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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
―夢幻の可能性編―
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第十一話 逃走劇

 ――穂村は今、守矢四姉妹から必死の形相で逃げていた。


「待ってぇ、私の王子様ぁー!」

「穂村正太郎!! 貴様小晴姉さんの気持ちを弄ぶつもりか!!」

「違うっての! あれは事故だ!! たまたまそいつが能力切ってたからだろ!?」

「たまたまだとしても、姉さんの想いを大人しく受け入れろ!」


 小晴による網の投影に、監視者ガーディアンとして旧居住区に君臨するAランクの守矢和美の猛追を前に、穂村は決死の逃亡を続けていた。

 監視者の第一能力プライマリは自分が守ると決めた場所エリアにおける身体能力向上、そしてとくに生身で銃弾や爆撃に耐えられるほどの防御力を得られるという力。

 そして第二能力セカンダリは――


「姉さん! そこのマンションの右手から出てきます!」

「了解したわ!」


 一度目にした相手が自分の支配したエリアを抜け出るまで、ずっと居場所や行動を把握できること。


「正太郎さん!」

「うおっ!?」


 とっさに網を燃やそうとするも、断熱素材でできた網に今の集中力を切らせた穂村が火をつけることなどできない。


「チクショウッ!!」


 とっさにその場で爆発して縄を爆風で吹き飛ばし、穂村は二人の手が届かない上空へと飛ぼうとした。

 しかし――


「――黒天井エアブロックッ!!」


 ビルとビルとの隙間をブロックが阻む。

 そう、屋上には常に守矢要が常に待機し、穂村を逃がすまいと巧みに行く手を阻んでいた。


「チッ! さっきからブロックで邪魔しやがって!!」

「いくらうちでも高速で動くものをロックオンできませんからね! こうして行く手だけでも防いで、何とか姉さん達のお手伝いだけでもさせていただきますぜ!」


 その宣言通り、穂村の眼前にビルの隙間を阻むほどのブロック塀が立ち並ぶ。


「その気になりゃ行くところを制限できるってか!?」

「いえ流石にそこまではできないです」

「そりゃよかったぜ!!」


 穂村は更に足元のバーナージェットを加速させ、ビルの合間を駆け縫い飛び立っていく。

 誰も追いつけないように、誰もその手を伸ばせないように。


「火力を! もっと速く!!」

「逃がすか!!」


 ビルの合間を縫う穂村の頭上に、黒い影が広がっていく。

 ――守矢和美が、穂村の背中に無賃乗車を仕掛けてきた。


「ぐぁっ!」

「一旦、地に落ちろ!!」

「ぐっ……落ちてたまるかってんだ!!」


 空中できりもみしながらも、和美と穂村は制空権を握るために互いに戦っている。


「フザケンじゃねぇ! 俺に近寄るんじゃねぇ!!」


 紅蓮拍動ヒートドライブにより全身に身を纏い、生身の和美を無理やりにでも引き剥がそうとする。だがそれでも和美は離れることはない。


「この程度、熱くもなんともないわ!」

「そうかい、だったら――」


 穂村は右手で和美の顔を掴み、自ら引き剥がそうとしようとすると共に炎を集約させていく。


「――ゼロ距離で爆撃を喰らっても何とも無いってか!?」


 灼拳爆砕デュークブラストを放つ際に行うあのチャージと同じ、眩い光が和美の目の前で発生し始める。


「――獄光焚砕フラッシュブラスト!!」


 眼前で熱と共に炸裂する閃光弾を前に、和美は反射的に両腕で目を覆う。そしてそのおかげかでしがみついていた和美の体勢も崩れ、そのまま落ちていってしまう。


「うわぁああああっ!!」

「ようやく落ちた――ってあいつ生身で着地できんのか!?」


 穂村は落ちていく和美を追うようについで下へとブーストをかけて飛び、地面ギリギリのところで和美を拾い、安全に降ろす。そして穂村はまたしがみつかれたら面倒だとすぐさま上空へと飛び立つ。


「ッ、待て! 何故助けた!?」

「お前安全に降りられる能力じゃないだろ!」

「だからといって敵を助ける奴がいるか!」


 和美の言葉は既に穂村に届かず、穂村は旧居住区画を逃げるように飛び去っていく。


「全く……敵を助けるなどと、不思議な男だ」

 和美は今まで穂村に向けていた視線とは違う、少し優しさが混じったような目で穂村が飛び去った方を見送る。そしてそんな和美の背後に、小晴の姿が忍び寄る。


「…………」

「……あっ、小晴姉さん! 申し訳ありません、取り逃がしてしまいました!」

「過ぎた事は仕方ないわ。それより――」

「それより……?」

「それよりどうして貴方は穂村君に抱きついた上、顔を緩めているのかしら?」

「ハッ! 違います! そういう意味じゃないんです!!」

「言い訳は後で聞きます」


 穂村がいなくなった今、今度は和美と小晴の必死な鬼ごっこが始まる事となった。

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