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失せ物探し

その男は、いつも「生命の樹」という名前の喫茶店にいた。

朝、喫茶店が開くと同時に一番隅の席を陣取った。

街の人々は、男のことを

「約束を守る男」

と呼んでいた。


少女は、イヤリングを探していた。でもどうしても見つからなかった。

亡くなった祖母からもらった青色の宝石が入ったイヤリング。

学校での体育実技の時にはずしたのが、少女が覚えている最後だった。


ある日、少女は「約束を守る男」の噂を聞き、

イヤリングの探索を依頼してみようと決心した。


少女は、「生命の樹」のドアを開けた。

「約束を守る男」とおぼしき男は、隅の席で本を読んでいた。

他に客はいなかった。

おそるおそる男に近づき、少女は声を掛けた。


「依頼があるのですが」


男は読んでいた本に金属細工の栞を挟んでから、

顔を上げて、少女へ向かいの席に座るよう促した。


少女は、イヤリングを探して欲しいと男に言った。

祖母の形見の青い宝石の入ったイヤリング。

男は、最後にイヤリングを見た場所を少女に尋ねた。

少女は学校の教室だと答えた。


男はしばらく考えた後、少女の目をじっと見てから、

依頼を受ける、3ヶ月待て、と言った。そして少女に連絡先を教えるように言った。


「依頼料は?」


少女は男に尋ねた。

男は、特に依頼料は要らないと、少女に言った。


街に空き巣が頻発した。

どこも家ごとひっくり返されるようなひどい荒らされぶりだった。

しかし、どの家でも、特になにも盗られたものは無く、

盗難届が出されることはなかった。

人々は、気味悪がって、何の嫌がらせだろうと噂し合った。


ある日、少女の家に小さな小包が届いた。

中には、探していた青いイヤリングが入っていた。


少女は急いで「生命の樹」へ行った。


前会ったときと同じように、男は、隅の席で本を読んでいた。

他に客はいなかった。

少女は男に近づき、声を掛けた。


「イヤリングを見つけていただき、ありがとうございました」


そして、イヤリングはどこにあったのかと、男に尋ねた。

男は、本に栞を挟んでから閉じて、少女の方に顔を向け、

誰が盗んだのかを知りたいのか、と言った。


少女は驚いて目を見開き、そんなことは知りたくない、と答えた。

そして、少女は店を出て行った。


男は、一つ溜息をつき、再び本を開いて読み始めた。


夕方の鐘が鳴り、男はコーヒー代を払ってから、いつものように帰っていった。

今回の話は、そんなに後味悪くないでしょw

ということで、まだまだ連作は続きます。


短すぎ、って思った方で、おひまな方は、

是非「死神見習いと過ごす最後の一年」https://ncode.syosetu.com/n9791fd/

をお読みください!

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