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無い内定、異能有り〜没落悪魔と自罰の力〜  作者: 有明アンリ


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第4話 初めての依頼、初めての異世界日常

「うおおぉ!?」


あまりのことに俺は思わず大きな声を上げた。


見渡す限りの植物だ。

主に50センチから1メートルほどはある植物で構成されており、

蔦が家のドアを覆うように生えている。

敷地いっぱいに植物が伸びており、中には、何やら突き出た口らしきものを上に向けて、

パクパクと動かしているものもたくさんある。

おそらくこれが食人植物だろう。


「こ、これを俺らで……」

「倒さねばならないわね」

「よろしくお願いします〜」


サーニャが微笑むと、ロザリーはそんなサーニャをちらりと見やる。


「まずは役割の確認をしましょう。サーニャ、あなたは戦闘においてどのようなことができるのかしら」

「主に相手にかける補助魔法です〜。相手に疲労感を与えたり、力が出にくくなる魔法もかけられますよ〜。

あと、例えば毒を持っているとかそういった状態を、鑑定の要領で確認したりします〜」

「なるほど。じゃあ、シューマにはこれを」


ロザリーが手をかざすと、氷の短剣が現れる。


「これは?」

「体を切るための道具よ。あなたは血を使って戦うのでしょう?」

「うっ。あ、あぁ!」


俺は一瞬怯むも、大きな声で返事をする。

ロザリーは更に氷の大鎌を出し、それを握る。


「大丈夫!な、なんとかなる!」

「えぇ、行きましょうか」


俺たちふたりは駆け出した。

後ろを見やると、サーニャは後方で杖を立てていた。

補助魔法を使おうとしているのだろう。


俺はごくりと息をのみ、駆けながら自らの腕を切る。

氷の冷たさが体の内部に伝わるが、冷たさのおかげか、切った痛みは思ったより少なかった。

しかしやはり切り口や血を見るのが恐ろしく、俺は目を背けてしまう。


その後植物たちを見つめ、俺はそこに向かうよう心の中で"指示"をする。


「うお!?」


縄状の血のかたまりが、植物の方へ向かっていく。

植物たちをまとめてぎゅっと拘束すると、食人植物は口部分をぶんぶんと動かしてもがいている。


「いけっ!」


ぐいんと血の縄をこちら側に引くと、植物たちが引き抜かれた。

さらに近くに駆け寄ると、茎の切れた食人植物がまだ口をぱくぱくさせていた。

少し躊躇ったが、念の為、短剣で口を切り裂く。


「す、すごいなこの力、でも痛い!」


ロザリーを見やると、植物を凍らせながら切っている。


「危ないっ!!」


少し遠くから、サーニャの叫び声が聞こえ、緑の光も視界に入ってきた。

咄嗟に俺が腕で頭を庇うと、血の縄がしゅばっと音を立てて動く。

上を見ると、ぐったりとしている食人植物を血の縄で拘束していた。

ぐったりしているのは、サーニャの魔法によるものだろう。


「ありがとうございます、サーニャさん」

「いえいえ〜」

「ロザリー!」


ロザリーが大鎌を振るう背後に、背の低い食人植物の口が迫る。

ロザリーが避けた直後、俺の血の縄が届いて、やつを拘束した。


「悪いわね。切り損ねた奴がいたのね、ありがと」

「大丈夫!」


ロザリーは俺が拘束した食人植物を凍らせて、一気に砕いて植物ごと破壊する。


こういったことを続けること約1時間、やっと家の前の草たちを一掃できたが──。


「えっ……」

「な、何よこれ……」


扉を開けるまで、俺は知らなかったのだ。

真のラスボス(・・・・・・)が待っていることに。



──めちゃくちゃ汚部屋じゃんかよ!!


それから、あらゆる物を捨て、どかし、箒で掃き、雑巾がけまでやった。ついでに見たことないような虫の駆除もした。

その間サーニャは苦笑いしていた。



「はぁ、はぁ、終わりました……!」

「ありがとうございます〜!」


サーニャはにっこりと微笑んで、俺たちに袋を渡してくれた。

中には、金貨が入っている。

金貨には、木と、木から落ちるハート型の葉が描かれている。


「これが……!」

「はい、お約束のおひとりにつき10000リパです〜」

「助かったわ、ありがと」

「あ、ありかとうございます!」

「いいんですよぉ。申込みはこの町の商人ギルドに行けばできますから、明日忘れずに行ってくださいね〜」


サーニャはキッチンから酒瓶をずらりと並べる。

色とりどりな異世界の酒瓶に目が離せない。


「ビールはもちろん、ワイン、その他果実酒までありますよ〜。今日はご自由に飲んでくださいね〜」

「いいんですか、ありがとうございます!やったなロザリー」

「……礼を言うわ」

「ロザリーさんって、その、失礼ですけど〜、お酒飲んでも大丈夫なんですか?」

「私は子どもじゃないわよ!」

「あらあら、それは失礼しました〜」


俺が目をきらきらさせる横で、ロザリーはそこまで特段嬉しそうにも見えない。


──ロザリーって、基本的にいつも冷静だよな。


とはいえ、異世界の悪魔と俺の感じ方が似通っている方が不自然かもしれない。

俺はそう思い直し、サーニャに言われるがまま席について乾杯したのであった。



「だからぁ、わたしはぁ〜、高貴なるろざりーさまなのよぉ、おわかりぃ?」


──酒癖悪っ!?


甘かった、本当に甘かった。

まさかこんな一面が待っているとは思わなかった。


ロザリーは、自分がいかに位の高い存在であるかというようなことを延々と話しながら突っ伏し、

そのまま横に座る俺をじっと見上げる。


「な、何」

「ねぇ、私……あなたに会えて良かったと思っているのよ、シューマ」

「何で俺なんかに──?」

「だってあなたは、傷ついてもなお、誇りを諦めていない……」

「えっ」


とろんとした目のロザリーは、いつになく可愛く、且つ妖艶に思えた。


「だからこその、その力……。もっと誇りなさい、あなたが欲しいものを諦めなかったから得られた力よ。

私は……そんなあなたのこの先を、見たいと思ったわ」


ロザリーはふふっと微笑む。


「そうですね、私もシューマさんのこれからのご活躍が楽しみです」


サーニャもそう言ってくれた。

酒に強いのか、飲んでもけろっとしている。

俺もさらに酒をあおってみる。

ふんわりハーブの香りが漂うビールを飲むと、その苦さと優しさについ酒が進んでしまう。


「飲みすぎには気をつけてくださいね〜」

「じゃんじゃん飲みなさい!今夜は寝かせないのだわ」

「あらやだロザリーさんったら〜」


──何言ってんだこのふたり。


「大会は1週間後ですから、その間も自宅を貸しますよ〜」

「えっいいんですか!?」

「はい!あとはこういった依頼をこなしてお金を稼いだり、ゆっくり休んだりなさってください〜」

「ありがとうございます!」

「助かるのだわ!毎日宴会できるわね」

「楽しそうだけど毎日は流石にきつい」

「あら、なら私もお仕事終わりにご一緒していいですか〜?」

「話聞いてるか!?ってあっすみません」


家に泊めてもらっていながら、ついついサーニャにまで敬語無しで突っ込んでしまった。


「いいんですよ〜、むしろ嬉しいですよ。

ここからはお互い、仕事抜きのお付き合いでもあるのですから、私にも自然体で話してくださいね〜」

「あっ、ありがとうございます」

「あれ〜?シューマさんの自然体って、そんな話し方でしたっけ〜?」

「えっ、あっ、あっ、ありがとう」


──って俺めっちゃぎこちない!!

──恥ずかしすぎる!!


俺のぎこちないお礼にも、サーニャは嬉しそうに微笑んでくれた。

ふたりの微笑みで、固まっていた心が溶けていくような感覚を抱く。


酒が進み、眠くなってくる。

一方ロザリーは時折眠たそうにしつつも、変わらずテンションが高い。

サーニャは微笑んでワインを飲み進める。それでも全然酔ってなさそうで、結構強いのかもしれない。


「シューマもう寝るの?もっと飲みなさいよ、寂しいじゃない」


悪魔が珍しく寂しげな顔をして、甘えたことを言ってくる。


そんな様子を見て、俺は、もっと彼女たちのことを知りたいと思った。

彼女たちのことを何も知らない。

特にロザリーについては、悪魔としてどのように過ごしてきたかとか、元領主(・・・)とはどういうことか、ロザリーにどんな過去があるのか──俺は、何も知らない。


狭まってきた視界になんとかふたりをおさめると、楽しそうな姿がそこにある。


──まぁ、今じゃなくてもいいか。

──今知らなきゃいけないわけでもないし、今知ってほしいわけでもないだろうし。

──それより今は、この賑やかさを楽しみながら……眠りたい。


俺は机に突っ伏しながら、安らかに、穏やかに、

眠りへと引きずり込まれていった。

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