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貴方が去った世界より①

(思い出したんや、、、)

息が詰まるような夢の中に翡呂は落ちていった。


* * * * *

小さいころから、誰にも相手にされなかった。

大阪の小さな一軒家。

「お母さん。ご飯は?」

「ごめんねぇ。今忙しいの」

名前を呼ばれた記憶も多くない。


俺が生まれてからすぐ親は離婚した。

俺は母親についていった。

物心ついたときには、

「○○、押し入れに隠れてて」

母は俺を隠すようになった。

男の人を連れて来り、男の人の家に行ったり。

言葉も理解できなかった。


ご飯がなくてお腹すいて、外に勝手に出てったら世界は広くって。

泣きながら歩いていたら。話しかけてくれる大人がいた。

そして、変な建物に連れてってくれてたくさん話を聞いてくれた。

少し時間がたつと、どこかへ行った母親は俺を迎えに来て、泣きながら抱きしめてくれる。

「こんな母親でごめんねぇ」

そう言って抱きしめてくれた。


ー言いつけを破れば見てくれる。


それだけはしっかり理解した。

嬉しくて嬉しくて、たくさんやった


そしたら、今度は自由が奪われた。


ご飯は用意されるようになった。

だけど、体は家に縛られて動けなかった。


誰もいない薄暗い部屋で自由もなく、ただ一人で過ごす。

誰も見てくれず、生きてるのかすらわからなかった。


それから数年、11歳ぐらいになった。

「ご飯ここに置いとくね」

それだけ言って母親は出ていった。


母親がいない隙にハサミで縄を切った。

何日もやって切れそうになっていたのに。それにすら気づいてなかった。


もういいや。


そう思って、外に出た。

相変わらず外は広くて、怖くて泣きそうだった。

だけど、泣かなかった。結局一瞬だけ助けて地獄に戻される。


だから、話しかけられても笑った。

笑ってれば誰も何もしないから。


何日も街中をさまよっていた。

お腹がすいたら、笑って話しかけたらたまにお菓子をくれる人がいた。


でも、それじゃお腹がすいて仕方なかった。


そんな時、目の前に見るからにきれいな身なりをした同年代の子供がいた。

ただ、羨ましかった。


子供は信用できる。力で負けることもないだろうし、最悪逃げられる。


「なぁなぁ!」

「なに?」

不愛想な子供だと思った。

「飯持ってない?」

「持ってないよ」

汚い恰好をしていたにも関わらず、その子供は嫌な顔一つしなかった。

「お腹すいてるの?」

むしろ心配してくれていた。

「すいとる!」

「お前帰る場所あるのか?」

「ないで」

「そうか。行きたいと思う場所は?」

「そうやなぁ、遠くへ行きたい」


ーここじゃない、もっと遠く誰も知らない場所で、やり直したい。


「わかった。ご飯やるから、ついてこい。」

別に信用してなかった。騙されてるとすら思っていた。

でも、それすらどうでもよかった。

「金ないで?」

「いいよ。俺が出す」

「ええんか!」


そっから新幹線へ乗った。

「俺は、御嶽 誠。お前は?」

「俺かぁ?俺、、、俺は」


誰やろ。忘れてもうたな。


「忘れてもうた」

そう言って笑った。

「なんだそれ」

誠も笑った。


そんなこんなで俺は御嶽家へ着いた。

大人が出迎えてた。

誰も信用してなくて、一言もしゃべらなかった。

部屋は与えられたが一歩も出なかった。


「安心しろ。俺がついてる」

そう言って誠という男の子は毎日のように、会いに来てくれた。

そして遊んでくれた。


「なんでそんなに良くしてくれるん?」

思わず聞いてしまった。

そう言うと、誠は笑った。

「俺が、お前といるの好きだからだよ」


* * * * 

「誠、、、はん」

目を開いても目の前には髪の毛がよく見える。


思い出される翠の顔。

翡呂は飛び起きた。


「ハァ、、ハァ、、、ハァ、、、、」

気づいたら涙が溢れていた。

「嘘、、、やんな、、、」

隣には、廻が心配そうにしていた。

真っ白な髪の毛に片目は緑で片目はピンク。

それを隠すためにいつもフードを被っている。

廻は、紙に文字を書いた。


ーごめん。にかいも


「西武はん。ええよ。心配してくれはったもんな」


ーひろ。だいじ。しんぱい


「きにせんでええよ」

笑顔を取り繕うにも、無理だった。


(聞くべきちゃう聞いたら全部。全部壊れてまう)


「西武はん」

廻は手をパンっと叩いた。

そして、手を広げる。

蝶と花が舞った。


「きれいや」

(幻覚でも見せられているような、気持ちが軽くなった)


ーできること。これしかない


「ありがとうな」

そういうと、廻は安心したように笑った。そして、消えていった。


その瞬間、誠の姿がフラッシュバックした。


誰にも心配かけないように声を押し殺した。

(苦しい。苦しい。なんで、また、おいてかれるん)


コンッコンッ


「翡呂ー?」

何度も何度も笑顔でその扉を開けてくれた。


ーずっと見ててやるから、安心しろ


(言ってくれたやん)

扉の先に誠がいることを期待してしまう。

「入ってええよー」

(演じきれるやろか。こんな状態で)


ガラガラ


開いた先には翠がいた。

(感情を抑えろってのが無理あるやろ)

翡呂は目の前にいる翠を睨んだ。

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