第1章
あの日の私は
本当に充実していたんだ。
幸せだった“つもり”だったんだ。
「里沙ー!」
「おはよう、亮!」
私は、相川里沙。[アイカワリサ]高校一年生。
竹下亮[タケモトリョウ]は、私の彼氏。高校二年生。
公立清華高校。通称“キヨコウ”。
そこそこ楽しい高校生活。
亮とは2カ月前から付き合ってる。
今は夏。
夏休みが間近に迫った、暑い暑い夏の日。
いつもと同じ日々が、始まるんだ。
「里沙、明日理科の小テストだねー」
「あっ、勉強してない‥」
「まじかよー。今日俺んち来て勉強するかー」
「うん!」
学校の登校中、亮とそんな話をしていた。
学校につくと、
「おっ!相変わらずラブラブだね!」
「おはよー恵美っ」
天野恵美[アマノメグミ]高校一年生。中学からの親友。
「そいえばね、五十嵐先輩、マドンナと別れたらしいよ!」
「マドンナ‥?」
「里沙知らないのー!?奥田愛莉先輩だよ?学校のマドンナの!」
「あー!!あの人か、えーなんで別れたの??」
「五十嵐先輩が好きな人いるってさ!」
「ふーん?誰だろうね」
「あの愛莉先輩を振るんだから、相当可愛いんだろうなあ。」
五十嵐達也[イガラシタツヤ]高校二年生。学校1のイケメン?
奥田愛莉[オクダアイリ]高校二年生。通称“マドンナ”
でもまあ、そんな話は私には無関係で。
授業が終わって、帰り支度をしているとき。
「里沙ー。行こーぜ」
亮が迎えに来た。
「うん」
「じゃあ、明日テスト頑張ろうね!バイバイ里沙」
「うん!バイバイ恵美」
そういって私は、教室をあとにした。
亮の家に着くと、亮はお茶を出してくれた。
亮は一人暮らしで、実家でつくっている自家製のお茶を、実家から毎年贈ってくれるらしい。
私と亮は、向かい合わせに座った。
「勉強やろっか。」
「里沙ー」
「ん?」
「好き。つか、大好き。」
「バカ。」
私は照れ隠しで、そそくさと勉強道具を取り出し、シャーペンを握りしめた。
授業中渡されたプリントの問題を、ひたすら解いている‥‥‥‥のに、
「亮、こっち見すぎ。」
「里沙が可愛いからさ」
「プ、プリントやりなよ。」
「里沙、そこ間違ってる」
「えっ、どこ?」
「ここ、」
「ああ、ほんとだ!」
顔を上げると、いつの間にか近くなっていた亮の顔。
とっさに目をそむけると、亮の右手が、私の頬に伸びてきた。
頭を引き寄せられて、軽いキスをした。
「じゃあ、ほんとに勉強しよっか。」
「う、うん‥」
赤面した私をみて、亮はクスクス笑っていた。
充実している“つもり”だったんだ。
読んでくれて、ありがとうございました!