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Crystal Brush  作者: 篠原ことり
第三章 Largo
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第二十五話 Festival Vivace・前編

 一体真央はどうしただろう?来夏は大丈夫だろうか?クリスとノアは早々とベッドに入ったが、隣で安らかに寝息をたてるノアを見つめながら、クリスは不安いっぱいで夜をすごしていた。あの後、真央が引き返してくることはなかった。上手くいって二人で帰ったならよいが、それでも……クリスは携帯電話を開いた。真央に送ったメールの返事はまだきていなかった。

 不安は次第に翌日の文化祭に関するものへ移って行った。ありとあらゆるトラブルが頭の中を次々と駆け巡って行く。配膳のミス、材料の不足、集団食中毒、テロリストによる学園占拠、などなど。最後に、菜月がテロリストに向かって振り回したフライパンがクリスの頭にあたって自分が脳震盪を起こしたところまで思い描き、クリスは思わず口元を緩めた。一番の心配は客が全く来ないことだと思い出したからだ。料理においては、クリスは全く心配していなかったが、それはノアを全面的に信頼しきっていたからだ。ノアと、その指導を受けた生徒たちであれば、客を十分に満足させる料理を作ることができる。それは恐らくクリスだけの確信ではなかった。

 クリスは喉が乾いていることに気付き、ノアを起こさないようそっとベッドを抜け出して、一人キッチンで水を飲んだ。台所はどこもかしこも磨き上げられている。開けてのぞいた冷蔵庫は物が少なすぎてクリスがびっくりしたほどだった。もちろん、台所が清潔なのは不潔なのより何百倍もいいだろうが、クリスは何かしらの違和感を覚えて暫しそこを見回していた。だが、冷蔵庫がブーンと低い音で唸ったので、クリスはコップを綺麗に片付けてまたベッドに戻った。

「クリス様……」

ノアが呟いた。クリスはノアを見遣り、起こしてしまったことをすぐに詫びようとしたが、ほぼ消えかけた町の灯が、かたく閉じたノアの瞼や一定のリズムで上下する小さな胸を、クリスの前に提示していた。

「クリス様、明日は……に……」

クリスは掛け布団を胸まで引き上げると、二つのベッドの境目におかれたノアの手を、そっと握り締めた。温かな毛布の恩恵を逃れて、小さな手は冷え切っていた。自分の夢でも見ているのだろうか。いや、寝言は夢と関係ないのだという話を、ロナルド叔父さんから聞いたことがある。それからクリスはようやく眠りに落ちたが、遠くに鐘の音を聞いたと思った瞬間、日が昇った。


***

「おはようございます、クリス様」

「うん、おはよう……」

 食卓についたクリスの右腕は起きていて、バターをぬったトーストをきちんと口元まで運ぶ仕事をしていたが、本体は運ばれたトーストをかじったり、こくりこくりしたりを交互に繰り返していた。紅茶をパジャマのズボンにぶちまけたとき、クリスはようやく目をさました。紅茶が淹れたての熱々でなかったのにはほっとしたし、口からほとばしりでた英語の悪態をノアに聞かれなかったことにも心底ほっとした。

 二人はいつもより一時間も早く「渚の家」を出た。ちなみにその「いつも」というのも、朝から夕方まで文化祭の準備に忙しかったこの一週間のことであるから、二人が目覚めたのは日が昇る前、二人が出かけたのが空に清涼な青が広がりきった頃であった。学校では、落合が景気づけのつもりか校庭で花火をいくつかバチバチやり、早くも森先生に連行されていくという事件が起こっていた。しかし、クリスを含めたクラスメートたちはこの知らせに大爆笑した。

「ほんと、傑作だよ」

菜月が笑いの渦の中でぽつんと呆れたように呟いた。

 皆がようやく平常どおりの呼吸を取り戻し、クリスの指示を待つようになると、クリスはてきぱきと適切にクラスメートたちを配置した。ただ一つの不安だけがクリスの明るくなりかけた胸を曇らせていた。来夏がいないのだ。この教室に来た時からちらともその顔を見ていない。クリスは帰ってきた落合を捕まえると、来夏が今日学校に来ているかどうか聞いてみた。落合はちょっと驚いた顔をした。

「そりゃ来てるに決まってんだろ。俺たちよりずいぶん先に出てっちまったけど。実行委員の仕事じゃねぇのか?」

「あー、うん、もしかしたら最終の打ち合わせに行ってるのかも……」

来夏が校内を見回る巡回係だったことを思い出して、クリスは頷いた。込み上げてくる悪い予感は全部追い払った。まさか、来夏に限って、そんなことは……

 ノアに「また後で」と手を振ったクリスは、体育館へと向かった。そして、来夏を見つけた。来夏は他のクラスの委員と一緒に来賓席を作っていた。クリスが名を呼ぶと、来夏は顔を上げたが、それは一瞬の出来事で、すぐ作業のために顔をうつむけてしまった。クリスは呆然とした。自分まで避けられているのか?

 それでもなお彼の元へ近づくと、来夏は何の釈明もしないまま、パイプ椅子をクリスに手渡した。二人は黙々と仕事をした。一分、二分、三分。ざわめき色めく体育館の中で、たった二人だけが口をきいていなかった。来夏の目の下には薄紫のくまが見て取れた。

「ねぇ、関本……」

 ようやく言葉に出来た呼びかけでさえ、別の人物の登場によって遮られてしまった。真央だった。来夏もひどいといえばひどいが、ただ塞ぎこんでいるだけといえばそうとも見える。だが、真央の表情には、この世の中で最低最悪の出来事が起こったということを如実に語っており、事情をよく分かっていない友人たちを唖然とさせていた。クリスはさっと来夏の横顔をうかがった。固まった横顔に何の変化も見られない。真央は「おはようございます」と言ってクリスの隣に並んだ。こんなに苦しい流れ作業はなかった。来夏がクリスに椅子を手渡し、クリスが真央に椅子を渡す―― 「秋元君、大丈夫?」

 仕事が終わったのを見計らって、クリスは真央を舞台の下手側に引き込んだ。真央は途端に真っ赤に泣きはらした目からぽろぽろと涙を零し始めた。

「秋元君……?」

真央はクリスの差し出したハンカチでそっと涙を押し拭った。それから途切れるようにか細い声で、絞り出すようにして、昨日の出来事を語り始めた。

「……先輩が、もう俺の後は追うなって…………」

クリスは再び怒りを覚えたが、一方的に来夏を責める訳にもいかないことを知っていた。来夏の中に何かがあったのだ。その「何か」について、具体的なことをクリスは知らなかったが、稚拙な推理ならすることができた。あの絵を見たときの彼の態度から、真央へぶつけたいくつもの心ない、しかし悲痛な言葉から。来夏は真央への愛に恐怖を見出し、それに抗えない自分に絶望しているのだ。自分には真央を守ったり愛したりする力がないと悟った。だから、何も言わなければ寄り添ってくる真央を無理やり突き放した。問題は、彼がその恐怖を打ち明けてくれない限り、第三者の手にはとても負えないということだ。

「先輩、僕、どうすればいいんでしょうか……?」

真央が打ち震えながら尋ねた。クリスは真央をそっと慰めてやりたかったが、口から飛び出てきたのは、まっすぐで淀みのない詰問の言葉だった。

「君はどうしたいの?」

真央の潤んだ目がますます大きく開いて揺れた。

「関本と仲直りしたいんだったら、それ相応の覚悟が必要だと思うよ。あのね、真央君、関本は多分、なんていうか、怖がってるんだと思う……」

「何にですか?一体何にです?」

真央は咳き込むように小さく叫んだ。クリスはそこで初めて真央の肩に手をまわした。しかし、口調は相変わらず厳しかった。

「それは君が自分で探すことだ。関本の心は誰も読めないんだから。君自身が答えを見つけて、解決しないと。関本は君のことを嫌いになってなんかないよ。君のことを……そう、嫌いになってないからこそ、あんなに苦しんで怖がってるんだ。分かる?」

「分かりませんよ」

真央は駄々をこねる子どものように首を横に振った。

「分かりません。だって、何で……?僕の何を先輩は怖がってるんです?先輩が怖がるようなものなんて僕はなんにも持ってない。僕は弱いし、何一つ来夏先輩に勝てるところなんてないのに。それに、大体僕のことを嫌ってないなら、何であんな態度をとったんです?僕には何もできません……でも、僕は、ううん、それでも、できない……」

分かってるじゃないか。クリスは苦い思いで密かに呟いた。クリスも今はっきりと分かった。来夏は真央が壊れてしまうことを恐れている……クリスはもう一度真央の肩に手を置きなおし、心を鬼にして口を開いた。

「いい?今はっきりここで決めないと。苦しい思いをしても関本の後を追うの?それとも諦めるの?」

真央の答えは聞き取れなかった。その時、スピーカーからキーンという甲高い音が響き、副校長がマイクのテストを始めたからだ。真央は啜り泣きながら走り去っていった。クリスは肩を落とす気力さえもなかったが、自分にできる精一杯はやっとことを知っていた。あとは来夏だ。

 しかし、下手から会場に出てみると、もう会場の電気は消され、自由自在に散歩する五つのスポットの光だけがぞくぞくと集まってくる生徒たちの影を映し出していた。たった一人の顔を探し出すなんてとても無理だった。

「紳士淑女もしくはそれ以外の皆様、まもなく開会式が始まりますので早急にお集まりくださるようお願いいたします」

茘枝の高飛車な司会を、クリスはぼんやりと聞いていた。


「紳士淑女もしくはそれ以外の皆さん、こんなに心の浮き立つ日が一年の中に何回あることか数えてみようではありませんか?」

 風間校長はこの呼びかけを大変気に入ったらしく、さっそく壇上で用いてスピーチを始めた。開会式は最高の盛り上がりだった。校長の一言一言にすら、生徒たちは熱狂し、スピーチの後には口笛と拍手喝采で体育館が壊れるかと思ったほどだ。冷え切ったクリスも段々その温度に懐柔されつつあった。来夏がいつの間にか素早く隣に滑り込んできたにも関わらず。

 来夏があぐらをかいていたクリスの膝を突いた。

「石崎、少し外に出られるか?」

膝に手が触れたのは偶然だろうとにらんでいたクリスは、来夏のささやきに少し驚いた。

「えっ、あっ、うん……」

二人は興奮しまくったクラスメートたちの間をくぐり、共に人ごみの外へ出た。しかし、来夏の言った「外」はその場所を指していた訳ではないらしい。あまり気にも留められずに、二人は体育館の外へ出た。クリスは新鮮な冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。クリスは肺から緊張を覚えた。

「それで、えーと……」

「あいつに希望を持たさないでくれ」

来夏が目を合わせずに呟いた。真央と同じ緑色の目は、虚ろな光をともしたまま、窓から望める木々に注がれていた。しかし、その声はしっかりしていた。

「真央を励ましたりしないでくれ――お前のことだから、さっきもきっとそうしたんだろうけど、俺はあいつの傍にいる資格なんてない。だから、もうあいつと付き合うつもりはない。俺はもう、あいつの顔なんて見たくないんだ。俺はあいつを諦めないといけない……」

「言うと思ったよ、そんなことを」

英語が出た。クリスは先ほど真央に向けた非情さで、今度は来夏に対していた。来夏が驚いたようにクリスを見つめた。クリスはその皮肉っぽい調子で外国語を続けることにした。

「資格がないとか、諦めないといけないとか、責任感の強い君がいいそうなことだ……」

「からかうのはやめてくれ」

来夏も英語で答えた。青ざめた頬に微かに朱色がのぼった。

「冗談で言ってる訳じゃないことぐらい分かってるだろ?俺は本気なんだ。あいつを守るためにはこれしかない。あいつの傍には、もっとふさわしい奴がいるべきだ」

「ふーん。それで、ふさわしい奴って?」

「あいつが……そう、もし、あいつが……声を失くした時にも、傍で見守っていられるような奴だ」

来夏はかなりの覚悟を決めて、この言葉を吐き出したらしかった。逸らしていた目に挑むような色を添えて、まっすぐとクリスの顔を見つめた。ああ、そういうことか。クリスの中で合点がいった。同時にクリスは、来夏への一切の同情が胸の中から掻き消えて、青い怒りの炎が立ち上るのを感じた。

「そうか!」

クリスは怒鳴った。

「分かったよ!関本は自分が傷つきたくないだけなんだ!秋元君が壊れるのを怖がってるんじゃない。秋元君を見て自分が傷つくのが怖いだけなんだ!」

「何度も言わせるな、石崎!」

来夏も応酬した。今や彼の顔は真っ赤だった。

「俺は秋元を傷つけたくないんだ!自分のことなんて、俺は……!」

「秋元を傷つけたくない?じゃあ、冷たい態度で彼を泣かせたのはなんだったのさ?!」

「あれは必要な犠牲だ!あいつがもっと傷つかないためには必要だった!」

「そんなこと、君に決める資格こそないさ!」

クリスの声の大きさに、ついに橋爪先生が何事かと飛び出してきた。誰よりも長い付き合いの友人として、同じイギリス人と日本人のハーフの少年として、今まで信頼しあい、助け合っていた二人が、今にも相手に殴りかかりそうな形相で向かい合っている姿に、先生はまごついていた。先生がおどおどと言った。

「君たち、一体何を……」

「いいか?よく聞け!秋元が君を選んだ!秋元が一番必要としてるのは、君だ!他のどんなに勇気と包容力に富む人でもない!」

「お前にあいつの何が分かる?!」

「そっちこそ、何にも分かってないじゃないか?!」

「俺は……!」

「少しは冷静になって考えてみろ、この臆病者!」

「何だと?!」

「やめなさい!」

英語が専門でない橋爪先生は、クリスと来夏が何を話しているかはさっぱり分からなかったはずだが、来夏の腕が素早く振り上げられたのにはすぐに気が付き、その痩身からは想像もできないほどの力で来夏を押さえつけた。二人ははっとした。

「一体何のつもりだ?!こんな大切なときに!勝手に開会式を抜け出したりして。早く体育館に戻りなさい!」

さすがのクリスと来夏も、橋爪先生の剣幕には敵わず、呆気にとられたまま、催眠術にでもかかったように館内へと戻っていった。ようやく我を取り戻した頃、二人は並んで両膝を腕で縛り付けて座りながら、ぴりぴりとした緊張した空気を共有していた。だが、クリスは、前をまっすぐ見つめる来夏の頬をきらめきが一筋伝っていくのをはっきりと見た。来夏が呟いた。

「頼む、もう見逃してくれ……」


***

 かくして大波乱のうちに文化祭は幕を開けたのであるが、クリスと来夏の間には、鉛のような沈黙が後から後から追いかけてきて、何かの拍子にどんと居座るのであった。クリスはノアと一緒に教室に戻った。朝の教室は、廊下から照りこむ光に明るく照らされ、背後になるジャズが済んだ冬の空気に溶け合って、何とも素敵な喫茶室へと大変身しているのであった。何もなければ素直に喜べたに違いないのに。クリスは来夏を恨まずにはいられなかった。

 ノアが昨日のうちに冷やしておいたケーキを取り出し、綺麗に八等分に切り分けて、皿に盛っていた。その隣で、料理班の生徒たちが飲み物を作ったり、ケーキの隣にさくらんぼやチョコレートソースを添えたりしている。一般客の入場も始まり、すでに階下は騒がしくなりつつあった。クリスは最初の客がくるのを待ちながら、椅子に腰をおろしていた。ノアが頑張って指揮をとっている姿にも、いつもなら励ましの言葉を送れるはずだった。だが、来夏の影がノアを見守る視線を遮っていた。今頃、校内を巡回しながら、憂鬱に浸っているだろう彼――大喧嘩した後でも、来夏はまだ親友だった。

 クリスは手招きで落合を呼び寄せた。落合はいかにも本物のカフェテリアの従業員にありそうな、袖の長い白のシャツに、黒いズボンを着込んでおり、本人も自負するとおりに、なかなかいけていた。クリスは身を屈めた落合に言った。

「俺、ちょっと実行委員の仕事に行ってくる。仕事をいくつか忘れてたんだ」

落合は不審そうな目をメガネ越しに投げかけたが、すぐに笑顔で頷いた。

「分かった。頑張れよ、エーリアル。こっちは俺がしっかりやっとくからさ。あっ、さっそくお客様だ」

「うん、ありがと……」

「うん、ありがと」が落合に聞こえていたかは分からない。落合は中学生らしいシャイな女子たちを、白い歯と甘く丁寧な言葉を用いて相手をするのに忙しかったからだ。クリスは吹き出しそうになるのをこらえながら、廊下を走り出した。菜月の言うとおり、ほんと傑作だ。

 一つ下の階の廊下は、人に満ち溢れていた。この熱気が四階まであがってくるのも時間の問題だ。明音がリスの気ぐるみを着て、クラス劇の呼び込みをしているのをクリスは見かけた(明音と分かったのは、たまたま傍を通りかかった慎にすばやくカメラを向け、叩きのめされたからだ)。最近落合と一緒にいるところをよく見るようになっていた、大河内ともすれ違った。大河内が何やら急いで階段をのぼっていくのを確認して、クリスは落合のために止めてやるべきだったかどうか一瞬ためらったが、結局落合にはいい薬になるような気がしたので放っておくことにした。

 花木先生は美術室にいた。扉一枚隔てた外はお祭り騒ぎだというのに、この教室だけは異様なほど静かだった。花木先生は楽しそうに「ルージュの伝言」を鼻歌で歌いながら、妖精のようなものの絵を眺めていた。クリスに気付くと、花木先生は嬉しそうに声をあげた。

「おっ、石崎。ちょうどいいところに来たな。ほれ、見てみろ、この絵は近代芸術の傑作……」

「先生、お願いがあるんです」

クリスは花木先生の言葉を遮って言った。

「美術室をしばらく貸していただけますか?俺、その、どうしても個展に飾りたい絵がもう一つあって……」

花木先生はぎょろっとした目でクリスを上から下まで眺め回した――当然、絵の鑑賞時にはサングラスを外していたので――それから相変わらず機嫌がよさそうに頷いて、もみ手をした。

「おぉ、構わないぞ。好きなように使え。じゃあ、俺は邪魔しないように、綿菓子でも食いにいってくるとするか」

「ありがとうございます」

花木先生は歌を口ずさみながら部屋を出て行った。「しかってもらうわ、マイダーリン……」そこまでがクリスにも聞こえた。扉が閉まるなり、クリスは入り口左手の抽斗に駆け寄り、授業用のスケッチブックと絵の具を取り出した。一瞬クラスのことが頭を横切った。ノアは大丈夫だろうか?何も問題は起こらないだろうか?だが、クリスはクラスメートたちを信用することにして、スケッチブックのページをめくり出した。大丈夫だ。今は、ただ、自分のやるべきことに集中しよう。そして、仕事が終わったら綿菓子でも買いに行こう。そうと決まれば、売り切れないうちに仕事を終わらせなければならない。



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