第47話 俺 VS 美少女その1
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「ひさっち、おはよ~」
やっぱり今日も今日とて、ギャルの我部さんが話しかけてくる。
花音と桜花に話を聞くためにも、どうにかしてこの女を引き離さなきゃいけない。
さて、どうしてものか……。
「……あぁ、おはよ」
「……くふ」
「なんだよ、気持ち悪い笑い方して」
「気持ち悪いは酷くない!? おかしいのはひさっちなのにさ~」
「おかしい? 俺が? なんで?」
「だって、昨日はあんなに酷い態度だったのに、今日は普通に挨拶してくれたからおかしくて」
そして我部は、クスクスと微笑む。
確かに、俺は我部に対してかなり不誠実だった。
考え事をしていたとはいえ、彼女に対して失礼な態度を取ってしまったのだ。
ちゃんと、しっかりせねば。
「すまん、考え事しててな。用が済んだのならあっち行ってくれ」
「急にひどっ! ツンデレじゃなくてデレツンな人初めて見たわ」
「デレてない。ずっとツンツンだ」
「うっそだ~。絶対さっきデレてたもん」
「しつこいな。俺がデレてないって言ってんだから、誰が何を言おうとデレてないんだよ」
「面倒くさい人だな~」
ちょっと? 心の声が漏れてますけど。
それとも何? 言っていいことと悪いことの分別がつかない人?
どちらにせよ、面倒くさいのならこれ以上俺に関わるなよ。
そう言おうとするよりも先に、我部が口を開いた。
「でも、そこがオモロイわ~。マジ、いじりがいある」
「……どうしたらウザいって思うんだ?」
「そういうことを本人に聞いちゃう限り、ウザ絡みはやめられないかな~」
「……それは違うな。お前は人の嫌がることをして反応を楽しむタイプだ。だから、俺がお前に心を開かない限り、お前は俺に付き纏ってくる。違うか?」
口にしてから確信してしまった。
ちょっかいをかけるという行為には二種類のパターンが存在する。
一種類目は、好意を悟られずに関係を保とうとする防御的行動だ。
だが、我部は榊に好意を寄せているため、一種類目の行動理念に反する。
そして二種類目、好意を持たずに関係を保とうとする攻撃的行動だ。
きっと俺と我部の関係性は、こちらの行動理念に該当する。
そうでなければ、この関係性に説明がつかない。
嫌がらせは、ただの嫌がらせ。
……なるほどな。花音たちに持ち掛けた相談が何となく見えた気がした。
「いや、それは違うかな〜」
「じゃあ、お前が俺に関わる理由はなんだ? 今までお前と俺に接点はなかったはずだ。何か理由でもあるんだろ?」
「ちょっと、何ムキになってるの? ウチはひさっちの力になりたいだけだよ?」
我部の表情が若干曇る。
それでも俺は、やめない。
「力になりたい? 何かをお願いした記憶がないんだが? 力になりたいのなら、これ以上関わらないでくれ」
別に俺は、何一つ間違えたことは言っていない。
我部の狙いが分かった以上、俺の選択はきっと正しかったはずだ。
なのに、俺の心は揺れていた。
なぜ……いや、愚問だな。
理由なんて言うまでもない。
なぜなら、目の前の我部が、泣いていたから。
双眸から大粒の雫を落として、泣いていたから。
「なんで……そんなこと、言うの……」
「なんでって……、俺は間違いを正しただけだ」
「ウチはただ、ひさっちのためを思って……」
「……ためになってないから言ってるだけだ」
現実から目を背けるようにそっぽを向くと、すぐさま俺の名前を呼ぶ声が横から聞こえてきた。
「久山、お前さ……」
「榊か。早くこの女を引き取ってくれ」
「女って、お前もう少し言い方をだな……」
「すまん、言い方が違かったな。早く奥さんを引き取ってくれ」
「……もういい」
そして榊は、泣きじゃくる我部を連れて俺の席から離れて行った。
これで邪魔者は消えた。
あとは、花音たちと腰を据えてゆっくりと話ができればいいんだが……。
すると、後ろから四つ折りに畳まれた紙が飛んできた。
差出人は……言うまでもない。
てか、これは一体何の手紙?
手紙でやり取りしなければいけないような事は何も話してないような気がするんだが……。
とりあえず、俺は四つ折りに畳まれた紙をゆっくりと開いていく。
『☆サイテーなクズ男へ☆ 全てが台無しになりました♡ (。_。`)チーン』
………………はい?
待て待て、言いたい事が山ほどあるけど、まずはここからだ。
全てが台無し? 一体何が?
理由を問い詰めようと後ろを振り返ろうとしたら、また同じように紙が飛んできた。
秘密裏に行動しろ……ってことなのか?
なるほど、どうやら俺と直接話す気はないらしい。
さてと、そうと決まれば今度はどんな内容が——————
『頭に桜の花びら乗っかってるよ〜(笑) カッコつけてたのにしまらんねwww』
「お前! いい加減にしろよ!」
もう許さん! コイツだけは絶対に許さん!
ほっぺでもつねってやろうと意気込んで振り返る。
……だが、そこには誰もいなかった。
「……あ、あれ?」
差出人であろう彼女を探すと、俺の席から離れたところで桜花と楽しそうに談笑していた。
……ア、アレ? オカシイナ……?
声量が大きかったのもあって、クラスの大半が俺の方を見ていた。
顔が急に熱くなり、変な汗が流れ始める。
そして俺は、何事もなかったかのように静かに机に突っ伏すのだった。




