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夢から醒めるその日まで  作者: サンマスター
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第一話 My treasure!!

序盤はばんばん書こうと思います

「位置について……よーい」

 秋の抜けるような夕空の下、私はスターターの掛け声とともに地面に手を降ろし、お尻を高く上げる。もう何十、何百とやってきたクラウチングスタートの構え。姿勢を保ちつつスタートの合図を今か今かと待ち受ける。眼前には自分の胸程もあるハードル。いつものように飛ぶ姿を一瞬頭の中に思い描き、その後は自分の耳に全神経を集中させる。早く走り出したい。今にも踏み出しそうになる一歩を必死にこらえる。まだだ…まだ…まだ――

「どん!!」

 合図とともに体が弾ける。完璧なスタート。ほんの数秒でハードルが目前に迫る。

た、た、た、たーん

頭に思い描いたとおりに最初のハードルを飛び越える。

た、た、た、たーん

次も、また次も、一定のリズムを繰り返す。何度も何度も。トラックを一周するまで私は人から機械に代わる。設定していた通りのペースで走り、飛び越え、また走る。息が上がってくる距離も設定どおり。

 いける――

今の走りは理想の走りだ。このままいけば間違いなく自己ベスト更新間違いないッ!

 と、思ったのが間違いだった。機械が感情を持てばそれはもう機械ではない。僅かに、ほんの僅かだがリズムが崩れる。そしてそのまま最終コーナのハードルを飛び越えようとする。後は見えてくるゴールラインを目指して走るだけ……だったのだが、見えたのはゴールラインではなく空と校舎だった。あ、うろこ雲。なんか絵になる構図だなぁ……じゃなくて!

「いったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 一瞬遅れてやってきた痛みに私はトラックの上をのたうち回る。

「うおぉぉぉ……のぉぉぉぉぉ……」

「みっちゃん!!大丈……夫そうだねよかったぁ」

幼馴染が意味不明なことを言いながら駆け寄ってくる。

「ちょ亜也香……いったいどこをどう見たら今の私が元気そうに見えるのよ!?」

「へ?だってそんなに大きな声出せてるし、さっきからゴロゴロ元気に動いてるから、また転んじゃって悔しがってるだけなのかなぁ……って」

「いや、これアピールよ!!めっちゃ痛いわー。誰か手を貸してほしいわーっていう奴!!」

「あぁ~私それ見たことあるよ。サッカー選手がよくするやつでしょ。痛くないけど痛いわー。とりあえず痛がっとけばいいことあるわーってやつだよね。でもそれじゃあみっちゃんやっぱり大丈夫なんだねよかったぁ」

「よかったぁ……じゃない!本気で痛いわよ!」

 本当に幼馴染かを疑うほど話がかみ合わない。まぁこれもいつものことなんだけどね!何でだろうね!不思議だね!

「それに――」

 亜也香の言った通り転んで悔しいのもある。最終コーナーでハードルを飛び越えられず転ぶのは今回初めてじゃない。というか転ぶのは大体ここなんだよなぁ……原因は分かっているんだけど改善ができない自分が情けない。どうして自分はこうもダメなのか、頭ではもっとうまくやれるはずなのに……。あぁダメだ落ち込んできた。

「――ほいっ」

「へ?」

沈みかけてきた私を文字通り引っ張りあげてくれたのは幼馴染だった。私を引っ張り上げるとそのままの勢いで私を抱きしめる。

「ね?みっちゃん痛いアピールしてたからいいことあったでしょ。さ、早く片付けしよ。ミーティングにおくれて怒られちゃうよ」

そういって亜也香はハードルを片付け始める。

 ……まったくこいつは。いつもいつも......何でだろうね、不思議だね。

「そうね。あんなハゲに説教されるのはまっぴらごめんだわ。よしっ、ちゃちゃっと片付けるわよ!」

そう言って私は亜也香の背中をぶったたく。

「いっっっったぁぁぁぁぁい!なんで叩くのぉ?」

「ん?痛いアピールかしら。なら大丈夫ね」

「あ~さっきのこと怒ってるでしょ」

「いや別に?」

そんなわけないじゃない。いつも私のことを助けてくれるあんたのことを私は――




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