表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

第7章





―――――五十嵐達也―――――




俺は、レストランのドアの前に出た。




「達也‥!」


「‥‥‥弘也‥?」



弘也は俺の兄貴。


五十嵐弘也[イガラシヒロヤ]


多分、俺の2つ上。




「達也、、俺‥」


「何も聞きたくねえよ‥人殺し。」



俺は里沙の手を握りしめ、走った。


“アイツ”から、逃げるように。



「五十嵐先輩‥?」


公園に着くと、里沙は不思議そうな顔で、俺を見た。



「っ‥ごめんっ、里沙。」



まだお互い息がきれている。



「っ‥何が‥?」



息切れしながら里沙は答えた。



「デートなのにな」



俺はいつもの笑顔を見せた。



「‥‥‥“人殺し”って?」



そりゃあ気になるよな‥。



「聞く?」



こんな大事な話しをしてるのに‥俺は笑顔を向ける。



「聞かせて?」



「‥‥‥‥‥俺は‥‥‥‥」



















‥‥‥俺が、まだ子供だったとき。


母さんも優しくて、父さんもかっこよくて、にいちゃんは頼れる存在だった。


身内関係に困った事なんか無かった。



それは‥俺が“義理”の家族だったからかもしれない。




赤ちゃんの頃、母親は俺を置いて出て行った。


それを拾ってくれたのが、“母さん”だった。


まあ俺は覚えてねーけど‥



「にいちゃんそれ僕のだよ!!」


「先に取ったのは俺!」


「あんたたち!仲良くしなさい!」


「「‥‥はーい。。」」



おもちゃの取り合いになったとき、母さんがいつも喧嘩を止めてくれる。



「お父さんお帰りなさい!!」


「おー達也ー!今日は何してたんだ?」



優しく問いかけてくれる父さん。


俺は、父さんみたいになりたかったんだ。


中学二年生。


兄貴は高校生になってから、犯罪に手を染めるようになった。


薬や窃盗、暴力、たばこ。


母さんと父さんが怒っているのに、続ける兄貴。



そして兄貴は、家に帰らなくなった。


母さんと父さんは、心配なんか、するだけ無駄だ!って言っていたけど、

毎晩眠らずに兄貴の事で、母さんと父さんが話し込んでいた事を、俺は知ってる。



俺は充実してた、きっと。


それなりにモテた。



でも同時に、日に日に母さんの目の下が黒くなっていった。


それは多分、兄貴のせいで、眠れないせいだ。



そんなある日。





‥‥‥‥ピンポーン



「‥‥‥‥‥弘也!?」



母さんの驚いた声が聞こえたのは、夜の9時頃で、父さんも帰っていた。



母さんの声をきいて、玄関に走っていった父さん。


俺は母さんの声で、昼寝から目が覚めた。


俺は眠い目をこすり、玄関へと、すりあしでゆっくり歩いた。



ほんのりシンナーの香りがしたのを、俺は覚えてる。



鈍った血の匂い。



力なく倒れた血だらけの母さん。



壁によりかかって動かない血だらけの父さん。






真っ赤な包丁を持った‥‥シンナーくさい‥‥‥兄貴



「兄貴‥?」


「ひさしぶりだなあ、達也。」


「何やってんだよ兄貴!!!」


「遊び?」



ニヤッと笑った兄貴の顔は、父さんの優しい笑顔と、少し似ていた。



「てめぇ‥!」


「やんのかよ?」



俺は兄貴の胸ぐらをつかんだ。


兄貴も俺を笑いながらつかみ、2人で取っ組み合いになった。


母さん‥‥喧嘩を‥‥‥


喧嘩をいつものように‥‥‥とめてくれよ。。



俺は気づいたら病院にいたんだ。


多分兄貴に殴られて母さん達と一緒に倒れていたんだと思う。



あの時俺が救急車を呼んでいたら、父さんと母さんは生きていたかもしれないって、何度も悔やんだ。



だけど何も解決しなかった。


それから俺は高校に進学し、母さんが貯めておいてくれた金で、一人暮らしを始めた。


相変わらず兄貴は行方不明。



そして高校生。


彼女が出来た。


彼女は高校で初めて会った愛莉という女の子。


告白された時は、嬉しかった。


付き合い始めて、初めて彼女の事を知った。


学校ではマドンナと呼ばれていること。


学校1可愛いと言われていること。



俺にはわからなかったけど。


二年生になった時。


ある日いつものように学校に行く途中、

後輩を見つけた。


その後輩は、彼氏らしき人と学校に通っていた。



俺はその時、一目惚れしたんだ。



その子の彼氏が、俺と同じ二年生だと知ったから、まずはそいつと仲良くなった。



名前は‥



亮。



彼女がいるのにも関わらず、俺は一目惚れをしたのは、失礼だと思い、俺は愛莉に別れを告げた。



「愛莉、別れよう?」


「え?なんで?」


「他に‥好きな人が出来た。」


「誰?」


「後輩。」


「名前は?クラスは?」


「知ってどうすんの?」


「どんな子か、知りたくて。」


「知ってどーすんの」


「‥‥‥‥」


「とりあえず、俺らはもう終わったから。じゃあな。」



そう言った後、俺は教室に戻った。



「亮ー!」


「ん、おー、どした達也」


「別れた」


「はっ、なんで?!」


「好きな人できた。」


「誰だよー?」



にやにやしながら亮は聞いてくる。


お前の彼女だよっ!



なーんて言えねえけど。


それから知ったのは、亮の彼女が里沙ちゃんという名前だった事。


お互い初めてだった事。


‥‥‥最近亮が、里沙の親友と浮気している事。



里沙が“それ”を気付いていない事。


それを知ったのは、里沙が屋上に来た後だった。



亮は里沙が好きだって言ってた。


ただ最近、里沙が暗いから、息抜きしてたと言っていた。



それから俺は、亮と里沙が別れてから、積極的に里沙にアピールした。


だんだん明るくなってきた時、


「里沙はさ、何かが無い限りここに来てくれないよね。」


「どういう意味?」


「俺に心開いて無いじゃん。」


「‥‥‥ごめんなさい。」



俺はただ、里沙が理由もなく、俺に会いたいって思ってほしかっただけだ。


言葉が少なすぎたんだ。



でもそのあと、ちゃんと誤解が解けた。




そして、俺は、家を無くした里沙に、一緒に住んでくれと頼んだんだ。



一緒に住み始めて、里沙は笑顔が多くなった。



里沙を変えられてるのが嬉しかった。


まあ、こんな事理沙には言えないけど‥。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ