第7話 たとえ地を這えども
観客がどよめく中、俺は短剣を構え直す。
俺たちは止まったまま、様子を見合っていた。
「ふん、まさかお前たちがここまで残るとはな」
リンゼルがため息まじりにそう言ってくる。
「あーじれったい!」
「ギル!」
ギルバートの苛立った声と駆け出す音が、この状況をガラリと変えた。
「っ!」
突然のことに俺は目を見開き、横に跳んで躱す。
彼らに対抗すべく、さらに身を切る。
鮮血が溢れ、頭がくらっとするが、しっかりと前を見据えて立つ。
「はぁっ、はぁっ……!」
ほんの一瞬ロザリーを横目で見やると、ロザリーは呆然と──ただ呆然と、少し震えながら、炎の斧を見つめていた。
「ロザリー……?」
「ギル、女を狙え」
「いきなりんなことできっか!まずはこいつを倒してからだ!」
俺にできることは、拘束すること、はたきおとすこと。
ただ、それだけだ。
紐状の血を鞭のようにしならせ、ギルバートを拘束すべく隙を伺う。
「っ!」
リンゼルのロングソードが振り下ろされ、咄嗟にその両方の腕を血で受け止める。
「ちっ!」
ギルバートが躊躇いがちに、目を見開いて固まるロザリーの元へ走り出す。
──いったいどうしたんだ、ロザリー!?
──自信に満ち溢れているロザリーが……!?
「っあああああああ!」
俺はこれまでにないほど、深く激しく切っていく。
──もっと、もっと、血が必要だ!
──俺の身体なんか、どうなってもいい!
──だから、俺は、俺たちは……!
リンゼルを受け止めながら、ロザリーを守れるほどの血が。
そして、ギルバートの炎で──!
「ぐっ!」
リンゼルに、小柄の割に強めの力で蹴られ、俺は地面を転がる。
転がりながら、俺が流した血の紐を二股に分ける。
俺の頭は地面に強制的に近づけられ、ぐりぐりと押さえつけられる。
「痛っ!」
「お前、戦いに慣れているわけではないな。どうせ、種子の力に浮かれただけだろう。何者にもなれないお前が、何者かになれるのではないかと調子に乗っている」
「……」
「目障りだ。さっさと諦めれば良いものを」
「それ、でも……」
血の紐が二股に分かれ、俺の望むままに形を変え、拡大していく。
今にも持っていかれそうなふらつきに耐えられたのは、惨めにも踏みつけられているおかげかもしれない。
「ふん、終わらせてやる」
リンゼルが腕を強くよじり、腕の拘束から逃れようとする。
血の紐がぶつりと切れ、彼の剣が振り下ろされる。
出血で途切れそうな意識は、肉に突き刺さる痛みにより繋げられている。
──このままじゃ取られる!
俺の新たな血をリンゼルの首へと高速で向かわせ、リンゼルの注意が首に向いたその瞬間、最後の力を振り絞って彼の脚を切りつける。
「っが、っ!」
「俺には、力もない。地位も名声も、何もない……!
そんな俺が、俺なんかが、変わりたい、逆転したいなんて……馬鹿だ……!
それでも──!」
ギルバートに迫るそれを見やり、リンゼルを締め付け続け、息も絶え絶えになりながら笑う。
そう、こんな俺でもここにいる。
連れ出してくれた、信じてくれた、挑ませてくれた。
だから──!
「それでも、勝利は譲らない……!俺たちの勝ちだ……!」
熱と、汗と、鮮血と。
そして、力なく項垂れる俺たちを前に、審判が下された。
「勝者は──」
資格試験の受験日が近づいてるため
更新お休み中です
遅くとも来月(2026/05)には復帰します!
また、シューマやロザリーのやり直しを見守ってくれたら嬉しいです!
資格試験はやり直さなくていいよう、がんばります!




