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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
7章 襲撃!! 嘆きの魔獣
109/264

第101話 ゴーレム娘のお説教 (チコリ父娘編)

100 ~ 140話を連投中。


10/12(土) 13:00 ~ 未定。

前回実績:1話/30分で計算すると1日を超えます。

一応、事前に下記手順の一部を済ませていますが、途中で投稿を中断するかもしれません。


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

ガア・ティークルから戻って参りました。


朝イチで空間転移して作業していたので、まだまだ日は高い。

でも、今からギルドで依頼を受けるのは、さすがに時間が足りないので、


「チっコリちゃ~ん♪ 武器出来た~?」


「ルーシーちゃん。いらっしゃい。出来たって聞いたから来たんでしょ?」


そうですね。


「お邪魔します、チコリさん」


「ようこそお越しくださいました、師匠」


「………………………………オズさん、殺っておしまいなさい」


「丸焼きでいいですか?」


「すんませんっした!!!!」


己が支配下に置くべき炎に焼かれる。

客を差別するドワーフにはお似合いの末路だろう。


下座(ゲザ)るチコリちゃんを小突いて立たせると、早速頼んでおいた武器を取りに行く。ロックグリズリー素材の武器だ。

ロックグリズリーの素材は杖には向かないらしいので、私用の重大剣、片手剣、グローブ、弓を頼んでおいた。なお、アサルト・ボアの素材からは、杖の他に弓を作成していた。


一応おじいちゃんの助言に従い、二個ずつ作ってもらってるけど、ホントに意味あるんかな、これ……


チコリちゃんに付いて壁際の棚に向かい、まとめて回収する。以前、抜き身の剣を抱えて転びかけたのは忘れてないからね。

そのまま作業台に戻ると、一度全て台の上に並べた。


「いや~……ウチの工房を利用してくれるのは嬉しいんだけどさぁ……ルーシーちゃん、ベーシック・ドラゴンの武器持ってるよね?

いや、グローブと弓は分かるよ? こっちのは爪の付いたクロウ系のグローブだし、弓は属性スキルが重要だからね。

でも重大剣と片手剣は、単純に攻撃力の大小しか無いんだから、敢えて弱い武器を作る意味はないよ? 正直ベーシック・ドラゴンのと比べると見劣りしまくりだよ?」


「まぁ、実を言えば依頼してからずっと『失敗したかなぁ』も思ってたけど、それなら依頼するときに言って欲しかった」


「稼げるチャンスを逃したら、お母さんにシバかれるからね。でも一緒にクエストした成果なんだし、オズちゃんにも何かあげたら?」


…………なら、言わない方が良かったんじゃ……? ……………………それとも、これからシバかれるんだろうか?


「ちなみにどう シバかれるの?」


「お尻ペンペンかなぁ……この歳でアレは精神力がガリガリ削られるよ……」


「……………………シバかれる時は呼んでね」


「やだよ」


「私も見たいですね」


「……………………………………………………………………………………ダ、ダメなの!! これは安売りしちゃいけないところなの!!」


惜しい。

チコリちゃん()遊んでいると、いつの間にかチコリ父もやって来た。


「母ちゃん、ああ見えて(こえ)ぇからな。俺もボッコボコにされて縛り付けられた挙げ句、目の前で秘蔵の酒を呑み散らかされたことが………… (ブルブル)」


「あれはお父さんが悪いと思う……」


「……………………」


何をやらかしてしまったのか、小一時間問い詰めたい。


「ま、まぁ、それはともかく。狩った獲物の証として武器にするヤツはいるが、嬢ちゃんは数種類を二つずつだしな。証にしては造りすぎだ。それに掛けた金で妹さんに何か買ってやったら良かったんじゃないか?」


「う~ん…………おじいちゃんの教えなんですよね、コレ。『武器は消耗品だから簡単に交換できるようにしろ』って」


「だからといって弱いのを用意してもな……」


「ですね。まぁ、次からは考えます。……………………ところであんたら。…………噂を鵜呑みにしてますね?」


「「ぎく」」


小一時間程説教した。





「そんなわけで、私とオズの仲は良好です。ラブラブです。コレだって、杖に向いてるなら一番良いところはオズに回したいくらいです」


「ダメですよ。前衛でガツガツ近接戦するんですから、まずお姉ちゃんが一番良い素材を使ってください」


「オズ大好き!!」


横で話を聞いていたオズからも嬉しい言葉が出てきたので迷わず抱き付くと、いい加減に慣れてきたのかオズの方からも自然と抱き返された。


『仲良しアピール』を大義名分によく抱き付くからね。この噂の唯一のメリットですよ。


「しょ、承知しました……」


「甘ったる過ぎて胸焼けしそうだ……」


失礼な。

チコリ父が胸元を抑えて気持ち悪そうにしていた。

ホントに失礼な。


「でも噂が広まってから随分経ちましたけど、まだそんな話が出回ってるんですか?」


オズが私の腕の中から顔だけ出してそんなことを聞いた。

確かに最近は、私たちの『仲良しアピール』についての噂にシフトしていた気がする。つまり、『噂を払拭するために嫌々仲の良い振りをしている』か『噂は間違いだった』か。

どうも二人が聞いた噂は、最初の『オズの活躍に私が嫉妬してる』系の噂っぽい。


「いや~……お恥ずかしながら、私たち体は動かすけどインドア系だから……」


「情報収集っていう面だと、客か母ちゃんからのルートしかないんだよな。今の話も随分前に聞いた話で、たまたま今日思い出しただけだ」


「二、三週間位前だっけ?」


「情報が古過ぎるわ……」


特にゴシップ系の噂なんて日毎に変わってもおかしくないんだから。


「今は元の噂を払拭するためのアピールが本当か嘘かの噂なんだね。なら、私からも『二人は仲良しだよ』って言っておくよ」


「そうだな。あれだけ惚気られるなら、誰が見ても明らかだろ。お前らも聞かれたらそう答えろよ~」


「「「うーーい!!!!」」」


「これでよし」


「任せてよ、ルーシーちゃん、オズちゃん!!」


「ありがとうございます。まぁ、問題は……………………ここにいる人、全員噂に疎いってことですけどね」


「「「「「ギクッ」」」」」


噂を流すより、受け取る方だよね、どう考えても。

まぁ、それで勘違いされるよりマシか。


「ま、まぁ、二人の噂をどうにかするのは力になれないけど、代わりに武器の方はしっかり調整しますよ!! ほら、振って振って!!」


「はいはい……」


大きな声と動作で誤魔化すように調整を勧めるチコリちゃん。まぁ、使わない可能性が高くても調整は必要か。

いつもの流れで重大剣 ― グリズリブレイド ― を手に取ると、


「あれ?」


意外な程 軽いそれに、思わず疑問の声が漏れた。もちろん【重量軽減】が掛かっているわけでもない。

純粋に質量が少ないのだ。


「こんなに軽いの?」


「いやそれ結構重いはずだけどね。まぁ、ベースブレイドを振り回してるルーシーちゃんには軽く感じるかも。

ロックグリズリーの素材から造る武器は、同ランク帯の武器と比べると軽い方だよ。重さで叩き斬るんじゃなくて、鋭さで断ち斬る感じ。その重大剣だって、刀身が細身でしょ?」


「まぁ、確かに」


「東国の方の刀に近いですね。刀として見ると、逆に太いですけど」


「それ以上細くしたら、防御に使えないって、オズちゃん。重大剣はその刀身が盾代わりなんだし」


グリズリブレイドは、チコリちゃんの説明の通りベースブレイドに比べると、刀身の幅が半分くらいしかなかった。それだけでなく素材がそもそも軽いのか、感覚的にはベースブレイドの四……いや、五分の一くらいの重さしかない。

ここまで軽いと、逆に使いにくい気もする。


……………………あ、そだ。


「オズ?」


「はい、なんでしょう?」


「重大剣はさすがに大き過ぎて邪魔だけど、片手剣なら杖と併用して使えるんじゃない? 軽いし」


「いえ、私《剣術》持ってませんし」


「別にそこまで本腰入れなくていいよ。

ほら、今の杖 魔法増幅率重視だから、すごく長くて取り回しが悪いじゃん。狭いところとか近付かれた時とか、護身用に取り回しの良い武器があってもいいかなって思ってたんだよね」


普通の魔道士は御守りみたいな短剣を提げてるけど、何気に短剣って扱うのに熟練がいるから、軽いなら片手剣くらい長い方がいい。


え? 片手剣も振れないくらい狭いところ? 今は近付かれたら無差別に範囲魔法で吹き飛ばすことにしてるから、それを適用するだけだよ。

ちなみに私の場合は、物理的に殴る。表記してないけど、武器を持ってる時は大体ベースグローブを着けてるから、スムーズに殴れるよ。

なお、ベースグローブは竜鱗が手の甲側を覆った、通常のグローブです。竜鱗の深緑色が美しい。


「う~ん……」


「ほらほら。ちょっと持ってみて?」


と言って、片手剣 ― グリズリソード ― が鞘にしっかり納まっていることを確認してオズに差し出す。

オズは恐々といった風に手を伸ばすと、鞘に入れたまま慣れない様子で構えたり掲げたりしている。


「どう?」


「う~ん……確かに見た目のイメージから想像するより軽いですけど、これを振り回すとなるとちょっと不安ですよね…………お姉ちゃんの気遣いはありがたいですけど、素人が刃物振り回しても、自分を傷付けるのが目に見えてるような……」


「ダメか……ちなみに《剣術》は習得出来ない……よね?」


「近接戦闘系は全部ダメっぽいです。《杖術》も魔法の補助スキルがメインっぽいですし」


「《振り回し》も《受け流し》も、取得するの大変だったもんね」


《杖術》を習得してから、お義父さんに稽古をつけてもらってたけど、普通ならあっさり取得できるはずのこれら基本スキルも、なかなか取得できなかった。

やはり、オズの適性は魔法系特化なのだろう。


「それなら棍でも造ってみる? ウチではあんまり造ったことないけど」


「だが、棍は重さか長くして速度を叩き付ける武器だろう。軽かったり短かったりしたら意味ないだろ」


「そこはほら、魔石で重くするとか……」


「ベースが軽いと効果が薄いぞ。あと、それは降り下ろしの長さで速度を稼ぐ方法だから、武器が短いとさらに効果が薄くなるな」


「うぐぅ~……」


チコリちゃんたちも色々考えてくれるが、『短い』『軽い』『刃物でない』で、そこそこ攻撃力を持たせるのは、どう考えてもムリだ。

武器の攻撃力とは基本的に、斬撃(切断力)突撃(貫通力)打撃(衝撃力)に由来するものであるが、『刃物でない』と『斬撃』と『突撃』が劣り、『軽い』と『打撃』が劣る。

後は『魔法』になるが、それなら今のままで十分だ。


…………………………………………まぁ、オズのレベルが上がれば、ある程度重くても負担にならなくなるだろうから、それまで保留かな。


「あ」


と、思ったらオズが『ポンッ』と手を叩いた。

なにか閃いた?


「チコリさん」


「何でしょうか、師匠」


「…………………………………………」


「何かな、オズちゃん」


「お姉ちゃん。ちょっと相談があるので、チコリさん借ります。あと、余った素材貰うかも」


「ん。分かった。上手くいったら教えてね」


「はい」


考えがあるようなら、オズに任せよう。

そもそも自分で使う武器なんだから、自分の思うように造ってもらった方がいい。アサルトスタッフみたいに。


「お父さん。ルーシーちゃんの調整お願いしてもいい?」


「おぅ。こっちは任せろ。行ってこい」


そういえば、私の調整もあるんだった。

オズとチコリちゃんが隣の作業台に移ると、チコリ父が残り、


「ほれ。まずは重大剣だ。分かってると思うが、軽いからベースブレイドとは全然違うぜ」


「そうですね」


オズたちが気になるが、私は私でやることを済ませることにする。


…………………………………………


「ととっ……」


やっぱり軽くて使いづらいな……



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