それぞれの旅路へ①
「いやぁ東京いろいろあったね」
「そうじゃのぉ」
ホテルについてシバと光が別途で一息をついた。
「ねぇシバ、シバってもしかして双子だったりするの?」
シバは目をぱちくりさせた。
「そんなはずはない、いや犬であるうえ。なくもないかもしれんが、、、なぜじゃ?」
「会ったんだよ。」
「誰にじゃ」
光は遠くを見つめるように見た。
「シバの青髪が黒髪になって。耳としっぽがないただの人」
「はて?」
「遠く昔の人」
「、、っ」
シバははっとなった。
「どこでじゃ!?」
シバは食い気味に聞き返した。
「シバが蓮矢を助けに行ったときに、急に現れて」
光は出来事に思いを巡らせた。
* * * * *
「助けてあげましょうか?」
そういってシバのような人が笑いかける。
「誰だお前」
冷ややかな目で見返す。
「その言葉遣いはよくないですよ」
「こっちの状況知ってて話しかけてるなら気を遣う必要ないだろ?」
「ごもっともです。私はあなたの先祖です。名前はいつか分かりますよ」
見た目はシバだけど中身は全くの別人のようだ。
「へー。で?」
「ははっ!悲しい反応しますねぇ」
「簡単に教えろ。」
「そうですねぇ。力が欲しいですか?」
光は、はっとした。
「感情の極致が霊力の源。あなたのその悪意は極致に達しています。すぐにでも悪霊が憑りつくでしょう。しかし、それではあの犬の霊を遠ざけたりできませんよ?」
「あんたなら、なんとかなるの?」
先祖は深く頷いた。
「もちろんです。加護という形でもいいんですが、今回は共鳴という形で行こうかと」
「共鳴?」
「霊と人とで起こるものですよ。種類はいくつかあります。霊力の強い人や霊が知らず知らずのうちに一時的に周りの人や霊の霊力を引き上げる、空間的共鳴。遺伝的なつながりのある霊が子孫の子の能力を開花させる、遺伝子的共鳴。同じ目的を持った霊と人が一時的にお互い認知できる、意志的共鳴」
「俺もレンも霊能力ないんだけど」
「それが最初の共鳴にあたります。あの犬は気づいてませんが、お二人の霊能力は一時的に高くなっております。それに貴方は、」
先祖は、にやりと笑った。
「俺?」
「霊能力の家系ですよ。能力に関して薄々気づいてますよね?」
「まぁね」
確かに思うところは何度かあったと思った。
「そんな悪霊っていっぱいいるの?」
「基本的にはそんなにいません。ただ異例としてごく稀に現れたりします。」
「じゃあ俺は憑かないんじゃないの?」
「本当はそのはずなんですよ。だけど、あの犬の霊が良くも悪くも力が強すぎる。引き寄せてるのにも気づかない」
そいつは少し苦虫を嚙みつぶしたような顔をした。
「俺、今怒ってんだよね」
「知ってますよ。あの二人を近づけない術を教えてあげましょう」
そいつは俺に手を差し出してきた。
俺はその手を取った。
「これは私とあなたの秘密ってことにしてくれますか?」
「考えとく」
そう言って光の体に粒子のようになって取り込まれていった。
* * * * *
(確かにこの事実をシバに伝えるのは酷だよなぁ)
「その時にあの結界を張った。あいつは自分のことを俺の先祖って言ってたな。」
「なるほどのぉ」
「そうなの?」
「そうじゃ。わしの恩人じゃ」
「そっかいい人だったんだね」
「そうじゃの。まだここにおったのか。すぐにでも会いたいのぉ」
その日は、それだけ話して疲れてたこともありすぐに寝ようとした。
シバの寝息が聞こえる。
光は先ほどの記憶を思い返しながら天井に向かってぼやいた。
「お互い大変だな」
「全くです」
うんうんと天井からスーッと人が現れた。
「お前じゃねぇよって。え?」
「いつまでとは言ってないですよね?」
先祖は人差し指を口に当ててウインクする。
「悪霊はお前じゃねーか」
「お主うるさいのぉ」
シバの声に目の前の悪霊は一瞬で姿を消した。
そして一言だけ声が響いた。
「私やっぱ美男ですね」
「黙れ。ナルシ悪霊」
朝10時チェックアウトをして、ホテルをでた。
そこに翠が立っていた。頭に霊を乗せていた。
光たちに気づくと急いで駆け寄ってきて。
「シバ様!!!うにゃが見えなくなりました!!!」
うにゃとは霊の名前のようだ。
「その感じでか?」
頭の上にはうにゃがぺちぺちと翠の頭を叩いている。
「いやぁこれからっていうときに。正直で良い奴だった。」
その後ボソッと「気に入らんかったけど」と言った。
そうって天を仰いだ。
「まだいるわよ!」髪の毛から垂れ下がるように翠の顔の前にうにゃが下りてきた。
「気配しかわからないですよぉ」
そういって涙を流している。
「朝から元気だなぁ」
そう言って蓮矢が現れた。
蓮夜は翠の頭の上からうにゃを取った。
「ご主人様!」
そういってうにゃが蓮矢に手を伸ばす。
その頭を撫でた。
翠はハンカチを噛んで、「私の坊ちゃまです。頭撫でてもらうなんて、ぐぬぬ、、」
「なんで蓮矢は見えてんの?」
光はふと疑問に思った。
「確かに。なんでだ?」
そういうとうにゃが腰?に手をあてて
「よくぞ聞いてくれましたね!あたしご主人様の式神になったの!」
そう宣言した。
「そんな簡単に式神になれるの、、?」
「簡単も何も、そのままならしゃべることすらできなかった、あたしに霊力をくれたじゃない!」
「まぁたしかに?」
ピンと来てはないが受け入れはするようだった。
「手の甲みてみて!」
「ん?」
手の甲を見る。うにゃが力を込めるとうっすらと印のようなものが浮かび上がってきた。
そこには、まだはっきりとした形のないようなものが浮かび上がっていた。
「見てみて!あたしの額!ご主人様と一緒!」
翠はショックを受けて膝から崩れちた。
「お主は見えてないはずじゃろ」
「見えないです!見えないですけど、、、何か伝わってきます坊ちゃまとおそろい、、ずるい」
光は翠の背中を撫でた。
ふと光の顔をみて
「やっぱ嫁に来ません?」
光は撫でるのをやめた手で、翠の背中をぶったたいた。
「この印の形ってなんか意味あるのか」蓮矢が手の甲を見て言う。
「まだ生まれて間もない霊じゃ。これからお主が育てていけばその印の形も変わるじゃろう」
「へー」まじまじと印を見た。
「まずい状況の時はその印に念じればいつでもあたしを呼べます!」
そういって肘?を曲げて強いをアピールするうにゃ。
「わかった。これからもよろしくな」
蓮矢は優しい視線をうにゃに送った。
「私とも末永くよろしくおn、、」
「やだ」
蓮矢は冷たい視線を翠に送った。
「元気出せって」そう光が言うと。
「何か勘違いしてません?坊ちゃまはツンデレというものです」
光は固まった。
一同は、蓮矢の車で駅に向かい。
新幹線が来るまでみんなで買い物などをした。
「じゃあまた近いうちに会いに行くよ」光はそう言って改札へ向かう。
「元気にしておるんじゃよ」シバも後に続いた。
「あぁ!二人とも元気でな」そう言って手を振った。
「行かないでくださいよぉぉぉおぉ」隣で号泣する翠に蓮矢は蹴りを入れた。
「あたしも次会うまでに強くなります!」そう言って翠の頭の上から手を振った。
やがて、シバと光が見えなくなった。
「いやぁ、友を持つのはいいものです。」ハンカチで目元をぬぐう翠が言う。
「まぁな。遊びに誘って本当に良かった」
「あたしも来てくれなかったらご主人様に出会えなかったもの!」
蓮矢は振り返り来た道を戻る。
「さて、行くか」
「おや?何か決心でもされたんですか?」
「まぁな。やりたいことができた。だからお前ともこれっきりにしようと思う」
「え?冗談ですよね?」
「冗談で言うと思うか?」
呆然と立ち尽くす翠に振り返りもせずに蓮矢は歩く。
「じゃあな。割とたのしかった。ありがとう」
「なんで、、、」そう呟いた翠の拳は手に爪が深く食い込んでいた。
「ご主人様!」そう言ってうにゃも飛びついたが
「あいつのそばに居てやってくれ」そう言って、翠の元へ行くように指示した。
遠くに消えていく蓮矢の背中を睨むように翠はみつめて
「弱いくせに。何すかしてんだよくそ野郎」
「元気出して!」うにゃの声は翠には届かない。見えてすらいない。
時間だけが過ぎていく中、翠はまだその場から動けずにいた。
やがて、蓮矢とは別の方向へ歩き出した。




