広かったんだけどね~』
『《ロング・サーチ》に限らず、魔法は発動中 常時魔力を消費しますので、長時間発動させ続けるタイプの魔法は、魔力回復量とバランスさせながら発動させないと、すぐにMPが無くなってしまいますよ』
『なるほど』
単純に私の実力不足だったか……
『それに、例えば討伐対象を探すときなんかは、その時だけ魔力量を増やして索敵範囲を強化してたんだよ~。それは《ロング・サーチ》でも出来るよ』
『もし現状の状態で索敵範囲を広げたいなら、何かしら新しい発想が必要だ。もしそれが上手くいくなら、マスタリー系が頑張ってくれるはず』
『……………………分かってはいましたけど、マイアナの作ったマスタリー系スキルは とんでもないですよね……』
『そだね……』
《火魔法》などの汎用スキルで《ファイアボール》などの魔法スキルを取得することは出来るが、それはあくまでも『本人が使える魔法をスキル化してくれる』だけだ。
でも私のマスタリー系は、おじいちゃんが遺した魔法を取得するだけでなく、『こういう理屈でこういう魔法にならないかなぁ』と思っていると、勝手に術式を組んで魔法スキルにしてくれるらしい。
しかも、取得後も最適化もしてくれるので、使うほど威力も上がるし、消費MPも下がる。最近気が付きました。
マスタリー系の説明文『祖父の遺した魔法等をスキルとして取得する』の『等』はこれを表していたということですね。わかりづら!!
『何か発想はあるか?』
『え? う~ん……』
そんなことを言われてもね…………そもそも、今の《ロング・サーチ》の細かい原理的な話は分からないのだし……
『それはね~』
『ナツナツ、ストップです。お姉ちゃん。新しい発想するときは、既存の技術は知らない方が良いこともあります』
『そうなの?』
ナツナツが説明しようとするのを、オズが止めさせる。
『えぇ。…………と言っても、『そうらしいですよ』としか言えませんけど。
過去に成功した方法論を学習して、それを発展させる方法を思い付くこともありますし、それこそが技術を発展させることではありますが、何も知らないからこそ先達が思い付きもしなかった方向から新しく技術を確立させることもありますし、それが後々のメジャーな技術体系となることもあります。
先達の技術を模倣するのは後からでも出来ますし、まずは一から自分の感性で発想してみてはいかがでしょう?』
『なるほど、一理あるな』
『そうかなぁ……』
根本は同じはずなのに、ナビとナツナツで意見が分かれる不思議…………まぁ、いいや。
『ふーむ…………とはいえ、何か切っ掛けが欲しいところなんだけど……』
『そうですね……………………『何が分かれば敵を察知できるのか?』について、考察を深めてはどうでしょう?』
『何が分かれば……?』
ふむ…………これこそ『どんな術式で……』とかって話ではなく、『どんなイメージで……』とか言う話になるんだろう。
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ダメだ。さっぱりだよ。
三人は私の邪魔にならないように、話し掛けないでいてくれている。あまり早々にギブアップするのも気が引けるね。
『ナビ。《ロング・サーチ》の権限借りるよ』
『了解した』
そのまま考えていても埒が明かないので、ナビから《ロング・サーチ》の制御権限を借り受ける。
《ロング・サーチ》は、現在 私を中心とした半径20mの半球形。《サーチ》から《ロング・サーチ》に変化したことで、単純に索敵範囲が伸びた。さらに、
『ぐにょんぐにょん、と』
形状を変化させられるようにもなっている。
ただし、一方に索敵範囲を広げると、別の一方の索敵範囲を狭めなければならない。
イメージとしては、粘土、かな?
大元となる粘土の体積に限界があるため、一部を伸ばすには、別の部分から粘土を持ってこなくてはならない。
思い付くままに、それこそ粘土のように形状を様々に変化させる。
『りんご』
『どこが?』
『ほら、ナツナツ。立体ではなく平面なんです。上から見た図をイメージしてください』
『何故立体を扱っているのに平面で表現するのだ?』
何故でしょう……?
『orange』
『発音がいいね』
『パッと見、ただの長球ですけど……』
『いや、よく見ろ。ヘタが付いてる』
『…………分かりづらいです』
ごめんね。
しばらく粘土細工 (透明) に興じているうちに、まず思い付いたのは、中を空洞にすること。
でも空洞にするということは、自分の周囲の索敵ができなくなる。今は周りに味方がいるから大丈夫けど、一人の時に使えない方法はあまり意味がない。
次に思い付いたのは、歯抜けにすること。
でも歯抜けにすると索敵範囲外の部分が多数箇所できてしまい、その隙間に魔獣が隠れてしまう危険がある。要するに死角が多いのだ。
あぁ、でもその状態で振り回せばいいのかな?
例えば、地面から垂直に立つ壁状に展開して、自分を中心に一周させるとか。先ほどの粘土じゃないけど、これなら壁分の粘土しか必要ないから、縦にも横にも長い壁状に成形できる。
例えば、100mくらいの横長にして1秒で一周させれば、100m/sec以上の速度で移動する魔獣でもなければ途中で察知することができる。
まぁ、現実には必ずそうとも限らないけど、似たような成果は見込めるだろう。それに、現状の《ロング・サーチ》じゃそんなに遠くから接近する魔獣を察知することはできないからアリかな。
…………問題は回転させるのにそれなりに意識が割かれることと、どの程度の速度で回転できるか不明なところか。
…………ナビ次第かな?
あとは……
『あ』
『何か思い付きましたか? というか、実はこちらに駄々漏れで、回転式はナビが感心してましたよ。採用可です』
『恥ずかし!!!! …………ではなくてね、ほら、索敵範囲って粘土のイメージだったんだけど、粘土に限らず全ての物質は原子から出来てるって言ってたじゃない?』
『そですね』
『歯抜けにするのの亜種なんだけど、歯抜けにするのをもっと細かくするとかどう? さっきの粘土の例えで言うと、粘土の原子をひとつ飛びに歯抜けにするとか』
『…………なるほど。つまり、今は敵を察知するのに100の点で察知しているのを50の点にすれば、範囲は倍になるって感じですか?』
『そうそう。そんな感じ。密度を薄くする? みたいな?』
▽時空魔法マスタリーのレベルが上がりました!!
▽時空魔法:サーチ・アウトを取得しました!!
▽時空魔法:サーチ・インを取得しました!!
▽《サーチ・アウト》《サーチ・イン》が《ロング・サーチ》に統合されます。
▽ステータスを確認してください。
特殊スキル
・時空魔法マスタリーLv.8 → 10
取得スキル
・サーチ・アウト:《サーチ》の索敵範囲内密度を低下させることで、索敵範囲を広げる。一部のみ密度変化させることも可能。
・サーチ・イン:《サーチ》の索敵範囲内密度を上昇させることで、索敵範囲内の対象をより精緻に判別可能とする。一部のみ密度変化させることも可能。
『『『『仕事はやっ!!』』』』
時空魔法マスタリーは仕事が早い。しかも、私がイメージした『密度を薄くする』だけでなく、逆のスキルまで用意してくれている。どう使うのかは分からないけど。
『あ~…………《サーチ・イン》を使った場合、敵の位置だけではなく、例えば腕の位置、足の向きなど細かい部分も分かる。つまり、敵を目視せずとも、目視しているのと同じくらいに敵の状態を把握できる』
『接近戦するときに役立ちそうだねぇ~……』
それは便利かもしれない。
夜間戦闘とか砂塵などで視界が悪い戦闘とかでも、通常通りに相手を把握できるということだ。
とりあえず、《サーチ・アウト》の効果を使って、半径10mを境に外側を薄くして拡大してみる。
すると、私の術式に抑え込まれ一定範囲内に留まっていた霧が、抑制から解放され遠くの方まで広がっていくように、混成軍の先頭のさらに先まで索敵範囲が広がっていった。
内側ももうちょっと薄くしても大丈夫そうだし、結構な広範囲をカバーできそうかも。
色々試してみよう。
こうして私たちは表向き静かに、裏向きは騒がしく行軍を進めたのでした。




