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間違いだらけの作品論  作者: ミン
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『彼方のアストラ』に続け!

 また一つ、すばらしい作品が終わってしまった。『彼方のアストラ』のことである。しかし良い作品というのは、完結したときにすがすがしい気持ちになるもので、残念というより、「いい話だったなぁ」と、しみじみ感じるものである。近頃のアニメは12~14話ほどで終わりなので、大抵は原作が長いため、消化不良気味で終わってしまう傾向がある。しかし『彼方のアストラ』は、13話でしっかりきっちり、過不足無く完結した。これは本当に、まずは原作者に、そして第二に、アニメ制作の監督やプロデューサーに、惜しみない拍手――というよりは、良い作品を見せていただき、ありがとうございましたと感謝を言いたい。


 心得のある方なら、この作品の「良さ」を、随所に感じることができるはずだ。例えば、これはたった一例に過ぎないが、最終話において、かつてのクルーがこのアストラでの旅の思い出を語る場面で、「泣いたり落ちこんだり、いろいろあったけれど」と語っている。近頃の作品では、これはJ-POPでもそうだが、「泣いたり」と来たら次に「笑ったり」と続けて、「泣いたり笑ったり」と何も考えずにそんなフレーズを使い回している。そこへ来てこの作品では、「泣いたり落ちこんだり」としている。これは、作者の大きな力量を感じるには、わかりやすい一場面だった。要するにこの作品は、原作の作者もアニメの制作陣も、作品というものを真剣に考える素晴らしい集団だった、ということである。


 以前「マクロスΔ」がすばらしかった、ということを書いたが、この作品――『彼方のアストラ』も同じくらいに素晴らしかった。やはり良い作品というのは、制作陣の本気を感じる。近頃のサブカル業界を儲けさせている金回りの良い、そして馬鹿みたいな大量生産大量消費型の作品の中に、まだこういう作品を作れるだけの力がアニメの業界にあることを嬉しく思う。どこかの記事で、そんなくだらない作品の感想として「文化の衰退を感じる」という批判があったが、私も同じように感じていた。


 『彼方のアストラ』は、「仲間」や「友情」ということを前面に押し出す作品だった。大抵の作品は、例えば『フェアリーテイル』も『ワンピース』も、『僕らのヒーローアカデミア』も、この「友情」や「絆」というものを描こうとしている(本気がどうか知らないが)。が、それらの、いわゆる知名度の高い作品よりも遙かに、遙かに、『彼方のアストラ』はそれを描けていた。嫌み無く、自然に、それを視聴者が感じ取れた。登場人物のセリフや行動に根拠があり、それぞれの人物が命を持って生きていた。どの場面を切り取っても、すばらしかった。こうした方が良かったのに、というような所が一つも無く、誰憚ることなく、傑作であると断言して良い作品である。


 実は今季のアニメで、他にもいくつか面白いと思っているものがある。『荒ぶる季節の乙女どもよ』がそれだ。鋭い表現が随所にあり、少し無理のある人物設定に目をつむれば、かなり楽しめる作品だと感じている。『ソウナンですか?』『ダンベル何キロ持てる?』『まちカドまぞく』『からかい上手の高木さん』『フルーツバスケット』――この辺は、制作陣の作品愛を感じることが出来、好印象である。『コップクラフト』や『BEM』は評価の難しいところではあるが、作り自体はしっかりしているので、観て損はしない。


 きっと総評としては、ここに該当していないアニメが評価を得ることになるだろうと思うが、案外今期は、『彼方のアストラ』という、年に1作あるかないかの傑作は別にしても、丁寧に作ってある作品が多いので、これからの作品にも自然と期待が持てる、そう思わせてくれるシーズンだった。『彼方のアストラ』に続く面白い、そして独創的な作品が出てくることを大いに期待したい。

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