第8話 あくまで少女は炎の中で
──身体が、動かない。
──動かなきゃ。動かないといけないの。
──どうして、だったかしら。
──身体を焼かれる痛みが、怖い。
──全てを失う痛みが、怖い。
──怖い、怖い。
私はただ、眼前の炎を前に、氷で盾を作り、自分を庇いながら立つことしかできなかった。
「ロザリーだっけか!?大丈夫かお前?」
敵が、武器を振り回しながらも、心配の声をかける。
「わりぃがこのまま、焼き尽くす!」
盾はすぐに溶かされ、眼前に炎の斧が迫る。
すると、たくさんの赤く細長いものが私を庇う。
「ちっ邪魔しやがって!」
シューマだ、シューマが庇ってくれているのだ。
「動か、ないと……」
氷の大鎌を握りしめる。そうだ、動かないと。
私が、シューマを守らないと。
赤い血が、少しずつ固まっていく。それを視界の端に入れつつも、炎から目が離せずいた。
氷の大鎌を構え、魔力を込める。
「ぐぁっ!」
私が斬る前に突如響いたのは、敵の苦しげな声。
見やると、固まった赤黒いものが、ギルバートの肩を貫いていた。
「えっ……!?」
息つく間もなく、血の紐が腕を、首を、拘束していく。
武器が腕から落ち、ガンッと、乾いた大きな音を立てる。
「ロザリー!シールを!」
シューマの声が聞こえ、私は太ももに力を入れ、地を蹴って走り出した。
そして、無我夢中で勝利への切符を剥がし、己の背中に貼り付ける。
「し」
──ただの血液なのに、こんなにも強い。
──これが、優れた素養のある者が、宿り人になったときの強さ……!
──それに、
──でも、私は。
「クソっ、クソがぁっ!」
ギルバートがもがき、脱出を試みている。
「制限時間まで!5!4!」
「っ!?」
氷の大鎌を構え、息を呑む。どうかこのまま、と、祈りを捧げる相手もいないのに、願ってしまう。
「3!2!」
客席からの声も加わり、カウントダウンが心臓にまで強く響く。
ギルバートのもがきが大きくなる。あちらを見やると、リンゼルもまた。
「1!」
息が一瞬止まる。
「0!勝者、10番!シューマ・ロザリーペア!!」
その瞬間、呑まれ、押しつぶされそうなほどの歓声が響く。
「勝った……!?」
シューマは目を見開き、呆然としつつも声は喜びに上ずっていた。
「シューマ……わ、私……その、ごめ」
「ありがとう!!」
シューマが突如ずいっと距離を縮めてくる。
「ちょっ」
「こんな俺をここまで連れてきてくれて、ずっと俺のこといっぱい助けてくれて、ありがとう……!!俺、初めて勝ったよ!!」
「シューマ……」
目の前の彼は、勝利への、無邪気な喜びに満ち溢れていた。
そんな彼を見ると、不思議と、私の心も徐々に晴れていくのだ。
「こちらこそ……ありがと」
資格試験落ちたので、定期更新復帰を延期します…
近いうちに合格して、3ヶ月以内の復帰を目指してます。
がんばります!




