そばに居たとしても④
炎で燃える祠を見て今までを振り返っていた。
「お主がくれた人の姿は悪くなかった。」
時月や、町の仲間と遊んだことを思い出す。
「お主に出会えて我はたのしかった。」
初めて会った時何のためらいもなく助けに来てくれたことを思い出す。
ぽつぽつ零れる思い出がまるで炎に乗って天高く上がっていき時雨に届くのではと思った。
「なぁお主がくれた壺の中身我はまだ見てないぞ。いったい何をくれたのじゃ」
開いたら、ダメな気がして開けられなかった。
「お主がそばに居たから、我は楽しかった」
ふと時月の顔が頭に浮かぶ
「我があの子が好きと申したらお主は嫌な顔するか」
そう言って笑った。
屋根が崩れそうになる。
少しだけ目に涙が浮かぶ
「お主は我のためにこんな立派な祠をくれた」
パチパチと祠が燃えている様子をじっと見る。
「我にはもったいなさすぎる」
涙がこぼれた。
「ありがとう」
思い出すべてが消えてしまいそうで本当に悲しかった。
「許さないよ」
シバの後ろから声が聞こえた。
振り返るとそこには息を切らしている、時月がいた。
「なぜ、、、じゃ?」
目に映っている時が本物か否か区別がつかなかった。
時月は走って祠の方へ行った。
「まて!」
止めようとした。
「時の牢」
時月がそう言うと時間は止まったように体が動かなくなった。
いや、時月以外の時が止まった。
「時月は時を超えるんだよ」
黄色い目をしていた。
だが、その光は前に比べて黒みを帯びていた。
「時間がない」
時月はそう言って祠の中へ入っていった。
「解き放たれよ」
時はそういうとシバは体を動かせるようになった。
「なんと馬鹿なっ!!!」
そう言ってシバも祠の中へ入った。
炎の中で時月は壺を二つと鏡を一人で持とうとしていた。
「あほう!!!!」
そう言ってシバは時月の体を抱えて急いで出ようとした。
「止めるな!」
時月は目をまた黄色くさせた。
前よりも黒みは多くなっていた。
「私は、時を操れる。だが止める代償に視力を使う」
キッとシバを睨み。
「使えるのは時間はもう残り少ない。コロが止めるなら私は」
シバは怯む。
「視力をなくしてでも、これだけは」
決意のこもった瞳にシバの負けは確定した。
シバは小さく笑って「わしの負けじゃ」
「だが、、、」
シバは時月の体を持って祠の外へ飛び出した。
そして祠の外で時月を置いた。
その姿を見たシバは言葉を失った。
「お主、、、」
「早く行って!」
突き放すようにせかすようにシバに行った。
シバは急いで中へ戻り鏡と壺を二つ抱えて帰ってきた。
「すまぬ、、、わs」
時月はシバに抱きついた。
「無事でよかった。」
抱きつかれた腕は焼けどして赤く腫れていた。
顔をあげた時月の顔にもそれが残っていた。
「すまぬ」
それ以外言えなかった。
祠は崩壊した音がシバの後ろから聞こえた。
それから、シバは隣町で陽子の元で一緒に暮らし始めた。
「ばか!あほ!かす!使えない幽霊!」
そう言ってシバを罵っている時月。
「すまぬかった。」
シバは申し訳なさそうに耳を垂らした。
「我は」
バチンッ
時月がシバの頬を叩いた。
シバが驚いているとさらにもう一発叩いた。
「そばに居たのに、なんで言ってくれないの」
「私ってそんなに頼りなかった?」
時月が溢れだした言葉と涙がシバの心に沁みた。
「我は生まれ育った町を燃やした。もうだめなのじゃよ」
シバは寂しそうに笑う。
バチンッ
「ダメなわけない」
じっとシバの目を見た。
「こんなに優しいのにダメなわけがない」
ガラガラッ
陽子が部屋に入ってきた。
「その通りです。」
時月の体を撫でながら陽子は言う。
「だが、我は時月に怪我を」
痛々しい傷と赤みにシバは胸を痛めた。
「私がそんなので価値が落ちるわけないでしょ!バカ犬」
そう言って近くにあった座布団をシバに投げた。
「今の我は人間じゃ」
「そういう問題じゃない!!」
もう一枚座布団が飛んできた。
数年たって飢饉は終わった。
故郷へ戻ろうと陽子と時月は言ってきた。
「怖くないのか?」
シバは心配そうに二人を見た。
「私の目が大丈夫って言ってる」
そう言って笑った。
時月は眠っている時、ランダムで未来を見るらしい。
「じゃとしても、恨めしくないのか」
おずおずとシバは二人を見る。
二人は顔を見合わて笑った。
「恨みませんよ」陽子はさもおかしそうに笑った。
切られた傷の跡は残っているのに。
「私たちは人間ですよ。間違いを犯すものです。」
陽子は諭すようにシバに優しい目を向けた。
「彼らはいい人たちです。私の見る目は間違いありません。だから、罪悪感を抱いてるものでしょう」
シバはその目から目を背けた。
「許し許され人はできているものです。」
「許せぬことはないのか?」
陽子は穏やかな笑みを浮かべる。
「ありますよ。確かに娘に手を出したことは許すつもりはありません。だけど、この子が許すなら私がどうこう言うものでもありません。」
心の深さが深すぎる。
シバは何年たってもこの人には敵わないと思った。
「コロ、帰ろう故郷へ。」
そう言って差し出された手は、いつも通りだったように見えたが、大人びて見えた。




