烏羽 光仁
―ここは誰も知らない、けれども皆が知っている、感知できない、けれども確かにそこにある。
そんな場所。
そこには様々な機械が犇めきあっており、必ずどこからか『ピッ、ピッ、ピッ……』と電子音が聞こえてくる。
さらに注目すべきはそこにあるモニターの数である。
その数、実に500を超える。
常人であれば1人でチェックなどはできない量だが、そこにいるこの部屋の主は現在カップ麺を啜りながら全画面を凄まじい速度で、けれども正確に判断していた。
彼の名前は烏羽 光仁、金髪に黒い瞳、薄茶色のサングラスをかけた見た目年齢25歳程の青年である。
彼は神の作った世界を極秘裏に管理する『ASO』の初期であり、唯一のメンバーだ。
Part.烏羽 光仁
(さぁて、今日は誰も転生予定は無し、やな。)
手に持ったカップ麺を前の卓に置こうとした。
チラリと紙が散乱していたのが見えたが、まぁいいだろう、と言わんばかりになるべく空いているところにスっと置いた。
『んー、まぁ最近は問題もなく物事が上手くいっとるからな。ワシらの出番が少ななるなぁ。』
と、少しモニターから目を外して『ASO団』のきまりを呟いた。
「『ASO』とは極秘機関である……当然や。
現在の構成メンバー……1人やな。
主な目的は、転生者や転移者の必須イベント以外の不穏分子の排除……分かっとる分かっとる。
神の力を受けた転生者達の暴走における対処……こればかりはキツイけどなぁ……
また、存在を神々に知られてもならない……ホンマにこれだけ意味不明やけど。
(うーん、今思えばメン・イン・○ラックそっくりやな。)
うんうんと頷いていた、そんな時、彼の前にあったモニターから以下の警告が発せられた。
・【緊急事態】第7529号世界で神力の暴走の兆候を確認。ASOは早急に現場へ!
「いや、さっきキツイっていったとこなんやけどなぁ?……んで、7529か…マニエルの世界やな。なら、[座標指定][第7529号世界][カルエラ]……転移スタート。」
彼の体が光に包まれて、消えていった。
・光の最上位極限魔法[転移]
……効果。使用者とその付近約3mを光の粒子に変えて世の中の事象に溶け込み、転移先の事象として姿を再構築する魔法。