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第2話 全裸な彼女と大剣の彼と

(とりあえず落ち着け俺。何か考えよう、とりあえず洗いざらい情報を整理するんだ)


 それなりに神経が柔軟だったのかそれとも混乱が極まって逆に落ち着いてきたのか、もしくはその両方か。

 兎にも角にも自らの異変に気づいた直後こそ甲高い声で叫びを上げる程度には取り乱したものの、すぐに思考を取り戻した鏡夜はまずそれを自らを落ち着かせる為に働かせる事にした。

 『考える』という行為はそれそのものが冷静さを要求する為、脳をクールダウンさせる事に繋がる。そして自分自身やその現状といった雑多な情報の整理は今彼、もとい彼女の身に起こっている異変の手がかりに繋がる可能性があるというのは勿論の事だが実はそれ以上に、『肉体』という人間を構成する重要な要素が大きく変化してしまっても竜胆鏡夜は竜胆鏡夜であると、その記憶を持って自分自身に証明する事で、ある種の精神的安定を得る事が出来るという所に重要性が存在する。

 とは言え、物を考えられる程度ではあるが冷静さとは未だ程遠い今の鏡夜は、後者の利点にまで気が付いてはいなかったのだが。


「……俺の名前は竜胆鏡夜。性別は男、齢は16。若干背は低いが大よそ中肉中背で黒髪の、顔もまぁ多分典型的な日本人顔。今は養母である『竜胆きらら』と二人暮らしで、反転世界の監視及びそれらに関する事件事象の調査、解決を専門とする日本政府直属の秘密特務組織『RWG』所属の臨時職員バイトにして『ブレイカー』。今日、7月18日はいつも通り普通に起きて普通に飯喰って普通に筋トレと訓練をしてその後任務で『ディザイア』の駆除を行っていたらいきなり謎の男に襲われ、敗北。気づいたら何故か、女の姿になっていた」


 ちなみに『ブレイカー』はセイバーを扱う人間の総称で、『ディザイア』は反転世界に巣くう化け物の総称だ。と誰に教えるわけででないそんな薀蓄を最後に一人ごちて説明終了である。


「……いや飛びすぎだろ間が!『何故か』ってなんだ『何故か』って!」


 正体不明の男に負ける→女になる。

 そのあまりの突飛さに思わず一人突っ込みを入れてしまう鏡夜。

 叫んだ反動で胸がぷるん!と一揺れした。


(それにしてもワンアクション起こす度に、やたら揺れる自己主張の激しい胸とか以前と比べて高くなった声とかが気になって仕方がない。というか大体なんで全裸――)


「全裸!?」


 思考に余裕が出てきたおかげで漸く、自分が何も身に纏っていないという事実とその事の重大さにたどり着いた鏡夜は思わず両手でばっと股間を隠したがその直後、ぷるんと跳ねた胸に気づきそれを隠すため思わず右腕を胸に押し当てるも『ふにょん』という擬音が似合うその柔らかな感触に驚き思わず腕を離してしまったため、今度は身体を抱く様にそっと右腕を押し当てて胸を隠した。

 一連の動作を終えた後、なんというか羞恥心やら情けなさやら妙なドキドキやらその他etcな感情が入り混じって顔が真っ赤に染まり、つい涙まで出てきそうになった鏡夜だがそこは気力でぐっとこらえる、だって男の子だもの。いや今は身体女だけど。


「……とりあえず、着るものを探さないとどうにもならないな」


 セイバーには現実世界と反転世界を繋ぐ扉を開く力がある。本当はそれを使って今すぐにでも現実世界に戻って『RWG』に色々と報告したい所ではあるが、さすがに全裸のまま現実世界に戻るわけにはいかない。

 羞恥心から来る頬の熱は相変わらず収まらないが、どうにか気を取り直して立ち上がる。

 幸い、今鏡夜が居る反転世界は基本的に無人であるため他人に今のあられも無い姿を見られる心配はそうそう無い。もしかしたら自分と同業の人間が居る可能性もあるがそれならそれで事情を説明……しても変質者当然の姿であんな突飛な話、正直言ってまともに聞いてもらえるとは思えない。そもそも誰であろうと自分の裸体なんてそうそう見せたくない。


(やはり人目は極力避ける方向で行くべきだな……)


 そもそも無人の世界である反転世界に、そう都合よく衣服なんて落ちているのかと言うと正直怪しい所ではあるが、とりあえず探してみなければ始まらない。

 それに女体化してしまったという現状に至ったその原因も理由も全く分からないし思い当たる節も無いので、これ以上この場で考えるよりも兎に角行動を起こした方がまだマシだろうとも思ったため、未だ頬の熱が冷めないながらも鏡夜は股間と胸を押さえながら立ち上がるのだった。

 立ち上がって分かったが、視界が少し低くなっている気がする。身体が細くなっただけでなく背も縮んだらしい。

 元々平均よりも低めだった自身の身長に若干のコンプレックスを持っていた鏡夜は、身長が更に低くなってしまった事に一瞬軽い苛立ちを覚えたが、今の状況を省みると直ぐに気にするのを止めた。

 少し前までまで感じていた全身を覆う重さと束縛感の様な物はもう殆ど無くなっていた。もしかしたらあれは変わってしまった身体に慣れていなかったが為に感じたものだったのかもしれないと、鏡夜は自分の中で結論付けた。

 そして、今更ながら度々視界に入る女体の艶かしさをつい意識してはいやいや自分の身体なんだからと無理やり意識外に追いやりながら、周りに人が居ないか警戒しつつ歩き出す。

 そこで自分は路地裏に倒れていたらしいとふと気づいた。ビルの上で戦っていたはずなのに何故こんな所に倒れていたのだろうと一瞬思ったが、しかし今はそんな事を気にかける余裕も暇も無いのでそれについては直ぐに頭から追い出して歩き続ける。

 狭い道を進み、一度左に曲がると奥に大通りが見えた。

 鏡夜は路地裏から顔を出すと左、右と見て人が居ない事を確認。人が居なくても大事な所は押さえるのは忘れずに、誰か通りがからない様に祈りながら心無しかゆっくりと足を踏み出して――。


 瞬間、ギチギチギチギチィ!と歯軋りの様な、もしくは何かの虫の鳴き声にも似たけたたましく不快な音を左上から聞き、反射的に顔を上げてしまった。

 鏡夜の視線の先。彼女の左手にある3階建てのビルの外壁に、一体どんな原理が働いているのか壁を足場にして、そいつは張り付く様にそこに居た。

 そいつの、全体的にモノクロで配色されポリゴン的に角ばったその肉体は無機物の様にも思えるが、一定の間隔で脈を打つその様子がどことなく有機的でそのちぐはぐさが奇妙な不気味さを感じさせる。

 蟷螂に似た逆三角の顔には瞳とおぼわしき黒く大きい球体が二つと、先ほども聞こえた不快な音を今も鳴らし続けている歯を持つ顎がついている。

 更にこれまた蟷螂に似た胴体には6本の脚部がくっついており、高く持ち上がった前両足には巨大な鎌が備わっていた。

 そんな容姿の、全長5メートル程の体躯を持つ蟷螂モドキの化け物。そいつの名、正確にはそいつらの名は『ディザイア』。

 その名は反転世界に生きる唯一の生命体の総称であり、人間に仇なしその魂を喰らう化け物の名だった。

 鏡夜が蟷螂モドキのディザイアに気づきその姿を視界に収めたその直後。ディザイアはその巨体に似合わず軽々と壁を蹴り跳躍すると、鏡夜に向かって腹からダイブする形で飛び降りてきた。

 しかし鏡夜は裏路地へは戻らず逆に大通りの中心に飛び込んで回避。そして身体を丸めてそのままの勢いで華麗に前転を決めて立ち上がる……予定だったのだが変化した身体は以前とバランスが変わったせいか、もしくは単純に今の身体の運動神経がよろしくないだけなのか、地面に手をついた瞬間思い切り体勢が崩れて右肩から倒れこみ一回転どころか半回転すら行えずに地面を横滑りする羽目になってしまった。

 コンクリートの地面が女の柔肌に傷と痛みを与えていく。


「っ……!ああもう本当にこの身体ってのは!」


 男の身体よりも強く感じる痛覚と、いつもなら行えた行動を行えなかったという苛立ちに鏡夜は顔をしかめるが、今は気にしていられないとばかりにすぐに気持ちを切り替え立ち上がり先ほどまで自分が立っていた、今は自分から7、8m程離れている所に着地してこちらへと緩慢な動きで首を向けるディザイアへと向き直った。

 本来なら大通りへと逃げるのは悪手だっただろう。何故かと言うと裏路地なら、ディザイアの体格的に追いかける事が出来ないからだ。ただディザイアが執拗に狙いをつけてきた場合、大通りへと出た瞬間に襲われかねないのでそれを考慮するとあくまで一時しのぎにしかならない。だが逆に言えば一時しのぎは出来るという事であり、少なくとも「いかにも狙ってくれ」と言わんばかりに大通りへと飛び出すよりは圧倒的にマシだったはず。

 だが鏡夜はそれでもあえて逃げ道に大通りを選んだ。それは何故か。

 答えは単純にして明快、彼女が『ブレイカー』だったからだ。それもとびきり優秀な。

 先ほど鏡夜が一人で思い返していた通り、『ブレイカー』とは『セイバー』を持つ人間の総称である。

 そして彼女らが持つ『セイバー』は、現実世界の武装ではダメージを与えにくい特殊な外骨格を持つディザイアに対して有効打を与えられる、いわば『対ディザイア用』の役割を持つ武装なのだ。

 更にもう一つ。謎の大鎌の男には負けたものの、それでも鏡夜は特務組織『RWG』に在籍する同年代のブレイカーの中では飛びぬけて強かった上、幼い頃からブレイカーとしての任務についていた為に実戦経験も豊富だった。今目の前に居るディザイア程度なら数え切れない程葬り去ってきたし、片手間で屠れる程度の力量さも間違いなくあった。

 つまり鏡夜は、襲い掛かってきたディザイアを迎撃、排除する為に広く戦いやすい大通りへと飛び込んだのだ。

 ここまでの観点から見ると正しい選択だと思われる。だがそこに、彼女は一つの懸念事項を覚えた。


(さっき前転に失敗した時はっきり分かった。それがどの程度なのかはまだ分からないが、この身体は男の時よりも弱体化している)


 とは言え自分のセイバーは長銃型。その仕様上、銃身でぶん殴りでもしない限り格闘戦は行えないがそれ故にその威力は所有者の身体能力に依存せず、また中、遠距離において真価を発揮するタイプのため、目の前のディザイアが持つ鎌の推定射程から逃れている今こちらの方が位置取り的にも有利。


(つまりこの場において俺の優位は揺るがない!)


 自分のセイバーなら相手の射程圏内に入る前に、一歩も動かずとも余裕であの蟷螂モドキを葬れる。肉体が弱体化しようとも回避行動の必要が無いならば実質問題は無い。

 そう結論付けた鏡夜は、殺気を放ちいかにもこれから攻撃するぞと言わんばかりに両前足の刃を振り上げだしたディザイアに向かって果敢に吼える。


「身体能力が少しばかり弱くなった程度でお前みたいな雑魚に遅れをとるか!ブレイカーを舐めるなよ!」


 そして右手をばっと前に突き出し、何かを持つ様に手を軽く開いた。

 ……しかし、それだけだった。互いの殺気に満ち溢れていたはずの場は今やしんと静まりかえり、意思を持たず破壊、捕食衝動を行動原理とするディザイアでさえも何故かその場立ち止まり不快な鳴き声すら止めて軽く首をかしげる。その光景はまるで失敗した手品師と白けた観客の様だった。


「……あ、あれ?」


 セイバーは普段、所有者の魂と一体化するという形で肉体に内蔵されているが、所有者の意思一つでその姿形を空間に固着、顕現させる事が出来る。


「ちょっ、ちょっと待て。おかしいな……はっ、ふっ、せいっ!」


 出来る。


「おぉぉぉぉぉ……!」


 出来る、はず。


「ぬぅぅぅぅぅぅ…………はぁ!」


 出来る、はず……だった。


「はぁっ、はぁっ……なっ、なんで……」


 いつもなら右手を軽く広げた後。


 直後、虚空から続々と現れる青白い光の粒子がその手を中心に収束し、一つの武装を形作っていく。

 粒子の出現と収束が収まった時、その右手にはクリアブルーのカラーとポリゴンの様に角ばった装甲を持つ一つの長銃が握られていた。

 鏡夜は握り締めた右手にグリップと引き金の感触が伝わるやいなやその銃口をディザイアのどてっぱらに向けると躊躇い無く引き金を引く。

 鳴り響く一発の銃声。狙い通り、ディザイアの胴体を貫き綺麗に空いた風穴。

 終わりを告げる様に鏡夜がきびすを返すと同時に、一撃で絶命したディザイアがその場に崩れ落ちた。


 と、まぁ大体こうなるはずだったのに一体全体どういう事なのか、現実は何度やり直してもセイバーは顕現する気配すら見せなかった。

 微塵も想定していなかった状況に身体が変わった時よりも別の意味で混乱し、がむしゃらにセイバーを顕現させようと試みる鏡夜と、首をかしげたまま空気を読んだかの様に動きを止めているディザイア。

 しかしディザイアはすぐにはっとしたかの様に首を真っ直ぐに戻すと顎でギシギシと音を鳴らし、鎌を持ち上げ直して鏡夜に突撃する。

 混乱の極みにあった為に反応が遅れてしまった鏡夜の視界に映ったのは、眼前で今にも鎌を振り下ろさんとするディザイアの姿だった。


(しまっ――――!)


 身体が変わった時の様に、一度想定外の事態で混乱した思考はそう簡単に回復しない。そして当然敵もそんな時間を与えてくれるはずが無い。

 元々の混乱に加えてディザイアの迫る凶刃。鏡夜の思考からは回避と言う選択肢すら頭から飛んで真っ白とも言える状態となってしまった。

 その場から動けずに立ち竦む鏡夜、あわやこれでお終いかと思われたその瞬間。


「ギィィ!?」


 と何故か金切り声を上げ、ディザイアが一瞬痙攣した。その後首が力無く垂れ下がるも、先ほどよりも弱弱しくギッギッと途切れ途切れに声を上げながら無理やり首をもたげていく。


「助かった……?しかし一体何が――あれは……!」


 突然の出来事とギリギリで助かったという事実に、漸く我を取り戻した鏡夜はすぐに自分を助けたそれを見つけた。


「奴の首にセイバーが……」


 ディザイアの、蟷螂の様に伸びた首。その後部に一本の、長さが1メートルを越える巨大な刀身を持った両刃剣が深々と刺さっている。

 否。燃える様に赤く、そして美しく透き通ったクリアレッドのそれは間違いなくセイバーだった。

 柄を斜め上に向けて突き刺さっているそれは恐らく誰かが投擲したものなのだろう。それがディザイアにダメージを与えて動きを止め、鏡夜の命を救ったのだ。

 その事実に思い至り一人納得した鏡夜。ついでに言うと彼女にはあのクリアレッドの大剣型のセイバーを投げた人物に心当たりがあった。


「それにしてもあのセイバー、まさか――」


 鏡夜の言葉はそこで途切れる。何故なら突然ディザイアの首の根元からクリアレッドの刃が生えてきたからだ。それは首から頭部まで一直線に上がってそのまま頭頂部を抜ける。するとまるでバナナの皮が捲れるかのようにディザイアの首から上が二つに裂けていった。

 血しぶきの代わりに灰色の光の粒子を散らしながら、果物の皮を捲る様に分かれていく頭部。その背後、ディザイアの胴体の上には半袖のワイシャツに黒い長ズボンという典型的な高校生の夏服を着て左手に学生鞄を携えた少年が、先程までその首に刺さっていた大剣型のセイバーを右手だけで軽々と持ち上げて立っていた。

 そう、先程セイバーを投擲したのも、今ディザイアの首から上を真っ二つにしたのもこの少年だったのだ。

 赤みがかった茶色の短髪に、180cm程度の長身とがっしりとした体型。ワイシャツから覗く、剣を持ち上げる右腕の筋肉の張りを見れば、その腕が良く鍛えられたであろう事が一目で伺える。

 少年は、その精悍で活発そうな顔全体に好戦的な笑みを浮かべてディザイアの背中から飛び降りた。

 そしてディザイアは目の前の鏡夜には目もくれず、まだ自らの背後にいるであろう敵を殺す為に四つの後ろ足を器用に使いかさかさと回りながら、しかし頭部が二つに裂かれたせいで視覚が機能しなくなったのか、闇雲に刃を振るい続ける。

 現実世界の生物と違い、ディザイアは頭部を潰されても死なない。彼らの急所は唯一つ、胴体の中心部に位置する球体状の『核』のみであり、それ以外の部分が幾ら壊れようとも生命維持には一切支障が無い上に、幾らダメージを与えてもやがては再生してしまう。つまりディザイアを殺すには、核を潰すしか方法が無いのだ。

 少年もそれを分かっているらしく、ディザイアの背中から飛び降りその背後に着地するやいなや即踏み込みを入れて真正面に駆け出した。

 それに対しディザイアは右回りで方向転換。刃を振るい続けながら身体ごと後ろに振り向こうとするがその前に、大体90度方向転換した辺りで少年がその右側面へと辿りついた。


「これでっ……とどめだぁ!」


 ディザイアの懐を取った少年は、気合の篭った叫びを上げながら横一文字に大剣を振るう。

 その一閃は頭を裂いた時の様に胴体の先端から後端までをノンストップで切り開き、その体内に隠されていた核をも纏めて真っ二つにたたっ切ったのだった。

 核を失ったディザイアはその生命機能を即座に停止する。

 二つに分かれた核と共に、その全身が灰色の光となって徐々に空に散っていく。

 それとほぼ同時、少年のセイバーも赤い光となってこちらはあっという間に大気に溶けた。

 しかし少年のセイバーは消滅したわけでは無い、再び魂と溶け合い一体化しただけだ。

 文字通りの瞬殺。

 それをやってのけた張本人はディザイアの死骸が放つ燐光越しに突っ立っている鏡夜を見つけた。

 一方、『極力人目は避ける』という方針をすっかり忘れて突然の闖入者とディザイアとの戦いをつい見届けてしまった鏡夜も、燐光の向こうで途切れ途切れに見える少年の姿を捉えると、自分の予想が正しかった事を理解した。

 二人を隔てる光が少なくなっていく中、鏡夜に向かって少年の声が響く。


「もしかしてと思ったけどやっぱ襲われてたのか。大丈夫だっ――」


 しかし光が互いの姿を隠せなくなる程に消えた時、その声ははたと途切れた。

 突然その身体の動きまで止めて目を見開き驚愕の表情を見せる少年に、鏡夜は一体何事なのかと尋ねようとしたがその瞬間、自分の置かれた状況に気づいて彼女の顔はみるみるうちに赤く染まっていった。


「っ!?み、見るなぁ!!」

「えっ、あっ、わっ!ご、ごめん!!」


 大事なところを咄嗟に隠しながら叫ぶ鏡夜と、彼女の様にしかし別の理由で顔を赤くして彼女から慌てて背を向けた鶴来。

 分かる。自分だって数刻前まで男だったのだから、よく分かる。思春期の少年に女性の裸をあんな近くで見せたらあんな反応をしてもしょうがない。

 だからと言ってそれが理解出来ようが、見られている側が死ぬほど恥ずかしい事に変わりないわけで。


(しかも何だってこんな時に出くわすのががあいつなんだ……!)


 死ぬほど恥ずかしいその姿を一番見られたくない人間に見られてしまった事に、鏡夜は心の中で誰に向けるわけでも無い恨み節を吐いた。

 その見られたくない人間であり、今鏡夜の目の前に居る少年の名は『赤金鶴来あかがねつるぎ』。鏡夜と同じくRWG所属のブレイカーにして、自称『鏡夜のライバル』である。

【今日の戯言コーナー】

 性質上単調になりがちな説明回的な物を省いていく為に、そういう情報はなるべく劇中でさりげなくかつ小出しにしていく方針で書いているつもりではありますが、これはこれで難しいというか、イマイチ自然に書けている気がしなくて微妙な気分になる。

こんな専門的な用語ばっかの面倒な小説考えたのは誰だぁ!僕だ!

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